昨日あった静って子がまた走ってる。
薄暗い中、運動場でスタートの練習をしている。
わっちとしては、どうしてそこまで頑張れるのかよくわからない。
だから見に行ってみる。
「……」
黙々と確かめるようにしている。その姿は必死にすら見える。
死ぬわけじゃないのに。どうして頑張れるのか。
わっちにはわからない。
でも悲しくなるのは気のせいなのか?
近くにおいてあるタオルとスポーツドリンクを握ると近づいてみる。
……
………
…………
……気づかれない。
もっとスムーズにもっと速くという思いが強い。こちらに気づかない。
仕方がない。耳元で
「りぱー☆」
と囁いてみる。
ビクッとしてこちらを凝視する。
「な、なんだびっくりした。昨日の子じゃ?」
「休憩!!」
「え?」
「きゅーけい。頑張りすぎ。や! す! めぇー」
「え、あぁ、もうそんな時間?」
タオルとスポーツドリンクを飲みながらしばらく足踏みをする。
座るように服を引っ張るが
「すぐに座ると痔になって大変なことになるので待って」
「?」
「わかりやすくいえば」
真顔で指を立て満面の笑顔を向ける
「お尻から血が出る」
「!!」
それは大変なこと。絶対にあってはならない。
思わずわっちのお尻を抑える。首をふるふると横に振る。
「捧げられる血は多いけど、そんなとこは駄目絶対」
「なにそれ……?」
「こっちの話」
しばらくして静は座り込み、またスポーツドリンクを飲む。
あれは美味しかった。水なのにあんなに美味しいのがあるとか凄いと思う。でも一度捧げられたのだからねだってはいけない。
「はしるのつらい?」
「いいや、何も考えなくてすむからいい、かな」
「そっか」
「どうして走るの?」
「えー、あー、んー、まぁ、好きだからかな?」
複雑な感情が流れ込んでくる。褒められて嬉しかったこと。もっと褒められたいこととかも。
子どもに言うことではないというのも流れてくる。気を使われたのかな?
まぁ、幼女だから。この体じゃしょうがない。
運動場に寝転がり星を見ている。真似するように寝転がって見る。街の明かりにも負けないように星が瞬いて見える。
「いいね。お空」
星が瞬いている。都会でもほんのり見える空は悪くない。
「そうだね……」
「汚れるけどね」
「そうだね……」
風が通り過ぎていく。時間が過ぎていくのも悪くは……
「ってまった!! どうして幼女がこんな時間帯で一人でいる!!」
「え、今更?」
「まって、すぐに帰る用意するから。送っていくから。いいね、そこから逃げないでよ?」
「えぇぇぇ」
駆けだしていく。速い!! この速さ、逃げても追いつかれるんじゃ?
――それより、わっちはどこに帰ればいいのだろう……
……
………よし。逃げよう!
――夜の街を駆ける二つの影。
わっちと静の追いかけっこは30分ほど続いた。
……きっちり捕まって、宿代わりに使っている近くまで送ってもらった。やっぱりこの体だと無理……
登場人物説明
シラノちゃん(設定年齢11歳)
可逆性SNSミステリー『Project:;COLD』に出てくる名前。
11歳ではない。彼女の名前は2021年1月13日段階では紙にしか書かれていない。
理也さんが――の時に多くの発想の中で生まれた存在であり、公式とは別という意味合いも込めて剪定された存在でもある。
シラノについては詳しくは公式サイトのほうで。