誕生日には間に合わなかったけど割と早めの更新ですね!
それではどうぞ!
『私ね、わたすけ... いや、渡くんのことが好きです...』
かすみからの突然の告白から2日が経った。結局あの後、かすみの件のせいで課題に集中できる訳もなく、夏休みは明けた。先生になんて怒られるのかとか、かすみに会った時にどういう対応をしていいのかなど、色んなことを考えながら登校していた。
かすみの告白については、これだけ考えても結論は出なかった。
かすみと一緒にいるのは楽しい。表情がコロコロ変わったりするのも、対応には疲れるけどそれもまた魅力のひとつだろう。
なら付き合ってもいいだろうとも思ったけど、俺の中で引っかかるものがあった。
何かはわからないけど、純粋にかすみを愛せるか自信を失うような何かなのは確かだった。
待たせすぎるのも良くないけど、これがなんなのかがわからない限り返事を返すことが出来ない。
「あぁもう、わけわかんねぇよ。」
そう1人で呟きながら、学校へと歩いていたのだった。
「はぁ... めんどくせぇなほんとに。」
結局宿題をやらなかった罰として、部室棟の屋上がほとんど使われていなくかなり汚いからと先生に言われ、掃除する羽目になったのだ。
時刻は放課後で、昼間は先生に怒られた俺をおちょくる角田くらいとしか話していない。
学校自体がデカすぎる為、クラスや学科も違うかすみとは会っていない。
意図的に会おうとしなければすれ違う事すらないのがこの学校だ。今思えばこんな学校でしずくと再会できたことって物凄い確率だったんだな。
左手に水の入ったバケツ、右手には外掃除用のモップを持って屋上への階段を登りきり扉を開けると、既に先客がいた。1人の女性がグラウンドを眺めながら立ち尽くしている。
いやー困った。この人になんて言って掃除をすればいいんだよ。"すみません、足元失礼します"とか急に言われたらドン引きするだろうな。でも先生の言った通りかなり床が汚く、このまま引き返しても後々バレてもっと面倒くさいことになる。
そんな事を考えてながら恐る恐るその女性に近づくと、その人は見覚えのある人だった。
「しずく?」
「え!? あ、渡くん!?」
その女性の正体はしずくだった。
まさか大量にいるこの学校の生徒の中の数少ない知り合いだとは思ってもなかったから全然気づかなかった。
「どうしてこんな所に?」
「ちょっと先生に怒られちまってね、ここの掃除をしろって言われたんだよ。」
「...もしかして、また夏休みの宿題やらなかったの?」
「えっと... はい... その通りです。」
1発で図星を突かれて思わず返事を少し躊躇ってしまった。
「全くもう!毎年宿題やらないよね渡くんって!」
「いやだってしょうがないだろ!お前が夏祭りなんか誘ったから...」
「...ふ~ん私のせいにしちゃうんだぁ~」
「わかったわかった!悪かったって!だからそんな笑顔で人殺すサイコバスみたいな顔やめてくれ!」
「全く... もう高校生だってのにまだ私に急かされながら宿題やらないと終わらないわけ?」
「そんな訳あるか!俺にも色々あったんだよ!」
「色々って、例えば?」
「えっと...」
かすみに告白されて集中出来なかったなんて死んでも言えない。恥ずかしすぎる。
「ふふっ、もうしょうがないんだから、渡くんは。」
「はぁ... てか、なんでお前もこんな所にいたんだよ。」
「ああ... えっと...」
しずくはどこか少し部が悪そうな顔で話し始めた。
「渡くんになら、相談できるかな...?」
「相談?」
「私、何か悩み事があったりするといつもここに来てるんだ。演劇部の先輩に、"いつも人がいない自主練に持ってこいの穴場スポットなんだ"って教えてもらったんだ。」
「また何か考え事か。」
「うん、実は、渡くんの曲を歌った演劇祭で"もう自分を隠さない"って決めたけど、改めて"自分らしさって一体何なんだろう"って思うようになっちゃって... だから、今まで"演じること"が私の魅力だったのなら、本当の私を見せてしまうと自分に魅力が無くなってしまうんじゃないかって、ステージで輝くことが出来なくなるんじゃないかって思っちゃって...」
「なるほどな...」
そんな所まで考えてたなんてな。ついこの間までそんな姿見せてなかったからきっとふと思い出したんだろうな。
手に持っていた掃除道具を床に置き真剣に話をすることにした。
「お前の考えてることも、気持ちもよく分かったよ。」
ペチン
「いたっ!」
しずくの額に軽くデコピンをした。かなり手加減をしたのでそこまで痛くないはずなのに、人間不意打ちをくらうと自然と痛いって言ってしまうものなんだな。
「へへ、考えすぎだよ。」
「え?」
そんなの、俺の中では答えは出てるよ。
「きっと今のお前は"スクールアイドルとしての桜坂しずく"と"役者としての桜坂しずく"の区別がついていないんだよ。」
「役者としての... 私...?」
「そう、だってステージで"演じる"ことが出来るのはしずくだけだろ? それが他のどのスクールアイドルにもないお前だけの魅力だと思ってるよ。」
やばい、まじで恥ずかしすぎる。普段こいつの前では意地張って素直になれないことが多いから、正直な感想を話すだけでどこか羞恥心を感じる。
でも、これはしずくのためだ。今回は俺のくだらない気持ちを捨てられれば、こいつはまた成長が出来るはずだ。
「最近、お前に曲を作る関係でスクールアイドルの動画を見ることが多くなってきたんだけど、俺の1番好きなスクールアイドルは桜坂しずくだよ。」
「え...?///」
「もちろん、俺が作った曲だから思入れがあるってのもあるのかもしれない。でもあのステージ以外だって、お前の考えている"世界観"を歌と演技で伝えて、見ている人達を自分の世界へと引き込む。そんなステージが俺は好きだ。」
「渡くん...」
「しずく、演じることは嫌いか?」
「もちろん、好きだよ!」
「だったら、好きなものは好きなままでいい。捨てる必要なんてないんだよ。」
「...!」
「大丈夫だって。お前がさらけ出さなきゃいけないのは、めちゃくちゃ難しいお飯事を好む所だって、本を読んで妄想を膨らませたりする所とかだろ?」
「ふふ、もう...言い方悪いよ?」
「へへ、すまんな。とにかく、少なくとも俺はお前の好きなものは否定しない。困ったら俺に頼ってくれよ。いくらでも妄想話に付き合ってやるからよ!」
「渡くん...!」
彼女は俺の右手を取って両手で包みながらポロポロと泣き出した。
「私... また渡くんに助けられちゃったね?」
泣きながら上目遣いでこちらに話しかけてくる。そんなしずくがいつもより魅力的に見え、かわいくて仕方がない。正直まともに目も見れないくらいドキッとした。
「また泣いてんのか、ほんとにしょうがねぇやつだな。」
「嬉しいんだもんいいじゃん、自分をさらけ出してるだけだよ。」
「たくっ、都合のいい事言いやがって。こんな所誰かに見られたらとんでもない事になるぞ。」
「ふふ、じゃあここの掃除しよっか!私が手伝ってあげる!」
「おい、モップとんなよ!楽な方選ぶな!」
「へっへーんだ、渡くんはそっちの雑巾で頑張りな!」
そう言いながら2人で掃除を始めた。全く、さっきまで泣いてたくせに今となってはケロッとしやがって。
ようやくわかったよ、俺の答え
しずくが困っていたから助けたくなる、しずくの困った顔が見たくない、ずっと笑顔でいて欲しい。
昔からずっとこんなことを思っていたのは、ただただ付き合いが長い友達だからって訳じゃなかったんだってことを。
これまでだってこいつの応援があって頑張れたこともあったし、こいつの曲を作るのも楽しかった。プレゼントをもらった時は嬉しかったし、一緒に夏祭りに行ったのも楽しかった。
ほんと、いつからなんだろうな
ずっとそばに居た気づかぬ間に
俺はしずくに惚れちまったんだな。
ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!