大好きだから
かすみんにとってつむぎ先輩は恩人で、尊敬できる先輩で、何より……大好きな人だ。
先輩と最初に出会ったのは、スクールアイドル同好会がバラバラになっていた時。つむぎ先輩が歩夢先輩とスクールアイドルの話をしていたところに、かすみんが話しかけたのが始まりだった。
初対面のつむぎ先輩の印象は、男の子なのに髪を三つ編みにしていて、他の男子と比べて幼くて、一目でかわいいと認識した。話してみると優しくて、かすみんの為にできることをすると言ってくれたのが、すごく嬉しくて。出会ってすぐにつむぎ先輩のことが大好きになった。
先輩は、かすみんの他愛ない話やイタズラに反応を示してくれて、追いかけっこしたり、たまにお仕置きされたりするけど、それがとにかく心地よくて楽しかった。かすみんが本気で嫌がることは絶対にしないし、対等に接してくれる。そんなつむぎ先輩が、色んなことを抱えていたなんて思わなかった。
ある時、つむぎ先輩が本心から笑っていないことに気付いた。楽しそうに振る舞ってはいるけど、どこか寂しそうな、怖がっているような、そんな雰囲気を感じた。でも、先輩はいつも通りだし、知らないフリをした。……それが間違いだった。もっと早く気付いて、もっと早く相談に乗っていれば……つむぎ先輩が辛い思いをしないで済んだのに。
ある日、つむぎ先輩の姉が学園にやってきた。先輩に似て綺麗な顔立ちで、正直すごく可愛かった。あの人がきっかけで、つむぎ先輩は自分のことをようやく話してくれた。その内容は、同好会の皆さん全員が驚きを隠せないほどの辛く、苦しい過去だった。しず子は必死に涙を堪えながら先輩の話を聞いていた。だけどかすみんは……堪えられなかった。
怒った勢いでつむぎ先輩に『大嫌い』とも言った。冷静になって考えると、私は取り返しのつかない言葉をぶつけてしまったんだと自覚した。これじゃあ、つむぎ先輩のお姉さんと同じ。きっと傷付けた。そう思うと涙が止まらなくて、あの日からずっと、家に帰っては泣いて、泣いて。涙が枯れるまで泣き続けた。
抱え込まないでほしい。もっと自分のことを話してほしい。つむぎ先輩の全部を知りたい。そんなことをしず子に言ったら、優しく励ましてくれた。『つむぎさんはかすみさんを嫌わない。ちゃんと話せば分かり合える』って。それで決心がついた。絶対、つむぎ先輩に本音を言う。本当は嫌いじゃないって。どんな先輩でも受け入れるから、戻ってきてほしいって。私、まだつむぎ先輩と仲良くなりきれてない。話したいことも話せてない。人想いなつむぎ先輩を、優しすぎるつむぎ先輩を、嫌いになんてなれる訳ない。
会いたい。つむぎ先輩に、会いたい。夢でもいいから……会いたい。会って話したい。たくさん……たくさん話したい。可愛いって言ってくれるまで、つむぎ先輩が心から笑えるようになるまで、私は絶対に諦めない。諦めたくない。だって私は……中須かすみは、つむぎ先輩が『大好き』だから。
ただ、あなたが恋しくて