黒バス ~HERO~   作:k-son

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外伝:芽吹くのは

暁大学付属相模高等学校。

神奈川県にある高校で、私立大学である暁大学の付属高校である。

特色としては、中高一貫校であり、野球・柔道・テニスなどの強豪校としても全国的に有名だった。

ただバスケットボールに関してはあまり知られておらず、むしろ悪い意味で世間に広まった事がある。

約5年前に激しい練習を超えたスパルタが問題となり、休部となってそのまま月日が経っていた。

そして一昨年からOB達の希望が募り、活動再開と至ったのだ。

 

しかし、再開するだけではスポーツの名門暁大相模の名に傷がつく。

予算もただではない、他へ行く予定だった予算をこちらに回すからには勝たなくてはならないのだ。

関係者は大変だった。施設の問題はクリアしているが、残る監督、選手の問題がどうにもならない。

既にある程度の高校バスケット界の勢力図が出来ている現状で、有力選手を引っ張ってくる名声がまだ無い。

そんな中でも、実力のみを評価して、暗黙の了解でやってはならない引き抜きを行ったりもした。

キセキの世代が高校に進学してくる時代でも、勝てるチームを作らなければならない。苦行にも程がある。

 

 

引き抜かれた人物の名前は、花宮真という。

中学時代から将来を嘱望されたものの、キセキの世代の台頭によって時代の影へと追いやられた無冠の五将の1人である。

早くから才能を発揮してはいたが、結果がついてこず不名誉な『悪童』なる2つ名を持っていた。

その悪名によって名が傷つく事を恐れた高校バスケット界の強豪は、獲得を躊躇ってしまう。気が付けば、東京都の中堅校へ進学し、監督の評価を貰えず、精々ベンチ入りだった。

自身の境遇に納得できぬまま、1年目のIHが迫った時、相模高校からのオファーが来た。

 

【暁大相模...聞かないっすね】

 

手渡された名刺をまじまじと見つめながら、はっきりと印象を言う。

 

【だろうね。5年前から休部状態が続いていたからね。】

 

【は?そんな状態で引き抜きとか、受ける訳ないでしょう】

 

全くメリットを見出せない話に興味を無くし、さっさと終わらせようと決める花宮。

 

【ちょっと待ってくれ。...逆に聞きたい。この霧崎第一でどこまでいけると思ってるんだい?】

 

【...どういう意味ですか?】

 

立ち去ろうとした花宮の背後に掛けられた言葉で、足を止めて振り返った。

 

【ここ数年の結果はよくてトーナメント4位で敗退。三大王者に勝った記録は無い。君1人が凄くても、限度がある】

 

【ちょっと失礼じゃないですか?一応、俺そこの人間なんですけど。】

 

痛いところを突かれて苦い顔をしながら、しつこく粘ってくるスカウトマンの話を聞くことにした。

 

【それに、君は望んでこの学校を選んだのかい?それにしては待遇が良いとは言えないようだが?】

 

【大きなお世話って知ってます?】

 

花宮の実力であれば、強豪に所属していてもおかしくない。というよりも、本来ならばそうなっていなければならない。

顔つきが険しくなりながら舌打ちを我慢しきれなくなってきた。

 

【はっきり言って、このチームの完成度では全国には行けないと思う。君中心のチームにシフトすれば分からないがね。】

 

スカウトマンは、花宮が怒り出すことを覚悟して話を続ける。

それほどまでに、花宮を欲している事は分かった。しかし、やはり移ったところでメリットがなければ意味が無い。

 

【なんなんですか?嫌味ならもう行きますけど。】

 

【どちらにしろ今年の躍進が望めないなら、来年のウチに賭けて欲しい。バスケ部以外なら強豪だからツテもある。必ず君が納得するチームを用意する事を約束しよう】

 

スカウトマンが頭を深く下げて勝負を掛けてきた。

言っている事は、大体にして正しい事は花宮も理解している。霧崎第一のPGは3年生になっていて、監督には冷遇を受けている。このまま予選に挑戦しても、いいとこ決勝リーグにいけるかどうかの問題で、全国への可能性は限りなく低い。

来年どう転ぶかどうかは、判断材料が少ない為難しい。そして来年はキセキの世代が高校に進学するのだ。

来年の期待度はどちらも同じくらい。そして、IH予選直前の今決めなければならない。

 

【...今後の展望を聞いてもいいですか?】

 

1分の沈黙後、花宮は回答を出した。正式に測定した事はないが、高いIQをもち勉学でもトップクラスを誇る頭脳で、残るよりも受けるメリットの方が大きいという判断の元である。

相模高校は神奈川県であり、神奈川県のIH出場枠は2つ。現在、神奈川は海常の一強状態が長く続いており、そこにチャンスを見たのだ。

目の前で頭を下げた男を信用した事もあるが、情などでは判断しない。あくまでも冷静にである。

 

 

暁大相模は花宮を獲得した。協会からやや目を付けられる事になったが。

しかし、チームの中心になれるプレーヤーを得た事は大きい。ここからのスカウトで引き抜きは出来ないが、それでも充分なチーム力を望めるだろうと、期待は高まっていた。

 

相模高校バスケット部は未だ人数が足らず、満足な練習が出来ない。そこで、暁大学バスケット部の練習に参加出来る事になった。

これもかなり強引な手はずであったが、相模高校が捻じ込んだ。

これより1年間、花宮は大学生に混じって練習を行うことになった。それは同時に、1年間花宮が表舞台から姿を消す事にもなっていた。

 

転校してからの毎日は、案外充実を感じられていた花宮。

大学でのレベルの高い練習により、己の実力が増していくのが良く分かる。中学・高校、今までのチームメイトはお世辞にも上手いと言えず、花宮の本気の動きについていけるものすらいなかった。今後同じユニフォームを着て試合に出る事はないが、大学生をリードするのはそれなりに楽しめる。

来年度、その行く末のみに不安材料が大量発生。定期的にスカウトマンの一之瀬に確認を入れているが、そうそう晴れない。

 

そこで、一之瀬が直接見てきたらどうかと言われて、全中の試合会場へ足を運ぶ事になった。

一之瀬もある程度目星をつけているが、直接チームメイトになる花宮が見て、良し悪しを判断できれば尚更効率よくスカウトを行える。

第一候補は、当然の様にキセキの世代の名前が連なっている。

 

【(キセキの世代がこんなとこに来るわけねぇだろ...)】

 

誰か1人が加入すれば優勝候補になる程に逸材。全国全ての高校が欲して止まない彼等が、進んで正式な活動に移せていない相模を選ぶはずも無い。

それは、基本的に全ての人間に当てはまる事なのであるが、大きな声では言わない。

一之瀬からリストを一通りに目を通していくと、灰崎という名前があった。

 

【(ん?確か...帝光じゃなかったか?明洸?どういう事だ...)】

 

キセキの世代と世間で呼ばれる前に見た時は、現在のメンバーとは少し違っていた。

黄瀬が加入する前は、灰崎がそこにいたはずである。彼等が2年になった時には既に灰崎と黄瀬が入れ替わっており、そのままキセキの世代と一世風靡していた。

考えるに、親の都合で転校でもしたのだろう。この時、己の様にバスケの為に転校するとは思ってもみなかった。

 

 

 

始めは灰崎目当てだった。

キセキの世代と同格である彼が、一般の学校に混ざればどうなるのかという疑問だけだった。

自身で体感したキセキの世代の強さを今更1回戦から見る必要もない。偵察とスカウトを兼ねている以上、その他のプレーヤーの方が重要だ。

そして、帝光中以外で目立っていたのは灰崎のいる明洸中学であった。

灰崎の得点能力はやはり中学水準を凌駕しており、他を寄せ付けないものがある。

 

【流石と言うべきか...と言うよりも...】

 

意外にも灰崎のワンマンチームとは言えないチーム力を見た。

寧ろ、チームの中心は別の人間。そのプレーヤーの名前はしっかりリストにも記されていた。

 

【補照と荻原か】

 

予選リーグを勝ち進んだ明洸。各試合の勝負所には必ず絡んでくる補照というプレーヤーがいた。

観客が噂で、帝光中から転校してきたらしいと聞いた。時間的計算では灰崎と同時期に転校した事になる。

こうなると親の都合などではない。他に転校した理由がなければならない。

 

【帝光と戦う為...?んな馬鹿な】

 

だが、時折見せる灰崎とのコンビプレーは元帝光といわれても充分納得のいくもので、確かな存在感を表していた。

そして、元帝光の2人の動きに合わせられている7番の荻原の実力も見ていて分かる。

この3人の三線速攻の威力は全国でも類を見ない。平面での高いDF力と一気に駆け抜ける速攻を武器とした明洸というチーム。

強いCが居なくても全国の強豪に勝ち続けるのも納得である。

 

【...一之瀬さんに言っとかなきゃな。】

 

全中の最終日を前に明洸は決勝進出を決めた。

途中で帝光と当らなかったくじ運だとしても、その実力ははっきりと分かった。

この3人中1人でも獲得出来れば、来年度はなんとかなる。そして最終日にその認識が甘かった事を思い知らされた。

 

予定調和の様に勝ち進んだ帝光中と快進撃を続ける明洸の決勝戦が行われた。

結果だけで言えば帝光が一切リードを奪われる事なく、明洸との実力差を見せ付けるものだった。

しかし、その内容が問題なのだ。

第4クォーター残り3分までの間、青峰と緑間を20点以下に抑え、帝光中に80得点した。

最後まで試合を投げず戦い抜いた明洸に誰しもが期待を抱き、それに応える明洸。

 

【そうか。紫原に得点させ他からの失点を抑える事で、帝光の動きを制限したのか】

 

帝光はなんだかんだ言って、赤司が全てを取り仕切っている。

この状況では、そう仕向けさせられていると分かっていても選ばざるを得ない。1対1での勝負を極力させず、赤司との駆け引きに持ち込んでいる。

致命傷を避け続け、他のメンバーの目が慣れるまで時間を稼ぐ。これが明洸の戦略。

終わってみれば、ジリ貧で時間足らずだったが、それでもその後の猛攻は目を見張る。

 

キセキの世代達の超絶プレーが何度も行われたが、終了して1番印象深いのは補照と灰崎のスーパーコンビプレーだった。

理屈では理解不能。ただ、そういうものなのだと納得するしかない。

2人にしか分からないパスコースを作り出してしまう動きは、キセキの世代であろうと1人では止められない。

 

しかし、その2人がいても届かなかった。荻原の動きも悪くない、他のメンバーもよくやった。

単純にキセキの世代は遥か上にいるのだ。こればかりは仕方が無い事。

コートの隅で泣き喚く明洸を見て、少しだけ感傷的になっていた自分に気が付く。

 

 

決勝戦が終わってみて花宮が思った事は2つ。

補照と灰崎が来年度に必須であるという事。キセキの世代と相違点があり、彼等のバスケに連携があるのだ。

キセキの世代は確かに強いが、花宮の望むバスケットにはそぐわない。キセキの世代がフル回転して試合終了というのは矜持に触れる。

そして2つ目。

明洸にもう1枚、何か札があれば分からなかった。明洸に足りない要素はCとPG。

紫原がいる以上、そこそこ良いCがいても意味はないが、良いPGが居れば話が変わってくる。

明洸のPG持田は悪くないのだが、赤司相手では出来る範囲が狭すぎる。それでは、灰崎・補照・荻原といったF達を活かせない。

補照がポイントフォワードの役割をしていたからこと成立していた。他でゲームメイク出来る人間が明洸側にいれば、補照の負担が減り、OFに専念出来るようになる。

 

【いや、こいつらレベルで釣り合うPGはそうはいねぇ。】

 

持田はDFに特化したPGであり、三線速攻を行う為の重要なキーマンなのだ。

パスやゲームメイクまでは行き届かない。

そこで、ふと自分がリードしている場面を想像してしまった。

 

【...っ!?】

 

これまでPGとしての能力を活かす為のFに恵まれなかった花宮。そのイメージは刺激的過ぎた。

大学での練習に混じってそれなりな楽しみを感じたが、それはあくまでも練習。公式戦でそれが出来るとは限らない。

けれど、もし同じユニフォームを着た奴等がいたら、出来るかもしれない。

 

【...もしもし、一之瀬さん?会場のどっかにいるんでしょ?ああ、見てたよ。あいつ等を連れてきて欲しい。最低でも補照は必ずだ。...分かってる俺も行く。】

 

試合会場を後にしながら、携帯電話を片手にスカウトの希望を告げる。

正直、らしくないと自身でも思うが、あの3人を他に取られる訳にはいかない。

電話越しの一之瀬は、キセキの世代を狙っていたようだが、そんな事は関係ないのだ。望むチームを作ると約束したからには、従って貰う。

花宮はそう強く念を押して、明洸へ向かう日取りを手配するように言った。

 

【っくそ...体が疼いて仕方ねぇ。】

 

来年度のチームビジョンの大体が決まり、こみ上げてくるものを発散させようとオフの日にも関わらず練習に向かった花宮だった。

 

 

 

その一ヶ月後、スカウトマンの一之瀬と共に灰崎と英雄との対談する事となった。

 

「あの、荻原君は?」

 

「シゲは何か親の都合とかで、転校しちゃった。」

 

一之瀬が2人しか席に着いていない事に疑問を持ち、質問するが英雄の一言でまた面倒な手間がかかる事を知らされた。

 

「つか、あんた『悪童』の...」

 

「年上だぞ、敬語使えよ。」

 

一応程度だが面識のある灰崎が花宮の存在に気が付く。

花宮にとって予定外だったが、重要な2人がいるのであれば問題ないと話を進めた。

 

「神奈川の高校で、来年度から正式な活動再開予定...?なんだそりゃ、舐めてんのか」

 

序盤の学校紹介の時点で灰崎が噛み付く。

全中でのプレーもあって、全国各強豪校からの誘いが来ている2人に対して普通どうかと思う。

 

「まぁまぁ、祥吾。最後まで聞いてみようよ。結構、興味あるよ俺。」

 

対照的に英雄は興味津々な態度で、灰崎を諌めながら話の進行を求めた。

 

「面倒だから問題点も今言っとく。メンバーは俺とお前等3人。もう1人は決まってねぇ。」

 

悪童と明洸トリオという組み合わせは面白いと思うが、4人で試合は出来ない。

灰崎は更に腹を立て、英雄は大爆笑。

 

「残りはCですよね?候補は?」

 

「おい英雄!もういいだろ!」

 

乗り気になっていた英雄を灰崎が止めた。

仮に5人揃ったとしても、5人では練習も儘ならない。選択肢は他にもいくらでもある現状、気が狂ったと思われても仕方ない。

 

「ああ?希望があるなら聞くぜ?」

 

「ええっと...学校名は忘れちゃいましたけど、鳴海っていう良いCがいたはずですよ。同級のCなら、あっ君...紫原抜いたらピカイチかと。あ、将来性の話ですよ?」

 

英雄が腰を据えて話を始めだし、灰崎が頭を抱えた。

駄目なスイッチがオンになっている。こうなってはどうにも出来ない。良い例は、帝光を転校した事。

 

「鳴海ね...スカウトに向かわせるが、お前の名前出しても良いか?」

 

「え?なんでですか?」

 

「俺とお前の名前があれば、興味を引けれるからな。後はこっちのオッサンに任せる。」

 

あの決勝戦を戦い抜いた明洸トリオの名前は一躍全国に広まった。花宮はそれを利用し、メンバー集めを行うというのだ。

チームの中枢を担った補照英雄が指名したとなれば、嫌がおうにも興味は沸く。

そしてそれは、誘いに対する同意を確認する為のものでもある。

 

「じゃ1個だけ...俺、天皇杯に出たいんす。そこまで付き合ってくれるなら、乗りますよ。目標はベスト8くらい」

 

この言葉にこの場にいる全員の時間が止まった。

灰崎ですら聞いていない事の様で、英雄の顔を覗き込みその真意を窺っている。

 

「お前...冗談にしちゃあ面白くねぇぞ。」

 

「あれっ?冗談に聞こえます?IH優勝目指すのは当たり前、その上を目指さなきゃ。このメンバーならね。」

 

「おいコラ、勝手に勘定に入れてんじゃねぇ!」

 

いつの間にか灰崎が合意している事になっており、咄嗟にツッコム。

 

「...ははっ!お前馬鹿だな。だがおもしれぇ。いいぜ、誘ったのはこっちだ。」

 

そんな灰崎を余所に花宮が英雄の案に賛同を示した。

 

「おい英雄!」

 

「あんだよ。」

 

「キセキの世代に今度こそ勝つんじゃないのかよ!!」

 

「勝つさ。てーか、勝てるっしょ。それに、俺は俺のインスピレーションに従うだけだよ。」

 

にやりと笑う英雄に灰崎は困惑している。

しかし、その厄介なインスピレーションには実績があるのが厄介だ。目指している『凄い景色』を垣間見たあの瞬間が未だに忘れられない。

最早英雄を止める術がない。後は灰崎が覚悟を決めるかどうかの問題だけ。

 

「それに、半端な強豪校は半端にシステマチックになってるから行きたくないんだよ。」

 

「...けどよぉ。」

 

明洸中での1年間もそうだった。自分たちで考えて自分たちで実践する。だからこそ生まれたオリジナリティとクリエイティビティ。

それを最も実践し続けたのは、他の誰でもなく英雄だった。

英雄とやって分かった事、英雄を縛ってはいけない。

 

「0からチームを作るって燃えるじゃん。いっそ最強、いや最高のチームを目指そうよ。」

 

「...出来るのか?」

 

「出来るよ。俺達ならね」

 

問答を繰り返し、灰崎は頭をガリガリと欠いた後大きくため息をついた。

 

「ったくよぉ。お前にここまで付き合ってやれる奴なんて俺以外にいなんだぜ?」

 

「分かってるよ。だからこうしてお願いしてるんじゃん。日本をひっくり返そうぜ。」

 

たっぷりと皮肉を込めて話す灰崎の表情は獰猛な猛獣のような笑みを浮かべていた。

コツ、コツ、コツと上下正面にと拳をぶつけ合い決意を表した。

 

「決まり、だな。」

 

その様子を見ていた花宮が、答えと受け取り立ち上がった。

 

「来年は面白くなりそーだ。」

 

「シゲには俺らからも言っとくよ。決めるのはアイツだけど。」

 

2人も立ち上がって見送った。

 

「鳴海って奴は何とかする。後何人か引っ張ってこれればいいんだが。」

 

「その辺は任せるっす...センパイ」

 

「そうそう、礼儀はきっちりしとけよ。コーハイ」

 

新たなる時代の到来は直ぐそこにまで迫っている。

終わりと始まり、節目と節目の間の空白に彼等は出会った。

人の出会いは化学変化を齎す。故に面白い。色濃く青春を送っている彼等ならば、更に移り変わっていくのだろう。

 

無冠の五将・花宮、明洸トリオの英雄・灰崎・荻原。

彼等が集う暁大付属相模高校の名前は年を越える頃には一気に広まり、全国の強豪を警戒させるほどに強まっていく。

噂を聞いたキセキの世代達の耳にも届いており、無視など出来ない存在になっていった。

 

 

「大ちゃん、聞いてるの?」

 

「ああ、聞いてるよ。花宮とねぇ...面白くなってきたじゃねぇの。」

 

東京都・桐皇に進学する予定の青峰。

 

 

「神奈川って、来年絶対ぶるかるっスね。」

 

神奈川県・海常高校へ進学する黄瀬。

 

 

「そうなると。今度は本格的に締めて掛からねば」

 

東京都・秀徳予定の緑間

 

 

 

「結構ヤバイんじゃな~い、赤ちん。」

 

「そうだね。あの3人だけであそこまで迫った。そこに加えて五将の1人...それでも負けるつもりはないよ。」

 

秋田県・陽泉予定の紫原と京都府・洛山予定の赤司。

 

 

それぞれが、それぞれの考えで既に動いていた。

聞いた直後に、予想される激戦に笑いがこみ上げている者もいれば、面倒臭そうな顔をする者も。

何故ならば、それは遠い話ではなく、直ぐそこにまで迫っているのだから。

 

 

 

場所を移して、東京にある誠凛高校。

体育館では、新人戦に向けて猛練習を行っていた。

 

「...。」

 

その隅で相田リコが悲しげに携帯電話を眺めている。

 

「どうした、リコ。」

 

夏のIHで怪我をして決勝リーグ直前にドクターストップを掛けられた木吉が、その横で基礎トレーニングを行っていたのだが、リコの様子が気になって声を掛ける。

 

「あ...なんでもない。ちょっとね。」

 

咄嗟に懐にしまった携帯電話には電子メールが届いており、送り主は英雄であった。

私事が少々入っている為、口には出さないが、リコは英雄に声を掛けていたのだ。内容はもちろん進路の事。

英雄がよければ誠凛に来てもらおうとしたのだが、結果断られた。

 

『ごめん。やりたい事が出来た。』

 

と、簡単な内容で。

 

「全員しゅーごう!!」

 

練習が終わって、全員がリコの下に集まる。

 

「次の新人戦は、ウチにとっても大事な試金石よ。前にも言ったけど、鉄平抜きで行くから気合入れてよね。」

 

木吉の怪我は選手生命に関わるまでも行かなかったが、どれだけ木吉に依存していたかを思い知らされた。

日向との2枚看板と言われていようが、そこは変わらない。

怪我を治して、体を一から作り上げる作業に専念させたい事もあって、新人戦には木吉抜きのメンバーで戦う事になった。

 

「分かってる。それに、俺達だけで何処までいけるか。自分の力を試すにはいい機会だ。」

 

今年度のIH予選で現実をも思い知らされた日向は、力強く決意した。

 

「それ次第で、有望なルーキーが入ってくるかも懸かってるからそのつもりで!」

 

ついでにリコがプレッシャーをもう一押し。

全国制覇を掲げる誠凛にとってもここはかなり重要な問題である。

キセキの世代が来年度進学してくるのに対しての対抗策。

今年度の全中で、キセキの世代相手でもやりようによっては、勝機がある事を知った。

チーム一丸のスタイルの誠凛はなんとしてもチーム力を向上させたい。

人数が増えるだけでも、今よりも高度な練習ができる様になり、その中でも期待出来る大型ルーキーが加入してくれれば万々歳である。

 

「それ以上のプレッシャーは止めてくれ。ゲロ吐きそうだ。」

 

「何言ってるのよ。来年はキセキの世代が進学してくる。英雄もね。全員倒さなきゃ日本一になんかなれないわよ。」

 

それは恐らく自身にも向けた言葉なのであろう。

英雄を倒す。そんな意味も含んだ言葉を実現させる為にはっきりと言う。

彼等の目標は、日本一なのだから。




色々考えた結果、オリジナル高校という事になりました。
ちなみにモデルは、東海大学付属相模高校。
暁大といっても猪狩君は関係ないですよ?
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