ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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 若おかみは小学生、ありますよね……あれの事故がフラッシュバックするところ。初めて見た時……なんていうかその、下品なんですが……フフ……初投稿です。
 最近筆が乗らなくていかんね。なんだか妙に長くなったから分割したゾ。


10/n おま○け(前半)

 2023年、3月14日。

 

 アインクラッド第23層の攻略が完了し、24層の転移門がアクティベートされる。

 

 街開き。最早一般プレイヤー達の間でも恒例行事となったそれは、今回も恙なく行われた。

 

 数百人規模の観衆。見慣れた転移エフェクトと共に、立て続けに登場する攻略組三大ギルドのリーダー格。湧き上がる歓声。いつもの光景だ。

 

「現時刻をもって、24層は解放された」

「今回も犠牲者はナシだ!」

「めでたいこっちゃで! そら、もっと盛り上がらんかい!!」

 

 上からMTDのカラード、DKBのディアベル、ALSのキバオウ。彼らの音頭と共に、広場の興奮は最高潮になる。

 

 一時は戦争の噂もあった三大グループであるが、ここ数層は(少なくとも表面上は)きちんとした協力体制を構築できており、一時期ほどの対立は見られない。

 

 もうじき四分の一が攻略される。ここまで4か月、近頃はほぼ5~6日に一度のペースで攻略が進んでいたし、前の22層に至っては2日半で攻略されてしまった。

 

 このペースで単純計算するなら、およそ1年半か、もっと短い時間で完全攻略できることになる。

 

 勿論実際にはそんなにうまくは行かないだろうが、大半のSAOプレイヤー達は順調に進む攻略に希望を抱き始めていた。

 

「あッハハ!! 今日のも大したことなかっむぎゅ」

 

 アレックスは転移門広場のどんちゃん騒ぎに乗じて背後からカラードに抱き着こうとし、しかし寸前でアイアンクローによって止められる。

 

「不満か。なら追加で模擬戦を叩き込んでやる」

「まーじで! じゃ早くいこーぜ! ほら!!」

 

 カラードのブートキャンプ宣言に、めげるどころか喜色満面で応じて後ろを付いて行くアレックス。彼女の戦いぶりを知らない一般プレイヤーからすると、それこそよく懐いた大型犬のように見えるという。

 

 攻略組の面々や彼女とデュエルした経験のある者に言わせればとんでもない話である。キリトをして「たまたま人間に生まれただけで、本当は虎か何かだろ」と言わしめるほどに。

 

 女性にしては大柄な体格と、活動的な印象には不釣り合いな白い肌、そして揺れる乳房に、少々ヤンチャそうだが(普段は)かわいらしさの勝る顔つき。その全てが霞んでしまうほどの戦闘力を、今の彼女は有している。

 

 ともかく、彼らの寸劇はここ7~8層ですっかり定着した光景の一つであった。

 

 ――反対に、最近めっきり見られなくなったものもある。

 

「…………」

 

 情報屋「鼠」のアルゴと、MTD大幹部カラードが仲睦まじくしている姿だ。

 

 十二~三層頃までは、ベタベタとくっつこうとするアレックスとカラードとの間に割って入るアルゴの姿を見ることができた。さらに以前は、街開きを共に見守るカラードとアルゴの姿がしばしば目撃されたものだ。

 

 本人たち――特にカラード――は否定していたものの、アルゴの満更でもない様子と合わせ、ある種の名物カップルのような扱いを受けていた彼らだが……アレックスの台頭と入れ替わるように、彼らが一緒にいる姿を見ることは稀になった。

 

 10層踏破を機にカラードが攻略組に復帰してからも、カラードの関心は新たな才能に向けられたままである。一部気の早い所では、カラードが新しい女に乗り換えたとの噂も出始めていた。

 

「………………」

 

 23層転移門広場の外縁に存在する宿屋の二階。窓に頬杖をついて街開きの様子を遠巻きから確認していたアルゴは、魂の抜け落ちたような様子でその様を見つめていた。

 

 「狂犬」アレックス。アルゴの情報網により、嫌と言うほど多くのことが分かっている。

 

 座っていれば美人だとはジマの言であるが、その表現通り美貌と巨大な胸が霞んでしまうほど凶暴な戦闘スタイルで畏れられ、カラードにとても懐いていることから「飼い犬」という意味も込め「猟犬」と言われることもある。

 

 カラード同様βテスターではないかと疑われる彼女は、その優れた対人戦の技量を認められ、カラードの判断で攻略組に格上げされると同時に、彼直属の治安維持担当を兼職するようになった。

 

 毎日のようにマンツーマンで特訓を受けているとの噂もあり、これは自分で確かめた。そしてアレックス本人の弁によれば、カラードの強さに強く惹かれたのだと言う。実際、好意があるという態度を隠そうともしない。

 

 そんな彼女はカラードの見込み通りメキメキと頭角を現し、今では名実ともに(カラードを除けば)MTD最高戦力の名を欲しいがままにするまでになった。聞くところによると、ボス戦でもカラードと並ぶMTD2大エースとして、2人で活躍しているそうだ。

 

 目を掛けるだけのことはある、ということだろう。

 

 見れば今も、何やらベタベタとしようとするアレックスをカラードが引き剝がしている。

 

「……そこは、オレっちの……ッ!」

 

 「無」だったアルゴの表情が、今にも泣き出しそうに歪む。

 

 こみ上げてくる嫉妬と喪失感を歯を食いしばって抑え、思考を続ける。

 

 カラードが自分の所に来なくなった理由は単純に、MTD内での業務量が増えたからだ。朝に対人訓練、昼にMTDの業務と全体レベリング、夜に特訓。かつてアルゴと共に情報収集と分析を行っていた時間が、今はアレックスの強化に注ぎ込まれている。

 

 最序盤の、最も人が死にやすい期間は終了した。現在の死者発生ペースは、最初期のそれと比べてかなり穏やかなものだ。

 

 3つの大ギルドによる攻略体制が確立され、攻略は順調に進んでいる。ペースは安定、ボス戦による死者も5~6層に一人程度しか出ておらず、士気も高い。

 

 かつてほど、情報収集の重要性は薄れた。それは誰もが思う所だろう。実際、カラードもそう考え、新たな策――MTDの、個々人レベルでの戦力強化――に出たのだと考えられた。

 

 カラードは無駄を嫌う。1層のころから、彼の行動には一切の無駄というものがなかった。

 

 アレックスを練兵しているのも、彼女の才能を知っての事だろうとは分かっている。現に高々2か月であそこまで強くなった。あのやり方が、一番効率がいいのだろう。他ならぬ、アルゴ自身の惚れた男のことである。そこに関しては信頼できる。

 

 アルゴは特にカラードから聞くでもなく、その目論見をかなりの精度で理解していた。

 

 しかし一方で、この考えにはアルゴにとって恐ろしい結論が待ってもいる。

 

 アルゴといる時間は、構うほどに強く、役立つようになっていくアレックスと違って――

 

「時間の、無駄」

 

 蚊の鳴くようなかすれ声。しかし、「血を吐くような」という表現が相応しいほどに感情が籠っていた。とでもではないが、カラードに直接問い詰めるのはアルゴには無理だ。もし「そうだ」などと言われた日には、今度こそ自分は壊れてしまう。

 

 震える手で、バレンタインに貰った小さなチャームを握りしめる。ほとんどファッションというものに関心のないアルゴが、唯一肌身離さず身に着けているものだ。

 

 あの時アルゴは、事前に「誘惑しに行く」と宣言し、一緒に来るかとまで言ってきたアレックスの誘いに、乗らなかった。

 

 アレックスの複数人で共有しようという考えが理解できなかったのもあるが、アルゴからすれば横からしゃしゃり出てきて何を勝手なことを、という話である。実際、思わずそう吼えた。

 

『そんなモン、カラードが何て言うかだろ?』

 

 むしろオマエにもチャンスをやりに来たんだ。アルゴの怒気にまるで動じず、むしろ楽しそうにそう言い切ったアレックスに反論できなかったのも、しかし確かだった。

 

 そしてあの日カラードは、アレックスの誘惑に乗らなかったと言った。彼はあくまで、アレックスの才能に目をかけているだけだ。貰ったこれはその証だと、アルゴは勝手に考えていた。

 

「大丈夫、ダ」

 

 あの時は心底安心した。カラードは自分を見捨てた訳ではなかったと、アルゴは思うことができた。実際あれからも、アレックスが事あるごとに誘おうとするのを全て跳ね除けているのは()()()()()

 

 しかし、アルゴは認識を改め始めていた。これまでは今の曖昧な関係でもいいと思えていたし、自分からそれを壊しに行くような真似はとてもできなかった。生来、アルゴは臆病なのだ。

 

 しかし、もしこれで、カラードがこのままアレックスの方に行ってしまったら、自分はどうなるだろう。「その時」になってから恥も外聞もなく泣き喚き、尚のことカラードに失望される自分が、目に浮かぶようだ。

 

 アルゴは焦燥感と恐怖で板挟みにされつつあった。

 

 その時だ。フレンドメッセージの着信を示す電子音が、アルゴの耳に刺さる。

 

「誰ダ?」

 

 仕事の依頼か何かだろうか。にしては、インスタントメッセージではなくフレンドの方を使うとは――

 

 差出人が誰か。頭で理解するより先に、身体が動いていた。

 

 

――おまけのおまけ:現在公開可能な情報――

 

・アレックスの「狂犬」の他、ディアベルの「騎士」、キリトの「黒の剣士」など、一部の攻略組プレイヤーには二つ名が付いているが、カラードには特にない。これは、カラードを騎士と認識するのは自分だけにしたいというアルゴの独占欲によるものである。この世界においては、ディアベルに「騎士」の称号を擦り付けたのもアルゴの差し金。

 

・アレックスの身長は167センチ。バストサイズともども、アルゴとほぼ20センチ違う。

 

・敏捷+20の指輪は、筋力+20の指輪と同じデザインの色違い。同じモンスターからドロップするのだから、デザイン数節約という観点から見ても当然の帰結である。




 Q.(戦争狂ちゃんの)胸囲っていうのは、どのくらいあるの?
 A.100ピッタリくらい(Hカップ)。

 2/16 21:03追記:案外早く続き出来たので投稿したゾ。

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