そんな思いを妄想で補っています。
妄想の結果ですのであ、駄目だこりゃと思いましたらただちに避難してください。
では、どうぞ。
青い空、白い雲、輝く太陽、どこまでも広がる大海原――――――。
砂浜に腰かける俺の前には美しい景色が広がっている。
これが良い気分の時にお目にかかれたらさぞ心が洗われるだろうが、
今現在、そういうわけにはいかないのだ。
一つ目、ここは一体どこなのか。
手元のタブレット型コンピューターに映された画面を見る。
同じような大きさの島が五つ程点在するエリア、その中の島の一つに俺は今いる。
30分程で一周できる島だ。
どこの海域にあるなんて島なのかまではさっぱりだが。
現地人的な人にも遭遇しなかった。
いや、今は俺がいるから無人じゃないか、はっはっはっ・・・・はぁ。
二つ目、自分の事。
俺は人間で男、だったはず。
それが今どうやら女になっているようだ。
自分でも訳が分からないが性別は間違いなく女だ。
男の時と比べて胸部に明らかな違い、胸、おっぱいの存在を確認した。
大きすぎず小さすぎずといった感じだ。
下半身にはさらに確実な違い、男性器の消失と女性器の出現を目視している。
詳しく見た時にちょっと触って撫でたり擦ったりして不覚にも気持ちよくなって
しまい、自分は何をやっているのかと自己嫌悪になった。
髪の毛も男の時より段違いで長い、尻のところまで髪の毛が伸びているのだ。
鬱陶しいので適当な紐で結んでポニーテールにしている。
切る選択肢もあったが、下手に自分でやるとひどい有様になりそうな気がするのだ。
そしてその髪の色、一般的な日本人の黒ではなく。
青、どちらかと言えば水色と青の中間みたいな色なのだ。
ちなみに瞳の色は緑である。
自分で言うのもなんだが綺麗だ。
エメラルドっぽい。
・・・傍から見れば何人なんだろうか俺は。
自分の今現在の性別もさることながら横に置いている装備に目をやる。
装備というのは、そう、自分が身に着けるものだ。
ちなみに今は全裸ではない。
ちゃんと服は着ている。
下着は黒のスポーツブラとショーツ。
それに青い作業服みたいな上着とズボンを着ている。
黒い靴下と黒い登山靴みたいな靴が足元だ。
だが隣にあるのは思いっきり金属のゴテゴテとした塊。
113と書かれた船の中央部を小さくしたパーツを腰元にくっ付けるようなデザインで船型を中心にゴチャゴチャと四角いやら丸い筒やら色々なパーツがくっ付いている。
・・・艤装(ぎそう)というやつらしい。
今まで艦装(かんそう)っていうのかと思ってた。
この島で目が覚めた時、俺の傍に艦装は置いてあった。
身に着けるのも外すのも悪戦苦闘したがある手伝いもあって装着することが出来た。
・・・実はこの島には俺一人というわけではない。
その時背後から音がした。
「ん?どったん?」
がさごそと後ろの森から出てきた彼女達に声をかける。
それは、手のひらサイズぐらい人間。
いや、妖精である。
色々な衣装を身に着けた妖精達。
何かと彼女たちの世話になっている。
俺が目覚めてからの身の回り、衣食住整を手伝ってくれているのだ。
そんな彼女達は缶詰を持ってきている。
妖精の身長でも動かせるところに取っ手が付いているワゴンに乗せて。
彼女達、見た目に反してパワフルである。
施設内部の備蓄庫から持ってきたのだろう。
缶詰、中身は食べ物、と、なると。
「あ、もう昼か」
うんうん頷く妖精達。
施設の中に机と椅子もあるのだが、薄暗い中で食うより太陽の下で食う方が何日も続く缶詰と保存食祭りを少しはマシにしてくれるという物だ。
俺の分も持ってきてくれたのを感謝して缶切りで蓋を開ける。
「それじゃ、いただきまーす」
皆で手を合わせてご挨拶。
本日のお昼缶詰はたくあん漬と五目飯です。
妖精達がもぐもぐと食べるのを眺めながら、俺は咀嚼しつつ本日までを思い起こしていた。
交通事故――――――恐らく、死亡。
まさか仕事帰りに横断歩道を歩いていたら信号無視のトラックに轢かれておしまいとは。
人生とは何があるか分からない物である。
トラックのライトが眼前でいっそう眩しかった、それが最後の光景。
そこで意識が途絶え、その後は水の中を漂っているような、妙な感覚の場所で目が覚めた。
見渡す限りの青い空間。
体を確認しようとすれば自分が透明になっているのが分かった。
手や足、体の感覚はあるが目で確認は出来ない。
これが死後の世界か、家族に別れも言えずに死ぬなんて。
家族――――考えると悲しくなってきた。
こんな感情を抱えたままこの空間で漂い続けるのか。
見えないが涙が溢れてくる。
そんな時、ふと視界の隅に何かが見えた。
「・・・?」
その何かの方へ近づくとそれは一枚のカードだった。
トランプと同じようなサイズのカードとペンが漂っていた。
カードを手に取り、何も書かれていないのを見て今度は裏を見てみると。
もう一度どこかでやり直してみませんか?
と書いてあった。
・・・やり直せる?
俺はカードに生き返ると書いてみた。
が、生き返るという文字は染み込むように消えてしまった。
ふと気づくと横に今度は紙切れが漂っているのを見つけた。
申し訳ありませんが、生を終えた世界に戻ることはできません
再トライは出来ない――――。
どこか別の道でやり直せというのか。
死ぬってのはその世界から叩き出されるということか。
溜息を吐きつつ俺はふと思いついたことを書いてみることにした。
それはアニメやゲームの世界を現実として生きることは可能か?
俺は生前やりたくても利用者が満員だったせいで入れなかったソーシャルゲーム。
「艦隊これくしょん」の文字を書いてみた。
すると紙切れの文字が更新され、
大丈夫です
の文字が浮かぶ。
その世界の人物になることはできるか?
と書けば、
可能です
と更新。
ならば、
それなりに良い生活がしたい。
具体的には任せる。
と書いてみた。
受領しました
それでは出発します
やり直しは一度だけ
次の人生が貴方の本当に最後の人生です
どうか御武運を
「げ!?」
次が最後だと!?
浮かんだ文字に俺が驚いた瞬間、体が激しく振り回されるように世界が回りだした。
これで艦隊これくしょんの世界へ行くのだろうか。
良い人生を書いたようにどうか良い生活をさせてくれ。
そして―――父さん、母さん、先立つ不孝を許してくれ。
ごめんなさい、今までありがとう。
再び俺の意識は途絶えた。
――――――
――――――――――――マス
――――――――――――――ジョウタイ リョウコウ
ショウメイセツビテントウ
「・・・?」
今度はどれぐらい意識が飛んでいただろうか。
眠りから覚めたようなぼんやり気味の頭に機械音声が響く。
アンゼンソウチヲカイジョシマス
ショクインハフソクノジタイニソナエテクダサイ
手と足の部分で音がしたと思って顔をあげて見ると仰向けに寝ている姿勢の両手両足の金属製と思わしきリングが外れているのが見えた。
アンゼンソウチカイジョシマシタ
トウロクバンゴウDD-113 タカナミガタゴエイカン ヨンバンカン サザナミ
カクセイシマス
「・・・ん?」
安全装置を解除した。
手足の拘束が外れたのを見ると恐らく俺。
たかなみがた?
でぃーでぃーいちいちさん?
ごえいかん?
よんばんかん?
さざなみ?
俺の希望した世界は艦隊これくしょん・・・。
「まさか!?」
俺は跳ね起きると自分の体を触って確かめる。
一糸まとわぬ全裸だが今はそれはいい。
明らかに長すぎる髪、あるわけ無いはずの胸、あるはずなのに無い股間。
「・・・!鏡、鏡!」
横たわっていた台から転がるように降りると近くの上の書類等をひっくり返しながら姿を映せる物を探す。
引き出しを抜いて机の上にぶちまけ、中にあった手鏡を掴んで自分の顔を見た。
「・・・・嘘だろ」
青い髪、緑の瞳、美人とかわいいの中間みたいな顔立ち。
「・・・艦娘になってんのか・・・マジか・・・」
自分が女だったらどんなのかという妄想は昔やったりしたが、鏡に映る顔は妄想を別の方角に飛び越えていた。
舌を出したりいーっと歯を出したりすると鏡の顔もそう動く。
手で触れても問題なく、その通りに触れる。
自分の顔、体で間違いなさそうだ。
「すると・・・」
鏡を探すのに必死だったが、飛び起きた時に視界の隅に入った物。
寝ていた台の横にある金属の集合体。
近寄ってみるとパーツに113と書いてある。
型番なんだろうか。
するとさっきのアナウンスの113番のさざなみさんとは俺の事で間違いが無さそうだ。
ということはこれが俺が艦娘として身に着ける代物ということか。
受け入れたくない現実に頭が痛くなりそうだがそうはいかない。
次は今いる場所のことだ。
改めて見渡すと、俺が寝ていた台。
横の艦装。
台を囲むように置かれた、文字や何かのグラフが映るモニターやらの機材。
散乱する書類(俺がひっくり返した物含む)。
ガラス窓があり除くと奥はまた部屋の様。
そしてやたらと厳重そうな扉。
どういう部屋かというと手術室みたいな感じである。
照明は点いているが部分的に明滅している。
「・・・っふ・・・・はっぶしっ!!」
くしゃみが出る。
この部屋何気に寒いのだ。
こんなとこで全裸でいたら風邪を引いてしまう。
適当に羽織れるような布みたいなのも見当たらないのでこの部屋から出ることにした。
裸足なので床からも冷たさが伝わってくる。
もう少しこの部屋を調べたいが丸裸で震えながらでは集中できない。
厳重な扉の取っ手を捻ってみるとあっさりと開き、少しだけ空いた隙間から外を覗いてみると照明の明滅する薄暗い廊下が続いていた。
正直言って、ものすごく怖い。
○イオ○ザードのステージと言って良いくらいだ。
だが言ってほしくない、こっちは素っ裸である。
今の有様ではゾンビ一匹にでも余裕で殺される自信があるのだ。
まぁしかし、艦これ世界ならゾンビとかはいないだろう。
いるとしたら深海棲艦ぐらいだろうし・・・・。
そうだ深海棲艦がいた。
ゲームでも艦娘と戦う正体不明、目的不明の謎の敵。
艦これ世界なら出会ってしまう可能性があるのだ。
ちらりと艦装を見る。
これで戦えるだろうか。
だが折角の装備も装着の仕方がさっぱり分からない。
そもそも装着したところで戦えるかも分からないのだ。
ならいっそ身軽な状態で危険に出会ったら一目散に逃げるのが上策。
意を決して廊下に出た。
が――――もう帰りたくなった。
何故なら廊下の先の曲がり角の隅で何かがこちらを向いていて見ているのだ。
「・・・・」
俺はすぐさま手術室?に戻り扉を閉める。
また机をひっくり返して何か得物を探し、まともに使えそうな物が何も無いので、
パイプ椅子を掴んで再び廊下へ出た。
まだ何かはそこにいた。
さっきより二、三匹?増えてるような気がするが。
「・・・うぉーっ!!」
椅子を高く持ち上げ威嚇してみると何か達は慌てるようにばたばたと角の向こうに消えた。
鼠か何かかと思ったがどうやらそうでは無いようだ。
シルエットはむしろ人のそれ、小人のような感じに見えた。
・・・起き抜けの所為で幻覚を見ているんだろうか。
もう部屋に戻りたい気で一杯なのだがあのまま居ても仕方が無いので俺は椅子を構えつつ廊下を進んでいった。
「お、開いた・・・」
あれから曲がり角を三回ほど曲がった先で大きめの扉を開けて中に入った。
途中にも部屋がいくつかあったがどれも鍵が入っていて入ることが出来なかったのだ。
程々に広い室内に長机と椅子が並び、机の上には箸立てと薬味が置いてある。
どうやら食堂の様だ。
すると奥の部屋は厨房か。
しかし、明かりは点いているが人気が無い。
ここに来るまでの間にも人っ子一人見かけない。
アナウンスで職員は不測の事態に備えろと言っていたから誰かいるのかと思えば誰にも会わなかった。
無人?
にしては放置された汚れや埃が殆どない。
人が失せた建物はあっという間に劣化するというのを廃墟本で見かけたし。
だが今は食事をする気にはならない。
それより服だからだ。
別の部屋をあたろうと出口に向かった。
その時――――――
「きゃあっ!」
背後で小さな悲鳴と椅子と椅子がぶつかり合う音がした。
「!?」
咄嗟に椅子を振りかぶりながら振り向く。
そこには誰もいない。
だが間違いなく聞こえた。
そこで机の下を覗き込んでみると何かが厨房の方へ足早に駈け込んで行き、その後ろ姿はどうみても小さい人間のようで衣服を身に着けているのも見えた。
そこで俺は艦これの世界で小さい人間について一つ思いついた。
妖精、ゲーム画面でちょこちょこ目に入るキャラクター。
艦娘を戦いをしたり整備をしたりと様々な面でサポートする存在だ。
逃げ回るのは恐らく俺が原因だろう。
全裸の女がパイプ椅子を持って近寄ってくるのだ。
俺でも間違いなくそんなのを見たら脱兎のごとくである。
パイプ椅子を下して両手をあげる。
「もしもしー、驚かせたのならごめんなさいー
何もしないので良かったら出てきてくれませんかー?」
返事がない。
「もし出てくるのが嫌だったらせめて服のある場所を教えて貰えたらなと・・・
・・・・はっ、はっ、ぶぇっぶしっっ!!」
いかん本格的に冷えてきた。
手でかむわけにもいかず止む無く鼻を吸う。
ティッシュ欲しいです。
ちなみに返事は無い。
警戒されっぱなしのようだ。
止む無し、無理に探しにいくわけにもいかない。
強引にすればさらに警戒されるだけだ。
「あの・・・」
「え」
出て行こうとした時、声がして振り返ると机の上にその声の主がいた。
それも一人ではない。
食堂のあちこちからわやわやと出てくる。
10人近くいそうだ。
「さざなみさん・・・ですか?」
「あー・・・はい、そうみたいです」
「起きられたんですね!おはようございます!」
「「「「「おはようございます!」」」」」
「あ、は、はい、おはようございます」
会話が成立する。
明らかに人間では無いそれと意思疎通が出来る。
驚きのあまりかえって落ち着いている自分だ。
「えーと・・・・出てきて下さってありがとうございます
妖精さん?」
「「「「「はい!妖精です!」」」」」
「ちなみにさっきお逃げになったのはやっぱり、その」
「はい!さざなみさんが錯乱しているのかと思い距離を取って様子を
見ていました!」
「「「「「いました!」」」」」
ですよねー。
全裸とパイプイスは不審者以外の何物でもない。
というかずばっと言ってくれて分かりやすいわ。
「お体に異常はありませんか?
どこか痛いとか、苦しいとか?
あ、お腹減ってたりしませんか!
何でも言ってくださいね!」
「「「「「くださいね!」」」」」
何でも言ってくれと、世話をして貰えるんだろうか。
「えーと、つまり・・・お世話になっていいのかな?」
「「「「「はい!喜んで!」」」」」
正直この自分の置かれている諸々の状況がさっぱりなのが正直なところだ。
聞けたら色々聞いてみよう。
でもとりあえず今は。
「じゃあ・・・服をください・・・・ぶぁっくしっっ!!」
全裸をどうにかしたかった。
妖精さんは艦娘のお世話を率先してしてやってくれているようなイメージです。
今後は上状況把握と島に誰か来る予定です。
とりあえず誰であれまずは迎撃しますが。
現在一身上の都合でなかなか執筆が進みませんがなんとか更新していきたいと思います。
ありがとうございました!
艦これやりたいなぁ(白目)