悲しみの雨音   作:ルスワール

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前回の更新からものすごい時間が空いてしまいました
なかなか時間が取れずにずるずる引きずってたら気がついたら1ヶ月経ってました><
今後のストーリーの展開は決まっているので必ず最後まで書きたいと思っています
マイペースですがよろしくお願いします



13話 故郷

外は太陽が低くなりもうすぐ夕暮れとなる頃。

俺は身支度を整えて、家を出る。

 

 

そろそろ夏も終わりに近づいて来た為、この時間帯の気温がとても心地よい。

しばらく歩き、白くて大きい、まるで豪邸のような家に到着した。

いくらよく知ってる人の家だとはいい、こんな大きな家に訪問するのはなかなか緊張する。

 

 

ピンポーン

 

 

『は~い!』

 

 

「すみませーん、渡ですー。」

 

 

『は~い、今開けるね~!』

 

 

そう言って家の中から足音が近ずいてきて、扉が開かれる。

 

 

「あら~、久しぶりね渡くん。」

 

 

「お久しぶりです、桜坂さん。」

 

 

扉が開き出てきたのは桜坂しずくの母親である、桜坂ひなたさんだった。

さすがにいくら昔から関わりが深かったからと言って、人の親を名前呼びするようなことは無いので"桜坂さん"と呼んでいる。

 

 

「しずくならもう少しで来るわよ。それにしてもよかったわ~、渡くんと再会した最初の日から何かある度にあなたのことばかり話すようになっちゃって。」

 

 

「え?そうなんですか?」

 

 

曲を作ってあげた後とかならまだわかるけど、初日からかよ。まあ愚痴でも言ってたんだろうな。

 

 

「...渡くんが転校して直ぐにあなたの両親のことをしずくに伝えようとしたんだけど、あの子、"もうあんな人の話一切しないで!"って聞く耳持たなくて... でも、渡くん本人から直接伝えてこうしてまた一緒にいてくれてるなら、こっちの方が良かったのかもね。」

 

 

確かに、俺の母さんと桜坂さんは仲が良かったんだから桜坂さんからしずくへ伝わってなかったのは疑問に思ったことはあったけど、そういう事だったのか。

 

 

「俺もまさかまた関わるようになるなんて思っても無かったです。」

 

 

「渡くんと会ってから毎日楽しそうにしてるし、このままパートナーになって欲しいくらいよ。」

 

 

「なっ...///」

 

 

頬が少し赤くなっていく感じがあった。

 

 

「渡く~ん!今行くね~!」

 

 

廊下の奥から大きな声が聞こえてきた。恐らくしずくの声だろう。

 

 

「ふふっ、恥ずかしがんなくてもいいのに。あの子今日の事ずっと楽しみにしてたんだから、後は任せたわよ。」

 

 

「は、はぁ... 頑張ります。」

 

 

そう桜坂さんと話をしていると、しずくが小走りで走って来たのだか...

 

 

「お待たせ~、ごめんね待たせちゃって...」

 

 

「お、お前、なんだよそれ...」

 

 

「何って、これから夏祭り行くんだよ?浴衣くらい着るでしょ。」

 

 

まあそうなんだけどさ... なんと言うか、浴衣のせいでいつもと雰囲気が全然ちがう。

水色の花柄の浴衣を身にまとい、髪型がいつものハーフアップに赤色のリボンではなく、頭の後ろでお団子を作りうなじが丸見えな状態だった。

 

 

やばい、なんだこれ。なんかよくわかんないけどこいつといると緊張する。

 

 

「やっぱり... 変だった...?」

 

 

「いや、全然変じゃない。むしろ... その... 似合ってるよ。」

 

 

これから一緒に出かけるって時にしずくの機嫌を損ねてはならないと思い、正直な感想を言ったのだか恥ずかしすぎて目を見れない。

 

 

「え...? あ、ありがとう...///」

 

 

そう言ってしずくは顔を赤くして少し下を向いて照れくさそうにしていた。

 

いやなんだよこれ、付き合ったばっかのカップルみてぇじゃねぇか。気持ち悪ぃなまじで。

 

 

「うふふっ、こんなところでイチャついてないで早く行ってきなさい。」

 

 

「「イチャついてなんかない!!」です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もー、渡くんがあんなこといきなり言うから...」

 

 

「仕方ねぇだろ、お前が勝手に勘違いして拗ねるから。」

 

 

先程のやり取りを桜坂さんに見られたのが恥ずかしすぎる。

普段は絶対やらないことを見られちまったから勘違いされてるだろうな。

 

 

終わったことを掘り返してもなんの意味もないから、その話は一旦置いとこう。

 

俺たちは今、駅へ向かって歩いている。

最終目的地は駅から約1時間電車に乗った先の鎌倉で行われる夏祭りだった。

 

鎌倉は俺たちの故郷である。俺がこっちの祖父母の家に引っ越す前、しずくが虹ヶ咲に編入する前までは2人ともここで暮らしていた。

 

 

事のきっかけは、昨日の夜にいきなりしずくから電話が掛かってきて、"よかったら明日の鎌倉の夏祭りに一緒に行かないか"という内容だった。

最初は少しためらった。鎌倉に帰るとまた昔を思い出しそうになったからだ。

しかし、俺はもう変わったんだ。過去のことを受け入れ向き合って行くと強く決めたんだ、故郷へ戻ったくらいじゃへこたれたりなんてしない。

と、言うことでしずくからのせっかくの誘いを受けることにしたのだ。

 

 

「それにしても、何年ぶりだろうね。こうして2人で夏祭りに行くの。」

 

 

「小さい頃は毎年行ってたよな。」

 

 

「でも中学に上がったら渡くんが恥ずかしがって行かなくなっちゃったんだよ?」

 

 

「ち、違ぇだろ!あれは野球の方が忙しくなったから...」

 

 

「でも家の近くのお祭りだよ? 練習も遅くても4時とか5時には終わってたじゃん?」

 

 

「ま、まぁ疲れてたからな!」

 

 

もちろん、そんなクソみたいな理由で夏祭りに行かなかった訳じゃない。

これに関してら全部しずくが悪いからな!

 

 

「あ、もう着いたね。」

 

 

「後10分で電車も来るし丁度いいな。」

 

 

そんな話をしながら歩いていると駅に到着した。

2人とも切符を買い、電車に乗車した。

 

 

 

 

電車に揺られること約1時間、目的地である鎌倉へと到着した。

 

駅を出るとそこには懐かしい景色が広がっていた。

 

 

「久しぶりだなぁここ。」

 

 

「俺は丁度1年振りくらいだな。」

 

 

故郷を目にし、様々な記憶が脳内を駆け巡る。

必死に野球に打ち込み、練習が終わった後にみんなで寄り道して遊んだり... 当時はほんとに野球にしか興味が無かったからパッと思い浮かぶのがそれくらいしかない。

 

 

確かに、あの頃は充実して楽しかった。

でも、もう惜しむ気持ちは俺には無かった。

今の俺は昔の俺のように追いかける目標があるんだ。形は違くても、道の先には夢があり、周りを見渡せば大切な人がいる。

 

 

大事な人が...

 

 

「ん?何よそんなに私の事見て?」

 

 

1人でそんなこと考えてたら気づいたらしずくのことガン見してたわ。

なんかすまん。

 

 

「何でもねぇよ、早く行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

隣の女がものすごい勢いで次々と金魚を救っていく。こいつは昔っから金魚すくいでめちゃくちゃ金魚取ってたよな、久しぶりに一緒にやったけどやはりあの能力は現在だった。

 

ちなみに俺は2匹をすくい、3匹目に取り掛かりるとろで網が切れた。

てか、みんなこんなもんだよな? こいつがおかしいだけだよな?

 

 

「あーあ、網切れちゃった。」

 

 

結果、やつの左でのおけには数えるのが面倒なくらいの金魚がウロウロしてた。本人曰く18匹らしい。

 

 

「またそんなに取ったんかよ。やっぱ変わんねぇなお前。」

 

 

「そうかなぁ? 渡くんが下手くそなだけなんじゃないの~?」

 

 

そう目を細めて煽るように言ってくるが、さすがにレベルが違いすぎることはわかっているので全く俺の心に刺さることはなかった。

 

 

「はいはい。で、次どこ行きたいんだよ?」

 

 

「あ!次射的やりたい!」

 

 

「お前射的下手くそじゃなかたっけ?」

 

 

「むっ!それは昔の話でしょ!今は上手だもん!」

 

 

「そりゃ楽しみだな、よし行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシュン

 

 

「あ~、当たんないよぉ~!」

 

 

既に3発中2発を外して、残り1発となった。

 

 

「次こそは... たぁ!!」

 

 

パシュン... コチン!

 

 

「当たった!」

 

 

しかし、命中した景品は缶に入ったドロップキャンディーだった為、1発当てただけでは落とせなかった。

 

 

「あれ、しずくちゃん射的上手になったんじゃなかったの?」

 

 

「う、うるさいわね! 今当たったでしょ、なんで落ちないのよ。」

 

 

「あんな重いのじゃなくていさぎよくキャラメルとかでも狙えよ。」

 

 

パシュン... パチッ!

 

 

そう言いながら打った俺の玉は見事キャラメルに命中し、景品ゲット。

 

昔からよくわかんないけど射的は当たるんだよな。

夏祭りなんて小6以来だったからまた当てられるか自信なかったけど、意外と行けそうだな。

 

 

「後に2発あるし、お前の欲しがってたやつ狙ってみるか。」

 

 

パシュン... コチン!

 

 

当たりはしたもののやはりまだ落ちない。

しかし、しずくのを合わせて2発当たってる為台のかなり後ろの方に押されててもう落ちそうだ。

 

 

「やっぱりあれは落ちないようになってるのよ!私が当てても落ちなかったんだもの。」

 

 

何故か自慢げにそう話すしずく、余程悔しかったんだろうな。

 

 

パシュン... コチン!

 

 

「ふぅ...」

 

 

3発目も見事に命中し、ドロップキャンディーを落とすことが出来た。

 

店員から景品のキャラメルとドロップキャンディーを受け取ると、しずくが妬むようにじっとこっちを見ている。

 

 

「なんだよ、さっきまであんなに元気だったのに。」

 

 

「ふんっ、カッコ付けちゃって...」

 

 

「はぁ、全くしょうがないやつだな。ほら、これあげるよ。」

 

 

そう言ってしずくにドロップキャンディーを差し出した。

 

 

「え? いいの?」

 

 

「俺にはキャラメルがあるし別にいらないからな。そんなにこれが欲しいならあげるよ。」

 

 

「え、あ... ありがと...」

 

 

そう言ってしずくは少し恥ずかしそうに俯いて受け取った。

全く、こんな飴ごとぎがそんなに欲しかったんかよ。

 

 

「あ、私次たこ焼き食べたい!」

 

 

「はいよ、結構並ぶだろうし早く行くぞ。」

 

 

飴をあげて機嫌が治ったのか、しずくはまたはしゃぎだした。

まるで小学生みたいに純粋に夏祭りを楽しんでいる。

 

日頃は優等生で、演劇部や同好会のみんなには絶対に見せないような素顔だった。あの演劇祭で"もう自分を隠さない"と決めたしずくの成長を感じさせると同時に、日頃とのギャップの違いがなんか魅力的だとも思った。

 

 

「そう言えば、花火っていつも7時からだよね?」

 

 

「あぁ、今は6時40分だな。」

 

 

「じゃあたこ焼き食べたらあそこ行こっか。」

 

 

「あそこまで行くのちょっとめんどくさくねぇか?」

 

 

「花火はいつもあそこで見てたでしょ。さ、早く行こ!」

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
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