黒バス ~HERO~   作:k-son

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外伝;青春限りなく 後編

「はぁ...流石に少し疲れたぜ。」

 

決勝戦が終了し、表彰式を粛々と終えた。

控え室に戻った帝光中は着替えていた。

青峰は、たった3分間といえど、疲労を感じており、汗を拭う。

 

「お疲れ様です。青峰君。」

 

「ああ、悪ぃな。」

 

黒子からスポーツドリンクを手渡され、ゴクゴクと喉を鳴らしながら体内に水分を補給する。

もはやそこに確執はなく、当たり前のやり取りがあった。

 

「怪我、大丈夫なのか?」

 

「ふふ...それさっきも聞きましたよ?」

 

「そうか...。」

 

興奮未だに冷め遣らぬ。まともにプレーしたのが3分だけだが、確かな意義があった。

本音を言うと、もっとやりたかった。やり足りないけれど、終わってしまった事は仕方が無い。

 

「そういや、さつきは?」

 

「多分、明洸の様子を見に行ったんだと思います。」

 

「っち。余計な事すんじゃねぇっつの。」

 

勝者が敗者に言う事などない。

何を言っても皮肉になり、言い繕えば侮辱になる。

英雄ならヘラヘラと受け流してくれそうな気がするが、今回ばかりは別だった。

 

「でも、気持ちは分かりますよ。僕も初めて見ましたから...英雄君が泣くところなんて。」

 

黒子は、試合終了のブザーが鳴った時の事を思い出す。

 

 

 

【負け...か。】

 

敗北が確定となった時、英雄は天を仰いでいた。

 

【はぁ...はぁ...】

 

【大丈夫?もっちー。】

 

膝をついて俯きながら息を整える持田に手を貸して、整列に向かう。

 

【...英雄。】

 

【ったく。最後まで厳しいマーク、ありがとさん!!お前の勝ちだよ!!】

 

正面に立つ緑間に皮肉をなるたけ込めて賞賛。

DFばかりになっていた緑間だが、その分英雄の動きに食らいつき続けていた。

 

【...半分だ。】

 

【何が?】

 

【今度は、貴様から3Pを決める。何本もだ。】

 

【そーですか。そりゃよろしい事ですねぇ。】

 

負けた直後では付き合いきれないと英雄は肩をすくめながら話を切った。

整列後のアイサツが終わり、両チームが分かれていく。

 

【...みんな、俺達は最後まで戦い抜いた。胸張って帰ろうぜ!】

 

明洸のエース荻原が表情の暗いメンバーに向かって声を掛けた。

試合を見ていた全ての観客から、健闘した明洸へ大きな拍手が巻き起こっている。

負けはしたけれど、記憶に残るような試合をした彼等に恥じる事などない。

 

【そう...だな。...ぁあ。】

 

それぞれが笑って退場できるように強引に口角を吊り上げる。

ベンチに戻り、バッグを手に取り、控え室へと戻ろうとする時、英雄が足を止めた。

 

【英雄?】

 

【...みんな。ごめん...俺、勝たせてあげられなかった。】

 

頬を伝う涙を見た瞬間、全員の涙腺が崩壊する。

 

【何...やってんだよ...最後まで...カッコつけろよ】

 

【俺が...もっと、上手くやってりゃあ...】

 

荻原が限界まで顔の筋肉を留めるが、英雄の一言でそれを手放した。

 

【ちくしょう!何が準優勝だ!!】

 

【俺のせいだ!俺がもっと点を取れば...】

 

【違う!俺が、ちゃんとDFしてれば!こんなに失点しなかった!!】

 

たらればに意味は無い。しかし、次に繋がる事が出来れば、意義を得られる。

彼等は大勢の目の前で泣き続けた。己の弱さ、未熟さを思い知らされ、熱き想いが涙に変わる。

それはきっと、彼等が己の反省点を後悔出来るほどに感じた事に他ならない。

 

【英雄!ごめん!!】

 

荻原は、ただ謝る事しかできない。

あの3分間は、体が着いていけなくなり、英雄に全てを背負わせてしまった。自由にすると言っておきながら。

黄瀬のマークから逃げられなくなり、DFも機能しなくなった。

明洸の3本柱と言われていても、重要なショットを決めても、他の場面は英雄と灰崎に頼りきりになって、結局その場所まで到達仕切れなかった。

それが悔しい。期待に応えられなかった事が、不甲斐ない。

 

泣き続け、最後には同じ事を嘆き続けた。

 

勝ちたいと、ただそれだけを。

 

彼等は全力で敗北を受け止めた。歯を食いしばり、涙を零し、鼻水を流しながら。

 

 

 

「...正直、そういう細かい事は良く分からねぇ。でも、勝てた事を誇りに思うぜ。」

 

「そう、ですね。」

 

その手に残った熱を再び握り締めた青峰。

 

「出来れば、僕も出たかった...。」

 

「あ、悪い。」

 

「いえ。仕方の無い事ですから。」

 

しかし、観客と同じ立場で見ていた黒子には分からない。白いラインで隔絶された四方の領域。

そこに足を踏み入れたかった想いは誤魔化せない。

 

「...これで終わりなんですね。」

 

続けざまに黒子が中学時代の終焉を実感し、言葉を零す。

最後に残せたものは無く、傍観者としての終わり方。舞台上で黒子の役割すら果たせなかった事は、悔しくもある。

 

「そうだな...。(アイツは、どうするんだ?)」

 

移り変わる時代に1つの節目を迎えた今、考えるべきは次なる時代の到来。

 

 

 

それは、キセキの世代と同年代達にとって、非常に重要なものである。

 

「確かに、まだ終わっていなかったな」

 

「そうだな。」

 

リコに同行して明洸の応援に来ていた誠凛の面々は、次々と試合会場を後にする観客に混じって帰宅を始めていた。

伊月は、決定的な点差を付けられた状況から劇的に持ち直した明洸を見て、そんな風に感想を言った。

それに答える日向だが、表情は重い。

 

「見事だった明洸中学。」

 

「木吉?」

 

松葉杖で歩く木吉は、後ろ髪を引かれるような面持ちで、大会が行われた大きな会場を見つめていた。

伊月に問いに木吉は答えることはない。

 

「カントク~...いつまで泣いてるんだよ。」

 

「..っさいわね!...こっち見ないでよ!!」

 

リコは英雄が泣き始めた瞬間にもらい泣きしてしまい、今でも引っ張っている。

心配する小金井の背中を押して、顔を見られないように努めていた。

 

 

 

「来てよかったな。」

 

「IH終わってから直ぐにこっち来たからね。やっぱ化け物だわ、キセキの世代。」

 

少し離れた場所に、強豪洛山高校に進学した『無冠の五将』根武屋、葉山、実渕がそろって京都へと帰宅していた。

ほぼ同じ期間で行われる大会だけあって、疲労を押したままの移動はしんどさを隠せないが、それでも監督に無理を言って観戦に来ていた。

観戦に来た事をやはり間違いではなかったと根武屋が言い、葉山も肯定する。

 

「...。」

 

「玲央姉?」

 

試合が終わってから黙り続ける実渕に疑問を持ち、葉山が問いかける。

 

「んもう、うるさいわね。感傷に浸ってるんだから静かにしてよね。」

 

前髪を掻き分けながら、不満を口にする実渕。

実渕が言わんとする事は2人も理解は出来る。

 

「お前...明洸に自分を移し見てんじゃねぇだろうな。」

 

「なんだ、みんなもか。」

 

「...さっき、木吉もいたけど、似た様な顔してたわ。」

 

キセキの世代と向かい合い絶望した人間ならば、この考えは共感できるだろう。

試合の途中で自分に言い訳をして、試合を投げた己が酷く醜く見えてしまう。古傷が痛むどころか、切り裂かれて神経に到達しているかのような痛み。

 

「それに、他人が負けるところを見て、美しいと思ったのは初めてなのよ。」

 

誇り高く胸を張り、本当の意味でキセキの世代と戦い、そして散った。

他のチーム同様に儚い後姿には、美があった。

 

「補照、灰崎、荻原ね...覚えとくよ。」

 

「だな。きっと来るぜ、来年にな。」

 

明洸トリオの名をもう1度心に刻もうと復唱する葉山。

コートで必ずまみえる事を確信した根武屋。

 

「同じチームってのも面白そうだけどね。」

 

帝光を敵対する為に転校した噂が本当であれば、英雄が洛山に来る事はないだろう。そんな事を分かってか、皮肉交じりで実渕が言った。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

本格的に帰宅をしていると、葉山が明後日の方向を見て足を止めた。

 

「多分、今花宮がいた...かも。」

 

「どっちよ。」

 

「ま、居てもおかしくはないだろ。」

 

野生児溢れる葉山が見た人影は直ぐに人ごみに紛れてしまった。

 

「...そういやぁよ。花宮って今どこにいんだ?」

 

「確かに聞かないね。」

 

「それは、木吉もそうでしょ。」

 

そう。彼等は既に来年度の事を考えている。

終幕の合図にはもう1つの意味があり、いわば次の開幕までの幕間の時間である。

どのようなキャストで、どのような筋書きなのかはまだ分からないが、既に始まっているのである。

 

 

 

 

季節は夏から秋へ。

もう直ぐ衣替えというのに日中の気温に下がる気配はないけれど、胸に宿った熱は薄れつつある。

キセキの世代の中学時代は、引退・引継ぎを行って正式に終わった。

既に帝光中バスケ部も来年度に向けて、始動を始めている。

 

「この後どうするの?」

 

「ストバス行ってくる。」

 

そんな中、青峰だけは未だ冷めぬバスケへの熱意を抱え、腐ってしまわぬようにボールを突き続けていた。

 

「だったら体育館使わせてもらえばいいのに。日が落ちるの早くなったから、直ぐに暗くなるよ?」

 

「んな訳にいくかよ。引退した先輩がくるなんて厄介者以外の何者でもねぇよ。」

 

今までが今までだったが、基本青峰は面倒見の良いところがあり、多少の気遣いはできるのだ。

 

「仕方ないなぁ。付き合ってあげる。」

 

「あぁ?何だよ。」

 

「いいからいいから。あ、あれだったら差し入れ持ってきてあげようか?」

 

「殺す気か?もう残飯処理係りはいねぇんだぞ。」

 

悪い夢だったかのような日々は終わりを告げて、青峰は青峰というバスケ馬鹿に戻っていた。

1年間の悪夢を見てきた分、桃井の表情も明るくなっていく。

ちなみに、残飯処理係りというのは英雄の事で、時たま桃井が差し入れを青峰がげんなり顔で見つめていた時の事。

 

【何それ、イカ墨のフルコース?】

 

真っ黒な弁当の中身を見てなるべく上等なものをイメージしたのだが、限度がある。

 

【だったら...よかったなぁ。】

 

遠い遥か彼方を見つめながら、箸で空気を掴みながら現実逃避。

腹は減っている、それでも箸を伸ばす勇気が沸かない。

 

【女の子からの弁当なんて羨ますぃ】

 

【ホントか!?だったら食ってくれるのか!!?】

 

【...ゴメン、嘘ついた】

 

【んだよソレ!!冗談でも言っていい事と悪い事ってあんだろ!!】

 

この時初めて青峰が英雄に対してマジギレした。その温度差に溜まらず英雄も素直に謝る。

弁当1つでどれだけ一喜一憂しているのだろうか。

 

【一応聞くけど、元は普通の食材だよね?】

 

【多分な。】

 

【リコ姉レベルの人って他にも居たんだねぇ。じゃあ大丈夫か...】

 

そして英雄は発言の責任を取って、その真っ黒なお弁当を処理する事となった。

始めは青峰も喜んでいたものの、それで英雄がどうにかなってしまうのではないかと、それを口に運ぶ姿を凝視していた。

 

【...おお。】

 

普段ヘラヘラしている英雄が、この時ばかりは無表情で淡々と黒い何かを食べ続けている。

---シュール

 

曰く、泥団子以下なら大丈夫との事。

同じ様な涙ぐましい経験をして、味覚がイカれてしまっている英雄に後でアイスを奢っておいた。

今となっては良い思い出である。

 

 

「えぇ!?食べてくれてると思ってたら、あれヒデりんだったの!?」

 

「たりめーだ。この若さで頭をスパークさせたくねぇ。」

 

今まで伝えていなかった真相に桃井がショックを受けている。

正直知ったことではないが。

 

「何なのよ!こっちは良かれと思って作ったのにぃ!」

 

もう変わり身が居ない以上、正直に申し出を拒否する青峰。桃井はどこか不満気で、ジト目で見ている。

 

「そう言えば、野村台のスカウトにまだ返事してないの?」

 

「...まぁな。」

 

青峰は進路を決めかねていた。

緑間は既に東京三大王者の秀徳に決めており、黄瀬は親の都合で神奈川に引っ越す事となったので神奈川の強豪に進学するだろう。

赤司にも多くの強豪からの誘いがあり、紫原もおおよその進路が決まりつつある。

当然、天才スコアラー青峰にもスカウトが着てるのだが、青峰は安易な答えを躊躇っている。

 

「なんで?いい学校じゃない。断るでもなく、保留はよくないよ?」

 

「うるせぇ、別にいいだろ。」

 

桃井が何度聞いても答えようとしない。

何か考えあっての事だろうが、許されている時間は長くない。

桃井の質問をあしらった後、青峰は上の空状態が続き、コートのある公園まで黙りこくっていた。

 

「あれ?今日は先客が居るみたいだね。」

 

公園の中央で高いフェンスに覆われたコートには、先に誰かがバスケをしていた。

数は2人。

 

「おし!」

 

「くそ!」

 

「へっへへ~。」

 

1対1をしているのだろう。コートの半面を使って勝負をしている。

 

「にしても、日本にもお前みたいな奴がいたんだな。」

 

悔しそうにしていた片方の男性が笑っている。

 

「日本にも?言ってる意味が分かんないけど」

 

そしてもう片方の人物。特徴的な天然パーマが動きと共に揺れていて、全体的にユルいオーラを纏っている。

 

「俺、アメリカ住んでたんだけどよ。こっち帰ってきて中学のレベルの低さにショック受けてたとこだったんだよ。」

 

「ほ~、アメリカねぇ。そんでプラプラしてると...そういえば時間大丈夫?夕方から用事あるっつってなかったっけ?」

 

「あ、マズっ!?」

 

片方の見たことのない人物は焦りながら荷物を手に取り、コートの外へと。

 

「決着はまた今度だ。何時会える?」

 

「俺地元ここなんだけど、色々あって明日どこでバスケしてるか俺にも分かんないの。」

 

「なんだそりゃ。」

 

「悪いね。後、もう1つ。今の日本も結構熱いよ。保証する。だから、もう少し鍛えてきてね。」

 

見知らぬ人物が青峰の横を通り抜けていき、すれ違い様に目が合っていた。

 

「んだ...アイツ。」

 

「おっきいねぇ。大ちゃんと同じくらいかな。」

 

全国大会を経験している青峰にとって、同じくらいの身長を持つ者などそこまで珍しくも無い。

だが何と無く、気になった。予感がするのだ。

 

「あ~、やっと涼しくなってきたねぇ。って、よっ!ご両人!!」

 

汗でビッショリになっているTシャツを脱いで、木陰のある青峰達の方に移動してきていた英雄が、変わらないテンションで挨拶を向けている。

 

「英雄...つか学校はどうした。」

 

「青峰に言われるとわね。」

 

「確かに。」

 

2学期はとうに始まっているのにも関わらず、どうして目の前の人物はこんなところにいるのだろうか。

青峰の問いに英雄は桃井と2人して冷やかした。

 

「やかましい。言っとくけど、授業をサボったことはねぇんだよ。」

 

なんだかんだ言って、青峰はその一線を越えた事はない。

なんの自慢にもならないが。

 

「実家に用事がありまして、ついでに白金監督の見舞いがてらに挨拶かな。」

 

帝光中が変わった時期に当時の監督だった白金は、持病が悪化した為に入院している。

1年と少しの間柄とはいえお世話になったのだから、今日学校に問い合わせて病院に向かったと言う。

 

「したら時間が空いたから、ボールでも触っとこうと思ってね。」

 

「そいやぁ、さっき居た奴誰だ?」

 

「...あ~。っとっと...誰だっけ。」

 

「おい。」

 

「ちょっと待て、思い出す思い出す。」

 

英雄にとって重要ではないのだろう、記憶から綺麗さっぱり抜け落ちていた。

額に手を当てて考えている。

 

「...サガミ ダイゴ。確かそんな感じ。」

 

「サガミダイゴ...。」

 

後日談だが、この件に対して英雄は青峰にとっちめられる事になる。

 

「ところで、お前進路どうすんだ?」

 

進路で悩んでいる青峰が英雄に問う。

言葉にはしないが、参考になればと思っての行動。

 

「そうさねぇ。色々勧誘は来てるけど、今一足りないんだよ。」

 

「何が?」

 

「浪漫!」

 

はっきりと言い切る英雄だが、青峰はそんな答えを求めていない。

 

「もう少し分かりやすくできねぇか?」

 

「少なくてもお前等5人とは別のとこがいいな。そんで、IH優勝して、天皇杯の挑戦権が欲しい。」

 

この言葉に青峰の目が見開き口を開けたまま表情が固まった。

全日本総合バスケットボール選手権大会、通称オールジャパンもしくは天皇杯。

毎年1月に行われるバスケットボールの日本一を決める国内最大の大会である。

2008年より、IH優勝高校枠が設けられ、大学・プロが入り混じり、年齢や肩書きなど一切関係のない真剣勝負が繰り広げられる。

正に、日本の頂点。

 

「天皇杯...?」

 

「その後は、18歳以下の日本代表になってアジア制して、アメリカに挑戦してぇな。」

 

「ちょっと待ってくれ」

 

「あ、でもそん時はお前も来いよ。流石にアメリカ倒すのに1人は厳しいからね。祥吾は多分来てくれると思うけど。」

 

「待ってっつってんだろ!!」

 

確かに進路の話を持ち出したのは青峰だが、英雄の話についていけていない。

青峰は高校の話をしたつもりなのにプロと戦う話になり、気が付けば海を渡っている。

 

「(そうだったな...コイツはそういう奴だ。)」

 

分かっていたつもりだった。この補照英雄という人物の限りの無い向上心を。

青峰が下を見てため息をついている合間もこうして上を見続けて手を伸ばしている。

 

「なんだよ。お前が聞いてきたんだろ?」

 

「いや。悪ぃ、ちょっと混乱しただけだ。」

 

全中の決勝戦で緑間が英雄のマークを他に譲らなかった理由が少しだけ分かった。

 

「あそ...あ~あ。お前の顔見たら悔しさが蘇ってきた。キセキの世代を倒す最後のチャンスだったのに。」

 

そんな青峰をよそに英雄は大きなため息をついた。

 

「はぁ?んなもん来年にでもやれんだろ?」

 

「違う、全然違う。それはそれぞれ個人を倒した事であって、キセキの世代を倒した事にはなんねーの。」

 

英雄は地べたに座り込み、ペットボトルを口に運んで水分を含む。

今更驚く事でもないが、あの時真剣にキセキの世代に勝ちにいっていた英雄。流した涙に偽りは無い。

 

「俺1人でもお前に負ける気しないけどな。」

 

「仮にの話だよ。流しといて。」

 

あの決勝で、青峰の心境は少なからず変化した。

しかし、青峰の身辺に変化はなく、まわりとの愕然とした差は埋まっていない。この先もそうそう埋まる事もない。

いい勝負になる者は一握りで、敗北の可能性を感じさせる者は更に極少である。

根本的な問題に解決はなく、今後も同じようなことを思うのだろう。

 

それでも、確信できる事がある。

 

「なぁ。俺凄い事言っていい?」

 

来年の今頃もこうしてボールを手にしている事。

そして、違うユニフォームを着たこの男が同じコートで見えるであろう事。

 

「バスケしようぜ。」

 

その後、青峰は進路を決めた。

全国で名高い強豪ではなく、精々地元で徐々に力をつけてきていた新鋭高校、桐皇学園に。




天皇杯、洛山がどうしたのかは考えていませんので、放置します。
すいません
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