校長は六泉ヶ丘高校の校長。劇団あかぐまの特別顧問でもあり、二人共立ち絵を有している怪しい二人です。
「じー」
その幼女と視線があったのは車から降り、しばらくしてからのこと。
白髪、着物の幼女はこちらを見つめ続けている。いつあったかは定かではないが、これが初めてではない。
「……」
見つめ返す。しばらくそうしていると、おもむろに空に指を上げる。
幼女の視線が指のほうへ向く。
ふわぁぁと声が上がる。空には虹がかかっている。そちらに興味がひかれたのか、幼女は動かない。
にやりと笑うと歩き出す。幼女はついてこない。
いつもの喫茶店に入り、いつもの窓際に座る。
コーヒーが運び込まれる。一口啜り、メニューを見る。
メニューを持つ手に刺す感覚が生まれる。
グレーになった髪をかき上げる。メニューを降ろすとさっきの幼女が強い視線と共に座っていた。
幼女の視線にさらされながらコーヒーを一口。
視線を窓のほうへ向ける。
視線の方向にはいつもの光景が展開されていた。
三嶋先生が吊るされているのである。一度目は思わずコーヒーを吹き出したのだが、二度三度続くと耐性ができてくる。
この位置からはその一部始終が見れる。
ドーナツを奪い取られまいと守りながら劇団あかぐまへと差し入れをする最中、幼女たちに襲撃をかけられ、ドーナツは奪い取られ、更なるおやつを求めて吊るされる。
繰り返すがこの吊るされる光景はよく見る光景でもある。
それが一望できるのもここ最近のいつもの光景である。
最初は驚いたがさすがに見慣れてしまえば、楽しい光景ではないか?
「じー」
幼女の強い視線が解き放たれる。その視線は疑いの瞳だ。幼女の視線は射貫くように見つめられている。
「……」
「じぃぃぃー」
コーヒーを置き、指を鳴らす。ウェイターがお盆片手にやってくる。
短くいつものといい、幼女に視線を下す。
「食べるかい?」
「食べる!!」
即答で帰って来る。そりゃ食べると言う。
――そりゃ即答する。私だってそうするし誰だってそうする。
この校長は六泉ヶ丘高校の校長であり、劇団あかぐまの特別顧問でもある。
立場ある身の上だが、イメージというものがある。
「だから、私が食べていたのは秘密に」
「はーい。パフェのおじちゃん!!」
少し考える。ずずぃとテーブルに乗り出しこう告げる。
「ダンディをつけると嬉しい」
「はい、だんでぃーなパフェおじちゃん」
「フッ……」
それでよいと言わんばかりにコーヒーを一口。
さすがにイメージというものがある。ここで部下の痴態を見ながら、パフェを舌包みを打つ所業を他に知らせられては困る。甘党であることをひた隠しにしている身の上では特に……
「で? 何を知っているの?」
「それは秘密」
「何を企んでいるの?」
「教えない。君にもわかるはずだよ?」
しばらくして――
二人はパフェを幸せそうな顔でつつくのである。
さながら、孫と爺のような構図ではあるのだった……