(まさか!闇時君が花の呼吸を使えるなんて!)
美しい九連撃...とまでは体力的にも腕力的にも無理だったが、鋭い九連撃がカナエに放たれる。
予想外の攻撃に不意を付かれ、初撃がカナエの肘に当たった。
(やばいやばい、切り札が一撃しか当たってない!)
一方の闇時はまだ誰にも見せていなかった花の呼吸を切り札にしていたので、一撃しか当たらず、焦りがみえていた。
(この様子だとあまり教えることは無さそうね。)
焦りをなんとか隠そうとする闇時の乱打を木刀を使って上手くいなしながらしみじみ考える。
事実、これは花の呼吸の訓練とはいえ、闇時はもう伍ノ型をほぼ完璧に会得している。
注意深く見ること。
それは闇時が訓練中に最も大事にしてきたことで、闇時が未来永劫忘れることのないことである。
カナエとて一隊士。毎日鍛錬を積まなければ上へは上がれない。
闇時はその鍛錬を注意深く見てきたのだ。最初に花の呼吸を見た時から。
姉より鬼に対する憎悪が深いしのぶよりも見てきたのだ。
そんな彼が花の呼吸を会得できたは自然な流れだろう。
...見るだけで会得出来るのは中々の才能なのだが。
(分かってた。花の呼吸の使い手に同じ呼吸は効きづらい。それはその人が花の呼吸を熟知しているから。
でも、でも ───────
一発当てれた...!これは自信にしていい...!)
闇時が更に二連撃を繰り出す。
それをカナエは軽くいなす ───────
が、二連撃目をいなす際に体勢が崩れた。
(そこ ───────!)
全集中・花の呼吸 伍ノ型 徒の芍薬!!
次は先程よりも足をしっかり踏み込み、全集中の呼吸を維持したまま木刀を構える。
実は、カナエからこの稽古のハンデを聞かされた際、闇時はある仮説を立てたのだ。
(カナエさんは花の呼吸を使えない。呼吸の持ち味は種類によるけれど、花の呼吸の場合は素早く柔軟な太刀筋。そして当たり前だけど威力の補充。
なら自ずと威力も速度も下がる。
呼吸での相殺も出来ないから受けるときも隙が生まれるはず!)
この仮説は実際正解だった。
カナエは、先程から闇時の力押しの攻撃を受けた際、何度か体勢を崩している。
更に、剣技の速さが遅い。彼女が花の呼吸を使っていたなら、もう闇時は一本取られている。
圧倒的にカナエの方が不利。だが、闇時が技を放った瞬間、えも言われぬ感覚が闇時を襲った。
(なんだろう...違和...感?)
結局、その正体は分からず、木刀を振るう。
しかし、それが悪手だった。
「甘いわ。」
初撃は足を狙ったが、力強く床を踏み切ることで躱される。そこから体の色々な部位を狙った剣撃も全て躱された。
(急に反応速度が速まった...!一体何が...)
「花の呼吸は使わないと言ったけど、全集中の呼吸を使わないとは言ってないわ。」
「手加減されてたんですね。」
闇時が少し顔を歪ませる。
元からハンデは付いていたが、更に動きを制限して尚この強さだった。
そして、これは
「全集中の呼吸を使用しただけで、闇時の花の呼吸は躱すことができる」
という事実を突きつけるも同意だった。
「惚けている暇はあるのかしら?」
カナエの雰囲気が変わり、周りの空気が一瞬で張り詰めたのを五感全てで感じる。
ここから先、ほんの少し刃先をしくじっただけで終わるということが読める。
全集中・花の呼吸 伍ノ型 ───────
「一本」
闇時が花の呼吸を繰り出そうとした瞬間に、カナエが視界から消え、代わりに後ろから声が聞こえた。
「...ッ!ありがとうございました。」
あまりにも速い動き。機動力。ハンデを背負いながらもカナエは闇時を圧倒した。
「闇時君凄かったわ。まさか花の呼吸を伍ノ型だけでも使えるなんて思わなかったもの!あのまま全集中の呼吸を使わなかったら私の負けだったわ。」
「はい、これからも鍛錬頑張ります!」
「その意気よ!私なんかあっという間に抜かれそう...頑張らないとね。」
「もう!姉さんがそんなこと言わないで!」
思わずしのぶのツッコミが入る。カナヲも頬を紅潮させ、闇時の動きに見惚れていたようだ。
「それじゃあ明日から本格的な指導に入りましょう。
それと、しのぶ、治療よろしくね。」
「はい!」
これからの訓練のことを思うと今からでも頬が緩む。早く強くならなければ。もっと、もっと。
この後は二人ともしのぶについて行って治療してもらった。
因みに蝶屋敷からは花の呼吸の反動が酷かった闇時の悲鳴が小一時間聞こえたらしい。
久しぶりの投下になりました。
これから受験があるので、受験が終わるまで多分休ませてもらいます。
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