ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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 (メガトン構文)が入ってないことを誤字報告で指摘されて草生え散らかしたので初投稿です。

 1日1回しか投稿できないなどというナイーブな考えは捨てろ(ラーメンハゲ)


日常回①

 カラードがMTDを追放される、およそ2日前。

 

 第1層「始まりの街」の広場は熱気に包まれていた。

 

 数百人はいるのではないかという観衆のお目当ては、広場の中心で行われているデュエル――すなわち、対人戦。

 

「わああ、待ってください、降参! 降参します!!」

 

 がしゃん、という重たい音と共に尻もちをついたリーテンが、情けない声で降参を宣言。直後、デュエルの決着ウインドウが表示される。

 

 HPが4割ほど減少しているリーテンに比べ、ジマはほとんど無傷を保っていた。両手槍のリーチ差と軽金属防具の機動力を活かし、ひたすらヒット&アウェイを繰り返した結果である。

 

 歓声と共に「女の子相手に恥ずかしくないのか」などとヤジが飛ぶが、ジマはどこ吹く風といった顔だ。

 

「ジマ君の勝ちね。アンタ本っ当に対人強いわねえ」

「へへ、カラードさんの直弟子っすからね、俺は」

 

 近場の目立つ位置にある建物の壁には、オブジェクト化された模造紙が張り出されている。

 

 タイトルは、「第3回MTDデュエル大会」。戦闘要員の志願者や外部の希望者64人を動員した、週に一度の大イベントだ。MTDの名を冠してはいるが、参加は自由である。むしろ腕利きを見つけ、勧誘することも開催目的の一つとされている。

 

 アイテムその他なんでもアリで、「初撃決着モード」による1vs1の対人戦を行うトーナメント大会。今回の優勝者には、発案者であるカラードの私物から「回復結晶」が与えられることになっている。

 

 カラード本人も出場しているので、皆打倒カラードに燃えているのだ。

 

 しかも優勝賞品は、使い捨てながら「その場でHPと状態異常を全快させる」という、現段階で片手で数えられる程度しか見つかっていない超レアアイテム。

 

 ボス戦でも計り知れない有効性のあるそれを手に入れ、あるいは転売すべく、今日の大会は特に盛り上がっていたのだった。

 

 「あたしはケンカ嫌いだから」と参加を見送って審判を務めているユウママの指示により、模造紙の「ジマ」の名前から伸びる赤線が延長される。

 

 大会も佳境に入る。次の準決勝ともなるとMTD内外の腕利きばかりが残っており、美味しい所だけ見ようという観客によって余計に人が増え始めていた。

 

「さぁさぁ、お次は準決勝第一試合、いきなり注目のカード!! 『黒ずくめ(ブラッキー)』キリト対、我らがカラードさんだぁ!!」

 

 「顔を売るにはこういう場での活動も重要だ」とカラードに丸め込まれ、何故だか司会進行をやらされているリズベットがヤケクソ気味に叫ぶ。人気取りとして効果は抜群だったようで、観衆は大盛り上がりだ。

 

「すまんな。ここまで盛り上がるとは」

「別に気にしてないぞ」

 

 向かい合うカラードと、キリト。カラードはいつものポーカーフェイス、キリトは余裕の笑みを浮かべている。

 

 《クレイモア》と《アニール・ブレード+8》が向かい合う。どちらも、3層の基準では業物だ。方や強化試行回数ゼロと引き換えにイレギュラー的な高スペックを誇る両手剣、方や強化に一度の失敗もない完全成功品の片手剣。

 

「あんたのプレイヤースキル、一度感じてみたかったんだ」

 

 「男の子って何でああいうの好きなの?」と呆れ顔で観戦するアスナを置いて飛び入り参加したキリトは、お目当ての剣士と立ち合えて満足そうだ。

 

「光栄なことだ」

 

 カラードの返答と同時に、カウントがゼロになった。デュエル開始を知らせる電子音と共に、キリトの身体が掻き消える。単に素早く駆け出しただけだが、少なくとも観衆にはそう見えた。

 

 出の早さで知られる下段突進技、《レイジスパイク》。

 

 一瞬の後には、キリトの剣がカラードの目前まで迫り――

 

 最小限の動きでそれを避けたカラードの蹴り上げが、その鳩尾に直撃する。

 

「がっ!?」

 

 両手剣スキルにばかり気を取られていたキリトは、その打撃をもろに受けた。

 

 ソードスキルはキャンセルされたが、幸いにもダメージはそう多くない。まだ、やれる。

 

(――いや、違う!!)

 

 ――余談だが、SAOでは便宜上、体術スキルなども全て纏めて「ソードスキル」と呼称されている。

 

 そして先ほどのカラードの動きは、体術ソードスキル《弦月》に酷似……いや、全く同じものと言っていい。

 

 だがキリトは、ソードスキルには必ずあるはずの光のエフェクトが()()()()()()()ことを見逃してはいなかった。

 

 間髪入れず、今度は《水月》――中段の回し蹴り――が繰り出される。が、蹴られた勢いを利用してバック宙返りしていたキリトには、ギリギリで当たらなかった。

 

 今度こそ、カラードの動きが一瞬止まる。ソードスキル発動後の硬直時間だ。

 

 初撃をソードスキルと誤認させ、クールタイム中と思って油断している相手に本命をぶつける二段構え。クリティカルどころか、クリーンヒット1回で決着する初撃決着モードにおいては、「必殺」と呼んでも差し支えない。

 

(突っ込んでたら今ので勝負が付いていた! やっぱり只者じゃない!!)

 

 キリトは内心、肝を冷やしていた。

 

 やや大げさに間合いを取り、バランスを立て直して片手剣を正中線に構えるキリト。それを尻目に、カラードは悠々と硬直時間を終え、とっくにソードスキルが撃てる状態に戻っている。

 

(隙がない……!!)

 

「……来ないなら、こちらから行くぞ」

 

 カラードが、構えた両手剣を肩に担ぎ直し――そのタイミングで、キリトが再び突撃した。

 

 この時点でキリトは、目の前の大男への戦力評価を2、3段階跳ね上げていた。そして同時に、それなりにやって、負けたら仕方ない位の気持ちでいたのを改めた。

 

 ――とんでもない。本気で行かないと、失礼だ。

 

「はぁああああ!!」

 

 そんな気声と共に、左脇に構えた剣が淡い光を放ちだす。

 

 カラードから見て右からの斬撃は避けられ、左からの一撃はカラードの剣に阻まれる。ご丁寧にもジャストガードだ。隙は生まれない。

 

 2連撃、《ホリゾンタル・アーク》が破られた――と、その場のほぼ全員が思っていた。

 

(……やはり、使えるか)

(お陰様でね)

 

 ――言葉もなく分かり合う、カラードとキリト以外は。

 

 カラードが剣を構え直すのと、一回転したキリトが3()()()を繰り出すのは同時だった。

 

 ガード自体はギリギリで間に合わせたカラードだが、ついにその剣が弾かれ、無防備な状態を晒す。

 

 右から左上への一撃が、カラードを切り裂いた。

 

 4()()()、《ホリゾンタル・スクエア》。ホリゾンタル・アークの上位に当たる技だ。

 

 クリティカルヒットの派手なエフェクトと共に、カラードのHPが1割半ほど減少する。

 

 直後、デュエル決着のウインドウが現れ、会場は大歓声に包まれた。

 

「……強いな」

「あんたもな……まさかスクエアの方を使()()()()()とは思わなかった」

 

 涼しい顔でポーションを飲むカラードが、ストレートな言葉で勝者を労う。

 

「その腕なら、ジマでは相手にならんだろう。回復結晶、有効に使ってくれ」

「おいおい、一応弟子だろ……あ」

 

 優勝者が決まったかのような台詞に突っ込みを入れようとしたキリトは、カラードが弟子兼部下の準決勝突破を前提として語っていることにすぐ思い至った。

 

「なるほど、ジマがあんなに慕う訳だ……」

 

 敗者は消えるのみ、とでも言わんばかりにそそくさと人ごみの中へ消えていくカラードを見送りながら、キリトはポツリとつぶやいた。

 

 結局、決勝はカラードの予言通り準決勝を勝ち抜いたジマとのカードとなる。

 

 ジマは大方の予想よりかなり善戦したものの、レベル差とスキル差が災いして敗れ去ったのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 キリトとの手合わせを終えて定宿――MTD幹部に与えられている私室――へ戻ったカラードは、()()()()戦って調べたキリトの実力を反芻していた。

 

「予想より、成長が早いが……」

 

 ホリゾンタル・スクエアは、片手剣スキル150で習得できる技だ。主武装のスキル熟練度において、恐らくアインクラッド二位だろうカラードの両手剣スキルは、116である。

 

 キリトの言う「使わされた」は、決して謙遜などではない。キリトの実力を確かめるため、一番強いソードスキルを使わざるを得ないようカラードが誘導した結果であった。

 

「対人スキルは、然程でもないか」

 

 反面、対人戦のスキルは低かった。いや、攻略組の平均値と比べれば十分すぎるレベルだろうが、カラードにどうにもできないほどのイレギュラーは発生していないらしい。実際、()()()()()()()()()()()()必殺技的な攻撃を誘発できた。

 

 あれほど圧倒的なステータスを持ちながら、ジマ程度の使い手で善戦できてしまうことからも明らかだろう。

 

「問題はない」

 

 そう結論づけたカラードは、今回大会の観客動員データに目を通す。

 

 第一回の頃は「人間同士で殴り合うなんてどうかしてる」という旨の苦情が殺到したものだが、いざ強行してみれば大盛況である。対人戦の得意な者を戦闘要員に勧誘することも出来たし……何より、MTD全体の対人戦経験・技能も飛躍的に向上している。

 

 開催するに当たり噴出した批判を、カラードはありとあらゆる屁理屈と詭弁をもって封殺した。初撃決着モードなら絶対に死ぬことはないとか、むしろ圏内で安全に戦闘経験を積む機会であるとか。

 

 だが批判の正当性は、他ならぬカラードが一番よく理解していた。彼らは正しい。

 

 デュエルというのは結局、薄めているだけで殺し合いだ。それは誰より、戦っている者の体が覚えていく。

 

 第一層の住人達は、カラードの思惑通り、知らず知らず"血"に慣れていた。




 戦いはいい……(何も考えずに書けるから)私にはそれが必要なんだ……。

P.S.
 お気に入り2000件、ありがとナス!!

22:17追記:一部表現を加筆修正。
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