七人の花騎士(フラワーナイトガール短編妄想集 番外編) 作:イッチー団長
そして短編妄想集のいつもの雰囲気と大分かけ離れているので、番外編と銘打ちました。
内容は昔好きだった「七人の侍」のオマージュです。ファンの方、ごめんなさい。
「回して貫くっ!」
コンボルブルスの『ラストディスペアー』がさく裂し、大型害虫の身体がバラバラに砕け散った。
ブロッサムヒルとリリィウッドの境界線付近の森林地帯。ここに大型害虫の巣を見つけたという報告があり、その討伐に出向いてきたのだった。
しかし害虫の勢力が報告にあった以上に強い。こちらの戦力では防戦一方のため、ここは一旦撤退するように指示した。
「コンボルブルスさんのおかげで退路が出来た! 皆早く撤退しよう!」
イキシアの号令で皆一斉に下がっていく。魔法が使える花騎士たちを後方に置き、遠隔攻撃で壁を作りながら拠点まで撤退していった。
「団長さん、大丈夫? 怪我とかしてない?」
コンボルブルスが私の身体を触って心配してくる。しかし前線で戦っていた彼女の方が怪我している可能性は高いのではないか。
「私は大丈夫。でも危なかったね、あんなにいっぱい害虫がいるなんて」
確かに報告にあった以上に数が多かった。しかも一個体の強さが想定以上で、極限指定クラスも数体居たようだった。
「ここは人もほとんどいない森の奥地? 害虫の繁殖しやすい条件が整っている?」
ワレモコウが話に入ってくる。
「ご主人、正式に撤退要請が入ったです? 断じて、ここは速やかに引くべき?」
隊も消耗していることだし、ワレモコウの言う通りすぐに撤退しよう。花騎士たちにそう指示をした。
「団長さん、あれっ!」
森から抜ける最中、イキシアが何かを見つけたようだ。見るとそこには害虫に襲われそうな少女の姿があった。
「この距離じゃ間に合わない!」
「大丈夫、私が!」
コンボルブルスが飛び出し、害虫を槍で串刺しにする。
「ふぅ……間に合った。大丈夫だった?」
槍を置き、少女に振り返るコンボルブルス。少女は彼女ににっこりと微笑んだ。
「うん、大丈夫。ありがとうお姉ちゃん」
話を聞くと、彼女はこの近くの村に住んでいる少女らしい。
「この近くに村があるなんて聞いたことないよ」
外の世界と関りがないほどの限界集落なのだろう。いくつかそういう地域があるという話は聞いている。
「取り敢えずこの子を送り届けてあげないと。いいでしょう、団長さん?」
コンボルブルスが上目遣いで尋ねてくる。勿論だと、彼女の頭を撫でて言った。
「帰り道は分かる?」
「うん!」
少女の手を握るコンボルブルス。人見知りの彼女にしては珍しく、頬が緩んでいるようだった。
少女の村へ着く。この村で一番大きな家が彼女の自宅らしい。
「サヤを助けて頂いたようで、心より感謝申し上げます」
家に入ると、白い髭を蓄えた老人が出迎えてくれた。サヤというのは少女の名で、この老人は彼女の曽祖父、そしてこの村の村長だということだ。
「でもここは危ない? いつ害虫に襲われるか分からない?」
「はい……花騎士様の言う通りなのですが、皆この村から離れたがらないのです」
どういうことだろう。
「この土地には豊富な栄養があります。ご覧下さい」
そう言われ、家の裏に案内される。
「この野菜や米を。他の土地ではこうはいきません」
大きくて真っ赤なトマト。青々と実った稲。確かにどれも立派に育っている。
「それだけではありません。この地で育った人間は皆健康に生きていられるのです。私も90を超えていますが、未だに大きな病気もせずにこうして生きております」
村人を見てみると、確かに若者はブロッサムヒル市内の若者よりも一回り身体が大きく、老人たちもしっかりとした足取りで働いている。
「ご主人、この土地には特殊な力があるとモコウは考える? モコウたちが世界花の加護を受けているのと一緒?」
確かにそういった力が働いていてもおかしくはない。
しかし、害虫の危険と隣り合わせで、それでも住み続けたいものだろうか。何も知らないよそ者で失礼かも知れないが、その疑問を村長に尋ねてみた。
「害虫ですか。確かに危険な存在です。毎年何人か死者が出ております」
「それならどうして……?」
「しかし害虫は村の人間を皆殺しにしようとはしません。農作物を荒らすことと、それに抵抗した人間を数人殺すだけです」
飽くまで自分から人間を殺そうとはしないということか。そんな害虫がいるのだろうか……。
「ここ最近は村の人間も抵抗を止め、害虫が作物を奪うのを大人しく見ているだけになりました。あなた達には不思議に思えるかも知れませんが、これが我々なりの生き方なのです」
「でも」
口を挟もうとしたイキシアを手で静止する。この村にはこの村なりの考え方があるのだ。外部の者が口を挟むことではない。
「ご理解、感謝致します。もう遅い時間ですし、今日は家に泊まっていって下さい」
二コリと微笑む老人の顔は、どこか寂しげに見えた。
「コンボルブルスお姉ちゃん!」
夕暮れ時、村の景色を眺めながら二人で話していると、先程の少女、サヤが駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「一緒に遊ぼう? おっ母もお父も忙しそうだし、私一人で暇なの」
「うん、分かった。何しようか?」
にっこりと笑顔になるコンボルブルス。人見知りの彼女もこの少女には心を開いているようだ。
「ねえサヤちゃん、害虫がたまに村に来るの、怖くない?」
「怖いよ。今日襲われた時だって、凄く怖かった。コンボルブルスお姉ちゃんが助けてくれたけど」
「そっか……」
「それにね、おっ母も村の女の人も、もうすぐ害虫に連れて行かれちゃうから……」
「えっ!? ど、どういうこと?」
「本当はね、言っちゃいけないって言われたの。じぃじに」
彼女が語ってくれた内容はこうだ。
年に一回、害虫に生贄として差し出される者がいる。ほとんどは若い女性らしい。サヤの母もその生贄に選ばれ、10日後に害虫の巣に運ばれるということだ。
「そんなこと、村長さんは言ってなかった……」
言えなかったのだろう。そんなことを言ったら一大事になると分かっているから。
「サヤ~!」
「お父!」
若い男性が駆け寄って来る。サヤの父、ということは村長の孫か。事情には詳しいだろうし、少し話を聞いてみることにした。
「サヤが言ってしまいましたか……」
「うん。でもサヤちゃんを責めないで」
「分かっていますよ。この子としても、母親がいなくなるのは辛いでしょう」
男性は優しく微笑みながらサヤの頭を撫でた。
「本当は我々もこんなことはしたくないのです。しかし害虫は穀物だけでは飽き足らず、人も食いたいらしい……」
彼の表情は何と形容すればいいのだろうか。悔しさ、哀しみ、怒り。妻を殺されるのだ、黙っていられないだろう。
「村の若い男手を取られるわけにはいきません。それならばと、ここ最近村では女性の中から生贄を数人選んで差し出すようになったのです。私の母も生贄にされました……」
俯いた彼の肩をポンと叩く。
「私達で力になれるんなら……」
コンボルブルスの言葉を遮る。まだ討伐要請も出されていないのだ。無責任なことは言ってはいけない。
「でも、団長さん! ……団長さん?」
その時私はどんな顔をしていたのだろう。コンボルブルスを遮ったのとは裏腹に、私の中ではある決意が芽生えていた。
翌朝。青々と茂った木々が揺れ、その間から木漏れ日が差している。気持ちの良い朝だ。この村で育てた野菜や米を食べたからか、疲れがすっかり抜けているようだった。
「では、お気をつけて」
ご老人も、お身体に気を付けて。何かあったらすぐ駆けつけます。そう言い残して彼に背を向けた。
「……」
「お姉ちゃん、帰っちゃうの?」
「うん」
「また会える?」
「それは……」
コンボルブルスが私の方をチラっと見る。そして優しく微笑んだ。
「きっと会えるよ」
少女もまた白い歯を見せて笑う。汚れのないその笑顔が、私たちを暖かく包んだ。
「おっ、団長おかえり~。帰ってすぐあたしの所に来るとか、何かお土産でもあるの? 害虫の脚とか?」
訪ねたのは、害虫の捕獲を専門にしている花騎士のコマチソウ。彼女から話を聞きたかったのだ。
「う~ん、それは害虫が人間を利用してるんだろうね。畑と人間を肥えさせて、一番脂がのった時に頂く。そんなことを考えるのは、凄く知能の高い害虫がいる証拠だよ」
確かに、任務時にも極限指定クラスの害虫を何体か見かけた。
「もしかしたらそれ以上。『ヌシ』レベルが居るのかも」
ヌシ。各国に数体しか存在しない最強クラスの害虫か。
「ヌシ……いい響き。本当にいるんならバラしてみたいなぁ~」
流石にそれは出来ないが、間近で見ることなら出来るかも知れないぞ。
「本当? 何で何で?」
その質問には答えずに、無言で扉を開けると、そこにはコンボルブルスの姿があった。
「団長さん、私……サヤちゃん達を助けたい!」
いつになく大きな声でそう主張するコンボルブルス。彼女の意見を聞いてみることにした。
「私が子供の頃、害虫に襲われてソリダゴとトリトニア隊長に助けられたこと、知ってるでしょ?」
こくりと頷く。
「だから私はソリダゴを守るって誓ったの。ううん、それだけじゃない。団長さん、あなたのことや他の花騎士さんたちのことも」
いつもは大人しい彼女がここまで声を張り上げている。誰かのために。それは花騎士としても人間としても、彼女が成長した証でもあった。
「サヤちゃん達だって、害虫を凄く怖がってると思う。それをみすみす見逃すことなんて出来ない。それに、いつかサヤちゃんだって生贄にされちゃうかも知れないんだよ?」
だが、相手は極限級が数体、それどころかヌシクラスの害虫も居るかも知れない。そのレベルの相手に、あと9日では討伐申請も受理されないだろう。もし本当に戦うのならば、無許可での討伐になる。命懸けの戦いだが、勿論報酬は出ない。それでも行くのか。
「うん。それでいい。それでも私は戦う」
彼女の瞳を見る。決意は固いようだ。
「なるほど、そういうことね~。あたしでいいなら力になるよ。戦闘ではそこまで役に立たないかも知れないけど、罠作りとか偵察とか、出来ることはあると思うから」
「ありがとう、コマチソウさん」
「いいって。それに、運が良ければヌシのパーツも貰えるかも知れないしね~!」
それが目的か。しかし貴重な戦力だ。
「それじゃあ団長さん、他の花騎士さんにも声かけてみよう」
コンボルブルスの手を握り、まずはワレモコウに意見を尋ねようと思った。
「……モコウは賛成できない?」
一言目でそう返され、私達は落胆してしまった。
「守ることは攻めることより難しい? 村を守りながら極限級害虫を討伐するなんて、不可能に近い?」
しかし、しょぼんとうな垂れるコンボルブルスを見て、ワレモコウは頬を赤くして続けた。
「でも……友達としては協力してあげたい?」
「ワレモコウさん……」
コンボルブルスは涙目になりながらワレモコウに抱き付いた。
「もしモコウが協力するとしても、断じて問題は山積み? それ程の害虫を相手にするのなら、どう少なく見積もっても、一流の花騎士が7人は必要?」
7人……コマチソウやワレモコウは引き受けてくれたが、報酬も何もない危険な戦いに協力してくれる花騎士がそんなにいるだろうか。
「大丈夫。きっと見つける」
「モコウも何人か声を掛けてみる? 村へ行って作戦を考える時間も含めたら、明後日には出発したい?」
タイムリミットはほとんどない。やれることをやるしかないだろう。
「イキシア?」
「どうしたの、ワレモコウさん?」
ワレモコウが最初に訪ねたのはイキシア。最近は花騎士たちの部隊を束ねてくれている、少しドジだが頼りになるリーダーだ。
「報酬にも出世にも繋がらない戦いがある? もしイキシアが大丈夫なら」
「うん、行くよ」
予想外の二つ返事に、ワレモコウは目を丸くした。
「だって、ワレモコウさんが私を必要としてくれてるってことでしょ? それなら私はいくらでも力を貸すよ」
「ありがとうです、イキシア?」
笑顔を見せ合う二人。同じ戦線を潜り抜けてきた二人には、いつしか強い信頼関係が芽生えていたようだ。
「ごめんね、コンボルブルスちゃん。流石に報酬無しでそんな危険な任務には……」
「そう……だよね。ううん、大丈夫。聞いてくれてありがとう」
「本当にごめんね」
申し訳なさそうに去っていく花騎士。その背中を見つめながら、コンボルブルスはため息を付いた。
(これで10人目……無理なのかな……)
「……ううん。諦めない!」
拳を強く握りしめて自分を鼓舞する。その様子を後ろから見ていた少女がいた。
「コンボルブルスさん、どうかしたんですか?」
「リシアンサスさん……」
「なるほど……生贄ですか。そんなのがあったら、村の人たちは本当にハッピーになることなんて出来ないじゃないですか!」
「リシアンサスさん?」
「やりましょう、コンボルブルスさん! 村の人たちを、私達でハッピーにするんです」
手を握ってくるリシアンサスに若干動揺しながらも、コンボルブルスは優しく微笑んだ。
「うん、ありがとう!」
正直悩んでいた。私が命令してしまうと、上官命令だと判断されてしまうのではないかと。しかしコンボルブルスの顔を見ていたら、どうにか力になりたいと思った。
「団長!」
後ろから突然抱きつかれ驚いてしまう。
振り向くとそこにいたのはポーチュラカだった。
「難しい顔して、何か悩みでもあるの? 私に話して欲しいんだよ」
屈託のない笑顔が私を優しく照らした。
「……団長、私を誰だと思ってるの……?」
村の説明をすると俯いてしまった。さすがに無理だったか。
「皆の笑顔が好きなポーチュラカだよ! 団長やコンボルブルスさん、村の人たちが笑顔になるんなら、私は何だってやるよ!」
彼女の笑顔がパァッと開いた。
しかし、良く私が悩んでいたことに気付いたな。
「団長との付き合いも長いからね~。もう団長の考えてることなら手に取るように分かるよ」
ありがとうと言って頭を撫でると、「わふわふ」と懐いた犬のような声をあげた。
二日後。コンボルブルス、ワレモコウ、イキシア、ポーチュラカ、リシアンサス、コマチソウ。6人の花騎士が揃った。
「7人には足りなかったけれど、このメンバーで出発するです? 断じて、時間が惜しい?」
私が花騎士一人分の働きをすればいいだけだ。問題ない。
「うん。期待してるね、団長さん」
森林地帯に入ると、害虫たちが突然襲い掛かってきた。
「うわぁっ! ここの害虫強いね~」
驚きながらも笑みを浮かべて撃退するコマチソウ。倒した害虫の脚を一本取ってカバンにしまった。
「えへへ……コレクションが増えちゃうな~」
その様子を見て若干顔をしかめるコンボルブルスだった。
「何かどんどん湧いてきてるんだよ……」
「困ったね。足止めされてる場合じゃないんだけど」
その時、どこからか魔法攻撃が飛んできた。その方向を見ると黒髪に長帽子を被った少女が立っていた。
「皆さん、大丈夫ですか」
「クマツヅラさん?」
「ポーチュラカさん!? 凄い偶然ですね……」
ポーチュラカの知り合いか。
「うん。リリィウッドの花騎士のクマツヅラさん。この前知り合って意気投合したんだよ」
名前は聞いたことがあるな。確か根源の世界花の加護を受けた魔法使いだとか。
「そうだ! 団長、クマツヅラさんも誘ってみたらどうかな?」
確かに仲間になってくれれば心強いが、そう簡単に受けてはくれないだろう。
「クマツヅラさん、実は……」
「……分かりました。私も一緒に行きましょう」
しかし危険な任務になるぞ。それも無償の。
「承知しています。それでも私は皆さんの力になりたいんです。それに、他ならぬポーチュラカさんの頼みですし」
「ありがとうクマツヅラさん。心強い味方が見っかったんだよ」
「ぶふっ! 味方と見つかったを掛けたんですね……ふふっ……」
何故それで笑うんだろうか……。
「私も、味方になったことでポーチュラカさん達の見方が変わりましたよ」
「おぉっ! やっぱり私にはダジャレの加護が」
「早く行くです?」
「これで7人……」
何はともあれ、役者は揃ったというべきか。
「花騎士様ー!」
村に入ると早々に、サヤの父が駆けてきた。
「どうして私達が来るのが分かったの?」
「それが、害虫の動きがやけに活発になっていまして……とにかく村長の家へ」
村長の家へ行くと、彼はジトっとした目付きで我々を凝視してきた。
「また会いましたな、団長様、花騎士様」
村に何かあったのか。
「はい。今朝、害虫がこの村を襲いまして。幸い被害者は出ませんでしたが、生贄を捧げる日が近いと、襲われることは無かったのですが……」
村長はそう言いながら自分の孫を見る。おそらく我々に生贄のことを言ったのがバレたのだろう。
村長、我々は余計なことをしたのだろうか。
「そう言っている者もおります」
「で、でも私達はあなた達を助けに……」
コンボルブルスが反論しようとすると、村長が手をかざしてそれを静止した。
「あなた達の考えは分かっております。その苦労、そして優しさも。ですから、私が村の者を抑えます」
「村長さん……」
「本来、害虫などに屈服してはいけなかった。戦う姿勢を見せねば。しかし私が臆病だったために、何人もの犠牲を出してしまった……」
彼の背中がやたらと大きく頼もしく見えた。
……あなたの苦労も分かるつもりだ。自分の娘や孫を生贄に捧げることに、苦悩しない者はいない。村を守るためだったのだろう。
「……」
彼は何も言わずに家を出て行った。
「皆の者!」
村の中央の物見やぐらに立ち、村人たちに呼びかける村長。我々も後を追いかけた。
「花騎士様と団長様がいらっしゃった。害虫を倒すために」
そう切り出すと、保守的な村人からは非難の声が上がった。「触らぬ神に祟りなし」「誰も頼んじゃいない、勝手なことやりやがって」と。
「皆! 本当にそれでいいのだろうか。害虫に怯え、虐げられ、生殺しにされることが、本当に生きることだろうか!?」
90過ぎの老人とは思えない迫力に、村人どころか我々もたじろいでしまった。
村長は我々の方をチラっと見て、コクリと頷いた。私もコンボルブルスの背中をそっと叩き、何か言うように促した。
「わ、私達はあなた達を必ず助ける。約束します!」
コンボルブルスが普段の彼女からは考えられない程大きな声を出した。
「コンボルブルスお姉ちゃん!」
サヤの姿を見つけ、にっこりと微笑みかける。
その様子に、村人たちの警戒も解けたようだった。
「やるべし!」
村の周りを一周しながら、ワレモコウとコマチソウが相談をしているようだ。
「この地形……北に崖、西には川……害虫ならどう攻めるです?」
「ここに罠置いて、ここは塞いじゃうとかどうかな?」
「それもいいですけど、ここを……」
「それはそっちで……それはここに置いて」
イキシアが村人たちに何か指示している。
「あっ、団長さん。今投石器の設置をしてるの。っていっても簡易のだけどね」
我々だけでは戦力が足りないので、村人の力も借りようということか。
「うん。後で使い方も教えておくね」
「皆さ~ん、読み聞かせ始めますよ」
親が働いて忙しいので、リシアンサスは子供たちが退屈しないように絵本を読み聞かせるようだ。
「これ、リシアンサスお姉ちゃんが描いた本なの?」
「そうですよ。とってもハッピーなお話ですからね。むかしむかし……」
真剣に静かに彼女の語りを聞く子供たちだった。
「えいやっさっさ」
ポーチュラカとクマツヅラは田んぼの稲刈りを手伝っている。
「あっ、団長。ワレモコウさんから田んぼを刈っておけって言われたんだよ」
「こういうことって、あまりやる機会がないので新鮮です」
「嬢ちゃん達が手伝ってくれたおかげで、大分早く終わりそうだよ」
「残ってる稲はいねーかーってね」
「ぶふっ! いね……いねーか……」
先日から思っていたが、クマツヅラは笑いのツボがおかしいのではないか……。
「嬢ちゃんの洒落は面白れぇなぁ……」
村人たちもがっはっはと笑い出す。親睦が深まったので結果オーライと言うべきか。
「槍はこうっ! 皆もやってみて」
コンボルブルスは槍での戦い方を教えているのか。
「うん。何かあった時に自分の身を守れるし、この戦いの後にも役に立つでしょ?」
「コンボルブルスお姉ちゃ~ん」
「サヤちゃん?」
大分好かれているようだな。私が引き継ぐから、一緒に遊んであげてはどうだと伝える。
「……うん。団長さん、お願いね」
サヤに案内された一面の花畑の中、寝っ転がる二人。
「いいところだね、この村」
「うん。これで害虫がいなければね……」
「大丈夫。私達が絶対に倒すから」
そう言い、空をじっと眺める。
「……私がサヤちゃんくらいの時に、害虫に襲われてね」
「そう……なんだ」
コンボルブルスの瞳は遠く、昔のことを見つめ続ける。
「怖かったなぁ……でも友達が助けてくれたの。だから私もその友達を守るために強くなった」
「私も強くなりたい。強くなれば害虫からおっ母やお父、じぃじも守れるし」
その言葉を聞き、コンボルブルスは起き上がってサヤを凝視する。
「……うん、強くなれるよ。でも勘違いしないで。強さって言うのは、戦いの強さだけじゃないの。あなたが家族を守りたいって言った、その心が強いの」
「……良く分からない」
「いつか分かる時が来るよ。あなたも、あなたのお父さんやお母さん、村長さんも皆強いんだよ。きっと私達よりも」
二人の頬に木漏れ日が当たる。優しい日の光を浴び、二人はいつの間にかまどろみの中にいた。
「もうすぐ決戦だね」
「うん……」
イキシアの一言に、息を飲むような緊張感が走る。
「出来たよ、皆!」
そんな緊張を破るように、ポーチュラカとクマツヅラが満面の笑みで部屋に入ってきた。手には大きな布のようなものを持って。
「何です、それ?」
「旗です」
「旗?」
私と他5名が目を丸くすると、二人はバサッとそれを開いて見せた。
「えっと、どういうこと?」
丸印が七つに三角が一つ。そして一番下にはひらがなの「た」だろうか。
「丸は私達花騎士、『た』は田んぼのたの字です」
「それじゃ三角は?」
「団長だよ」
ポーチュラカがそう言うと、皆ふふっと笑い始めた。先程までの緊張が和らいだようだ。やはりポーチュラカを連れてきたのは正解だった。
「この旗の下に戦おう!」
ポーチュラカの瞳が一人一人を捉える。コンボルブルス、ワレモコウ、イキシア、リシアンサス、コマチソウ、そして私を。
皆深く頷いた。
生きるか死ぬか、もうすぐ決戦だ。
一応元ネタ通りに、前後編で完結させられるはず……。
一気に書いたので、細かいツッコミどころはあると思いますが、どうかスルーを……。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
※誤字を修正しました。