よろしくお願いいたします!
部活動見学の次の日、俺は慎に相談を持ち寄った。
「慎、ちょっといい?」
「おう、どうかしたか?」
疑問を浮かべる慎に俺は一枚のチラシを見せた。
「中川さんから貰ったんだけど、来週、スクールアイドル同好会がお披露目ライブをやるんだってさ」
「あぁ、しずくが所属してるやつだな。あと中須さんって言ったっけ」
「そうそう、見に行ってみようと思うんだけど、慎も一緒に行かない? ほら、慎、スクールアイドル知ってるって言ってたし」
突然の俺からの誘いに慎は嬉しさ半分不思議半分といった感じの表情を浮かべた。
「まあ、予定は空いてるし行けるけどどういう心境の変化なんだ? 昨日は中須さんからの誘いを断ったばっかりなのに」
「今まで入学してすぐに色んなことを難しく考えすぎてた気がしてたさ。ちょっとした息抜きも込めて見てみたいなって思って。あと、しずくさんと中須さんがどんなパフォーマンスをするのかも気になるし」
俺のまっすぐな表情を見て、慎はすぐに笑顔になった。
それを見ると俺も元気が湧いてくる。
「ふっ、そうか。まだ始まったばかりだしゆっくりと考えていこうぜ。何かあれば俺も相談に乗るからさ」
「うん、ありがとう」
「いいぜ! 来週のお披露目ライブ、一緒に行くよ!」
慎は俺の誘いを嫌な顔せずに受けてくれた。
本当に良い人と巡り会えたんだなと嬉しさが心に染み入った。
一方、慎も、
(輝弥が答えを出したんなら……俺も……真結……)
笑顔の裏で密かにとある決意を固めようとしていた。
慎とスクールアイドルのライブを見る約束をしてから一週間が経った。
ライブの前日、授業が終わり帰路に着こうとしたとき、校外でしずくさんの姿を見かけた。
「あっ、しずくさん」
「……あっ……輝弥くん」
しずくさんは元気のない顔をしていたが、俺の顔を見るやすぐに微笑み返してくれた。
「聞いたよ、明日ダイバーシティでお披露目ライブをやるって!」
「あっ……そうなんだ……」
返事をしたしずくさんはまた悲しげな顔になった。
明日が初ライブだから緊張しているのかな。
「しずくさん、どうかしたの?」
「……実はね……」
しずくさんは目線を落とし、今にも泣きそうな表情に変わる。
だが、顔を上げた時にはすぐに笑顔になった。
「……明日のライブが怖くてね。私の気持ちが……みんなにちゃんと伝わるのかなって……不安になっちゃったの」
「確かに初めてのライブで全くの未体験の世界だもんね。でも、大丈夫。しずくさんの想いは絶対届くよ。不安になっちゃうのは仕方ないから、それ以上に楽しむ気持ちを忘れずにしずくさんのやりたいことを見せてよ!」
「輝弥くん……ありがとう。おかげで元気が出てきたよ。明日のライブ、頑張るね。それじゃあ」
しずくさんは俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑い、場を後にした。
だが、俺にはしずくさんの笑顔が心の底からの笑顔には見えなかった。
「……しずくさん……?」
俺の姿が見えなくなったあと、しずくは校舎の陰に座り込み顔を伏せながら静かに泣いていた。
「はぁ……ごめんね。輝弥くん……」
しずくの謝罪の声は、辺りで練習する生徒たちの喧騒で虚しくかき消されていった。
次の日、午後の授業も終わり、俺たちは一目散にダイバーシティの方へ出発した。
「相変わらずすごいなぁ……アニメで見たロボットがこんな目の前にあるなんて……」
「にしてもここでライブをやるんだな。結構人が集まりやすいしいいライブ場所だな」
ライブ会場はアニメに登場した等身大ロボットが立像しているフェスティバル広場。
そこには俺たちの他にライブを見に来たであろうお客さんが疎らに集まっていた。
「お客さんはそこそこにいる感じだね」
「だな、学園の生徒が多い印象だけど、それでも一般の人もそこそこにいるな」
それなりに人が多いので、この中でライブをするのはシンプルにすごいなと思う。
俺では震えが止まらずにライブが上手くいかない未来しか見えない。
「ライブの出演者はしずくと中須さんの他に誰がいるんだ?」
慎が聞いてきたので、持参していたチラシを元に答えていく。
「ちょっと待ってね。しずくさんと中須さん。それと2年生の優木せつ菜さん、そして3年生のエマ・ヴェルデさんと近江彼方さんの5人だね」
「中川さんが部長さんから話を聞いたって言ってたけど、部長は年功序列ってことで3年生のエマ・ヴェルデさんか近江彼方さんのどっちかなのかな?」
「でもチラシを見る感じだと、優木せつ菜さんがセンターで写ってるから優木せつ菜さんが部長なんじゃない?」
俺たちはライブ開始まで雑談で時間を潰していった。
「そろそろライブが始まるんじゃないか?」
時間を確認し、開演時間があと5分までに迫っていた。
「そうだね、人もさっきよりまた増えてきた感じだ」
全体をさらっと見回して、人の喧騒が増えたのがわかる。
まもなくライブが始まるという実感が湧いて、益々緊張してきた。
「にしてもしずくたち大丈夫なのかな~。これだけの人数の前で……」
慎は周囲を見渡してしずくさん達の心配をしたが、俺は昨日のしずくさんの様子を思い出していた。
「しずくさん……やっぱり何かあったのかな……?」
「キャ──ー!!」
周囲の女生徒達の声が響き、フェスティバル広場先の階段からライブ衣装を着た人が姿を現した。
チラシと見比べ、登壇者は優木せつ菜さんであることが伺えた。
白いシャツの上に内側が黒、外側が赤で配色されたジャケットを羽織りネクタイと帽子がせつ菜さんをかっこよく彩っていた。
スカートは左右非対称のデザインとなっており、かっこ良さの裏に女の子らしい可愛らしさも兼ね備えている。
優木せつ菜さんが目の前に現れ、俺と慎はくぎ付けになっていた
ただ一つだけ疑問点が残った。それは他のお客さんも同様に感じていたことだと思う。
(あれっ……せつ菜さん一人だけ……? しずくさん達は出てこないの……?)
ステージに出てきたのはせつ菜さん一人のみだったのだ。
ライブ開始前という事で挨拶も兼ねて全員で登壇するものかと思っていたが、他のメンバーが出てくる様子もない。
「みんなー! こんにちは! 優木せつ菜です! 今日は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のお披露目ライブに来ていただき、ありがとうございます! 今日は諸事情により、私のパフォーマンスのみとなっております! 短い時間ではありますが、楽しんでいって下さいね!!」
せつ菜さんがMCを始めると歓声が更に大きくなった。
これだけでせつ菜さんの前評判はかなり良かったのだということがわかる。
ただ、どうしてせつ菜さんのみのパフォーマンスとなっているのだろう。
その疑問だけが俺の中に残った。
「それでは聞いてください! CHASE!」
せつ菜さんによる曲名の宣言と共にライブは始まった。
さあ、アニメ本編の内容も始まっていきます!
齟齬が無いように改めて虹ちゃんの話を見返さなくては…!
感想等お待ちしております!