梨:ゼロから二人で異世界生活を始める頃に   作:とある圭梨復権派

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死戻し編 其の弐 「路地裏」

 

「つまり同郷って事なのか?」

 

「そういうことになるのです」

 

 一文なし・コミュ障・引きこもりとダメ人間要素を三拍子揃えてしまっているにも関わらず、特にチート能力や道具も与えられずに異世界召喚されてしまった少年ーナツキ・スバルにとって、その少女は天啓にも思えた。

 久々に家から出て、コンビニで夜食のカップラーメンを買って帰る途中。彼は、そんな当然何の準備も覚悟もしていない時にワケも分からぬままファンタジー世界に飛ばされた。

 持っていた全財産(地元から一番近いショッピングモールまで出て、本屋で買い物して昼飯を食べてくるぐらいの余裕は持てる懐具合)も貨幣の違うこの世界ではてんで役に立ちそうにもない。

 

 そもそもどんな価値観が常識として浸透している世界かもわからない。なにせ、どう見ても動物が擬人化したみたいなよく分からない亜人が大手をふって当たり前のように歩いている世界なのだ。それなのに言葉は通じるのが余計にワケが分からなかった。

 

 そんな混乱の中で、まるで珍獣を見つけたかのような奇異の視線を集めていたのだ。

 いたたまれなくなって、逃げるように路地裏に来たのも仕方のない事である。

 そうやって、路地裏で状況整理もとい妄想をしていたところに自分と同じくワケも分からぬままに、ここに連れてこられたという美少女がやって来る。

 このシチュエーションに興奮しないやつはきっと人生で異世界転生物のラノベを読んだことがないに違いない。

 

 いや、そもそもこんな状況なのだ。きっとここにやって来たのが美少女ではなく、むさいガテン系のおっさんだったとしても同郷ならば嬉しかったに違いない。

 

「ボクも突然、こんなところに連れてこられてとっても困ってしまっていたのですよ」

 

「そうだよな! 異世界転移ラノベ読み漁ってたオレでもこうだもんな! 仕方ねぇよ!」

 

「ラノベ……?」

 

 どうやらラノベを知らないらしく首をかしげる梨花を見て、スバルは改めて思う。

 『オレの時代来たな!』、と。

  

 目の前の少女、古手梨花はどうやら雛見沢という村の古手神社という場所で巫女さんをやっていたらしい。それに加えて、ボクっ娘に、語尾に『なのです』だ。

 属性盛りすぎである。服装も肩紐型のライトグリーンのワンピースとどこか爽やかさを感じるものであり、非常にgoodだ。

 

 果物屋のおっさんを例外として除いたら、こんな少女がファーストコンタクトの人物なのだ。

 

(どうやら、オレの人生は高校三年生にして引きこもりダメ人間によるノンフィクションハートレス転落劇から美少女異世界転移物にジャンル変更されたみたいですね!)

 

なんてバカなことを考える事になっても仕方ない。

 

 だが、スバルはまだ知らない。

 目の前の少女が絶望の末に自殺し、ここに到達した事を。

 目の前の少女が幾度も死を経験し、『魔女』を自称するほどに心がネジ曲がってしまっている事を。

 目の前の少女がスバルへこんな事を思っている事を。

 

(…………こんな男が鍵? 言動も痛々しいし、本人いわく引きこもりのクズだったらしいし、大丈夫なのかしら?)

 

 羽入が夢で遺した自分への最期の言葉。雛見沢へと戻るために必要なカギは『ナツキスバル』という人物。

 梨花は、てっきり圭一のような運命を打ち破ることを期待できるヒーロー的な人物を思い浮かべてばかりいたが、実際目の前にいる男を見ると、どうもそのようには見えない。

 少し変態チックなところは似ているだろうか?

 

(まあいいわ、どうせ本当なら私の命はあそこで終わっていた。しばらくはこの男に付いていきましょう。行くあても無いしね)

 

 別に今すぐ雛見沢に帰りたいワケでもない、イヤ、しばらくは考えたくもないほどだ。それならばこの無能そうな男を嘲いながらしばらくここを満喫するのも良いだろう。 

 見たところ、この男は雛見沢を知らない様子だし、しばらくは何もかも忘れて遊んでいられる。

 

「だが安心しろ! 梨花ちゃんはオレが絶対に守ってみせる!」

 

 と、そんな事をどこから湧いてくるのか変な自信で胸を張って言うスバル。こんなラノベみたいな展開なんだから、チート能力はまだ見つかってないだけであるに違いない、という発想からであったが、残念ながらそんなものはない。

 

「み〜。 とっても頼りない騎士さんなのですよ」

 

「意外に辛辣!?」

 

「ところで、スバルがその手に持っているレジ袋は何なのですか?」

 

「ものすごい話題の転換だなオイ!? そんなにオレって頼りない!?」

 

 ギャーギャーと喚くスバルを無視して、梨花はスバルの右手からレジ袋をひったくると中身を検める。

 

「とんこつ醤油味のカップラーメンに、コーンポタージュ味のスナック菓子……?」

 

「いや、オレ、ここに来たのコンビニからの帰りだったからさ……。でもまあこれでしばらく餓死する心配は無いっつーか!?」

 

「とっても健康に悪そうな食事なのですよ……」

 

 そういえば、とんこつ醤油味のラーメンは圭一も好物だったな、なんて思いながら何気なく手に取り、観察する。

 『賞味期限:2012年○月✕日』そこで、ピタッと視線が止まる。

 

(2012年……?)

 

 梨花にとって、『現在』とは昭和58年、つまり1983年である。単純計算でこのカップ麺は29年もつという事になる。

 いくらカップラーメンが保存食だからといってそんなに持つはずがない。だとしたらこれは表記ミスだろうか。

 急いでスナック菓子の方も取り出して、目を通す。

 そして、そこにも『賞味期限:2012年▲月□日』と表記されていた。

 

 もうここまでくれば疑念は確信へと変わる。

 

(この男は、未来からここへ来たというの……?)

 

「どうしたんだ、梨花ちゃん? 急にスナック菓子見つめて固まっちまって。そんなソレ食いたいってんなら別に普通にあげるぜ?」

 

 目の前の男は何も分かってないらしく、どうやら自分がこのスナック菓子を食べたいのだと解釈したようだ。

 どうする?自分が昭和58年という別の時代から来たことを伝えるべきか?しかし、この男が信用できるという証拠は何もない。ここ一連のやり取りからただのバカである可能性は非常に高いが、腹に何を抱えているか分からない。そもそも伝えたところで何になる?何が変わる?教えて問題が発生するとしたら、それはどんなものだ?

 そんなふうにグルグルと考えが頭を堂々巡りする。 

 

 そんな梨花の事情なんてつゆ知らずで忍び寄る三人の怪しい男の影。

 

 どうやらこの世界は梨花に考える時間を与えてくれないらしい。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「み〜。騎士さん、頼むのですよ」

 

「おう! 任せとけ! まだ見ぬオレのチート能力でコイツラなんて一撃だぜ!」

 

 そう威勢よく言い切ってる割に、冷や汗が出まくっているスバル。だが、一応は立ち向かうつもりらしく、まっすぐと相手を見つめている。

 対するは、追い剥ぎ三人組。

 

「へへっ、テメェやめときな 冷や汗ダラダラじゃねーか」

 

「嬢ちゃんもおとなしく金目のもん置いてきゃ何もしねーから安心しな」

 

「ま、おとなしくしてれば……だけどな」

 

 そう言って、イヒヒヒといかにも小物悪役らしい笑い方をしている三人組を見て梨花は内心嘆息する。

 

(やっぱり中世みたいな見た目だけあって、この世界は治安があまり良くないのね……あんなふうにスバルを焚き付けてみたけど、三人組相手に引きこもりが勝てるわけないし、逃げるしかないわね)

 

「スバ……」

 

 『逃げる』という懸命な選択肢を梨花が提示しようとしたとき、それを遮るようにスバルが喋りだす。

 

「おっと、調子づいてられんのも今のうちだぜ! 言っとくが、俺みたいなタイプはこうやって路地裏でチンピラに絡まれたパターンの妄想も日常茶飯事なんだよ! バッタバッタなぎ倒して、明日の俺の糧にしてやんよ、経験値どもめ!」

 

「なに言ってんのかわかんねえけど、俺らを馬鹿にしてんのはわかった。ぶち殺す」

 

「そりゃ……こっちのセリフだ!」

 

 そう言い切って、殴りかかり行ってしまうスバル。 

 そう、今のスバルは完全に調子に乗っていた。

 梨花が居なくても、この道は通るのだが、持っている自信が違った。

 突然の異世界転生→路地裏で同じ境遇の属性山盛り美少女と遭遇→明らかに最初のザコ敵の小悪党三人組登場。

 これで完全に自分が物語の主人公であるかのような気分になってしまったスバルは未だに自分にチート能力が眠っていると信じて疑っていなかったのだ。

 

 しまった。これでは逃げられない、どころか相手を完全に怒らせてしまった。もはや命の心配をする段階だろう。梨花はあまりの展開に絶望しかけながら、必死で頭を回す。

 

「スバル! ダメなのです! 謝るのです!」

 

「大丈夫だ! 梨花ちゃん! 見てみろ!」

 

 そう言うと、スバルは後ろの男の側頭部に蹴りを入れて、壁に叩きつけた。

 見れば、一人目の男は地面に倒れているではないか。

 

 これはもしかして本当にチート能力を与えられたのかもしれない。なんと引きこもりが二人のチンピラを倒してしまった。

 

(これはいける!)

 

(もしかして、意外にスバルって強いの?)

 

 二人がそう思った時、最後の男の手が光って見えた。

 その男はナイフを隠し持っていた。

 それを見た瞬間、スバルは一気に体を屈めて……

 

「本当にすみませんでした! 全面的にオレが悪かったです! 許してください命だけは!」

 

 土下座した。

 チート能力があろうと無かろうと、ナイフは流石に今の調子に乗っているスバルでも怖かった。

 更に追い打ちをかけるように、倒したはずの二人が立ち上がる。

 残念。どうやらチート能力なんてものも無いらしい。

 

 絶賛困惑中&ズッコケ中だった梨花は一気に気を引き締める。

 

(どうしよう! どうしよう! どうしよう! ナイフ持ってる相手に私が参戦したところでどうにかなるはずないし………。ああもう! この役立たず! ちょっと見直しかけた私がバカだったわ! いやバカはコイツよ! どうするのこれ! 新しく来た世界でも死ぬなんて私ごめんよ!)

 

 だが、この状況に変化が訪れる。

 

「ちょっとどけどけどけ! そこの奴ら、ホントに邪魔!」

 

 切羽詰まった声を上げて、誰かが路地裏に駆け込んできた。

 セミロングの金髪で、意志の強そうな瞳に、いたずらっぽく覗く八重歯。

 かなり気の強そうな少女だ。

 

(おねがい! 私を助けて!)

 

 そうその少女に届くわけの無い念を視線で送る。

 もしかしたらこの状況から助けてくれるかもしれない。藁にもすがる気持ちだったが……

 

「なんかスゴイ現場だけど、ゴメンな! アタシ忙しいんだ! 強く生きてくれ!」

 

 そう言って、走り去ってしまった。

 何ということだ。最後の希望まで打ち砕かれてしまった。

 もう終わりか、そう思いかけた時。

 

「――そこまでよ、悪党!」

 

 その少女は現れた。

 

 




スバルの喋り方難しすぎる!
スバルってこんな喋り方だっけ? 
マジで分からん

スバルの持ってる品が2012年なのはガラケー持ってるし原作それくらいから始まってるし、多分時代背景そこかなあって予想で書いてます
とりあえず大切なのは具体的な年代ではなく未来という事実だけなので温かい目で許してください!
もし時代が明確に決められてるならコメントとかで教えてくれるとありがたいです(露骨なコメ稼ぎ)
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