「G・H・H、G・H・H。こちらは獄楽島泊地放送局です」
「南西諸島海域を航行中の船舶及び艦娘、聴取範囲でたまたまこの放送をひろった人や妖精さん、後、獄楽島泊地所属のみんな! こんばんは。本放送局は、本日1900より2000までの一時間、娯楽厚生及び広報の一環として、獄楽島泊地での出来事や日々の活動をお伝えし、またリスナーの皆さんから歌曲リクエストや誰かへの伝言等々を広く受け付けます。本日のパーソナリティは陽炎型ネームシップ陽炎とっ」
「陽炎型二番艦、不知火です」
「よろしくね!」
「では早速ですが最初のナンバーです。初めての島外からのリクエストです。ラヂオネーム【暁ちゃんかわいいやったー】さんから、『暁に祈る』」
―歌曲放送中 『暁に祈る』
―歌曲終了(BGM『母港』が流れ始める)
「改めましてこんばんは。本番組は日々の艦隊勤務や基地業務に追われている艦娘や妖精さん達、危険な南西諸島海域を行く船員さんに、一時の癒しと笑い、愚痴や怒りの吐き場所を! ということで始まった小規模軍用娯楽放送です」
「最初にですが、気になっている方がいるかもしれませんので、不知火からお伝えしておきます。先週の救援ですが、ゼロ偵と瑞雲隊が本格的な被害が出る前に到着し、照明弾等で敵潜水艦をけん制。本泊地防備第二駆逐隊が到達後、船団護衛隊と共に周囲一帯を索敵掃海しました。その後、船団は那覇への退避に成功しました」
―拍手喝さいのSE
「ですが、最初に雷撃を受けた船で死傷者が出ています。この場を借りて、亡くなられた方と遺された方々に哀悼を捧げますと共に、負傷された方々の一日でも早い回復をお祈りいたします」
―十秒ほどの間
「では、本日の放送を始めましょうって、どうしたの不知火、いきなりそわそわして」
「陽炎と違ってあまり話が得意という訳でもありませんし、こうしてじっとして話をするのは性にあいません。不知火としては秋雲の方が向いている気がします」
「いやいや、そんなんじゃダメよ。そもそもの話ね、秘書艦になると、司令の代わりに打ち合わせしたり傍に控えることもあるんだから」
「そうなのですか? まだ選ばれたことがないもので……」
「あれ、そうだっけ? しれぇ、不知火との付き合いも長いのに、それはな……えっ? 選ぼうとする時に限って出撃してもらう必要があって無理だった?」
―フフッ(ひえきったふくみわらい
「あ、あー、不知火が人様にお見せできない顔をしてるから、うん、とりあえずは今週届いたお便りに行きましょう! まずは、【やまない雨はない】さんから。『いきなり台本のセリフを読んでほしい、録音させてほしいなんて言ってきたのか不思議だったけど、まさかこんなラヂオ放送に使うなんて思いつきもしなかったよ。まったくもう、ヒミツヒミツ楽しみにしておけって、いくらなんでも前もって教えてくれもイイじゃないか。そしたらもっとカワイイ声で言ったのにさ』とのことですが……、いやいや、なんのことを言っているのか、さっぱりわかりませんねぇ」
「陽炎が悪い顔をしています」
「あ、こーら、不知火ぃ、そういったことは言わないの。はい、次のお便りは、ラヂオネーム【九死に一生っす】さんから『本当ならそっちに直接出向きたいっすけど、余裕がないのでこの便りを出させてもらうっす! 先週の、この前の救援、本当に助かったっす! もう不安でいっぱいでいっぱいで、もうダメかと思った時にゼロ偵と瑞雲が飛んできてくれて、本当に嬉しかったっす! 不知火さんに雪風さん、秋雲さんも、助けに来てくれてありがとうっす! この放送、時間が合う限り、必ず聞くようにするっすから、これからも頑張ってくださいっす!』って、不知火、口元がにやけてるわよ」
「そういうのは言わないのでは?」
「それはそれ、これはこれ」
「そうですか。……ですが、嬉しいものですね」
―これでまた頑張れるよ(ろくおん
「では次は不知火が……、ラヂオネーム【絵が描きたーい描かせろー】さんから。『ぶらっくはんたーい! 司令が苦労してることは知ってるけどさ、できればもっと余裕のあるシフトにしてよぅ!』とのことです」
―この糞提督!(ろくおん
「おおっと、司令がばとーを頂きました! って、ああ、ガラスの向こうでガチへこみしてる!?」
「司令ばかりが悪いという訳ではないとは思いますが……、手が足りていないのは事実ですし、難しいものですね」
「ま、まぁ、こればかりは、気長に戦力を増強していくしかないんじゃないかなー。【絵が描きたーい描かせろー】もわかってるみたいだし、ここはもう少し耐えるところかな。さて次のお便りはーっと、ラヂオネーム【九州南部のモリサキ】さんから『獄楽島泊地って聞いたことがないんですけど、どこにあるんですか?』」
「不知火がお答えします。北緯22度東経122度の海域にある獄楽島に設置されています。大本営による位置づけは、丙種拠点334、南西諸島及び航路防衛の為の前進観測基地です」
「島の北東に南獄岳っていう山があるのと、南から西にかけて広がる喜楽浜が特徴的かな」
「喜楽浜は環礁で囲まれており、水上機の発着に向いています」
「そうそう、環礁内は波が穏やかだし、砂浜も広くてけっこう綺麗なのよねぇ」
―いい感じいい感じ♪(ろくおん
「では次ー、ラヂオネーム【いい情報ありますかぁ? 気になりますねぇ】さんから、『ある情報筋から獄楽島泊地の提督さんが変わった経歴の持ち主だということを聞いたのですが本当なんですか? 一言でもいいのでお願いします』って、うーん、これって言っても? ……触りだけならいい? あ、そうなんだ。……こほん。うちの司令は他の提督と違って変わった経歴であることは事実です。具体的には、陸軍での従軍を経て、私たちの司令となりました」
「ですが、他の提督にはない歴戦の風格と常在戦場の覚悟、窮地にあっても泰然とした胆力があると、不知火は感じています」
「不知火、言い過ぎ言い過ぎ」
「何か落ち度でも?」
「いや、そんな心底不思議そうな顔をされても。え、えーこほん、普段は気のいいお兄さんって感じだけど、やるときはやるのよ、うん!」
以降、話題は提督自慢から日常話に変化していき、時に歌曲を流しながらも、大きなトラブルもなく放送は終了した。
ただその裏では【いい情報ありますかぁ? 気になりますねぇ】名義を始め、結構な数の電信が届いていた。……のだが、それを受け取る者(司令)がすまぬすまぬと呟きながら落ち込んでいたので気づかれることはなく、拾い上げられることはなかった。
泊地の場所は『1-4.南西諸島防衛線』の【 I 】付近を想定。