三嶋先生は六泉ヶ丘高校の学校の先生。
彼はグレーな存在でもあります。特別何かしたわけではないのに最初からブラック評価ですが。
ですがここは本編とは違う何かなので。不幸です。
じりじり、じりじり
後ろへと退きながら、その圧力を感じていた。退いた分、詰め寄って来る三つの影。
「ま、まて。話せばわか……わかる……」
三嶋先生は箱を後ろ手に後ろへ下がる。だがそれ以上はいけない。壁まで追い詰められていた。
どうしてこうなった? 三嶋先生は涙目になっている。
「りぱー☆」
「りぱー☆」
「りぱー☆」
三つの声がする。その姿が鮮明になるが、話してすむ相手ではないと直感的に理解した。
シラノちゃん、りーぱーちゃん、運営ちゃんに囲まれ、三嶋先生は首を横に振る。
「こ、これはあの子たちの差し入れなんだ。君たちに上げられる個数はないんだ」
『嘘だ!』
一斉に声が重なる。圧倒的断言力に三嶋先生は怯む。
「しってるのよ?」
『ドーナツ三嶋様』
再び声が重なる。ドーナツ三嶋、差し入れがある時は大抵がドーナツだと拡散された。その情報は一気に全校生徒にまで広まった。
そしてそこから
『逆さに吊り下げれば出てくるって知ってるのよ』
と噂が流れていることも……
悲鳴が上がる。
「せんせい、どうした……なにがあってるの? 貴方たち」
バンドの練習も一段落して休憩しにきた奈々乃の目に飛び込んできたのは、ぐるぐるまきにされた三嶋先生と、ドーナツを食べる三人の幼女の姿だった……
「た、たすけて……」
「三嶋先生が? さすが先生。小さな子にも優しいー」
「え、あ、ん、いや、そうだろう?」
生徒にはカッコイイ風に思われたい。先生なら思い浮かぶ第一の理由ではあるが、ぐるぐる巻きにされていてそれはない。
だが奈々乃は三嶋先生のことをカッコイイと称している。この異常な状況においてもその評価が揺らぐことはない。彼女は頑なだから。
「それじゃ劇団のほうにいってきますーさようなら三嶋先生」
「はい、おつかれさま。がんばれ未来の女優サン」
「やだ先生ったら気が早いー」
笑顔で帰っていく奈々乃を見送ると、ハッッとしてしまう。
普通に助けてもらうべきではなかったのではないか?
かっこつける暇はなかったのではないか?
三人の幼女がこちらを向く。
「ま、まて。話せばわかる」
「何を話すの? りぱー☆」
「甘い人は大好きですが、貴方容疑者だから? りぱー☆」
「えーと、まぁ、白判定されるといいですね。りぱ~☆」
「ちなみに今の判定は?」
震える声で尋ねる。彼女たちは
「グレーです」
何処調べの情報かはわからないことを満場一致の意見として言ってのけた。
「おれはむーじーつーだー」
「言い訳は地獄で聞く」
「地獄ってここですよ?」
運営ちゃんはきっぱり言い切る。三嶋先生は何とも言えない顔で運営ちゃんを見つめる。
「そんな顔しても無駄です。ですが、そうですね。平塚は地獄です。あの時からこの時まで」
冷めた、小悪魔な笑みを浮かべながら運営ちゃんは言う。
「お、おまえたち、ボクを、この三嶋先生には何をしたっていいと勘違いしてるな?」
せめてもの抵抗と言わんばかりに声を上げる。
「え? 違うんですか?」
「え? そうなんですか?」
「え? そこ疑うんですか?」
この際だから情報源を聞き出しちゃると言わんばかりに三嶋先生は尋ねる。
「う、疑うさ。いったい君たちに吹き込んだのは誰だ!!」
手が出たのなら指を差していただろう。三人の幼女はりぱ~☆ と可愛い笑顔を浮かべる。天使のような何かにしか見えないのだが発言は意味不明である。
「Discordのお兄さんお姉さんたち」
「凄く物知りで暗号得意な面々です」
「優秀と変態は紙一重と言います。わかりましたか?」
よくはわからない。だが、彼女たちの背後にはとんでもない人たちがいることだけはわかる。ここは全面降伏したほうが吉。
「……わかり、ました」
項垂れ崩れ落ちる三嶋先生。
幼女たちは満足したのか、さらにじりじりと間合いを詰めてくるのである。
「えーと……?」
劇団あかぐまの練習が終わり、休憩室で団欒の予定だったのだが、奈々乃の目に飛び込んできたのはスマキにされた三嶋先生と空のドーナツの箱だった。
食いしん坊、大人をも吊るすと言います。
ドーナツ三嶋とはドーナツを差し入れをしてくれたエピソードからつけられました。
discordの人たちは凄い人たちですよ?