初恋の相手   作:主義

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新入生との会話

僕にとって料理は全てと言って良いかもしれない。僕から料理を取ったら何も残らないだろう。それほどまでに僕という人間のほとんどを形作っているのは料理だ。料理無くして僕を語るのは難しいはずだ。

僕の得意料理である「スイーツ」にはこの学校に入学するまではそれなりの自信があったりした。でも、やっぱりどの世界にも上には上がいるもので……その自信は入学して三か月が経った頃に壊れた。何故かと言うと二人一組で料理を作るという授業があった。そこで僕は茜ヶ久保と組むことになった。僕は誰と組もうが変わらないから誰でも良いと思っていた。

 

そして料理に取り掛かってすぐに茜ヶ久保の手際の良さに驚いた。そして彼女が完成させた「スイーツ」は人を見て楽しませるほどの美しさがあり味も勿論、申し分もなかった。初めて自分より「スイーツ」をうまく作る人に出会った。そして茜ヶ久保はそれを軽々とやって見せる。

それは僕にとって超えられない壁との出会いだった。最初は茜ヶ久保に追いつくまで努力をしたし死に物狂いで腕を磨き上げた。

 

 

そして今に至るまで僕は一度も「スイーツ」で茜ヶ久保を超す料理は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

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そんな僕も三年生になってしまい後一年でこの遠月学園を卒業する。この五年間という長くてあっという間だった日々を思い返してみるとそれほど……何も無かった。茜ヶ久保と出会った事や一つ上の先輩だった人にアシスタントとしていつも呼ばれていた事など色々とあったがそこまで印象に残るような事は無かった。だからこの最後の一年は……僕が一生忘れられない位の出来事が起こってくれる事を願っている。

それに何でか分からないが………この最後の一年は何かが起こるような気がする。これは只の勘でしかないけど……僕の勘は案外、当たる方だからもしかしたら本当に何かが起こるのかもしれない。

 

 

そう言えば、今年は転入生がいると言っていたな。それに今回は薙切さんが試験監督だったらしいから転入生はそれほどの腕を持っているんだろうな。そうでなければあの薙切さんが入学を認めるわけがないからな。

 

 

 

 

僕は午前中で授業が終わって暇なので敷地内を適当に散歩していた。茜ヶ久保も今日は十傑の招集があるから今日はしばらく来ないだろうしな。

普段は茜ヶ久保がほとんど僕の側にいるからこんな風に一人で何かをするのは久しぶりかもしれない。そんな事を考えながら歩いていると赤い髪が特徴的な男性生徒が荷物を持ちながら歩いていた。

確かこの先には……極星寮があったはずだ。となるとそこの新しい住人なのかな。だけどこの時期に新しい住人となると多分、この男性生徒が転入生なのだろうな。

重そうなものを持ちながらここから極星寮までは疲れるだろうし少しぐらい持ってあげるか。

 

 

「ねぇ、そこの一年生」

 

僕がそういうと赤い髪の少年は振り返り僕の顔を一瞥した。

 

 

「……何すか?」

 

 

「重そうだから持ってあげようか?」

 

 

「本当すか!????」

 

 

「うん!極星寮までは遠いからね。ここから一人で持っていくのはかなり苦労するだろうからね」

 

そして僕は転入生と思われる生徒の荷物を持ち極星寮に向かう事になった。

 

 

「君はこの遠月学園で何をしたい?」

 

僕は隣を歩いている赤い髪の少年に言った。この学園を卒業できた人は料理界で一生生きていけると言っても過言じゃない。まず、卒業できる事が難しく試験に合格しなければ卒業する事は叶わない。

 

 

「俺は……そうっすね………一先ずこの学園のTOPを取りたいっすね」

 

 

「そうか………頑張って……この学園は料理の上手い奴で溢れかえっている。幸い料理を競う相手には困る事はないだろうしね」

 

僕にも茜ヶ久保が居たからここまでスイーツを極めたと言っても良い。茜ヶ久保と会えていなかったら今の僕はないと言っても過言じゃない。それほどまでに茜ヶ久保から受けた影響は大きい。本人はそんな事を知らないだろうけどね。

 

 

「そうっすか。それは楽しみっすね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そして無事に着いたところで僕は赤い髪の少年と別れて帰路についていた。すると前から見覚えのある人物がこちらに走ってきた。その人物とは茜ヶ久保だ。

こっちに着いた時には息を荒げていた。普段から運動はしないのに急に走るから疲れるんだよ。

 

 

「大丈夫?それにしてもどうしたの?」

 

僕は茜ヶ久保の背中をさすりながら聞いた。

 

 

「だって……瑞貴……くんが……いつもの………場…所……にいないから」

 

それぐらいならそんなに焦らなくても良いのに。もっと急用が僕にあるのかと思ったけど……どうやら無いようだな。

 

「ちょっと後輩の荷物を運んであげていたんだ」

 

 

「え……瑞貴くんが後輩と………話したの!????」

 

 

「うん。久しぶりに後輩と話した気がするよ。普段は絶対に話さないからね」

 

 

僕が後輩とかと話すとかはほとんどない。同級生の中でも十傑に入っている人とかとは話したりするけどそれ以外の人とは話さない。多分、僕に対して無口な印象を多く持っている人が多いのは確かなはずだ。

 

「どうしたの!???調子でも悪いの!???病院に行く!???」

 

茜ヶ久保は心配そんな目をしながら僕に向かって言ってくる。

 

「そんなに僕が後輩と話したのが意外だった?」

 

 

「だって普段から話すのは面倒と言って話さない瑞貴くんが話したんだもん。それは「もも」も驚くよ」

 

 

「大丈夫。熱もないし風邪も引いていないよ」

 

 

 

 

そんな会話をして僕と茜ヶ久保は帰路についた。

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