ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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「カラードの本名を知ってることについて生ハム原木構文でマウントを取ってくるアルゴ」という電波を受信したので初投稿です。遅くなって大変申し訳ない。


11/n おま○け(中編)

 アインクラッド第25層主街区の、とある宿屋。どこか落ち着く印象の装飾と、広すぎず狭すぎない間取りで居心地の良さに定評がある。しかもシングルと同料金でツインルームが借りられる上、連泊すると多めの割引をしてくれる大変お得な物件だ。

 

 そしてここは、現在のアルゴが塒にしている場所でもある。同料金なので、一人だがツインルームだ。近頃は泊まる人数が頻繁に()()になるので、この偶然はありがたかった。

 

 今夜もアルゴは、ひとまず仮眠を取ろうとここに戻ってきていた。仕事は無限に湧いて出てくるが、最低限は睡眠をとらないと以降の仕事に差し支える。

 

「疲れタ……」

 

 ぼすっ、という音を立て、二つあるベッドの手前の方に顔から倒れ込むアルゴ。綺麗にメイクされたシーツが軽い体を受け止め、衝撃で皺が広がる。

 

 コンソールを開いてみると、22時を回ったところ。普段ならこれからが自分の時間だが、今日に限ってはこのまま眠ってしまいたいくらいだった。

 

 攻略組が25層の迷宮区攻略に乗り出して数日、遂に先ほど、ALS(アインクラッド解放隊)の先遣隊がボス部屋を発見し、偵察を済ませたとの報告があった。

 

 アルゴの気疲れは、つい先ほどまで長々と続いていた攻略会議によるものだ。チラチラとカラードを見て気力を補充しなければ途中で帰っていたかもしれない、などと大真面目に考えるくらいには、空気の悪い会議だった。

 

 区切り層なのを加味しても驚異的な難易度の25層、ここまでに出た犠牲者の数も2、3人では済まなくなっている。故に普段からお世辞にも仲がいいとは言えなかった三大攻略ギルドの面々が余計にギスギスし出し、その空気はボス攻略会議にも持ち越されていた。

 

 アルゴ自身も火消しに仲の取り持ちにと奔走しているが、正直言って焼け石に水程度の効果すらあったか疑わしい。

 

 これまで何度も内紛の危機を乗り越えてきた攻略組だが、終ぞ協力体制を敷かないまま今日に至る。そのツケが今になって回ってきたのは、半ば部外者のアルゴですら痛感するところだった。

 

 ただ会議は紛糾したが、結局明日、3ギルド合同でボス部屋に乗り込むという事で落ち着いた。しかし、その事実がアルゴの焦りを加速させる。

 

「……3時間、3時間だケ」

 

 アルゴは他でもない自分に言い訳をしながら、コンソールをいじってタイマーを掛ける。彼女が無茶をしようとしているのには当然、理由があった。

 

 25層のボスクエ……各層必ずある「クリアすることでフロアボスの情報が手に入るクエスト」が、この層に限ってまだ発見されていないのだ。

 

 普段はクエストの起点は分かりやすい所にあり、死ぬほど面倒臭いが難易度そのものは高くないのだが……どこを探してもヒントをくれそうなNPCがいないのだ。

 

 攻略組の面々も無能ではない。かなり早い段階でそれに気づいたカラードにも助けを求め、その手勢と共に圏内全域とほとんどの圏外村を調べ上げたのだが……「この層にはボスクエがない」と結論付けるしかない程度には、何一つ見つからなかった。

 

 少なくともDKBはそう判断したらしく、自らの攻略強行論の足しにその情報を使っているようだった。今回の会議は彼らのペースで進んだことが、ボスクエ情報なしでの攻略というちょっとした賭けにも繋がったのだとアルゴは考えている。

 

 むしろ、全精力を注いで調べている間に攻略ペースが落ちたせいで「MTDがビビって出遅れている」という噂が広まってしまい、カラードに迷惑を掛けてしまった。

 

 現在、攻略最前線での貢献度は低いのではという嫌疑を掛けられているMTDへの対抗心も、DKBら攻略強行派のモチベーションの一つだ。

 

 長らく欠点がないと思われていたほどの巨大組織が、初めて見せた後手の姿勢。そこを取っ掛かりに追い落とそうとするのは必然だった。そこを理解していたから、ALSまでもがこんなに焦ったボス戦にウンと言ったに違いない。アルゴはそう予想していた。

 

「……バカじゃないのカ」

 

 3層でカラードを追放したあの時から、攻略組は信用していない。それでも情報屋を辞めていないのは、他に代わりがいないからという義務感と、今まで情報屋で積み上げたキャリアという名の惰性。そして何より、カラードの役に立ちたいがためだった。

 

 ボス戦は決行される。だからと言ってそのヒントを探す行為をやめる訳にも行かない。明日の朝8時、攻略組が迷宮区に向かって出発するその時まで、アルゴは夜を徹して手がかりを探す気で居た。

 

(こう言う時、カーくんが居たラ……)

 

 ついに関係を持った大好きな人を想う。数十分の葛藤の末、結局左手の薬指には付けられなかったあの指輪も、別の指にではあるが肌身離さず付けている。あの日の思い出の結晶だ。

 

 あれからアルゴは、何かと理由を付け事あるごとにカラードをこの部屋に連れ込んでいた。カラードが自分から訪ねてきた日もあるが、大体はアルゴの方から誘っている気がする。

 

 アルゴに言わせれば、仕方のないこと。一度"あれ"を味わってしまったら、もう他の事では満足できない。

 

 安心感と満足感と幸福感と快感が全身を満たす。何より、あの時間だけはカラードが明確に自分を求めてくれる。普段、カラードに縋ってばかりだと思っているアルゴにとって、それがどれほど甘美なことか。

 

 しかも直接呼び出された時で、カラードが来なかったことは一度もなかった。呼べば来る。そして大体はハグやキスではどちらか(大体はアルゴ)が満足できず、そのままもつれ込んでしまう。

 

 まあ、男の欲を女が拒まないどころか、むしろ誘っているのだからそうなるのは当然なのだが、ともかくアルゴは完全に嵌っていた。覚えたての大学生だってもう少し加減するだろうという位には。

 

 ――今日も、カラードに甘えようか。

 

 寂しさに耐えきれなくなって、しかしボス戦を控えたカラードを邪魔してはいけないという思いが勝り、その場でメッセージを送るのは躊躇う。

 

 代わりに倫理コードを外そうとした時、メッセージを1件着信した。

 

 一瞬、事が済んでから返信しようと思ったアルゴだが、送信元を見た瞬間、そんな考えは眠気と共に吹き飛んだ。

 

 カラードからだ。これから会えないかと書いてある。

 

 アルゴは一も二もなく、期待に胸を膨らませながら「部屋で待ってる」とだけ返した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 入口のドアを開けると、見慣れた巨躯がアルゴの目に入る。

 

「あ、カーく――わぷっ!?」

 

 最初の時に本名も教え合ったが、どこで聞かれるか分からないからと結局アバター名呼びに戻っている。アルゴとしては少し不満だったが、「二人だけの秘密だ」などと言われては引き下がるしかなかったのだ。

 

 近頃、カラードの人物評が「口下手」から「女たらし」に上書きされつつある。嬉しいので否はないが。

 

「すまんアルゴ」

 

 そのカラードに、いきなり抱きしめられて台詞を封じられた。

 

 「何度か」という言葉ではボカし切れない()()を共に過ごしたが、ここまで唐突かつ強引なのは初めてだ。

 

「……ン、言わなくていいヨ。気が済むようにしてくレ」

 

 態度を見れば分かるし、そうなっている心当たりもある。

 

 節目の25層、協力する気のない攻略組、死者の頻発する攻略状況。ボス戦前ともなれば、流石のカラードも平静ではいられなかったということか。

 

(カーくんでも、こんなになることあるんだナ)

 

 しかも、あのカラードが自分に甘えてくれている。アルゴの記憶が正しければ、無理矢理膝枕させたとき以外だと初めてだ。少し驚きこそすれ、拒む道理はないし、圧倒的に嬉しさの方が大きい。

 

 第一、何やら包容力を見せているが、不安でどうにかなってしまいそうなのはアルゴも同じだ。ただ、カラードが先に弱みを見せてくれたからこうなったに過ぎない。

 

(けどこレ、今度こそ壊されちゃうかモ……♡)

 

 アルゴは内容の割に恍惚とした様子で、そんなことを考えながらカラードに身を委ねた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……んぁ、あレ?」

 

 幸せそうな、満ち足りた顔で寝ていたアルゴは、カーテンの隙間から差し込む光と、窓の外から聞こえる鳥のさえずりで目を覚ます。

 

 気だるさを感じながら体を起こして周りを見てみると、既に自分一人のようだ。

 

「オレっち、何……ヲ……」

 

 寝起きでぼーっとした頭が段々冴えてきて、昨日のことが思い出され、一気に顔が赤くなる。

 

「あわワ」

 

 求めてもらえるのが嬉しくて、我ながら随分なことまでやった気がする。深夜までは記憶もあるのだが、途中からほとんど気絶させられ、気づいたら朝に――

 

「っそうダ! 時間!!」

 

 ここでようやく正気に戻り、コンソールから時間を確認。

 

 11時33分。攻略組が迷宮区へ出発してから3時間半。とっくにボス戦の最中だろう。

 

「~~っ!」

 

 やってしまった。ボスクエについて調べ上げる気でいたが、カラードに夜通し貪られていたために頭から吹き飛んでしまっていた。アルゴの矜持には反するが、同時に「どうせこれ以上の情報は得られない」という思いがあったのも否定はできない。

 

 見れば、フレンドメッセージに未読のものが一件追加されている。

 

『ありがとう。行ってくる』

 

 言葉少なに、しかし必要なことは言ってくれる。いつものカラードだった。弱い所を見せてくれるのは、本当にアルゴにだけ、あの一晩だけのつもりらしい。

 

「にへへ」

 

 それが嬉しくて、アルゴはつい頬を緩ませる。

 

 午前7時48分着信となっている。8時集合のギリギリまで、ここに居てくれたらしかった。

 

「……行ってらっしゃイ」

 

 慈愛に満ちた表情で、カラードに貰った指輪を撫でる。

 

 最後の最後で抗うことを止めてしまった後悔はあるが、もし途中で気づいていても、自分はカラードに応えることを優先しただろう。だからアルゴは覚悟を決めて、ただ無事を祈ることにした。

 

 

 

 ――最前線で起こったことに彼女が気づくまで、あと2時間50分。

 

 

 

 

 

――おまけのおまけ:現在公開可能な情報――

 

 現在、カラードたちMTDは1軍2パーティー12名、2軍5パーティー30名。1軍だけで5~6パーティーを保有しているALSとDKBに比べ、戦力という面では劣っている。

 

 これは、攻略を目指すだけなら、最前線で得られるリソースを優れた個人に集中させるDKB方式が最高効率になるようデザインされているためである。一般構成員という巨大な足枷を抱えたままここまで攻略組に食い込んでいること自体、開発の想定にない快挙であり、暴挙である。

 

 事実、ヒースクリフの作り上げたいわば「お手本」となる血盟騎士団は、数十人の少数精鋭に全リソースをつぎ込む構造が採られた。

 

 ここには、製作者茅場晶彦の、勇者が魔王を倒すという構図へのこだわりが現れていると言えよう。大人数での攻略を前提としていながらその実、実際に茅場の認める「ヒーロー」たり得るのは、攻略組の中でも本当にごく一部の人々だけなのだ。

 

 それ以外の()()()()()を、茅場はどう思っているのか。それは本人のみが知る所である。




 UA20万、ありがとナス!!

19:21追記:魔王と勇者が入れ替わってたので修正(1敗)。

P.S.
 Twitterで「ラルゴ可愛い現象に陥ってしまってます(原文ママ)」て言われたの嬉しいけど草生えました。これでSEKIROの方のことだったら後で切腹します。
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