悲しみの雨音   作:ルスワール

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校内シャッフルフェスティバル面白かったですね!
まだまだイベントが盛り沢山な虹ヶ咲、今後も楽しみです!
それと今まで全然気づかなかったのですが、大豆大福さん沢山の誤字報告ありがとうございます!
非常に助かります。
それではどうぞ!


14話 素顔

「懐かしいなぁここ。」

 

「まだ残ってたんだな、こんな小さな公園が。」

 

 

夏祭り会場から徒歩5分程度、俺たちは小さな公園にやってきた。

 

毎年、ここの夏祭りでは7時から花火が上がる。この公園は元々、旧桜坂家の裏側に位置していて、そこからはその花火が建物の間からちょうど綺麗に見えるので毎年ここに来ているのだか、こんなしょぼい公園から花火が見えるということはほとんどの人達は知らない為、ここには毎回俺たちくらいしかいないのだ。

 

 

「とりあえず座ろっか。」

 

 

「ああ、歩き回って疲れたしな。」

 

 

この公園にひとつしかないベンチに俺たちは座る。ここから正面に花火が見えるというほんとに好条件な場所なのだ。

 

俺たちはベンチに座り一息つく。

 

 

「はぁ... たくさんはしゃいじゃったなぁ。」

 

 

「まじでガキみたいだったなお前。」

 

 

「いいじゃない、久しぶりなんだし。」

 

 

夏の夜の公園、周りの草がそよ風に揺られる音がする。

お互いに歩き回って疲れたのか数分の間黙り込む。

 

 

ピューバーン

 

 

しばらくすると夜空に花火が上がった。

様々な色に輝く大きな花火たち、まるで各々が違う夢を追いかけているようたった。

 

 

「わぁ~、綺麗だね~。」

 

 

「花火なんて見たのほんと久しぶりだな。」

 

 

しばらく花火を見ていて、ふと思い出した。

 

 

「そうだ、しずくに言っておきたいことがあったんだよ。」

 

 

「ん? どうしたの?」

 

 

キョトンと彼女がこちらを向く。

 

 

「俺、夢が見つかったんだ。」

 

 

「え?」

 

 

「俺がしずくに曲を作ったり同好会のメッセージ性の強い歌を聞いて気づいたんだ。歌の力の素晴らしさ、これを俺が作ることが出来るなら、自分の気持ちをたくさんの人に届けたいってね。」

 

 

特に畏まる必要などない、でも自分の夢を人に伝えるのって少し恥ずかしい気もする。

 

 

「だから、俺はプロの作曲家になる。」

 

 

これが俺の決意だ。この学校に来た目的を果たすために、両親の背中を追いかけること。

 

しかし、彼女の反応は唖然としてこちらを見ているだけだった。それもそうか、いきなり夢を言われたところでこいつには関係ないもんな。

 

 

少しベンチを深く座り直して、目線を花火からしずくに向けた。

 

 

「俺に夢を与えてくれて、ありがとう。」

 

 

やっぱり恥ずかしい。こついの前で素直になることなんてほとんどないから変にカッコつけてるけど、今までの俺のように戻った事を伝えたかった。

 

 

「...渡くんっ!」

 

 

「な、お、おい!」

 

 

俺が話し終えた途端、彼女は俺の胸元に飛び込んで抱きついてきた。

女性独特の甘い香りがし、体温がとても温かい。

更に柔らかいものが俺のみぞ辺りに当たっており、平常心を保つのだけで精一杯だった。

 

しばらくその状態が続くと、彼女はふと顔を上げた。そんな彼女の目には、少し涙ぐんでいた。

 

 

「お前、泣いてんのか?」

 

 

「あぁ... ごめんね、私つい嬉しくなっちゃって...」

 

 

彼女は俺に抱きつくのをやめてベンチに座り直す。

 

 

「嬉しい... のか?」

 

 

「うん... ほら、私の目指してる女優っていう仕事はさ、見てくれている人に夢を与えて元気にしてあげる仕事だから... 」

 

 

なるほど、そういう事か。しずくは感情のあまり言葉をつっかえてしまっているが、俺には言いたいことが分かる。

 

要するに、女優として1ファンに夢を与えることが出来たという体験が出来たということか。

 

 

「それにさ... 私は、目標を全力で追いかけている渡くんが... 好きだから...///」

 

 

はあ、全くしずくといいかすみといい、虹ヶ咲の女たちは発言が軽いんだよ。

軽快に好きって言葉を男に言うもんじゃねぇよ、俺じゃなかったら絶対に勘違いさせて傷つけられてるよ。

 

勘違いはしてない。けど... なんか嬉しいな。

 

 

俺は思わず彼女の頭の上に手を置き、くちゃくちゃにならない程度に撫でた。

 

 

「ひゃ! え!? うぅ...///」

 

 

暗くて彼女の顔色は見えないが、恥ずかしそうに少し目線を逸らしているのはわかった。

 

 

「さんきゅーな、しずく!」

 

 

そう言ってしずくに対して笑顔を向けた。

 

 

そしてもうひとつ、彼女に感謝の気持ちを伝えるために用意したものがあった。

 

それを思い出し、タイミングもちょうどいいだろうしカバンの中に手を入れた。

 

 

「それとな、お前に渡したい物があるんだ。」

 

 

「渡したい物?」

 

 

そう言ってカバンの中から取り出したのは、サファイアのように透き通った綺麗な色をした小さな雫がぶら下がっている首飾りだ。

 

 

「...! そ、それって...」

 

 

「お前もくれただろ、演劇祭のお礼だよ。」

 

 

これだけ長い間彼女と過ごしていても、こんなことは1度もしたこと無かった。

 

 

「柄じゃないのはわかってるけど、あの演劇祭でお礼を言いたいのは俺も一緒だからな。」

 

 

やっぱり慣れないな。女性に対して物をプレゼントして感謝の気持ちを伝えるなんてめちゃくちゃ恥ずかしい。結構頑張って選んできたけど気に入ってもらえるかわからないし、不安要素もかなり大きい。

 

 

「嬉しい... こんな... 私のために...」

 

 

そんなことを考えていたところに、しずくはポロポロと涙を流しながらそう言った。

 

 

「はぁ... ほんとにお前は昔から泣き虫だな。普段は優等生なのに。」

 

 

「らってぇ... もう渡くんと仲良くなれないって思ってたから... 嬉しくて...」

 

 

もう仲良くなれないと思ってた、か。それは俺も全く同じことをずっと思ってたな。

曲を作った時もほんとは拒否られるんじゃないかって心配してたからな。

 

 

「全く、泣き止んだらそろそろ帰るぞ。帰宅ピークの大混雑に巻き込まれる前に電車乗るぞ。」

 

 

「そうだね。」

 

 

泣きながらも彼女はくしゃっと笑った。

その顔を見た時、何故かドキッとした。

今まで全く意識したこと無かったけど、こいつも女の子なんだよな...

 

それにしても、こんな姿のしずくを見れるのは多分俺だけだろうな。写真撮ってかすみにでも見せてあげたいくらいだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たく、ほんとに世話がやけるな!」

 

 

「んん...」

 

 

あれから俺たちは公園を出て、電車に乗り込んだ。

車内は夏祭りが全て終了する前に乗った為かなりスカスカだった。2人で椅子に座って5分くらいが経った頃には、俺の肩に頭を乗せてすぅすぅと寝息を立てながら気持ち良さそうに寝てやがる。

 

ほんとにこいつはどこまで行っても自由人で勝手なやつだ、さっき俺はこんなやつを女性として見てしまったんかよ!俺の胸の高鳴りを返せ!!

 

 

とは言っても、今日は沢山歩き回ったし、いくら演劇やスクールアイドルをやっててもあれガキみたいにだけはしゃいでたら疲れて当然か。

 

もう少しだけ寝かせてやるか...

 

自分を隠すのをやめて全てをさらけ出すように決めたしずく。ちょっとさらけ出しすぎだけどな。

子供の頃から付き合ってる俺からすると、変に気使われるよりこのくらいの方が丁度いいのかもな。

 

 

「んん... 好き...」

 

 

「え?」

 

 

寝言だよな。寝言だろうけど、しずくの表情はどこか幸せそうにニチャニチャしている。

 

 

 

ていうか、こいつって彼氏とかいるのか?

 

 

 

もしいたとしたら、今日俺と行っていた行為はいわゆる浮気となる。真面目な性格のしずくだ、流石にそんなことしないだろうから多分いないんだな。

 

 

じゃあ今のは... 俺の事?

 

 

いやいや、あくまでも俺はただの幼なじみ。こいつはアイドルやるような女の子、俺よりいい男からモテるに決まってる。

 

それにさっきのは演劇やスクールアイドル、愛犬のオフィーリアとかこいつにな色々な好きなものがある。

 

 

ダメだ... さっきの胸の高鳴りのせいで変なことばかり考えてしまう。

 

変に意識するとまともに話すことが出来なくなる。

 

こっちは真剣に考え事してるのにこいつは気持ち良さそうに寝やがって。

 

 

全く、ほんとにこいつはいつも俺の事を狂わせてくるな。

 

 

 




ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
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