ダンジョンに蟲使いが現れるのは間違っているだろうか。 作:珊瑚宮出身イマジン
今回はトミーロッド要素が皆無なので小数点つけました。
今後の展開等を考えてどうしても外せないところを入れたので、「トミーロッド要素を見たかったからこのss開いたの!」という人は大変申し訳ありませんがもうしばらくお待ちください…_|\○_
それと、アンケートの方ですが沢山の票をありがとうございました!今回も次を書く前に締め切ろうと思います。
ではどうぞ。
少し前…レグリオとトミーロッドが椿と交渉を、そしてアフテクとベルが座学を行っていた頃のこと……
「はぁーー……やっとダンジョンの修復が終わって、ロキファミリアが遠征に向かったか…にしても、あの爆発跡は一体何だったんだ……」
大きな溜め息と共にそんな愚痴にも似た言葉を吐きながら自身の部屋……所謂ギルド長室にて、手元の報告書を机に置く太っ腹のエルフ……ギルド長のロイマンがいた。
彼は、先日(トミーロッドの興味本位全開で)起きたダンジョンの1階層〜11階層までの爆破事件の後始末や、それによる多数の冒険者のダンジョンへ向かえない問題の解決に当たっていた。ちなみにロキファミリアの遠征はダンジョン破壊の日の翌日を予定していた為、間一髪で問題なく進めることができたという。
だが、破壊跡から人為的なものだということは判明したものの、肝心の犯人と思わしき存在が見つからず結局難航したままダンジョンが修復を終えた、という形になったのだ。
「だからって私を呼び付けるのはやめなさいよ…何よ緊急事態って!急いできた意味ないじゃないの!!」
そんなギルド長の正面にあるソファーに、言動とは裏腹に慎ましく座っているワイシャツと黒ズボンの神の姿があった。神ヴァーリだ。
彼女は、今日はファミリアの仕事がないためベルとアフテクの座学をまるで授業参観する母親の如くゆっくりと眺めていたのだが、そんな時に近くの窓に見覚えのある使い魔と共に一枚の手紙が送られてきたのだ。
それを受け取り読み進めたヴァーリは、読み終えた時には血相を変えて飛び出していったのだ。そしてその結果が今に至る。
「それについては申し訳ありません、神ヴァーリ。
しかし、私としましてもこの件について貴女様にどうしても聞いておかなければならないことがあるのですよ」
「ふーん…?」
そう反応してから、ヴァーリは近くのテーブルに出されていた紅茶を飲む。
その内容に、ヴァーリは少しばかり心当たりがあった。
ダンジョン内での爆発、そして先日レグリオから食事の席で聞いたトミーロッドの奇行……もしかしなくてもそのことだろう。
ヴァーリ個人としては、本人がこの件で特別何も言ってこなかったのも相まって別に隠し通す必要もない。
「もう既に聞いているでしょうけれど、先日のダンジョンで爆発があって暫くしてから、貴女の眷族…それも副団長と新人と思わしき少年、そしてその隣に巨大なワニのような生物を持ち上げていた謎のオカマっぽい者がダンジョンから出てきたという報告がありました。」
「……」
一呼吸置いてから、要件を続けるロイマン。
「───貴女様…神ヴァーリは、この件について何かご存知ですか?」
その言葉を聞き、紅茶を飲む手を止めてゆっくりと一度テーブルに置いてから、ヴァーリは口を開いた。
「──いいえ、何も?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁぁぁぁ……結局あれだけとか、マジであり得ないんだけどぉぉぉぉ……」
ギルド長のロイマンに呼ばれてからそれなりに時間が経った後…現在、神ヴァーリは帰路に着いていた。
あれから、結局ヴァーリはトミーロッドの件を隠すことにしたのだ。何故か。
それは、こんなしょうもないことのためだけに無闇に話を大きくしたくないからだという。
ダンジョンの1階層〜11階層を大規模に破壊して進んで行くという時点でしょうもないもクソもあったものではないのだが、ヴァーリは結局、「誰にも直接的な被害が出ずに済みダンジョンの異常なども(最上層では)起きず、既に修復されているため今は問題ないから良い」という意見を押し通したからだ。
あの後、幸いにもダンジョンが破壊されている間潜れなかった他の冒険者達は片手で数えれるほどだった為、ギルドからのレベルに応じた臨時の支給で事無きを得たという。
少額とはいえどギルドの財布を使うような対処法にロイマンはいい顔をしなかったが、これまでの同じような態度にウンザリしていたヴァーリの「たまには自分で払えや」という圧で仕方なく出したのだ。
「これでお礼…のつもりだけど、トミーロッドくんはきっとそんなこと考えてないんだろうなぁ…」
ふと思った事をそのまま口に出しながら、快晴の空を見上げるヴァーリ。
彼女が今回トミーロッドのことを隠したのは、単純に自身のファミリアにとって不利益になるからというのではない。
そういった程度の不利益ならば、別に問題はない程ヴァーリファミリアは零細ではないのだ。
では何故か。
それはただ単に…
そう。本当に、ただ単に
昨晩作ってくれた、美味しいご飯のヴァーリなりの返礼のようなものだからだ。
あの時の料理はもはや言葉では表現仕切るのが難しい程美味しかったのだ。
それこそ、豊穣の女主人の店長であるミア母さんのそれを遥かに超えるものを。
だが、ヴァーリに限らずこの世界に於ける下界に降りた神というのは、ダンジョンに潜ることは絶対に禁止とされている。
理由は割愛するが、ちゃんとした経緯で決まったことだ。
そのため、ヴァーリはダンジョンでトミーロッドを手助けして礼を尽くす、という手段が取れない。
そこで咄嗟に考えたのが、今回の事でトミーロッドに被害が行き届かぬようにするということだ。
トミーロッドからしたら、ただただ勝手にばら撒かれた火の粉を勝手に払ってくれただけ…という風に思われても何ら不思議ではない事だが、ヴァーリはそれでもいいと思っている。
むしろ、逆に表立って褒められるようなことをほとんどしていないから当然だとさえ。
「さて、早く帰ってベルくんの座学眺めよーっと!」
トットットットッ……
そんな誰にも気付かれないような内心を押し殺し、ヴァーリは帰路に着く。
そして曲がり角を曲がったその時、
ドンッ!
突然、誰かに頭をぶつかられたような衝撃が襲いかかった。
「いったたぁ……あっねぇ君、大丈夫?……ってあれ?貴女もしかして…」
「っててぇ……誰だい!ぼくのバイト帰りを邪魔する奴はぁ!って、あれ?君は…」
ぶつかった衝撃で少し目眩を起こしかけるも、すぐさま目を覚ましてぶつかった相手に声をかける両者。
が、お互いの顔を見合わせたところで、一瞬止まる。
その相手とは……
「いやぁ〜〜〜、まさかこんなところでヴァーリと会うとはねぇ!バイトの早帰りが幸いしたっていうやつかな?」
「やっぱりヘスティアかぁ……とりあえずはお久し振り、になるかな?」
そう。先程ヴァーリがぶつかった相手は、神ヘスティア。
ヴァーリや他の神と同じく天界から下界に降り立った超越存在の神の一柱だ。
そんな二人は現在、近くの喫茶店にてのんびりと寛ぎながら久しぶりの再開を楽しんでいた。
ちなみに代金は全額ヴァーリ持ちである。そう仕組んだのはヘスティアで、気付かれた際にヴァーリは拳骨を放ったが結局支払ったという。
「うんうん!久し振り…って言うには、かなり年月が経ってる気もするけどね」
「あはは……まあそうだね。あの
「あの時は物凄い怖かったんだぞー?初対面のはずなのに、あんなに怖い勢いで迫られたら従うしかないじゃないか…」
「あれはどう考えても貴女が悪いわ。
別に年中無休で働けとは言わないけど、だからって引き籠もるのはもっと良くないもの」
「うぐっ…」
ここでの説教とは、天界にいた頃に遡る。
天界においてのヘスティアは、自身の神殿に引き籠もってはひたすらぐうたら三昧だった。神としての振る舞いの欠片すら見せなかった彼女はそれはもう酷い有り様だったという。
そんな友神を見ていられないと、同郷であり彼女と仲のいい神ヘファイストスと神アストレアがこれを糺そうと行動する。
が、それでも全く変わらろうとすらしない彼女に折れてしまった二人の女神。
そんな時、アストレアが何かを思いついたように行動を起こし、一人の女神を呼んだ。
その女神がヴァーリである。
ヴァーリは、司法の神としてではなく個人的な頼みとしてアストレアにヘスティアのことを頼まれてこれを受諾。
そうして、二柱のそれとは比べ物にならないほどの説教で(一時的にだが)見事神殿から引きずり出したのである。
そうしてそれからも、ヴァーリとヘスティアは所謂ガールズトークのそれに近いような勢いで沢山の話をしていた。
「そろそろ、アストレアにも手紙出さなきゃかしらね…思い出したら心配になってきちゃったわ」
「そうだねぇ…あ、そういえばさ」
「?」
「今のヴァーリってさ、天界にいた頃よりなんだか綺麗になったね」
「え…そう、かな?」
「そうだよ〜!!目の下の隈も消えてるし髪も整ってるし…何よりも、天界にいた頃よりずっと楽しそうだよ」
ヴァーリが個人的にあまり嫌っていない神ということもあり雑談が弾んでいく中、不意にヘスティアがそんなことを言い出す。
だが、ヘスティアの言っていることは事実だ。
天界にいた頃のヴァーリは、現代で言うところのブラック企業にずっと就職し続けていた体崩壊寸前のOLのようなものだったのである。
本人はもはや慣れつつあった為下界に降りる直前に言われるまで気付いていなかったのだが、その目の下には濃い黒の隈ができておりポニーテールで纏めてある髪はボロボロ。
更に服装は表面だけ取り繕っているような感じで内面は目も当てられない。
挙げ句の果てには、終始死んだ魚の様な目付きをしていたのだ。
天界の神々は、下界に降りた者達も含めて大半が娯楽しか求めていない。
その為、何も面白味がなくつまらない神としての書類仕事などは全て放ったらかしにしていた。
その上、自身の暇潰しや興味本位などといった巫山戯た理由で神同士の殺し合いを平気で起こす奴等が多かったのもあり、ヴァーリを始めとしたほんの一部の真面目な神はこれを止めたり神々を抑えるのに奔走。
文字通り一ミリも休む暇がなかったほどである。
そんな生活に嫌気が差したため、ヴァーリは下界に降りることを決意。
そうして降りて行った後に様々な困難があったが、なんだかんだで天界にいた頃よりは落ち着いた生活を送れていた為自然と健康になっていった、ということだ。
「……私、昔は子ども達に気を遣わせちゃったのかな…」
「えっ、君もう眷族がいるのかい!?というかいつの間にファミリアを!?いいなぁぁ〜〜〜羨ましいよぉ……」
「眷族も何も、私ファミリア創設したの10年近く前なんだけど……まあそれはいいや」
少し不思議そうに自身の身体を見遣るヴァーリと、その際に放った言葉に反応して悔しがるヘスティア。
「……ねぇヘスティア、一応聞くけど…」
「ん?なんだい?」
そんなヘスティアの様子を見て何かおかしいと思い始めたヴァーリは、唐突に質問攻めに入った。
「貴女、いつぐらいにこの下界に降りたの?」
「んー…1ヶ月ほど前かな?」
「ふーん…で、さっきぶつかった時はバイトがどーのこーの言ってたよね?バイトを始めたのはいつ?」
「あ、あぁうん…そうだよ。数日前…かな」
「……じゃあ、その下界に降りた日からバイトを始めるまでの間、貴女は何をしていたの…?」
「うげっ……」
ヴァーリの予想通りだったのか、何気なく質問に答えていったヘスティアが明らかに怪し気な反応を見せ始めていた。
そんなヘスティアの様子を見て、ヴァーリは段々と表情を険しくさせていく。
この下界において、神は相手の嘘を見抜くことができる。それは神であれば誰でも例外がないのだ。
そしてそれは、相手が神だろうと関係のないこと。
そんな二柱の周りがどんどん重い空気になっていく中、嘘を付くことができないヘスティアは言い逃れができない事を察したのか正直に話し出す。
「……君の予想通りだよ。ぼくは下界に降りてから数ヶ月の間、ヘファイストスのところで居候してたんだよ。
で、そうしてるとヘファイストスが怒り出して追い出されちゃったんだ。
その後は、ヘファイストスが用意してくれた廃教会地下の隠し部屋に住みながら暮らしている、ということなんだ」
完全に…というわけではないが、概ね予想通りだったためその場で説教をしたくなったヴァーリだったのだが、それよりもそんな自身の脛をかじるような真似を1ヶ月近くもの間されて追い出しても尚最後まで温情をかけるヘファイストスに内心で涙を流さずにはいられなかった。
「……あの、怒ってる、よね…?」
「今の話を聞いて怒らない者なんて、神どころか人にすらいないわ、全く…」
「うぅ……」
だが、それはそれとしてきっかけがどうあれ今現在のヘスティアはこうして懸命に働いていた。その姿勢は評価するべきだろうとヴァーリは考える。
ならば、最低限でも昔のよしみで何かできる事をしてあげよう…と思い至った為、少し考え始めるヴァーリだった。彼女もなんだかんだで優しいのである。
「……あの、ヴァーリ?」
ヴァーリにも説教をされると思い無意識に身構えていたヘスティアだが、その様子が一向にないどころか無言で顎に手を置いて考え事をし始めるヴァーリに声をかける。
そうしていると、ヴァーリが何かを閃いたのか改めてヘスティアの方に向き直りある提案を持ちかけた。
「ねぇヘスティア」
「な、なんだいヴァーリ」
「貴女、さっき眷族が羨ましいとか言ってたわよね?」
「え?あ、あぁうん…そうだね」
「なら、私は貴女の眷族になりそうな子探しと貴女がファミリアを創設した場合のホームを提供しようかしら」
「……へ!?えまってまって!!いいのかい!?破格過ぎると思うんだけど!!」
「まだ話は終わってないわ、代わりの条件があるの」
「…?」
「貴女のファミリアができて私がホームを提供し終えたら、空いた廃教会は私に譲って欲しいの。…どう?」
「あ、あぁ!勿論いいとも!!」
その提案内容に、ヘスティアは快諾した。
この提案内容は、ヘスティアから差し出すべきものがファミリアを創設して新ホームを貰う際にそれまでの住処だった廃教会だけという。
ヘスティア個人としては、廃教会に特別これといった思い入れがないため固執する理由がないのだ。
それどころか、自身の眷族探しに付き合ってくれる上にファミリアを創設したら新ホームを提供してくれるのだ。これ以上の好条件はこれまでの神生どころかこれからの神生でもお目にかかることはないだろう、それ程の破格な提案だったのだ。
だが、それはそれとしてヘスティアはその提案内容に少し気になることがあった。
「…ねぇヴァーリ。その提案はすごく嬉しいんだけどさ、そこまでしてあの廃教会を欲しているのは何か理由があるのかい?」
そう、ヘスティアにはヴァーリがこのような破格の提案をしてでも廃教会を欲しているようにも見えたのだ。
何故なのか、ただそれが純粋に気になったのだ。
「…そうね、まあ色々あるのだけれど…何より
どこか遠くを見ながら、ヴァーリはそう呟いた。
その様子に少し疑問を持ったヘスティアだが、自身にはわからないことだと割り切って席から立ち上がった。
「よし!せっかく魅力的な提案を受けたんだし、ぼくはそろそろ眷属探しの方もうちょっと頑張ってみようかな!」
「あら、もう行くの?」
「当然!思い立ったが吉日、だからね!」
「…そうね。フフ、たしかにその通りだわ…頑張りなさい」
「ああ!任せといてくれたまえ!代金ありがとねー!この借りは百倍にして返すぜー!!」
そう言ってヘスティアは駆け足で自身のホームへ戻っていった。
その後ろ姿を見送りつつ、ヴァーリは会計を済ませてから改めて帰路に着く。
「……さて、ヘファイストスとも交渉しとかないとかしらねぇ…」
面倒くさそうにそう呟くヴァーリだったが、不思議と悪い気はしなく、それどころか自然と口角が上がっていたのだとか。
こんな感じですかね…ここまで読んでくださりありがとうございます!
よろしければ感想や評価などありましたらお願いします。
今回でやっとヘスティアを出せました。
前々から感想でも言われていたので出さなきゃとは思ってたんですが、自分がこんなにも一つのことで長々と書く人だとは思ってなかったので予想よりめっちゃ時間がかかってしまいました…これからは必要なさそうだったり同じような事しかしないと思ったらカットしていこうかな…と思います。
今回も軽く補足します。といっても今までと比べてだいぶ裏側のこと書いてるので、不快であればスルー推奨です。
・ギルド長さん
ギルド側の対応、ぶっちゃけ公式でのギルドの動き方どれを見てもこの破壊活動に似た場合のが見つからなかったのでほぼ100%憶測で書きました。ここおかしくね?とかありましたら教えてください!
・ヴァーリのギルドへの対応
冷静に考えたらもうちょっとまともな対応をする筈なのですが、今回は嫌いな相手だけでなく朝早くに呼ばれたのもあって本人は無意識にイライラしている…という設定のもと書いてます。(メメタァ)
・ヴァーリの神関係
ヘスティアは本文内にて、ヘファイストスとは数回話した程度、アストレアとは設定集にもあるようにかなり仲が良いです。
アストレア様に限らずアストレアファミリアの皆は個人的にも大好きなので、いつかそういった話を出せたらなぁ…と思いまする。
・提案
一見大丈夫なの?と(自分も)思ってしまう内容ですが、大丈夫です。
まだ書いてないだけで、それを実現できるだけの用意はあります。
だいぶ後になるかもですがちゃんと書くのでお楽しみにです!
と、こんな感じですかね…
作者は5月中旬終わり頃から2週間程?リアルの方で忙しくなり書く余裕がないと思うので、それまでになるべく多く書けるように頑張っていこうと思います。
次回はダンジョンの話になる…かもです。
ここでメインヒロインのアイズを出したいなぁ…と考えてます。(まだ何も書けてない)
それでは。
この小説において他作品の要素を2つ以上入れてもいいと思いますか?(一つは能力の都合上必須だったので確定しちゃってます。それ以外をプラスしてもいいかということです。仮に入れることになった場合、なんとか辻褄が合うようには努力します。)
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いいよ
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ダメ
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作者のやりたいようにやったら?