ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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 振り返りを兼ねた現状説明回なので初投稿です。


カラード・レポートⅡ

2024/3/21

 

 ――クォーターポイントである75層を過ぎれば、地盤固めの役割はほぼ完了したと見ていい。勝負のカギは作ったものをどれだけ維持できるかに移行する。

 

 最序盤からの動きが一つの転換点を迎え、以降本格的に「表」で動く必要があるという意味で、この75層という場所は一つ大きなポイントとなるだろう。

 

 それを踏まえ本稿は、74層時点における各勢力の動向と各層の状況について前回から変わった点を纏めることで、今後の行動指針を明確化するものである。

 

Ⅰ.経済

 前回のレポートで示した通り、アインクラッドにおける唯一絶対の「生産手段」はモンスターとの戦闘およびフィールドやダンジョンの探索、いわば狩猟採集である。

 

 あらゆる経済の流れの最も上流、一次産業に当たる部分が戦いである以上、社会は攻略組から降りて来る富に依存して形成されると言う点は変わりない。これは最終目標がゲームクリアであることを考えると当然の設計であろう。

 

 だからこそ、この数か月で新たにサービス業などの従事者が著しく増加しており、非戦闘員の中にも富裕層が発生しつつあるのは留意すべきである。

 

 これまで商工プレイヤーには攻略組が直接必要としている装備品や消耗品の類を仕入れて売る、いわば酒保商人の役割しかなかったため必要な人員も少なく、ごく限られた「エリート」だけで利ザヤを独占する状態が続いていたため問題にはならなかった。

 

 だが、独立商工組合の立ち上げた「料亭」の盛況を皮切りに、攻略組に飲食や嗜好品を提供するサービス業が台頭しつつある。限定的にではあるが、戦い以外の手段で富を得る層が増えてきているのである。

 

 現在はまだごく小さな流れでしかないが、将来的に「攻略組並の財力を持つ非戦闘員」、平たく言って「成金」が表側に出現する可能性は否定できない。その場合、先んじて何らかの手を打たないと攻略組人員の反感を買うと思われるため留意する必要がある。

 

Ⅱ.プレイヤー

 3/21現在、アインクラッドで生存しているプレイヤー数は7705名。攻略組及び底辺層の人数は11月に提示した表(前回カラード・レポートを参照)からほぼ変動が見られない。

 

 ここ4か月での最も顕著な変化は、やはり「中層プレイヤー」と呼ばれる存在が急減の兆しを見せていることであろう。

 

 この4か月間は3ギルド合同の引き締め戦略もあって非常にハイペースで攻略が進んだが、順調に最前線と平均レベルを引き上げる攻略組と対照的に、中層プレイヤーの平均レベルはなんと少し下がっている。

 

 これは現時点で確認されている300名前後の大半が4か月前の調査当時と同じ場所を狩場にしていることと、有望なものを片端から聖龍連合が抑えて攻略組の一員としたことに起因する。

 

 そのため、前回調査時には攻略組と比べてグラデーション的だったレベル差・実力差が現在はハッキリ可視化できるまでに広がった。

 

 既に後発で攻略組に合流しうるギルドは全て聖龍連合に吸収されるか自力で追いつくかし終えており、MTDが本部機能を移転し低層支援政策が事実上完了した現在では、最前線に追いつく道は事実上絶たれている。

 

 現在26~60層の中層ゾーンに残っているのは「それ以上は上がれない」もしくは「上がらないと決めた」ギルドとその構成員が殆どであり、彼らレベルでも中流上位程度の生活は出来てしまうためそれに満足している傾向がみられる。

 

 最前線にすら深刻な影響を及ぼしている士気の減退は中・低層ではさらに顕著である。

 

 概ね生活基盤を確保した中堅層は安定を求め今の暮らしの維持を優先しだしており、今後最前線が上がっても彼らは多くを求めず現在の層に留まることが予想される。

 

 すなわちここから先、「最前線直下層」は攻略組が去り次第、順次空白地帯になっていく可能性が高い。この部分のリソースを聖龍連合の2軍に独占されるのを防ぐため、ここに配置する人員の編制が急務である。

 

 ただし、現時点で60から74層はほぼ無人地帯となりつつあり、対処が後手に回っている感は否めない。最前線兵力が寡兵であるMTDでは、広範囲を占有して一斉にリソースを回収するやり方は向いていないのである。

 

 ではこの無人地帯に現在誰がいるかと言えば、半分は聖龍連合や血盟騎士団の2軍であり、そしてもう半分はラフィン・コフィンである。

 

Ⅲ.アウトロー

 前回から急速に減ったものは中層プレイヤー層だが、逆に劇的に増えたものもある。それが所謂犯罪プレイヤーである。必然的に、本稿において最も文量を割いて分析する分野となる。

 

 彼らがここまで伸張した最大の要因は、カリスマ的犯罪ギルド「ラフィン・コフィン」の出現である。

 

 ラフィン・コフィンの旗揚げムービーが公開されて以降、各地に存在していた犯罪コミュニティは急速に拡大・合併を繰り返し、瞬く間に「ラフィン・コフィン」という旗のもとに統一された。

 

 三大ギルドによる寡頭制を敷く「表」と違い、「裏」は既にラフコフ一強体制の天下が出来上がっている。

 

 彼らは表向きそれぞれの組織を名乗り、中には合法的な事業しか行っていないものも多くいるなど巧みにアインクラッドに潜伏している。

 

 現時点での人数は準構成員を含めると500人に迫り、3つの二次団体と不特定多数の三次団体を抱え、アインクラッド第2位の商業系ギルド「ロンゲン商会」までを企業舎弟として抱き込むなど文字通りの犯罪結社として機能しつつある。

 

 判明している限りでは、全体の組織図は以下の通り。

 

【挿絵表示】

 

 PoHと呼ばれる男がトップに立ち、直下にザザ、ジョニー・ブラック、モルテの三幹部が続き、それぞれが部下を率いてラフコフ本部を構成する。

 

 また併合した犯罪ギルドのうち有力なもののトップも、PoHや幹部たち共々執行部として直参幹部と同列の権限が与えられており、この8人の会議で行動方針を定める、という建前になっている。実際には本部の直参とそれ以外の面子の間には厳格な格差がある模様。

 

 なお、ラフコフはPoHのカリスマによって結束しているワンマン組織であるため、執行部の意思決定はあくまでPoHありきと見るべきであろう。

 

 

Ⅲ-ⅱ.ラフィン・コフィン

 正確なところは依然不明であるが、現在ではラフコフの活動実態もある程度は分かってきている。

 

 彼らの行動は多岐にわたるが、その原因は各組織が独立して「シノギ」を抱えている現実の反社会的勢力に似た組織形態をとることにある。

 

 そもそもラフコフ本部は本人たちも自称する通り快楽殺人者あるいは刹那主義者の集団であり、最低限の組織運営以外はもっぱら見せしめや殺戮・略奪に明け暮れ、実際の行動は下部組織が担っている。

 

 例えばタイタンズハンドなら抗争、タリスマンはMTD予算の中抜きと管理売春、サンダース組は聖龍連合の切り崩し、ロンゲン商会は盗品売買や攻略組用物資の横流し、資金洗浄……という風に、それぞれが特色を持って、主に攻略組から金を吸い上げている。

 

 彼らの勢力伸長は恐るべきことにほとんど知れ渡っていない。相手に対峙した時、「ラフコフ」ではなく元々のギルド名を名乗るため、確たる証拠を別途で揃えなければそこがラフコフの傘下かどうかわからないのである。

 

 また、各ギルドが攻略組の大規模利権に根深く食い込んでいるため、迂闊に摘発してしまうと40層でスエーニョが起こした一件のような結末、最悪の場合ギルドが割れる可能性さえ孕んでいる。

 

 迂闊な接触は避けるよう全ての攻略ギルド上層部にそれとなく促すと共に、40層当時のアスナのような先走りを可能な限り察知し防がねばならない。

 

 戦力や情報の不足もそうだが、何より今の攻略組の在り様では、攻略以外のことに関して短時間のうちに足並みを揃えるのは不可能に近いと思われるためである。今はまだ、その時ではない。

 

 

Ⅲ-ⅲ.戦闘リソース

 現在のラフコフは、最早攻略ギルドが丸ごと1個遊んでいると言っていい勢力を維持している。

 

 トップのPoHを筆頭に本隊の70名は潤沢な資金と「空白地帯」の経験値利権によって鍛え上げられており、既に練度では攻略組の1軍とほぼ相違ないレベルにまで到達していると目される。

 

 ロンゲン商会を経由でエッジウォーカー製の武具が大量に流れているのも確認しており、プレイヤーメイド装備で揃えたレベル80台の兵力を数十人単位で抱えている可能性が高い。

 

 また、聖龍連合を筆頭に攻略組から脱落したとされるメンバーが複数名彼らのグループに合流していることも確認している。そういったメンバーが練兵役を担い、連携や戦闘技術を浸透させているようである。

 

 ラフィン・コフィンは犯罪プレイヤーの総本山であると同時に、最前線で戦い続けることに飽きたり、更なる欲望を満たそうとした結果犯罪プレイヤーに落ちた実力者の受け皿でもあると考えられる。

 

 もはや治安維持勢力と真正面から激突できる中南米の麻薬カルテルのごとき様相であるが、女と賭博を通じて攻略組から吸い上げた金額と裏で独占していると思しき経験値稼ぎスポットを考えると無茶な想定とは言えない。

 

 また、二次団体では突出した戦力を持つと目されるタイタンズハンドも目撃情報を纏める限り平均レベル50程度にレベル60程度の指揮官級のハイローミックス方式と目され、これらの戦力を考えるに、最早全面対決は攻略組の損耗から見て得策ではないと言わざるを得ない。

 

 

 これらを踏まえ、来る75層の先では――

 

 攻略組それ自体を1個の組織に固める必要がある。

 




 ワンポイントナナチ:軍人崩れから麻薬カルテルに雇われて兵士の教官役、というのは現実でも鉄板の転落人生コースだ!

 他に聞きたいことあったら活動報告にでも書いておくとこっそり加筆されるかもしれないゾ。

2/21 22:07追記:Ⅲ-ⅱ.ラフィン・コフィンの末尾部分が尻切れトンボになっていたため修正。後でもう一度大規模加筆を挟む予定。

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