ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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 銀髪爆乳姉貴登場させたらお気に入りが増えたり減ったりし出したので初投稿です。
 やっぱりホモじゃないか(ガバ推理)。


9/n おま○け

「……ここまでだな。お陰で随分リラックスできた」

 

 開放されたばかりの第7層、その転移門広場。夕飯時が終わりかけの時間帯だけあって、周囲を見れば攻略組から観光客らしきほぼ初期装備の面々まで、多くの人々を見かけることが出来る。

 

 「最前線の街の店舗調査」という名目でデートに連れ出されていたカラードは、しかし本当に満足そうな様子でアルゴに話しかけた。

 

「ぁ……そ、そう、だナ」

 

 カラードの買った氷菓子を横から一口取ったり、まだ希少品の記録結晶をわざわざ使ってツーショット写真を作ってみたりと至福の時を過ごしていたアルゴは、やはりと言うべきか寂しそうな顔をしている。

 

 カラードは1層のMTDの個室、アルゴは最前線の定宿。ここからは帰り道が異なる。既に圏内なので危険がある訳でもないが、それはそれとしてアルゴは名残惜しそうにしていた。

 

「……宿まで送るか?」

「っ!! …………ぅン」

 

 カラードがそう声を掛けると、アルゴがびくりと体を震わせてから、何やら意を決した様子でうなづいた。カラードが視線を向けてみると、顔を赤くして向こうを向いてしまう。だが満更でもないと言うか、不安と期待が入り混じって期待の方が勝っている様子であった。

 

 そろそろ年末になろうかというこの時期。夕食を食べ終えた所でまだ7時過ぎではあるが、既に日は落ち完全に夜になっている。本当に宿屋の前まで送った()()のカラードは、「カーくんの、いくじなし」という言葉と恨みがましい視線を背に、さっさと1層へ戻っていくのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 翌日・夕方。アルゴが情報収集に奔走している中、カラードは始まりの街の路地裏にある、半地下のバーに訪れていた。

 

「――どうだった、俺の仕込みは」

 

 入店するや否や、カラードはそんなことを言いだす。視線の先には、まるで来ることが分かっていたかのように佇む「黒ポンチョの男」。()()()()()()()()()()()

 

「何だお前だったのかよ、随分大物じゃねぇか()()()()()()さんよぉ」

 

 「兄弟」を「ブロ」と発音した黒ポンチョの男は、入ってきた男――カラードの顔を見るや破顔する。「存在する」とは分かっていたが、具体的に誰が「そう」なのか掴みかねていたポンチョの男にとって、「見えない兄弟」の正体は予想以上だったようだ。

 

「おっと、質問に答えねぇとな。中々面白かったぜ。だが人の扱いがイマイチだな、もっと盛り上げられたんじゃねえか?」

 

 「仕込み」とは何か。そんなことは、二人の中では言うまでもないことだ。だからポンチョの男――PoHは忌憚のない意見を述べる。

 

 彼は生粋の扇動家だ。カラードのバラ撒いた数々の火種、その質の悪さは尊敬していたが、同時に使いこなすのは自分の方が上だと思っていた。これまで数々のタイミングで、時に自分が、時に部下を通じて、それを誇示してきたつもりだ。

 

 ダメ出しを受け、しかし「待ってました」と言わんばかりにくつくつと笑うカラード。PoHは訳知り顔で、しかしあくまで怪訝そうという体で答える。

 

「何がおかしい?」

「思った通りだ。お前ならもっと盛り上げられる」

 

 大男が言葉を続ける。 

 

「ネタは作れる。だが演出家がいない。俺と組まないか?」

 

 5層までの顛末はつまり、デモンストレーションということだ。

 

「Hey Hey Hey! つれないこと言うなよ兄弟。俺ぁとっくに組んでるつもりだったぜ?」

 

 そう言うPoHは、しかし凶暴な笑みを浮かべている。人によっては逃げ出しかねないような顔だったが、カラードは彼が心の底から嬉しそうにしていると正しく理解していた。

 

「面白そうなネタがあったら連絡しろ。最高に盛り上げてやる」

「そう言うと思って、手土産を用意した」

 

 打てば響く。それを体現したやり取りであった。

 

 「メモ」という形でアイテム化したテキストデータを渡してくるカラード。中には、未だPoHが思いついていなかったPK方法の数々が記されていた。

 

 特にこの倫理コード解除設定というのがいい。脅しに幅を持たせられるし、手下連中のガス抜きにもいい。何より酔える酒も抱ける女もないのかとうんざりしていたPoH自身にとって朗報だ。

 

「クク、フフフフ……やっぱお前は最高だ」

 

 PoHはコンソールを操作し、テキーラ(に似たノンアルコールの何か)を二杯購入し、一杯はカラードの方へ。

 

 お互い多くは語らなかったが、PoHは確信していた。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 あの空虚に見えて芯のある眼に、PoHは覚えがある。こういう人間性の欠如した手合いは、得てして「自分」か、もしくは別の「求めるもの」にしか関心がない。人を何とも思っていないから、文字通り何でもできてしまう。憎しみに生きる自分とは、似ているようで対極だ。

 

 そしてカラードもまた、PoHの本質に気づいていた。

 

 ()()()()()()()()()

 

 あの禍々しい覇気を、カラードは知っている。才気煥発な人物が、その力を全て負の感情に転換することで辿り着く境地、あるいは狂気。彼の場合、源は「憎悪」だろう。だから悪事を、嫌がらせを楽しめる。およそ生気に欠ける自分とは、似て非なる存在だ。 

 

(恐らく目的は違う。だが、手段は同じだ)

 

 二人は同時に、同じ結論に達した。

 

 道は交わらないだろう。だが、かなり長い間並走することになりそうだ。なら、それで構わない。「相棒」をやるには十分だ。

 

 そう遠くない未来に、自分たちは殺し合うことになるだろう。それはどちらが言い出すでもなく、二人とも確信していた。だが同時に、それを良しとできるだけの破綻が彼らの中には存在したのだ。

 

「未来のショータイムに」

 

 PoHはこれから起こす「ショー」を。

 

「この先見られる景色に」

 

 カラードは自らの求める「景色」を思い、ライムを齧ってからショットグラスに注がれたテキーラもどきを飲み干す。

 

 随分美味くなった気がした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 プレイヤー名≪スエーニョ≫、本名を柳井健介。リアルでは悪徳証券マンの25歳。悪徳といっても、警察に捕まったことも社内規定で処分されたこともない。「逃げ足」にかけては一級品だと、彼は自負していた。

 

 そんな彼が何故SAOにいるかと言えば、ソフトの転売で一儲けしようと目論んだからだ。缶ビールと煙草で買収したホームレスに並ばせ4本ものソフトを確保した彼は、しかし律儀にも動作確認を試みたためにデスゲームに巻き込まれたのである。

 

 慣れないことはするもんじゃない、と1月ばかり後悔してから、彼はこの世界でも出世する方法を考え始めた。切り替えの早さは彼の武器である。何年かかるか分からない以上、今はこの世界を現実として行動するほかなかった。

 

 とはいえ彼にはまともなゲームの知識も経験もない。外に出てレベリングしようとはとても思えず、MTDなる互助会に所属して配給のパンを齧る日が続く。しかし無為に過ぎているように見える日々の中で、彼はMTDの中にも経済があることを理解した。

 

 やがてスエーニョは、7層のモンスター闘技場にあやかってMTD主催のPvP大会での賭博を思い付く。こういうのは最初の一人であることに絶大な意義があるのだ。そう考えた彼は、早速仲間内で簡単な賭け事を始める。

 

 それは面白いように人気を博した。この娯楽のないSAOで、事実上1つしかない超人気イベントを対象にしたのだから当然と言えた。

 

 手に入れたあぶく銭で彼は青を基調としたスリーピース(に似た装備)を用意し、昔のように黒髪を整髪料で固めたオールバック姿になった。闇賭博の帝王、スエーニョの誕生である。

 

 事業が軌道に乗りはじめ、スエーニョがレベル1としては桁違いの資金を手にするようになった頃。それまで順調そのものに見えた事業は、訪ねてきた大男のたった一言によって窮地に瀕することとなる。

 

「ギルドは君を把握している」

 

 MTDの幹部として治安維持を取り仕切るカラードは、態々スエーニョの住居を訪ねた上でそう言ったのだ。今では立派なアウトローとして賭博のかじ取りをしているスエーニョには、意味するところが絶望的に理解できた。

 

 今日限りで賭場は畳もう。そう決意しようとしたスエーニョに、しかしカラードは意外な言葉をかけた。

 

「だが()は、君を関知していない」

「……なるほど。率はどの程度で?」

 

 彼は話の分かる男のようだ。そう考えて上納金の割合を相談し始めたスエーニョの対応は、悪として正しかったと言えるだろう。

 

「不要だ。むしろ協力してやってもいい」

 

 だがこの大男は、スエーニョの常識には当てはまらなかった。

 

 一度は諦めた賭博の利権が、再び手元に戻ってくるような錯覚。スエーニョは期待を持たずにはいられなかった。

 

 スエーニョが術中に嵌り、迷い……つまり隙を見せたのを見抜いたカラードは、すかさず言葉を畳みかけていく。

 

「ガス抜きは必要で、他人が自分から堕落するのを敢えて止めるほど俺も暇ではない。ただし」

「ただし?」

「目立つな、騒ぎを起こすな、俺の手を煩わせるな。これだけは徹底してもらう」

 

 指折りしながら条件を提示するカラードを見ながら、スエーニョは頭の中で勘案する。つまり問題が起きたとしても、スエーニョとその手の者で対処できているうちは手出ししないということ。

 

 そう受け取ったスエーニョは、「お前からは見えないかもしれんが、俺にもメリットがある」というカラードの言に従い、利権を手放さずに済んだ安堵とともに提案に乗ることにしたのだった。

 

 このおよそ一週間後、組織の存在をどこからか嗅ぎつけてきた「黒ポンチョの男」の一味がいつの間にか「ケツ持ち」の座に収まる。

 

 この時も、「()()()問題に対処すんなら、暴力は不可欠だ。俺らの力、あった方がいいんじゃあねぇか?」という黒ポンチョの巧言令色にすっかり丸め込まれ、気づけば組織に入り込まれてしまっていた。

 

 傍から見れば、黒ポンチョたちがスエーニョの「目立てない」という事情を知っている時点で、警戒してしかるべき。カラードの時か、黒ポンチョの時。どちらかで彼が本物の悪意というものに気づけていれば、あるいは彼の未来は変わったかもしれない。

 

 スエーニョは悪人として有能だったが、しかし巨大な利権を前にして欲に目が眩んでしまった。

 

 悪に落ちてはいけない理由。それは自分より強力な悪に食い物にされた時、誰も助けてくれなくなるからなのだ。

 

 

――おまけのおまけ:現在公開可能な情報――

 

 sueño:スペイン語で「夢」。「el」が付いていないのは通りの良さを重視した結果らしい。動作確認と言いつつしっかりした名前を考えているあたり、彼も何だかんだ楽しんでいたのかもしれない。

 

 前々話でアルゴがカラードを膝枕したが、実はその前々日あたりがクリスマスだった。その時期にアルゴと何かあっては行くところまで行ってしまいかねず、本格的に好感度調整が不可能になるという走者の判断により、カラードが忙殺されることでなし崩し的にイベントをキャンセルした(プレゼントだけは画面外で渡している)。




【朗報】漢プニキ、作中で最もカー君の本質に近づく。
【悲報】戦争狂ちゃん、出番持ち越し。

 字数的に微妙だったんで、編成の都合上戦争狂ちゃんの回は日常回か10/nおま○けの冒頭に繰り入れられることになったゾ。許してください何でもしますから!!(定期)

 シンフォギア6期のバルベルデ回でクリスちゃんソックリの6歳くらいの子供が登場した時は心がぴょんぴょんしました(存在しない記憶)。

2/13 1:22追記:アンケート締め切りました。投票ありがとナス!!

25層のボス部屋に入るのは……どちらが、先かな?

  • キバオウ達ALS
  • ディアベル達DKB

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