ソードアート・オンライン ラフコフ完全勝利チャートRTA 2年8ヶ月10日11時間45分14秒(WR)   作:TE勢残党

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R18が待ち望まれているので初投稿です。
リズベット、ヨルコ、ルクス、サーシャ……候補が多い……


21/n おま〇け(後編)

 いわゆる見た目装備の概念は、SAOには存在しない。

 

 代わりに、それぞれの装備のカスタム幅がとんでもなく――色、模様、装飾はもちろん簡単な形状変更やアタッチメントの有無に至るまで――広いのがウリである。

 

 性能そのものが変化する訳ではないため、主に「制服」として使われる機能だが……一目で所属がわかり勢力を誇示できる利便性の高さから、三大ギルド全てが「制式装備」と言う名のアレンジのテンプレートを持っている。 

 

 翻ってMTDの制式装備は、ガンメタルカラーの全身鎧に顔の上半分を覆うヘルメット、濃緑色のマントと、ギルドエンブレムが入ったタワーシールド。重金属装備+盾持ちを前提としており、攻略組で最も重装備である。

 

 一軍も上位層になると各自の戦闘スタイルに合わせてアレンジする(コーバッツのように、推奨装備を完璧に守ることに誇りを見出す人種もいる)が、大半の戦闘員は律儀にこれらの意匠を守る。

 

 数が多いのも合わせて、集まった際の物々しさは攻略組でもダントツだ。

 

 元々、この装備はハードなレベル上げや作戦行動時に「何があっても生き残れるようにすべし」というカラードの発案による。

 

 それがシンカーに支持され、リズベットがリクエスト通りに意匠をデザインし、所謂"オタク受け"するように出来上がったそれらをカラードに褒め倒され赤面、という一幕を経て今に至っている。

 

 組事務所の前にいる機動隊に似てる(アレックス)、第一の大剣(クレイモア・ワン)って確かこんな感じだった(ジマ)、ファイアーエムブレムの敵が着てるやつみたい(ユウママ)、シャアが乗ってない方っぽくなったわ(リズベット)等と一軍からは微妙な評価の制式装備だが、中堅以下からの評判は意外に高い。

 

 外見を揃えるのに重金属装備が必要なので自然と防御力が高くなり、何より結果として生存性が高まるためだ。

 

 戦闘員は入団した際に最低限の装備一式を支給されるため、攻略初期には「重金属装備を安価で支給してもらえる」という理由で低レベルながらやる気のあるプレイヤーの入団が相次いだ。

 

 彼らは生存を重視した訓練方針で鍛え上げられ、他ギルドが確保に苦労しているタンクを一軍中堅~二軍上位レベルに数多く揃える優位性となって結実した。

 

「互助と貢献」という建前にマッチしたその鎧姿は、「プラス10レベル相当の堅さ」とすら称され、一般プレイヤー達に安心感を与えているのだ。

 

 

「盾構え」

『盾構え!!』

 

 そんなMTD制式装備を揃えた集団が、カラードの号令に間髪入れず復唱を返し、キビキビとした動きで大盾を突き出す。

 

 一瞬で重なりなく並べられたそれは、74層主街区「カームデット」の路地を隙間なく塞ぎ、盾を持つMTDの2軍戦闘員たちをすっぽりと覆い隠す。

 

「前進、5歩」

『前進5歩! 1、2、3、4、5!!』

 

 スムーズに重なる声と、澱みなく真っ直ぐに進む隊列が、この作戦が採られるのが初めではないことを示している。

 

「槍構え」

 

 隊の2列目、長槍を構えた戦闘員が武器を構え、同時に作られた盾の隙間から「攻撃」の号令と共に突き出される。

 

 なお、そのさらに背後の3列目にはポーション類や結晶アイテムを大量所持した後衛がおり、適宜回復や毒物の投擲を行う予定である。

 

「……まあ、こんなところか。休憩!」

 

 カラードがそう発すると、場の張りつめた空気が一気に霧散する。

 

「2軍の連中バテバテじゃねぇか。カラードも人使いが荒いよなぁ」

「聞かれても知らないっすよ」

「我々の仕事は先ほどの連携の対策を考えることです。お二人とももっと真剣に……」

 

 上からアレックス、ジマ、ユリエール。

 

 MTDでも最強と名高い「遊撃隊」に所属する彼らは、両手剣使いで火力偏重のアレックス、両手槍を持つ後衛タイプのジマ、盾持ちの片手剣でタンク構成のユリエールとバランスが良いことから、この三人を最小編成として作戦に臨むことが多い。

 

 そんな三人は今、先ほどの連携の"敵役"として、槍の向く先で突っ立っていた。

 

「お前たちならどう崩す?」

 

 そこへ現れ、前置きもなく本題を切り出すカラード。こういう不躾な所は、MTDの旗揚げから1年3ヶ月が過ぎようという現在になっても変わっていなかった。

 

「カラード! へへ、やっぱアタシなら壁蹴って上から攻めるかなァ」

 

 真っ先に反応したのは、やはりというべきかアレックスだった。

 

 MTDでは例外的に軽装……というか、胸部を守るチューブトップじみたスケイルメイルと装甲板のついた腰巻(短すぎてスカートという言葉が似合わない)、後はガントレットとブーツだけという全プレイヤーで見てもトップレベルの"紙装甲"。

 

 普通にしているだけで人目を惹き付ける豊満な双丘をわざとらしく揺らして、身振り手振りでカラードに持論を説明する。アピールするのは勿論のこと、「先の槍衾を崩す方法を考えろ」というカラードの言い付けに答えることも忘れない。

 

 カラードにとってアレックスの価値はその美貌や肉付きの良い肢体ではなく、その戦闘力と知見にある。そして彼女は肝心な所でそこを弁えてカラードを立てられるから、傍でベタベタするのを許されているのである。

 

「あー、おれだったら後ろから回り込むっすね」

 

「私も……隊列が完成する前に攻めるか、機動力を生かして迂回する方法が有効と思います」

 

 それに続けて、ジマとユリエールがそれぞれ考えを述べる。

 

 ジマは槍を取り回しやすいように手足の装甲が減らされた専用装備で、ユリエールはヘルメットの代わりに状態異常耐性効果のあるサークレットを付けた以外は全身鎧の(本人の怜悧な顔つきのせいで、しばしば"女騎士"と称される)出で立ちだ。

 

「すると、正面からの突破はお前たちでも難しいか」

 

 カラードの問いかけに、アレックスは「ムリだな」と即答。続いてジマが「20レベル差なんでやられはしませんけど、あの盾と鎧抜くのはちっとしんどいっすね」と答え、最後にユリエールが二人の発言に同調する。

 

「しかしカラードさん。こんな戦法特訓して何に使うんすか?」

 

「そりゃお前、迷宮区の通路でこれやってモンスター止めるんだろ」

 

 ジマの疑問は、アレックスの即答によって霧散する。

 

「付け加えるなら、低レベル者の戦力化に使えないかと思ってな。手の空いていた二軍の面子に実証を頼んだ」

 

 実際それはもっともらしい答えであり、カラードもそれに同意したことで、それ以上の疑問が出ることはなかった。

 

(……軍隊、っつうか、警官隊っすね)

 

 だがジマはこう見えて察しが良い。

 

 カラードの用意した戦術と、盾を持って通路を封鎖する重装備の軍勢を見て、彼は「デモ隊を鎮圧する警官隊」という構図に思い至っていた。

 

 街道の封鎖。暴徒の鎮圧。市街戦。

 

(だとしたら、この訓練が想定してる"デモ隊"は)

 

 想像が至り、SAO特有のオーバーな感情表現機能によって顔が青ざめていく。

 

(カラードさん。あんたには一体"何"が見えてて、どんな方法で対策をしようとしてるんすか……?)

 

 

 

「……どうすんだ? 多分ジマ気づいたぞ」

 

 ジマの想起は、かなり核心をついている。それに気づいたアレックスは、解散して二人きりになってからさりげなくカラードに問いかけた。

 

「気づいて貰わないと困る。完全な一枚岩では後々不都合が大きい」

 

 ジマは他の幹部たち同様、カラードの企図する粛清についての情報を持っていない。情報が流されているのは、ラフコフとそれを経由した一部の犯罪ギルドのみである。

 

 彼もまた、昨年のクリスマスでの一件以来低層には近づいておらず、下層の実態を知らない身だった。

 

 それ故、カラードの目的に気づけても、その奥に控えるモノについては気づけない。

 

「違和感」は思索を招き、検討材料の足りない状態での思索は間違った答えを齎す。見当違いの答えを得て安心した人間は、何も考えていない者よりよほど鈍くなるものだ。

 

「そっか。良くわからんけど、カラードがそう言うなら大丈夫だな!」

 

 一方、アレックスの欠点は「考えられない」ことだが、強みは「考えない」ことである。彼女は頭の出来がよろしくないからこそ愚直に、文字通り全幅の信頼をカラードに向けることができるのだ。

 

「ああ、何も問題は無い。だが、確認したのは良い判断だった」

 

 言いながら、アレックスの身体を抱き寄せる。

 

「褒美をやる。いつもの所に来い」

「……っ♡」

 

 耳元で囁き、すぐに何食わぬ顔で離れていくカラード。

 

 アレックスはこれから行われることへの期待でゾクリと体を震わせると、しかしすぐに我に返り、そそくさと帰っていくカラードを追いかけて小走りで転移門へ急ぐのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「兵隊どもの具合はどうだ、シトリー」

 

 アインクラッド第50層、三大ギルドが立ち入り禁止に指定した迷宮区の奥地。

 

 表の人間には知られていない安全地帯に、殺人ギルド「ラフィン・コフィン」の本拠地はある。

 

「概ね想定ペースだよ。ただ、犯罪者に集団行動を叩き込む訳だから、出来栄えには期待しないでほしい」

 

 名実ともにアインクラッド最悪となったギルドの長、PoHに声を掛けられても、シトリーと呼ばれた女は至って自然体であった。

 

「今すぐ連中を海兵隊に仕立てろとまでは言わねぇさ。最低限、上の命令どおりに動いてくれりゃあいい」

 

「言う通りに動かすだけなら1ヵ月もあれば出来るかな。士気は高いし、レベリングの方は順調だから、ある程度はレベルで補う形になるね」

 

 背が高くすらりとした体型、やや緑がかった黒髪を無造作に伸ばした彼女は、犯罪ギルドの塒というこの場所には似つかわしくないほど整った顔立ちをしている。

 

 初対面の者はその美貌に見とれ……少ししてから全く表情が動かないことに気づき、彼女もまた「ラフコフ」の新幹部に相応しい人材であることを知るだろう。

 

「しっかし、知れば知るほどおっかねぇなあシトリーちゃんは」

「善悪に頓着ゼロの状態でよく今まで聖龍連合に収まってましたね」

 

 口ぶりとは裏腹に上機嫌なジョニー・ブラックとモルテが、二人の会話に口を挟む。

 

 メンバーが増えてもなお、彼らの気安い雰囲気も、やり口のえげつなさも変わってはいなかった。

 

「あそこはお金払いがよかったけど、ここ何層かでノルマがきつくなったから。それにこっちにいた方が色々面白そうだし」

 

「こっちにいた方が断然刺激的なのは保証しますけど、真顔で言われると何か怖いですねえ……」

 

 聖龍連合二番隊副長。それがシトリーの"前職"である。

 

 強い方から順番を付け、1位と2位を一番隊の隊長と副長に据え、3から7位までを各隊の隊長にする聖龍連合のシステムは、ちょうどシトリーのような意図的に隊長クラスにたどり着かないように成績を調整する者に対して無力であった。

 

 彼女はその不自然に調整された成績をPoHに見いだされ、既にラフコフの手中に落ちている2番隊隊長と7番隊(補給や事務仕事、メンタルケアを行う非戦闘員)隊長の仲介を経てスカウトされ今に至る。

 

「しかし、ここまで、本格的な、連携訓練が、出来るとは。PoHも、良い人材を、見つけて来る、ものだ」

 

 近くの壁に寄りかかっていたザザが、いつもの途切れ途切れの口調で功績を提示する。

 

 事実、彼女がスカウトされたのは、本人の戦闘能力が高かったからというよりは、副長として培った戦術指揮能力をPoHに買われたからだ。

 

「誰がどこにいるか、どういう能力かだけ頭に入れておけば、後は動かすだけだから簡単だよ」

 

「戦いながらそれが出来れば苦労はないんですよ……」

 

 こともなげに言ってのけるシトリーと、その天才肌っぷりに苦言を呈するモルテ。彼女がラフコフ本部に移籍してからの1ヵ月ほどで何度も繰り返された光景である。

 

()()()()()()で生き残って、かつ楽しくやってこうと思ったら、ただ鍛えるだけじゃなくちゃんとした指揮官と訓練がいる。そこらに関して、攻略組との差を埋めるのがお前の仕事だ、シトリー』

 

 レイド単位でのボス戦の経験を持たないラフコフは、単体戦力はもちろん集団戦においても攻略組には1歩も2歩も劣ると言わざるを得ない。ただでさえ、犯罪者に身をやつすようなプレイヤー達は自分勝手で、集団行動に向かない者がほとんどだ。

 

 今まではPoHのカリスマ性と上層部による恐怖政治で纏まって行動出来ていたが、これ以上の戦力を得ようと思えば、次は人員の増加ではなく質の向上にかじを切ることになる。

 

 そのための指南役、訓練教官として白羽の矢が立ったのが、新入りであるシトリーだったという訳だ。

 

 果たして彼女は十分以上の働きをした。シトリー加入を皮切りに、それまで強い者を引き抜いてきて並べる方式だったラフコフ戦闘部門は急速に組織化、練兵されている。

 

 今や彼らはただの殺人集団ではなく、組織的な軍事行動の可能な戦闘集団となりつつある。

 

「それで、ウチからの装備購入も一気に増やしてもらえてる訳ですか」

 

 その場に同席している褐色肌の女が、何やらコンソールにメモを取りながら発言する。

 

「そうだロンゲン。兵隊のレベルが上がれば、お前んとこに装備を発注することになる」

 

「それはそれは。今の内に材料を集め始めた方が良さそうですね」

 

 短いタイトスカートの中が見えそうになるのも構わず足を組み、本格的に計算を始めるロンゲンと呼ばれた妙齢の女性。

 

 彼女こそ、ラフコフの企業舎弟ことロンゲン商会のトップである。主な業務内容は攻略組クラスの装備品の横流しと、マネーロンダリング。

 

 アインクラッド全体二位の経済規模を誇る彼女等は、今や完全なるラフコフの資金源であり、装備供給源であり、職人プレイヤーとの接点だった。

 

「ま、らしくねぇのは承知の上だが……これもどでかいショーをぶち上げる為さ」

 

 PoHの発言により、その場の空気が一気に張りつめる。

 

 憎しみをぶつけるため。日々を楽しく暮らすため。更なる悦楽を得るため。より畏れられる、影響力のある自分になるため。金儲けのため。ビジネスと、後は退屈しのぎに刺激が欲しくて。

 

 方向性は違えど、彼らは皆、表では手に入らない何かを求め、そしてそれを与えるPoHのカリスマに憧れてここへ集まったのだ。

 

 彼らの名はラフィン・コフィン。

 

 手段を問わず、ソードアート・オンラインを()()()者達である。

 

 

「知っての通り、74・75層で状況が動く。まずは始まりの街だ」

 

 言いながら、PoHは楽しげに一つのインスタントメッセージを開き、ウインドウを可視化しギルドメンバーに見せた。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」 

 

 ――久々に、合作を楽しめそうだ。イッツ・ショウ・タイム。

 




久々の投稿にも関わらず、評価・感想ありがとナス!!
まだ返しきれてないけど全部見てるゾ。もっとちょうだい♡(強欲の壺)

11/10 07:30追記:経過時間について修正(1年半→1年3ヶ月)。
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