ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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 所用で書いてる暇がなかったので初投稿です(大遅刻)。
 (21:11追記)"―"入力出来てるじゃねえか! 騙された!


8/n おま○け(前半)

 アルゴが恐る恐る顔を上げてみると、こちらに敵意を――殺意を向けていたはずの5層ボス、≪フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス≫が自分の方を向いていない。

 

 フスクスの視線の先には、とうにアルゴを見捨てたはずの、その場にいるはずのない大男。

 

 ――アルゴは最初、ついに幻覚が見え出したかと疑った。

 

「下がっていろ」

「わっ、ちょっ、ふぇっ!?」

 

 手早く強攻撃を叩き込んでフスクスを怯ませ、その隙をついて駆け寄ってきた"幻覚"に抱え上げられる。

 

 アルゴにとって残念なことに所謂お姫様抱っこではないが、ようやくアルゴはこの大男が「本物」だと、死にかけた自分が見ている都合のいい幻ではないと認識できた。

 

「カー……くん……?」

「どうした」

 

 以前と何も変わらない声で、彼らしく平然と答えてくれる。掛けられた言葉が同じだったあたり、アルゴの夢も案外再現度が高かったようだ。

 

(カーくんが、助けに来てくれタ……)

 

 アルゴの未だ判然としない頭の中を、そのフレーズだけが何度も反復する。理由はわからない。何故ここが分かったかも。

 

 頭が回らない。状況が急に動きすぎている。ただ、自分を助け出したカラードだけが見えていた。運ばれている間できたことと言えば、必死でしがみついていることくらいだ。

 

「ここなら大丈夫だろう。早く逃げろ」

 

 ボス部屋の外周。あれだけ遠く思えた入り口の階段前までいとも容易くたどり着いたカラードは、その場にアルゴをそっと降ろし、すぐにボスの方を向き直る。

 

「ぁ……って、カーくんはどうすんだヨ?」

 

 反射的に名残惜しそうな声を出すアルゴだが、カラードは一緒に逃げる気がなさそうなことに気づいて慌てて声を上げる。

 

「俺のことはいい。先に行け」

 

 あくまでそっけなさそうに答えるカラード。だが思考の戻ってきたアルゴには、カラードが少し焦っているらしいことが何となく分かった。

 

 話は終わりだと言わんばかりに、カラードはボスの方へ戻っていく。自分のために時間稼ぎか、あるいは殿をしようとしているのだろう。言われたとおり、逃げるべきだ。頭では分かっていた。

 

 だから、行こうとするカラードの服の裾をとっさに掴んだのは、"勘"だった。情報屋で築いた経験からか、あるいは女としての。

 

「――待っテ!!」

 

 アルゴ自身が驚くほど、その声は切羽詰まっていた。

 

 このままカラードを行かせてしまったら、今度こそもう会えなくなる。根拠はなかったが、アルゴはそう確信していた。

 

「……」

 

 意表をつかれた様子で、カラードが硬直した。なにやら考え込んでいるといった風だ。

 

 後になって――それこそ一年以上経ってから、「この時止められなければ5~6ヶ月雲隠れするつもりだった」とカラードが口を滑らせる程度には、アルゴの勘は正確だった。

 

「ボスの行動パターンは調べタ! オレっちも、戦えるヨ!」

 

 結局出てきた言葉は、カラードの善意を無にする一言。負けて死にかけておいて何を言っているんだと、言い終えてから自嘲する。

 

「危険だ。死なせる訳には行かん、転移結晶ならいくらかストックが――」

 

 言葉少なに、しかしはっきりと難色を示すカラード。当然の反応だろうと、理解はできる。しかしアルゴは、気づいた時にはトレードウインドウを開こうとするカラードを制し、悲鳴にも似た声を上げていた。

 

「分かってル! 足は引っ張らないようにするし、POTや回復結晶も持ってるから、援護ならできル!!」

 

 とっくに見捨てられたと思っていたカラードが、自分を助けてくれた。それを思えば思うほど、離れたくないという感情が強くなる。アルゴは頭をフル回転させて、必死で引き留める言葉を探した。

 

「まだ、お礼も言えてないし、出来てないだロ? オレっち、ひぐっ、ずっとオマエにばっかり負担掛けて、ぐしゅ、まだ何も返せてなイっ、えぐっ、だから、だから――」

 

 置いていかないで。

 

 途中から支離滅裂になり、泣きながら懇願するアルゴを見て、カラードが何を思ったか定かではない。面倒臭いとアルゴ本人が自覚しているので、彼女が後から聞くこともないだろう。

 

 あるいは、いい加減怯み状態から立ち直り、こちらをターゲットしつつあるフスクスを見て、押し問答するくらいならマシと判断したのか。

 

「……分かった。アレはこの場で倒す」

 

 ともあれカラードは前言を翻し、アルゴと2人でボスと戦うことを選んだ。

 

「援護は任せる」

「……っ、うン!!」

 

 安全を考えるなら、この時アルゴは2人で一緒に逃げることを提案すべきだった。だが、「カラードが一緒に居てくれる」ということへの歓喜と安心感に全身が満たされていたアルゴにそれを求めるのは、些か酷というものだろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ソードスキルを纏った両手剣が閃光を放ち、轟音と共に振り下ろされたフスクスの腕が弾かれる。いつの間にか同化をやめ、岩の巨人と呼ぶに相応しい姿になったフスクスは、体勢を崩しその場に手と膝をついてしゃがみこんだ。

 

 高等技能、空中ソードスキルを成功させ≪バックラッシュ≫をクリティカルさせたカラード自身もまた、硬直時間で動けないはず。しかしその刹那、着地と同時に、追い討ちの"振り下ろし"がボスの腕を捉えた。

 

 物理エンジンによって再現される慣性は、このSAOにおいてすら現実のそれとはほんの少しのズレがある。

 

 残った慣性と重力によって本人の意思と無関係に振り下ろされた≪スチール・グレートソード+12≫は、NPCメイドながら12回の強化全てを「重さ」に振った完全成功品。普通に落としただけで馬鹿にできない攻撃力が出てしまう特別製だ。

 

 それを悪用し、クールタイムの最中に攻撃を仕掛けるかのような挙動を可能としているのだ。お陰で2層以来ずっと筋力にポイントを全振りしていたにも関わらず、つい最近まで装備すら出来なかったキワモノに仕上がっている。

 

 ともかく振り下ろされた剣は、重量に任せてフスクスの腕を削りながらボス部屋の床に激突し、破壊不能オブジェクトを表す警告画面に弾かれる。

 

 その反動によって跳ね上げられた剣先がフスクスの腕をさらに切り裂き――クールタイムが終了したカラードが上段構えに持っていき、踏み込みと共に新たなソードスキルを発動。

 

 単発振り下ろし攻撃、≪カスケード≫が直撃したフスクスは、大きな唸り声のような悲鳴を上げたのを最後にポリゴンと化し爆散する。ラストアタックは、当然カラードだ。

 

 重力と慣性を利用した行動不能中の攻撃。破壊不能オブジェクトにぶつけた時の反動を用いての再攻撃。それらを組み合わせ、事実上クールタイムを無視してダメージを与え続ける技術。

 

 β時代から理論上は可能と言われていたが、アルゴが実例を見たのはこれが初めてだ。カラードはそんなテクニックを、10時間以上に渡るボス戦の最中ずっと使用し続けていた。

 

 修正されていないのは、単純に修正の難しい部分であることと、理論上の再現率は100%であるためプレイヤースキルの一環と認定されたことによる。

 

 ちょっとやそっとの練習で真似できるものでもないので、さしずめ≪システム外ユニークスキル≫と言ったところか。

 

 カラードは時折ダメージを受けても戦闘時回復の効果ですぐに全快し、どういうからくりか状態異常にもなっていない。

 

 攻撃し続ければ単騎での撃破も可能であったし、カラード自身そのつもりで来ていたのだが、それを言わない程度の分別あるいは情けはカラードにも存在した。

 

「倒……しタ?」

 

 アルゴはアルゴで、しばしば飛んで来るフスクスの攻撃を10時間以上避け続け、POTの使用や攻撃の誘導、時折スイッチするなど抜群の連携を見せていた。

 

 カラードの尋常ならざるプレイヤースキルを見てすぐさま対応できる順応性の高さも、ボス戦の円滑化に一役買っていたのは確かだ。

 

「ああ。()()()()()()だ」

 

 その言葉に、社交辞令が多分に含まれていたことは否定できない。現にボスへのダメージは、その90%以上がカラード1人によるものだ。

 

 アルゴもそれは分かっていたが……同時にその言葉は、アルゴが一番言って欲しいものでもあったのだ。感極まってカラードに抱きついたのは当然の反応だろう。

 

「うぉっ」

 

 想定していなかったのか、カラードは珍しく意味を成さない声を出し、しかしすぐにアルゴを受け止めて抱き締め返す。

 

「あり、あり、がと……っ!!」

 

 今度は嬉し泣きするアルゴを、やはりカラードは何も言わずに背中を叩いてあやす。

 

 しばらく経って、アルゴが落ち着いたのを確認してから、カラードは何やらコンソールを操作し出した。アルゴからも、アイテム欄を見ているらしいことは何となく分かる。

 

(何を探して……そうカ! 旗!!)

 

 戦争の火種になるほどの、超級ドロップアイテムの確認だ。そう考えたアルゴは、慌てて自分の分を確認し始める。

 

 見たところ、両手剣が1本ドロップしているだけのようだ。銘は≪エッジ・オブ・コロッサス≫、その安直さには覚えがある。確かβテスト当時、10層時点で知られていた中でも飛び抜けて基本性能が高かった。

 

「……アルゴ。取引をしよう」

 

 自分の方にないということは。ちょうどそう思った時、カラードがそんなことを言い出した。

 

「俺の方にドロップした旗を、そちらに出ているだろう剣と交換しないか」

 

 旗。今や戦争の火種になろうとしているそれは、やはりカラードの方にドロップしていた。

 

「エ? MTDに持っていけば……ア」

 

 そこまで言って、思い至る。カラードはあれ以来、MTDにも顔を出していない。

 

「これは、アルゴが持った方がいい」

 

 いつもの無表情。どんな感情をもっての言葉か、正確に読み取るのは難しい。

 

 それ故、アルゴの脳内に最悪の想像が閃いた。

 

(……まさカ)

 

 ――カラードは、アルゴに旗を託して消えるつもりか?

 

「ぁ……」

 

 思わず、寂しそうな声が漏れる。

 

 彼から見れば、MTDの精鋭もまた攻略組。追放に加担した組織の一部だ。最後に一仕事してから消えるというのは、いかにもカラードの取りそうな手だと思われた。こんな大仕事だとは思わなかったが。

 

(やっぱり、カーくんは許してなかったのカ)

 

 急に、足元がぐらついたような錯覚に襲われる。てっきりこのまま一緒に帰って、またMTDに復帰してくれるものと思っていたアルゴの想定は、いきなり崩れ去った。

 

(にゃ、はは。そりゃ、そう、だよナ)

 

 強烈な喪失感と不安に苛まれる。しかし、もしこうなったらアルゴは止めてはいけないと、アルゴ自身覚悟していた。これ以上は、重荷だ。

 

(あ、あレ? 声が、出ないナ。言わなきゃ、言って……お別れしないト……)

 

 感情と我儘を押し殺し、なんとか笑顔を作ろうとして失敗する。少しでも喋ったら、また泣き出してしまいそうだった。

 

「……流石に、ここまで来て消えるつもりはないぞ」

 

 結局、様子を見かねたカラードが、心を見透かしたかのようにフォローを入れる。後になってカラードが言ったところによると、「この世の終わりのような顔」だったそうだ。

 

「……な、なんダ。カーくん、いなくならないのカ……にへへ、そっカ」

 

 口では事も無げな風を装っているつもりだろうが、アルゴはこの日一番嬉しそうにしていた。




 あはは、誰?(キャラ崩壊)
 「待っテ」はミーティが火葬砲される直前のナナチを想定すると脳内再生しやすいと思うゾ(メイドインアビス履修前提)
 23:04追記:一部表現を加筆・修正。

次回の日常回のメインキャラ募集

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  • リズベット
  • ユリエール
  • アルゴ
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