本から目を上げると、いつのまにか小さな子がいた。
黒い服をきた子。いつのまに入ってきたのか。気づかれないほど集中していたのか?
普段着代わりの着物が着崩れないように整えながら、どうしたものかと視線を一切そらさない。
まだ日は高い。本が読める。
のだが……不思議と視線をそらしてはいけない……そんな気がしてしまった。
じーっと見つめてくるのでこちらもじーっと見つめてみる。首が少し傾けるので同じように傾けてみる。
――どうにもこの子、犬っぽい。
「り……」
お互い見つめ合うことしばし。
「り、りぱ~☆」
照れて赤くなって顔を背けた。よし、勝った。
小さくガッツポーズをする。
猫科は目を見てはいけないが、犬は目を合わせることが大事。そらしてはいけない。
それでもじーっと見つめてみる。
照れてもじもじとしているその横に、手探りでそれを掴み、それをすーっと横へ移動させる。
何かと思いその子の視線が視線を追う。
手にしたもの、それは今日のおやつ。手作りのどら焼き。
それをおもむろに自分の目線に合わせてみる。
首を傾け目で語る。
――ほしい?
こくこくと首を縦に振る。
にっこりと笑い差し出す。
受け取り、いいの? と視線を向けてくる。
今度はこちらが首を縦に振る。
りぱ~☆といい笑顔。そして一口パクつき、さらに目を大きく広げてくる。
つぶ餡の和菓子店風に仕立ててみた逸品。この味に慣れたら他所で食べるなどという愚行は
できない。自信作である。
うちは材料は庭で作ったりできるものもあるが、こと甘味に関しては苦労が多い。
うちの子たちは食べたがるし、甘味を用意するのは難しい。それでもやりくりしてどうにか
自作するぐらいはする。スナック菓子の再現は難しいがポテトチップスならできるし、
ホットケーキの応用をすれば(ホットケーキミックスという贅沢品は稀だが)できなくもない。
お菓子が欲しいか? だったら作れである。
視線に気づいたのか、食べていた黒服の子は何かに気づいたようで、半分に割って差し出して
きた。実はほしいのでは? と考えたらしい。
「いいのですよ、食べても」
「でも……」
「うちは食いしん坊が多いからはやく食べちゃいなさい」
ちゃんと笑えているかどうかは自信がない。甘いのが嫌いなわけではないのだ。
「恩返しはちゃんとするから」
「子どもはそんなこと考えなくてもいいの」
頭をなでなですると、本に視線を下す。
物語の中に没頭している合間に、その子も姿を消していた。
――そういえば名前とか聞いてなかったけど、どこの子なのかな?
その日の夜の話。
リーパーちゃん(10歳)は運営ちゃん(8歳)の元へやってきていた。
「運営ちゃん……」
「はーい。ガバってませんよ。ってあ、危ない!! どうしたんです?」
死神の鎌を構え、本気の目を向けている。
「青島玲子さんの家をもう少しよくしてください」
「は? そんなことできませんよ。何があったんですか、ちょっ、鎌振るわない」
必死になって避けながらあらゆる書類が切断されていく。
「さすがに可哀想になってきましたので。しかも私、死神なのに……」
涙を流しながら振り回すリーパーちゃんの姿があったとか……
登場人物紹介~
運営ちゃん(8歳)
平塚で行われている可逆性SNSミステリー『Project:;COLD』の運営。
そのあまりにも無視できない『ミス』と『やらかし』と『ガバさ』を「8歳のすることだから」と擁護してできた存在。もちろん、剪定された存在です。
さすがの私も運営は吊るしても、運営ちゃん(8歳)を吊るすような真似はできません。子どもに優しく。
はい、そんなわけで玲子さんです。総長玲子さんですが、
普段着を着物で過ごす純和風文学少女仕立てにしてみました。髪型はまぁ皆さんの想像にお任せしましょう。
着物が似合う黒髪美人です。なのですが、この話書くのちょっとイメージ通りにならないので難産でしたorz