モブ崎くんに転生したので、謙虚に生きようと思う   作:惣名阿万

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第28話

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 正面入り口から爆発音が轟いて間もなく、南側に位置する搬入口でも本格的な戦闘が始まった。

 

 先陣を切って迫るのは機関砲を備えた歩兵戦闘車。車体上部の砲を指向しながら時速40キロほどのスピードで接近してくる。車両の後ろには歩兵が追従していて、手にするライフルの中にはハイパワーライフルも含まれていた。

 

 会議場を囲むように回り込む敵に対して、先手を打ったのは屋上からの魔法だった。

 

 並んだ戦闘車両と歩兵に向けてドライアイスの雨が降り注ぐ。

 『魔弾の射手』と称される七草先輩の《ドライ・ブリザード》だ。

 

 彼女を含む遠隔魔法の使い手は屋上から各方面を援護する役割を担っていて、その姿は光学系魔法によって隠蔽されている。

 事象改変の結果を掴める魔法師であれば看破できるものだが、非魔法師が中心の大亜連合軍侵攻部隊にとってみれば何も見えないのと同じ。一部の魔法技能を持つ人間には察知できても阻止は叶わず、結果、無防備な頭上に多数の氷弾を浴びることとなった。

 

 氷弾に打たれた歩兵が血を流して倒れ、悲鳴がバリケードの陰にまで届く。

 何人かが息を呑む一方で、実戦経験がある面々の表情は張り詰めたままだった。

 

「歩兵はともかく、戦車の方は効きが悪いな」

 

「装甲で防いだわけではないようです。恐らく、魔法的な防御が施されているのかと」

 

 五十里先輩の分析に渡辺先輩も頷く。

 七草先輩が放った《ドライ・ブリザード》は生身の兵士を打ち倒した一方、戦闘車両には大きなダメージを与えることができなかった。鉄板も貫通する氷弾が僅かな傷しか付けられていないあたり、ただ頑丈なだけではないらしい。

 

 七草先輩の魔法で貫けないとなると、あれは大亜連合軍本隊の機動兵器で間違いないだろう。原作で語られた限りゲリラに配備される車両は東欧製の中古品で、魔法的な防御の施されていないそれは《ドライ・ブリザード》によって多数の穴を開けられていた。

 

 観察する間も屋上からは立て続けに魔法が放たれ、敵の歩兵が次々に倒れていく。

 相手もただやられるばかりではなく、戦闘車や負傷を免れた兵士が反撃を開始。こちらへ向けて多数の弾丸が放たれ、バリケードの前に展開した防壁を揺らす。

 

 放たれる砲弾や銃弾を防ぐのは圧縮空気とベクトル操作の防壁だ。バリケードの前方に掛けて幾重にも展開されたそれは、飛翔体を『止める』のではなく『逸らす』のに徹底することで干渉力の飽和を起こすことなく機能している。

 

 最前で守りに就いた人員が攻撃を防ぎ、屋上の人員ができる限り敵を叩く。

 単純だからこそ即席でも実現できた作戦は、現代兵器が中心の大亜連合軍を相手に高い効果を発揮していた。

 

 三度(みたび)、屋上から魔法が放たれる。

 相克を避けるために加速系統で統一された魔法式が敵車両へ集中し、魔法防御の上から車体を押し返すように働いた。たまらず敵車両の前進が止まり、代わりに車両の脇を抜けた歩兵が搬入口へと接近してくる。

 

「やるぞ、お前たち」

 

 戦闘車両と歩兵が分断されたと見るや、渡辺先輩の合図でバリケードから顔を出す。

 搬入口の両脇、前進する敵歩兵の斜め前方に当たる位置から立ち上がり、突出した一人を狙ってCADの引き金を引いた。

 

 一斉に顔を覗かせたこちらに気付いて、敵の一人が母国語で警告を発する。

 防壁に向けて射撃を続けていた彼らが焦ったようにこちらへ振り向くものの、生じたタイムラグは魔法式を完成させるのに十分な長さがあった。

 

 いくつもの魔法が敵歩兵部隊へと放たれる。

 

 雷撃に身を打たれる者。

 振動波に揺さぶられ平衡感覚を失う者。

 瞬間的に増加した重力で路面へ押し付けられる者。

 圧縮空気の解放により生じた風圧で吹き飛ばされる者。

 貫通力を増した弾丸に撃ち抜かれ、血を流して倒れる者。

 

 加減をしていられる状況じゃない。倒さなければこちらが撃たれるのだ。

 必然、放たれる魔法の威力も高く、致命傷に至る魔法も少なくなかった。

 

 僕自身、撃っているのは殺傷力の高い《ドライ・ブリザード》だ。

 敵の継戦能力を奪うのに意識を失うだけの《反転加速》では足りない。起き上がって向かってくる可能性を考えると、立ち上がれない程度のダメージは与える必要がある。

 

 たとえ、それが死に繋がる傷になったとしても。

 

 一人撃つたびに腹の底から湧き上がるモノを呑み込んで、CAD(フライシュッツ)の引き金を引く。

 特別製の増設メモリは僅かな淀みもなく起動式を組み上げ、数秒毎に射出されるドライアイスの弾丸が視線の先の相手へ突き刺さった。腕を狙った氷弾はほとんどが思った通りの結果をもたらしたものの、予測と違う動きをされれば当然命中する部分も変わる。

 

 また一つ、狙いを外した弾が男の脇腹を捉えた。

 弾かれたように男が倒れ、押さえた手の下から夥しい量の血が流れ出る。呻きは銃声と怒号に紛れて聞こえず、苦痛に歪む表情はいつか見た恩人のそれと何も変わらなかった。

 

 途端、込み上げる衝動へ蓋をして瞼を強く閉じる。

 そうしていると、今度は血に塗れた『彼女』の姿と声が瞼の裏に浮かんだ。

 

 

 

『もうちょっとだけ、生きていたかったな』

 

 

 

 初めて人の命を奪った時の感触が蘇り、背中から生じた震えが全身に伝わる。

 それでも両手は下ろすことなく、目を開いたときにはもう次の相手へとCADの銃口を向けていた。『あの魔法』を使うようになってからこちら、衝動や感情を行動と切り離せるようになったのは幸いだったのだろう。

 

 次の相手は狙いを外すことなく、銃を構えた右腕へと氷弾を撃ち込むことができた。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 その後も屋上組に車両への攻撃を任せ、攻め寄せる歩兵の迎撃を続ける。

 こちらの抵抗が予想以上だったのか、はたまた人質の確保を優先しているのか。敵の攻撃は限定的で対処もしやすく、防衛側に大きな被害を出さぬまま5分ほどが経過した。

 

 このまま引き下がってくれればどれだけ良かったか。

 だがこの程度で退くくらいなら、そもそも横浜に侵攻などしてくるはずがない。

 

 いずれは屋上に伏兵がいることにも気付かれてしまうだろう。

 そうなった時、どこが集中砲火を浴びることになるのかは明白だ。

 七草先輩だけでなく雫やほのかもそこに居る以上、尚のこと矛先を向けさせるわけにはいかない。

 

「新手が来る前に戦車の方も叩いておきたいのだがな」

 

 渡辺先輩のぼやきも七草先輩を気遣ってのものなのだろう。本人たちは決して認めないだろうが、二人がただの同級生というだけの間柄じゃないのは誰もが知っている。

 

「大亜連合は軍事兵器に『ソーサリー・ブースター』を導入しているという噂があります。魔法が効き難いのもそれが理由ではないかと」

 

 立往生を続ける車両の陰から身を乗り出した兵士へ氷弾を放ちつつ、渡辺先輩のぼやきに応える。

 出所を訊かれると困る知識ではあるが、今はこの場を乗り切ることの方がよほど重要だ。

 

「『ソーサリー・ブースター』?」

 

「それって確か……」

 

 どうやら五十里先輩は知っていたらしい。さすがは刻印魔法の権威『五十里家』の跡取り。非合法な代物とはいえ魔法関連装置であれば知識の範疇だったか。

 一方の女性陣はどちらも聞き覚えがないようだ。知らないのであれば敢えて由来を語る必要はない。どんな性能があるのか、それだけ伝えておけばいい。

 

「近年、犯罪組織の間で出回っている魔法増幅装置です。魔法式の構築を補助する機能があるようで、術者のキャパシティを超えた魔法が扱えるようになるのだとか」

 

 言うや否や、なぜそんなことを知っているのかと問うような視線が二つ伸びてきた。

 新旧の風紀委員長から向けられた鋭い眼差しは「家業の関係です」と答えても緩まず、近くの壁にライフル弾が着弾してようやく収まった。

 

「それで、どうやって突破する?」

 

 小さく鼻を鳴らした渡辺先輩が射手へ魔法を撃ちながら呟く。

 八つ当たり気味に放たれた魔法は周囲諸共先の兵士を吹き飛ばし、全員が2メートルほどの高さから落下。強く身体を打ち付けた彼らに立ち上がる余力はなかった。

 

「増幅されているとはいえ、車内に魔法師がいるのは同じです。術者の処理能力が飽和するまで圧力を掛けられれば或いは」

 

「力押しか。なるほど、単純でわかりやすい」

 

 多少は鬱憤も晴れたのか、振り返った先輩は不敵な笑みを浮かべる。

 

「あたしと花音であの守りを破る。花音、いけるな」

 

「任せてください、摩利さん」

 

 尊敬する先輩から頼られたとあって、千代田先輩は見るからに意気込んでいた。こんな状況下でも彼女のペースは変わらないらしい。

 

「では、私も同じように」

 

「必要ない。お前は少し休んでおけ」

 

 立ち上がりかけた肩を押さえられ、見上げた先から呆れを含んだ眼差しが返ってくる。食い下がろうとした途端に視線は鋭くなって、とても説得できるものではなかった。

 言われた通り引き下がると渡辺先輩は小さくため息を吐き、すぐに隣の五十里先輩へ目を向けた。

 

「五十里、あの中のどれか一つでも動きを止められるか?」

 

「やってみます」

 

 頷いた五十里先輩が振り返り、数ある歩兵戦闘車の中の一両へ目を留める。

 腕輪形態のCADから起動式が取り込まれ、構築された魔法式が敵車両の足元へと展開。車両そのものではなく路面の摩擦力が極大化され、屋上からの加速魔法に抵抗していた戦闘車のタイヤが完全に停止した。

 

「やるぞ、花音」

 

「はい!」

 

 動きが止まったと見るや、渡辺先輩と千代田先輩の2人が魔法式を放った。

 どちらも単純な工程の加速魔法で、斜め下から突き上げるような事象改変が敵車両の展開する防御へ圧力を掛ける。

 屋上からの魔法と併せれば相当な干渉力が及んでいて、圧力に耐えきれなくなった瞬間、車体を守っていた《対物障壁》と《領域干渉》の両方が同時に効果を失った。

 

 戦闘車の前輪が前触れなく浮かび上がった。

 いくつもの運動ベクトルを付与された車体は自身を路面に留めていた楔から解き放たれ、見えない鉄球に打ち上げられたかのように吹き飛ばされる。

 5メートルほどの高さにまで舞い上がった車両は重量バランスに従って回転しながら放物線を描き、約15メートル先の路面に叩きつけられた。

 

 側面から落下した戦闘車は勢いのまま二回転し、上下逆さまの状態で止まる。

 衝撃で機関砲の砲身は折れ、装甲の一部は脱落。空転していたタイヤも間もなく止まり、完全に沈黙した。車内から乗員が出てくる気配はなく、助けを呼ぶ声すら聞こえてこない。

 

 銃声と砲声に満ちていた戦場がどよめきに包まれる。

 敵味方双方の視線が残骸に集約され、間もなく防衛側から鬨の声が上がった。

 

「やり方はわかった。このまま続けるぞ」

 

 深く眉を寄せながら、渡辺先輩は淡々とそれだけを口にした。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 敵車両の倒し方がわかると、共同警備隊の面々はすぐにこれを踏襲した。

 屋上からの魔法で足の鈍った戦闘車へ同系統の魔法を重ね、意図的に干渉力の飽和状態を作り出して防壁を無力化。生じた隙を突いて警備職員が弾丸を撃ち込み、防壁が復活する前に敵車両へ大きな損傷を負わせていく。

 

 一両、また一両と戦闘車が大破し、その度に砲撃の圧力が弱まっていく。

 歩兵からの射撃は続いているが、ハイパワーライフルの放つ高速弾はともかく通常の小銃弾は問題なく逸らせている。高速弾の方も複数の防壁によって少しずつ軌道が変わり、なんとか至近弾までに留めることができていた。

 

 僕自身も黙って見ていたわけではない。

 車両への攻撃を続ける彼らは当然歩兵から狙われていて、防壁で逸らせているとはいえハイパワーライフルの高速弾は大きな脅威だ。減らしておくに越したことはない。

 

 そしてついに最後の歩兵戦闘車が沈黙すると、防衛側から大きな喊声が上がった。

 車両へ集中していた警備隊員の目が歩兵へ向き、残された兵士たちが明確に怯んだ。焦りのせいか射撃の精度も落ちていて、ただでさえ防壁で逸れる弾が当たることはない。

 

 この調子で行けばと、誰もが考えたその時。

 

 音より早く飛来した弾丸が防衛側の一人を貫いた。

 

「っ、あぁ!」

 

 悲鳴を上げたのは共同警備隊の腕章を巻いた男子で、防壁を展開していた一人だった。

 柱の陰に座り込んだ男子は左の肩口を押さえていて、手の下から滲んだ血が腕を伝って床面へ落ちている。

 

「敵の狙撃だ! 注意しろ!」

 

 近くにいた一人が叫び、撃たれた六高の生徒を建物の中へと引きずっていく。

 幸い運ばれる間も被害者の意識はハッキリしていて、腰を支えられながらも自力で歩くことができていた。傷の深さまではわからないが、致命傷にはなっていなさそうだ。

 

 恐らくは防壁魔法によって弾丸の軌道が逸れた結果、急所を僅かに避けたのだろう。

 完全に逸らすことができなかったのは入射角の違いか。正面からの銃撃に対して展開した魔法だから、想定外の角度で通過する弾丸を逸らしきれなかったのかもしれない。

 

 だとすれば、今ある防壁で狙撃を防ぎきることは難しい。

 

「全員、バリケードの陰に!」

 

 銃声に負けないよう声を張りながら身を屈め、着弾地点へ目を向ける。

 

 狙撃対策は護衛の基本。射撃地点を割り出す方法も頭に叩き込まれている。

 さっきの男子が立っていた場所と受けた傷、弾痕の位置から考えて――。

 

「指令室に連絡を。狙撃手は南西側のビルに潜んでいると思われます」

 

 すぐ傍に滑り込んできた渡辺先輩へ連絡を願い出る。

 先輩はバリケードの隙間から指定したビルを覗き見ると、頷いて端末を取り出した。

 

 指令室へ伝えられた情報はすぐにでも屋上へ届くだろう。

 屋上の七草先輩であれば、狙撃手へ対処することができるかもしれない。

 あとはどうやって狙撃を避けながら敵の接近を防ぐか、だ。

 

 そう考えた矢先、こちらの苦悩を嘲笑うかのように、壊れた車両の向こうから新たな敵影が現れた。

 

 歩兵戦闘車よりも背の高い、人型を模した機動兵器――直立戦車。

 中央のコクピット部から伸びるガトリング砲に加え、両腕と両肩にはグレネードやミサイルなど複数の武装が搭載されている。腕部にチェーンソーを装備した機体もあって、その形状も含めて人型ロボット兵器とでもいうような姿をしていた。

 

 続々と現れる直立戦車は残骸となった歩兵戦闘車の間を抜け、こちらへと迫ってくる。

 

「近付けさせるな!」

 

 狙撃手の脅威もある中で押し寄せる第二波。

 これまで以上の苦戦を予想させる状況に、自然と奥歯を噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● ● ●

 

 

 

 潜入から奇襲までを見事に成功させた大亜連合軍司令部はしかし、状況が推移するごとに段々と重苦しい雰囲気へと変わっていった。

 

「機動部隊の損耗、3割に達しました。義勇軍の抵抗未だ衰えません」

 

 山下埠頭に停泊している偽装揚陸艦の戦闘指揮所( C D C )で、侵攻軍の総指揮官を兼任する艦長は通信士官からの報告に苦い表情を浮かべる。

 

 元より、今回の強襲作戦では機動部隊の半数が損耗すると見込まれていた。

 指揮官たる立場からすれば3割も喪失した時点で戦術的敗北は必至だが、敵地の只中への潜入と奇襲を主軸とした今作戦においては必要な損失と見做され、7割を喪失するまでは戦闘を続行するよう命令が下されている。

 

 とはいえ、司令官はそれほどの損耗が出るとは考えていなかった。

 何しろ山下、瑞穂の両埠頭を出撃した機動部隊は歩兵戦闘車60両、直立戦車120機、歩兵約1600人の二個大隊規模に及ぶのだ。

 事前に潜入していた平服工作員も300人を下らず、そちらにも十分な武装、機体を配備してある。長期の占領ならともかく周辺地域の一時的な掌握程度であれば十二分に可能な打撃力があった。

 

 それだけの戦力が作戦開始から1時間足らずで3割も損なわれた。

 未だ作戦目標は何一つ達成できていないにもかかわらずだ。

 

 今回の侵攻作戦における大亜連合側の目的は大きく二つ。

 

 一つは魔法協会関東支部に集積された魔法関連データの奪取。山下埠頭側の部隊が攻略に当たっており、防衛に当たる義勇軍魔法師と激しい戦闘を繰り広げている。

 こちらの方面に関しては順調そのもの。戦況の推移も損害の規模も想定通りに運んでいて、潜伏する工作部隊を動かす必要もないほどだ。

 

 対して、もう一つの目標にあたる瑞穂埠頭側の部隊は苦戦を強いられていた。

 

 こちらの目標は国際会議場に集まった魔法師の確保、または排除。先進各国の中でも魔法戦力に乏しい大亜連合は年若い魔法師を奪取することで、魔法研究の増進と日本の国力低下を図る目論見だった。

 

 工作員を使った人質の確保には失敗したものの、避難路を潰すことで籠へ閉じ込めることには成功した。立て籠もっているのはほとんどが学生で、魔法師とはいえ兵力差を見せつけ包囲すれば降伏するだろう。

 そうした推測の下、瑞穂埠頭から出撃した機動部隊の大半を国際会議場の包囲へと回したのだ。

 

 しかし、いざ包囲を開始した彼らはそこで想定以上の抵抗を受けていた。

 

 正面入り口に立ちはだかる克人は大亜連合軍情報部も注視していた強力な魔法師で、戦闘車両を立て続けに撃破する力にも驚きはない。火力を集中することでその場に縫い留め、包囲網を広げる段取りは予め想定されていた。

 

 一方で克人以外の魔法師については情報も少なく、会議場内への侵入どころか包囲の完成すらも阻まれている現状は予想外もいいところだ。

 搬入口へ回した戦力も有効な打撃を与えることができていない状況で、止まらない被害報告に司令部は困惑に包まれていた。

 

 鶴見、保土ヶ谷の両方面から迫る国防軍を足止する部隊も徐々に押されていて、このままでは戦果を挙げられぬまま国防軍の反撃に遭うだろう。

 焦りを滲ませた司令官は高校生魔法師に対する認識不足を苦々しく呑み込み、やむなく『友軍』の力を借りることを決定。優先目標を人質の確保から包囲殲滅へと移行するよう通信士官へ下令した。

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
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