モブ崎くんに転生したので、謙虚に生きようと思う 作:惣名阿万
プロローグ
ついにこの日が来てしまった。
今か今かと期待する気持ちと、まだ来るなと思う気持ちが混同したこの日。
国立魔法大学付属第一高校の入学式が行われる日だ。
真新しい制服に身を包んだ生徒たちが講堂にひしめき、隣近所で期待と興奮と少しの緊張を分かち合っている。
賑やかで初々しい雰囲気の中、中央やや左寄りの席に腰かけて開会を待つ。
前後左右の席には同じ新入生(全員一科生)が腰を落ち着けており、自己紹介や生家の話、将来はどんな進路に進みたいだとかの話題で盛り上がっていた。
この雰囲気を無邪気に楽しむことができればどんなに気が楽だったろう。
ため息を吐きたくなる衝動を堪えて、端末の時計に目を落とす。
入学式の開会まであと10分。
この後登壇するだろう少女とその兄を脳裏に浮かべ、そっと居住まいを正した。
前世という言葉がある。
今を生きる自分が生まれる前、別の人間として生きていた人生を指すものだ。
僕には、そんな前世の記憶がある。
生まれた時は随分と未来感のある世界だなと思っただけだった。
ところが小学校へ入学する頃になると、何か妙だなと思う部分が出てきた。
父や母の口から『魔法』という単語が頻繁に出てくるのだ。それも映画や小説なんかの話としてではなく、父が経営する会社の話をしている時が一番多かった。
その後も両親の話を注意深く聞いていると、他にも『デバイス』や『CAD』という単語も良く聞こえてきた。極めつけに『魔法師』という言葉を聞いて、僕は確信した。
『魔法科高校の劣等生』。
前世の日本で人気を博していたライトノベル、及びそれを原作としたアニメ。
そのストーリーは、劣等生なようでその実規格外な兄が、妹のために学園や国、犯罪組織や他国の軍などに対して大立ち回りを演じるというもの。
生前、僕は一読者としてこの作品を楽しんでいた。もしもこの学校に通えたら、なんて妄想をしたことも一度や二度じゃない。
そんな『魔法科高校の劣等生』の世界に転生したのだ。
しかも両親の話を漏れ聞く限りじゃあ、僕にも魔法師になる素養があるかもしれない。
嬉しさに跳ね回って、立派な魔法師になるぞーと意気込んだ。父にもそう言って、魔法のことを教えて欲しいと頼み込んだ。
父は困ったように笑って、それから大きく頷くと頭を撫でてこう言った。
「お前にはまだ早いと思うが、そこまで言うならいいだろう。
言われてハッとして、後で鏡を見てようやく気付いた。
『
『モブ崎』と呼ばれることもある、作中屈指の当て馬的存在――。
第一巻から登場しておきながら終ぞ主人公サイドと良好な関係を築くことはなく、
大口を叩く割に実力は伴わず、プライドと劣等感の余り空回りを続け、
名誉挽回の機会を与えられることのないまま、巻を追うごとにフェードアウトした、
これはそんなモブ崎こと森崎駿に転生した僕が、身の程を弁えつつ懸命に生きる物語。