初恋の相手   作:主義

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茜ヶ久保目線です。


想い

『もも』は彼の事が大切で誰よりも想っている。それを本人に伝えても「そうか」としか言わないだろうけどそれでも良い。別に『もも』は彼から愛されたい訳でも見返りを求めて愛している訳ではない。『もも』がこの人の事を好きで大切に想っているだけ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

 

 

名前は土生(はぶみ)瑞貴(みずき)。彼を紹介するとしたら無口であまり人と関わりたがらない。何で彼がそうなったのかは『もも』も知らないけど彼がそれで良いのなら別に言う事は何もない。

料理の腕は『もも』と比べても決して劣っていない。彼の専門分野は『もも』と同じで「スイーツ」。彼の最初に食べたときは驚いた。だって見た目も可愛いし何よりも味がそれを裏切る事がなく完璧。この皿はもう完成されて何者もこれをよりおいしくする事は出来ないと思ったほどだった。だけど本人は決して自分の料理を誇ることもなく当たり前のように料理を行っていた。その料理をしている時の顔がとても切なそうな顔をしていたので今でも鮮明に覚えている。

交友関係は決して広いとは言えないが同級生や一つ上、一つ下の生徒からはかなり支持されていたりする。彼のミステリアスなところや外見に惹かれたような感じだろう。まあ、モテそうな顔をしているし、そういう人たちがいるのは仕方ない事かもしれない

 

 

今日から『もも』たちも三年生。彼と過ごせるのも残り一年。彼はあそこまでの腕があれば引く手あまただろうし、自分で開業して店を経営するかもしれない。『もも』としてはずっと彼の側にいたいけど、彼に迷惑はかけたくない。

今は学生だからずっと一緒に居られるけどさすがにずっととはいかないと思う。だからこそ、この一年はとても大切に過ごしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな部屋に円のテーブルがありそこには十個の椅子が囲むように置かれている。まだ全員は来ていないので五席ぐらいしか埋まっていない。

 

 

「それで何で今日は招集されたんだ?」

 

 

隣に座っている綜みゃんが疑問に思ったのか口にした。確かに綜みゃんが口にするのも理解できる。だって今回に関してはお題とかを聞かされていない。こっちだって暇な訳じゃないんだから早く片付けて瑞貴くんに会いに行きたいんだから。

 

いつもは事前にどんなお題なのか聞かされているものだ。

 

 

「全員が来てから話すよ」

 

司は綜みゃんの問いに対してそう答えて読書中の本にまた目を落とした。司にしては読書をする何て珍しい。あまり本を読んでいるというイメージ何て無かった。

 

 

「それじゃまだ皆も来ないことだし何か話そうぜ!!」

 

竜胆のテンションはいつ会ってもこんなにテンションが高い。五年ぐらい一緒にいるけど竜胆が低いところを見たことがない。

 

 

「別にいいが何について話すんだ?」

 

 

「そうだな~……瑞貴の事なんてどうだ?」

 

 

瑞貴。

 

 

「もも。瑞貴とは最近どんな感じなんだ?」

 

 

「どんな感じってどういう事?」

 

 

「だからキスとかしたのかよ?」

 

 

「キ…キ…ス……」

 

 

「こりゃしてねぇな。まあ、でも瑞貴はそういうことにまるで興味無さそうだしな。もしかしたら、ももが好きな事すらまだ気づいていないのかもしれないな」

 

 

竜胆は腕を組みながらそんな事を言い出した。

 

 

「ももは別に瑞貴くんに愛してほしいから愛している訳じゃないの。だから別に気付かれなくても良いの」

 

 

「だけど愛されないより愛された方がいいんじゃないの?」

 

 

「まあ…それはそうだけど」

 

 

片思いより両想いの方が良いに決まっているけど無理に愛されたくない。瑞貴くんに告白をする気はない。もし、今の関係が壊れてしまったらもう「もも」は「もも」でいられなくなる。彼に出会ってしまってからもう、ももは瑞貴くん無しでは生きられない。

 

 

「瑞貴は料理しか考えてないだろうからな」

 

確かに瑞貴くんはほとんど料理の事を考えている。どんな時でも新しい自分の皿を増やそうとしている。彼はよく天才と呼ばれている時があるけど...そんな彼にも努力が根本にある。最初から天才だった訳じゃない。それは瑞貴くんの隣に居て本当に思った。

 

 

「だけどそこも瑞貴くんの魅力の一つだと思うよ。その何事に対しても一途なところも良い」

 

 

そんな話をしていると二年が入ってきて後はえりにゃんを待つだけになった。

 

「先輩たち、何の話をしていたんですか?盛り上がっていたようですが」

 

 

盛り上がっては決してないと思うけど。

 

「瑞貴の事だよ。お前たちも会った事あるだろう?」

 

瑞貴くんが有名になったのは中等部の二年の時だから今の高等部の二年生までは彼の凄さを知っている。中には生でそれを見た人も少なくいる。

 

 

「会った事はあると言えばありますね。ですが見たことがあるだけで話したことはないですね。それに土生先輩はあまり後輩や同級生と話しているところを見かけませんし、いつも側には茜ヶ久保先輩がいるので後輩の方は気になっても声がかけづらいのではないかと思います」

 

 

「まあ、一色の言う通り、ももはずっと瑞貴から離れないよな。もう少し瑞貴を自由にさせてやったらどうだ?」

「ももは別に瑞貴くんを縛っていないし決して嫌がっていない」

 

 

さとにゃんが変な事を言うから。瑞貴くんは嫌がっていないと思う。もし、ももの事を嫌いだったらいくら無口の瑞貴くんでも言ってくれると思うし…

 

なんか考え始めるとどんどん悪い方にいってしまう。これが終わったら怖いけど確認しない…

 

 

「明らかに茜ヶ久保がへこんでおるぞ。竜胆」

 

 

「悪い事言っちまったかな。誰からの評価や評判も気にしないももだけど瑞貴の事だけは話が別なんだよな。瑞貴にもし、嫌い何て言われちまったら一生立ち直れないだろうな。そんなももに瑞貴が嫌いかもしれないなんて言っちゃったのは失言だったな」

 


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