あなたの召喚先での生活をサポートします!   作:本城淳

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息抜き作品です。
早ければ数話で終わるかも知れません。


地球から転移した少年 神楽悠斗

「こんにちは。クエストの受注ですか?それとも、終了報告ですか?」

 

うわぁ……カワイイ女の子だなぁ……。

冒険者ギルドの看板受付嬢と思わしきお姉さんがニッコリと微笑んで対応してくれる。

 

「えっと………冒険者登録ってここでできるって聞いたんですけど………」

 

「あ、登録ですね?ではこちらの用紙に必要事項を記入して頂けますか?不可能ならば代筆もできますけれども?」

 

「あ、えーと……大丈夫です。多分、わかります」

 

多分……なんて言い方をしたのは自信がなかったから。

なんでこんな言い方をしたかと言えば、僕は元々この世界の人間じゃない。

地球の日本という国で生まれ、普通に生活をしていた高校生だったから。

趣味は漫画にゲーム、小説。

インドア派で大人しめのオタク趣味だった。

勉強も普通。スポーツはどちらかと言えば苦手な方だったかな。部活は帰宅部。特技らしい特技なんて全くない。

そんな僕がどうしてこんなところにいるかと言えば…。

ライトノベルなんかでよくある神様の手違いで……とかいうタイプのあれだね。

手違いで突然死んじゃって、でも生き返らせるのは不可能だから異世界で元の体を再生させて……ってやつ。

特典として色々な能力を付けるから、どうか異世界ライフを楽しんで下さいって感じの。

その特典の中には翻訳ってのがあって、僕はその恩恵で異世界の言葉が喋れる。

だけど、読み書きの方はどうだろ………あ、何か用紙に書かれている文字がうっすらと日本語翻訳が出るようになってる。

もしかしたら書いたならば、自動的に翻訳されるようになるかもしれない。

もっとも、自動翻訳がそこまで親切な仕様じゃないかも知れないので、自信が無かったのは仕方のないことだと僕は思う。

お?何か上手くいったっぽい?翻訳スキルって便利だなぁ。

 

「これで良いですか?」

 

僕が書き終えた書類を渡すと……

 

「え?ユウト・カグラ?家名?貴族の方ですか?」

 

あ!しまった!そう言えば昔って名字とかって王族や貴族しか普通は無かったんだっけ!

ヤバイ!どうしよう………

 

「クスクス……何か事情がおありなんですね?カグラなんて家名は初めてですが、このことは黙っておきますんで、今後は注意された方が良いですよ?」

 

思わずドキッとしてしまう笑顔を向けてくるお姉さん。

何て言うか、近所の優しい綺麗なお姉さんって感じが良いなぁ……。

 

「はい。大丈夫ですよ。ギルドカードを作りますので、しばらくお待ち下さいね?」

 

良かった……無事に身分証明書を兼ねたギルドカードが貰えるみたいだ。

町の入口の検問所で発行してもらった仮身分証明じゃ2日くらいしか効力がないし、それまでにちゃんとした身分証明ができなければ最悪奴隷落ちだって言うんだから。

荒事は苦手だけど、検問所の兵士さんが言うには冒険者ギルドでギルドカードを作って貰うのが一番だって話だし、それに………

 

(テンプレだけど、こういう冒険者ものの主人公的なヤツっての、憧れてたんだよね!)

 

喧嘩とか苦手……というよりかは、どちらかと言えば少しいじめられっ子的な気質がある僕としては、そういう境遇の人間が異世界転移や転生をして無双するってヤツに凄く憧れていた。

そしてカワイイ彼女とか作って……あわよくばハーレムみたいな?

まぁ、僕にはハーレムどころか彼女も……いや、女友達だってまともに作った事ないなぁ……トホホホ。

それにしても受付嬢のお姉さん、綺麗だったよなぁ。

他の受付嬢のお姉さんも綺麗だったけど、あの人が一番だった。

僕の好みとしてはもう少し可愛い系の女の子が好きなんだけど、何て言うか、全てを包み込んでくれそうな近所のお姉さんっぽい人って感じで良いよね。

そんな事を考えながら暫く待っていると、受付のお姉さんがスーパーやコンビニのお釣りを渡すトレイにカードを乗せて戻ってきた。

 

「はい、これがユートさんのギルドカードになります。無くされると銀貨5枚の再発行料がかかりますのでご注意下さいね?」

 

「はい!わかりました!」

 

「あと、ランクはFから始まりますが………」

 

それからお姉さんはランクの事とか依頼の受注、報酬の受け取りなど、親切に色々と教えてくれた。

受付のお姉さんって大変なんだなあ……と思っていると、暇になったのか隣の受付嬢さんが……

 

「あらメイリー。随分と親切じゃない?もしかしてこういう子が好み?」

 

「なっ!」

 

僕の相手をしてくれた受付嬢さんーメイリーさんっていうのかーは、ちょっと驚いた顔をして反応する。

あれ?もしかして僕に一目惚れでもしてくれたのかな?

 

「ち、違うわよ。ほら、何だか弟みたいで放っておけない感じじゃない。だからついつい……」

 

たはははは………弟かぁ。ガックシ……。

 

「チッ!」

 

どこかから舌打ちのようなものが聞こえた気がしたので振り替えって見てみると、いかにも荒くれ冒険者って感じの人が僕を睨み付けていた。

コワッ!

でも、他の受付嬢さんに比べても綺麗だし、そりゃ他の冒険者さんからしたらアイドルのような人だよね。

気を付けよう……。

 

「んんん!失礼しました。ど、同僚の言ったことは気にしないで下さいね?まったくもぅ………」

 

「わかっていますよ。ところで、早速依頼を受けたいんですけど、良いですか?」

 

へへへ、待っている間に依頼を貼っている掲示板から良いのを見付けて来たんだよね。

 

「ゴブリン討伐………ですか……でもこの依頼は……」

 

「大丈夫ですよ!」

 

ゴブリンやスライムなんてのは国民的RPGでも最初のフィールドで出てくる雑魚として有名だし、僕には神様から加護を一杯貰ってる。

身体強化に剣術の才能、自動翻訳に魔法の才能。普通の人の何倍もの恩恵があるんだ!

メイリーさんが色々と止めておいた方が良いとか、最初は薬草の採取を……とか、普通なら町の溝掃除とか、そういうのをやらされるみたいだけど、僕は早く神様から貰った力を試してみたいんだ!

 

「はぁ………分かりました。でも、危なくなったらすぐに逃げて下さいね?」

 

「はい!分かりました!」

 

よぉし!頑張るぞぉ!

 

 

 

 

二時間後

 

「終わりましたぁ!」

 

僕は討伐証明であるゴブリンの耳を持って受け付けに行く。

小袋一杯で30くらいかな?

しかし、ゴブリンって弱いよねぇ。

最後の幻想の4とかさ、何で一国の団長二人が揃ってあれらより少し強いくらいなんだろ。

中盤で城に潜り込む時なんてさ、明らかに過去の自分達よりも強い部下達が敵で出てくるよね?バ○ン兵とか。

 

「よ、良かった!ちゃんと逃げてきたんですね!?」

 

「いいえ。終わりましたよ。これ、討伐証明です!」

 

「え!?終わったって……し、しかも袋一杯の討伐証明!?」

 

凄く驚いているけど、どうしたんだろ。

 

「ゴ、ゴブリン討伐って初級の登竜門って呼ばれるくらいのものなんですよ!?しかもパーティーを組んで!まさかこれを一人で……」

 

え?そんなに凄いことだったの?

 

「はっ!どうせどこかの冒険者のヤツをくすねて来たんだろ?中級冒険者あたりから寄生してよぉ!」

 

あ、さっき舌打ちしていた冒険者さんだ。

つうかこれってよくあるテンプレ?むしろワクテカだぁ!

何かメチャクチャ絡まれ、今日登録したてのお前なんかにゴブリン討伐なんか無理だ!どうせズルか何かをしたんだ!俺がお前の実力を暴いてやる!

的な内容でギルドが運営している訓練場に連れていかれ、タイタン勝負を強要される。

まぁ、スキルとかもあってその人達を軽く撃破。

え?この人Cランクでこの町では結構名の知れた冒険者だった!?

ヤッバ!神様のスキルって半端ない!

メイリーさんとかキラキラした目で見てるし!

あ、ギルドマスターが出てきてつれて行かれちゃった…僕にも明日、話があるから来いっていうし……。

ひええええ!目を付けられちゃったよぉぉぉぉ!

 

 

 

結果からいうと、ゴブリンの討伐結果と上級冒険者との決闘に勝利した実績によって僕は異例のDランク昇進という話だった。

あのテンプレ冒険者に関しても最近は問題ばかり起こしていて処分を検討するほど困っていたって言うし……。

メイリーさんからは凄く誉められちゃったよ。エヘヘヘヘヘ。

あと、ギルドから紹介された宿屋、凄く良い宿屋だったよ!布団はフカフカ、料理は塩味しか効いていない野菜スープにパン、それにサラダ位だったけど、それでも美味しかった。

何より女将さんと、似ていないけれどとってもカワイイ娘さん!コレが良い!

アンナさんとエリーちゃんって言うらしい。

何かエリーちゃんとのつかみも良かったし、もしかして僕に気があるのかも?

異世界モテ期キタコレ!

あ、食の改善とかの為に、今度地球の有名な調味料、マヨネーズを作って売り出してみよう!

作り方は大体わかってるんだ!ほら、こういう異世界転移ものじゃ定番だし!

定番と言えば唐揚げやリバーシーとかも定番だよね!娯楽とかそういうの無さそうだし!

うん!これはイケる……異世界無双、イケるぞー!

 

 

結果から言うと、大成功!

商人ギルドとか食いついて来たし、リバーシーも大人気!マヨネーズはこんな味は食べたことがない!とか言われて感動した!今度はタルタルソースとかにも挑戦してみようかな?

冒険者としても結構順調。

……というか、カワイイ新人冒険者のエルフィナになつかれて、色々とトラブルがあって、いつの間にか大切な人に……って感じになっちゃった。

ムフフな事をやっていたら、声を聞かれちゃったらしくてエリーちゃんには嫌われちゃったけど。

本当に色々あった。

ヒャッハー盗賊団はいるし、それをエルフィナと一緒に討伐したら奴隷にされかかっていた女の子達を救出。そしたらその中の一人が僕に付いていきたいとか何とか…。エヘヘヘヘヘ、僕の二人目の恋人だぁ!

でも、良いことばかりじゃ無かった。

リバーシの権利に関して、悪徳商人とこの町の領主に目を付けられちゃって……。

ギルド長とたまたまこの街に来ていた外国の商人さんに協力して貰ってザマァ出来たけど……。もうこの国にはいられないかな?

町を出る前日……メイリーさんは涙ぐんで行かないで!みたいな事を言ってくれた。

メイリーさんにはギルドで良くしてくれたし、好意を向けてくれたならエルフィナみたいに一緒になっても良いかなあ……とかは思っていたけど、病気のお父さんを残しては行けないから……という事で諦めて貰った。

ギルド長とかにも「お前にはずっとこの町にいてもらいたかったのだがな……」と惜しまれたけれど……もう決めたんだ。

隣国の王都に行くって!そこで僕は自分の力を確かめるんだ!

でも……いつかまた、この町に来たいな。

だから何かあったら僕はお世話になったこの町を助けに来る!

また会おう!

 

 

 

 

 

「ユートさん………」

 

「残念だったな、メイリー。まぁ、おめぇなら良い相手がきっと見つかるさ!」

 

「ありがとうございます……ちょっと奥で休んで来ますね?」

 

私がそう言うと、ガストンさんは「お、おう……まぁ、ゆっくり休んで来いよ。受付は他でやってもらうから」と言ってくれた。

辛い……その優しさが今は辛い!

 

私はギルド職員専用の扉を潜る。

第2事務室、第2休憩室等があると表向きには言われている部屋なのだけれど……。

私は扉を潜り、カツンカツンとヒールを鳴らして廊下のタイルを踏みながら歩く。

途中、日本茶(・・・)自動販売機(・・・・・)で買い、談話室のソファーに座り、喉を潤す。

 

「ざっけんなっての」

 

私は思いっきり壁を殴らずにはいられなかった。




メイリーの怒りの理由はなんでしょう?

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