梨:ゼロから二人で異世界生活を始める頃に   作:とある圭梨復権派

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既存のシーンはどんどん飛ばしてきます。
テンポが良いを通り越して雑になって無いといいのですが……


死戻し編 其の参 「少女」

 

「覚えてろよ、クソガキ。次にこのあたりをうろつく時はせいぜい気をつけろ」

 

 そう捨て台詞を残し、口惜しげに舌打ちをして去っていく小物三人組。

 それを静かに見守る銀髪の美しい少女と、その使い魔であるという手乗りサイズの猫。

 この一人と一匹が土壇場で来てくれなかったら、今頃自分はどうなってしまっていたのだろうか。そう考えるとスバルは冷や汗が止まらなかった。

   

 先程、自分たちを見捨てて逃げた金髪の気の強そうな少女を追ってきたらしい彼女は、『少女は既に行ってしまった』という情報を得ても、「それでも見過ごせる状況ではない」と助けてくれたのだ。

 

 実際に例の三人組と対峙してるときは『魔法って案外がっかりなリアル感あるんだな』なんてくだらない事を考えていたスバルだったが、助かって安心した今になって考えると、かなりの綱渡りをしていたのではないか、という冷静な考えを取り戻した。

 

「動かないで――」

 

 とにかくお礼の言葉を言わなくては。そう痛みを忘れて体を起こそうとしていたスバルに件の少女は冷たい声でなげかけた。

 

「……あなた、私から徽章を盗んだ相手に心当たりがあるでしょ?」

 

 と、続けてドヤ顔でスバルに投げる少女。

 しかし……

 

「期待されてるとこ悪いけど、全然知らない」

 

「嘘っ!?」

 

 

 当然のようにスバルがこのような返答をすると、そのドヤ顔は崩れ、慌てふためき始めてしまった。

 これが彼女の素の表情なのだろう。

 もっとこんな感じの表情見たいな、という悪戯心なのか、追い打ちをかけるように自身の潔白を証明するための言葉を続ける。  

 

「イヤ、嘘じゃねーよ なぁ梨花ちゃ……?」

 

 先程まで一緒にいた属性てんこ盛り同郷少女に同意してもらおうと、辺りを見回し、違和感に気付く。

 いない。古手梨花と名乗ったあの少女が裏路地のどこにもいないのだ。

 いつの間に居なくなった?

 どこへ行ったんだ?

 今度はスバルが慌てふためく番だった。

 

「……? あの娘なら、私が来た途端にすぐあっちの方に逃げていったわよ?」

 

「……マジで?」

 

「大マジよ」  

 

 とりあえず梨花の無事が確認できたので一安心はついた。だが、こんな治安の悪い世界なのだ。あんな小さな女の子が一人でフラフラするのはかなり心配だ。  

 自身の潔白を証明して、この娘にお礼を言って探さなくては、そう思い軽口を叩きながら立ち上がる。

 

「……大マジって今日日聞かねぇな」

 

 無理して立ち上がったために、先程まで寝ていた地面にセカンドキスを捧げる羽目になり、意識を手放すことになるのはまた別の話。

 

 ともかく、これが二人の出会いであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 一方、梨花はというと、あてもなくただ来た道を歩いて戻っている最中であった。

 あの銀髪少女が現れたとき、追い剥ぎ三人組(+アホ一人(スバル))がまるで時間が止まったかのように急停止して、その少女へと視線を集めていた。 

 その隙をついて、急いで走って逃げてきたわけだが、ここに来て途方に暮れてしまっていた。

 

 ナイフを持った三人組の男相手に、幼さすら感じる少女一人が助っ人に参戦したところで勝てるわけが無いだろう、という常識的かつ冷静な判断で即座に逃げるという選択を決行した梨花であるが、その選択を若干後悔し始めていた

 

(流石に、人が見てる前で殺されたりはしてないと思うけど……大丈夫よね?)  

 

 こんな行くあてもない上に土地勘0の世界で、今の小さな自分が歩き回るのはハッキリ言って自殺行為に近い。

 そういう意味でもあの少年は必要だった。羽入が『カギ』と断言するほどだ。彼についていけば、それなりの答えは得られた可能性が高い。

 

 何より、助けに来てくれた少女と結果的に役に立たなかったとはいえ自分のために三人組に立ち向かってくれた少年を見捨てて、もっと悪く言えばだしにして逃げてきたのは流石の梨花でも良心が傷んだ。

 

(だって仕方ないじゃない! もう死ぬのはイヤなのよ! しかもこんなワケも分からないままに追い剥ぎごときに殺されて終わりなんて絶対にごめんよ!)

 

 とにかく、行くあては無いが、誰でも良いから助けを呼ぼう。あの二人に死んでもらっては困る。もしそうなってしまっては、夢見が悪いなんてもんじゃないだろう。

 

 そうこう歩くうちに、人を発見する。燃え上がる炎のように赤い髪に理知的な印象を受ける蒼い瞳。そして異常なまでに整った顔立ちの青年だった。

 

「僕に用があるみたいだけど、どうしたんだい?」

 

 駆寄ろうと一歩目を踏み出そうとした時、そんな自分に気づいたのか話しかけてくる青年。

 

「助けてほしいのです!」

  

 青年はその言葉を聞くやいなや真剣な面持ちに変わる。

 大丈夫だ。この人は信用できそうだ。

 そう思い、そのまま事情を話す。

 

「あっちの路地裏で三人組の追い剥ぎに襲われて、なんとかボクは逃げてこれたのですが、まだお友達が二人残っているのです……」

 

「分かった! 君は一緒に来て僕を案内してくれ!」 

 

 と言うや否や梨花が指差した方に青年は駆け出し始めた。

 一人で向かうところを見るに相当の実力者らしい。

 しかもかなりのスピードだ。

 このままでは置いてかれてしまう。

 だが、おかげで二人が取り返しのつかないことになる前に間に合う可能性が出てきた。

 

「分かりましたです!」

 

 返事をし、すぐに梨花も青年の後を追いかけるのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「誰もいない……?」

 

 急いで件の路地裏に駆けつけた二人であったが、既にそこはもぬけの殻であった。

 

 いったい、あの二人はどこへ行ってしまったというのか。

 もしかしてあの追い剥ぎ達に連れ去られた?

 イヤ、でも流石にそんな事をして、この路地裏から出たら目立たないはずがない。不可能なはずだ。そんな事は。

 ならば、あの状況から逃げ切ることが出来たのだろうか?  

 もしかしたらあの助っ人に来た少女がとんでもない武道の達人で瞬く間にあの三人組を倒してしまったのかもしれない。

 だが、とてもそんなふうには見えなかった。では何故居ないのだろう。どこへ行ってしまったんだろうか。

 

「魔法を使った戦闘の跡がある……」

 

「魔法……?」

 

 そんなものがこの世界にはあるというのか。

 イヤ、あんな亜人がいる世界だ。あってもおかしくないのに失念していたのはこちらの方だ。 

 では、あの二人はその魔法で連れ去られてしまったのか?

  

 梨花が真っ青な顔をしているのに気づいて、赤毛の青年―ラインハルトは慰めの意味も込めて提案する。

 

「とにかく、これから僕は君のお友達の二人を探そうと思う。特徴を聞いてもいいかな?」

 

「みぃ……」  

 

 梨花は目の前の青年を値踏みする。少女が助けを求めていざ来てみたら誰も居ない。悪戯だと思われても仕方ないようなシチュエーションだ。

 にも関わらず、目の前の青年はとても真剣に話を聞いてくれている。

 イヤ、先程魔法の戦闘の跡、と言っていた。

 つまり、何かしらのトラブルが起きた事は把握できたという事なのだろうか。

 

 とにかく、ここはこの青年の言葉に甘えた方が良いだろう。  

 あの二人の無事が何よりも心配だ。  

 

「一人は黒髪でジャージ、いえ、とても変わった服装をしている男の子なのです……もう一人は長い銀髪で白いローブを着ている女の子なのですよ」

 

「わかった。 僕はこれからその二人を探して回るけど、君はどうする?」  

 

「ボクも自分で二人を探してみますのです」 

 

「一人で大丈夫かい?」 

 

「大丈夫なのですよ」

 

「分かった。君がそう言うならそうしよう。 ただ困った事があったらすぐに大きな声で僕を呼んでくれ、すぐに駆けつけてみせる」

 

「ありがとうなのです。でもまだ名前も知らないのですよ」

 

「すまない。そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はラインハルト・ヴァン・アストレア。騎士をやっている者だ」

 

「自己紹介ありがとうなのですよ☆ ボクは古手梨花。巫女さんをやっているですよ。にぱー☆」

 

 お決まりの猫かぶりスマイルをラインハルトに見せる梨花。

 大抵の男はこのスマイルを見せるだけで、ドキマギするか圧倒的癒やし効果でニヤニヤするかなのだが、彼は全く動じる様子がない。

 

 そして、そのまま別れの挨拶をして去っていってしまった。

 きっと本当にあの二人を探しに行ってくれているのだろう。何故だが分からないが、そんな風に彼は無条件で信頼できてしまう。

 もしかしたら彼の放っている好青年オーラのせいかもしれない。 

 

(私もはやくスバルを見つけないとね)

 

 梨花も早速歩み出す。

 そもそもあの時逃げたりしなければ、こんな手間をかけたり、心配したりする必要もなかった。

 本格的にあの時の行動を後悔しながら、梨花は聞き取り調査を開始することにした。

 幸い、あの銀髪にこの世界では浮くだろうスバルの組み合わせだ。意外とすぐに見つかるかもしれない。

 

 そういえば、ラインハルトは『大きな声で呼べば来る』なんて言っていたが、どうやって来るんだろうか?

 そもそも大きな声で呼んだところで聞こえるはずもないと思うが。

 もしかしたらそれが魔法の力なのかもしれない。

 だとしたら案外あっという間に二人とも見つかるだろうな、なんて考える余裕も出てきた。

 

 そうこう聞き込みを続けるうちに、どうやら二人が貧民街なる場所に向かっているらしい、という情報を得た梨花はルンルン気分で向かう。

 

(私にかかればこんなものよ! やっぱり、私のこの『にぱー☆』やら『なのです』やらは男どもに効くわね)   

 

 情報収集がかなり上手く行って調子に乗り始めた梨花。

 実は羽入に「梨花はコミュ障さんなのですよ」なんて言われた過去がある彼女にとっては汚名返上の決定的証拠を得た気分だった。

 

 このままの調子でいけば、案外簡単に元の世界に帰る方法とやらも見つかるかもしれないわね、なんて希望を見出しながら彼女は、件の貧民街に足を入れる。

 

 とっくに日はおちてしまっていて、辺りは真っ暗だ。

 街灯の少ない田舎の雛見沢で育ったから夜はそこまで怖くないが、小さな自分が恐らくこの世界でもかなり治安の悪い方である夜の貧民街に入るという事実には不安を覚えなくもない。

 

 だが、きっと大丈夫だ。

 私は一人でここまでたどり着くことができた。  

 今までは惨劇を抜け出すときだって圭一やみんなにおんぶに抱っこだった。  

 

 でも今回は違った。

 きっと私は成長したのだ。一人で戦う力を得ることができたのだ。

 やはり雛見沢を離れて良かったのかもしれない。私はまた一皮むけて大人の階段を登った。

 

 そんな達成感を覚えながら、スバル達を探す。

 

 そうだ、きっと大丈夫。 

 全部うまくいく。

 

 そう自分に言い聞かせながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、彼女はまだ知らない。

 

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 彼女はまだ知らない。




 

やばい!ラインハルトが難しい!
喋り方がわからん!能力の高さがどこまでなのかわからん!

助けて!
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