よろしくお願いいたします!
私は友達と遊びに来ていただけのはず。
でもここで出逢えたのって奇跡じゃなくて……運命なんじゃ……。
「生まれたトキメキ……この日から世界は……変わり始めたんだ……!!」
【輝弥が同好会への入部を決意した時から少し遡る】
私の名前は高咲侑。
私は友達とダイバーシティの中にある雑貨屋に来ていた。
いつも通り友達と学校に登校して、いつも通り授業をこなして、いつも通りお台場にきて買い物や買い食いをする平凡な日常を送っていた。
今日もいつもと変わらない学校終わりを絶賛堪能中だ。
「侑ちゃん、これは?」
「イマイチときめきが足りないな~」
「うーん、じゃあどうしよっか」
この子は上原歩夢。
右側にお団子を結わえた綺麗な赤髪を持つ女の子で私の幼馴染。
この子は料理と裁縫が得意で女子力がとてつもなく高い。
ちなみに私の女子力は期待してはいけない。
歩夢に吸収されてしまったとでも言っておこう。
歩夢と二人で新しいパスケースを見に来ていたが私のお眼鏡に適うものは見当たらなかった。
別のお店に寄ってみるかな。
「ほかのお店、寄ってみる?」
「そうだね」
その後、他のお店に行っても結果は変わらなかった。
「はぁ~、なんか今日見たやつはどれもイマイチだったな~」
私は他にも何か無いかと周囲を散策したがこれといったものはなかったので、帰って歩夢と一緒に最近始めたアプリゲームでもやろうかな。
「あれ、歩夢? どこ行ったんだろう……?」
歩夢に声を掛けて帰ろうと思ったが、歩夢の姿が見えない。
お店の外に行くと歩夢はすぐに見つかった。
「あっ、いたいた」
「侑ちゃん」
歩夢はお店のウィンドウガラスに展示されていた服を見ていたようだ。
その服はピンク色のワンピースで首裾が白いフリルになっている。
胸元には大きなピンク色のリボンとピンクが好きな歩夢にはぴったりの服だった。
「あっ、歩夢。これいいんじゃない?」
「えっ……?」
「似合うと思うよ」
「い、いいよ、そういうのは~。ピンクとか好きだけどちょっと子供っぽいし……」
歩夢は両手を前に出し、か細く手を振って否定する。
そういう仕草も女の子らしくてすごくかわいい。
「別に着たい服を着ればいいじゃん。歩夢は何を着ても可愛いんだしさ?」
「もう。またそんな調子いいこと言って……」
歩夢が少し拗ねちゃった。
そんなに卑下することでも無いのになと私は思う。
「……ん?」
ふと、ワンピースの下に目を向けるとそこにはうさ耳のフードが付いた子供用の服があった。
「あっ、これ懐かしいね。子供の時に歩夢がよく着てたやつに似てる」
私がその服と同じ目線になるように屈むと歩夢も同じように屈んだ。
「あぁ~、確かにそうだね」
この服を見てたら子供の時の歩夢を思い出す。
無邪気な笑顔でうさ耳付きのフードを被り、
「あゆぴょんだぴょん♪」
と、手をうさ耳に見立てながらキャッキャ言ってたのが懐かしい。
うさ耳付きのフードを被っているのにも関わらず手でもうさ耳を立てるという天然を兼ね備えているのが本当に可愛くて末恐ろしい子。
「いやぁ、可愛かったな~……」
今の歩夢にあれを振ったらやってくれるのかな。
私の好奇心が顔を覗かせてくる。
「ねえ? 一回やってよ」
「ん? 何を?」
分からないか。仕方ない、私もやってしんぜよう。
「あゆぴょん」
私は頭に手をつけ、うさ耳に見立てながら振る。
(さぁ、どうする、歩夢!)
私がやったのだ。
これで歩夢も同じように乗ってくれるはず。
と期待したのも束の間、私に待っていたのは歩夢の冷ややかな目だった。
「……はぁ?」
待て待て歩夢。女の子がそんな風に言ってはいけない。
冷たい目でそんなこと言ったら一部の人にご褒美と思われちゃうよ。
いや~、ありがとうございます。
「やるわけないでしょ! もう!」
歩夢が立ち上がってそっぽ向いて怒っちゃった。
からかいすぎちゃったかな。
「え~」
でも私はちょっと諦めきれなかった。我ながらしぶといな。
「なんか、お腹すいてきちゃった。下降りない?」
歩夢は話題を変えてきた。
これ以上あゆぴょんに触れるのは本気で怒りそうだからやめておこう。
「賛成だぴょーん」
思わずあゆぴょんを維持したまま返事していた。
しかし、歩夢は気に留める様子もなかった。
「ゆうぴょんの方が可愛いんじゃない?」
逆にゆうぴょんを弄ってくる。
私にはこんなの似合わないから否定しておく。
「それはないぴょーん」
「あはは、じゃあいつも通りコッペパンを食べに行こっか」
「だよねー、行こっか」
そうして、建物外にあるコッペパン屋さんに出発した。
コッペパン屋さんで各々注文を済ませ近くのベンチに座りながら今日の授業の事について喋っていた。
「今日の2限でちょっとぼーっとしてたらさあ、そのまま先生に「高咲さん!」って見つかっちゃってそのまま指名されて焦っちゃったよ~」
「侑ちゃん、ちゃんと授業は聞かないとだよ?」
授業が退屈になると別のことを考えちゃうのは人間の性だと思うんだけどなあ。
まあ、歩夢は真面目だからそう考えてもちゃんと集中し直してるんだけど、そこは純粋に偉いし尊敬できる。
「あはは、まあ気を付けるよ。あっ、っていうかそれ何味?」
ふと歩夢が頼んだメニューが気になった。
コッペパンの中にカスタードクリームがたっぷりと入っており甘くて美味しそう。
「これ? 限定のレモン塩カスタードだよ。食べる?」
「うん、一口ちょうだい」
「あっ、じゃあさ」
歩夢はふと携帯を出して写真を撮ろうとしていた。
「おっ、いいね。いえーい」
私も食べるふりをしてカメラに映る。
ちなみに写真をとった後、一口貰ったが甘さの中に塩のしょっぱさがアクセントになってすごく美味しかった。レモンの酸味も絶妙にマッチしていた。
「この後、どうしよっか」
コッペパンも食べ終わり、各々やりたいことは終わったので暇を持て余していた。
「うーん、映画でも見る?」
「でも、魅力的なやつないんだよね~」
やることが無くなり、帰ることも視野に入れていた時、大きな歓声が聴こえてきた。
「ん? なんだろう?」
「イベントでもやってるのかな? ちょっと見に行ってみようよ!」
方角からするとフェスティバル広場の方だった。
誰か有名人でも来てると思い、急いで歩夢と向かうことにした。
「なに? これ?」
来てみるとそこでは衣装を着た女の子がライブイベントを行っていた。
年齢は私と同じくらいの子だけど、衣装をまとっているからなんだか年上に見える。
周囲を見渡すとみんながステージに見惚れていた。
いや、正確にはこのステージを築きあげているあの子に見惚れている。
同じ学校の生徒もいるし、よく見ると男の子もいる。
ネクタイを見ると黄色だから1年生かな。
そういえば今年の1年生は男の子はいるんだね。
「…………っ!!」
私も思わずステージの子を見ていたが、あの子の言葉が私の胸に直接響いてくる。
この数十秒間でこの子のライブを見ただけで自分の中の世界が変わり始めているのが分かった。
私は……あの子に……惹かれている。
「かっこいい……!!」
気づけばライブは終わっていた。
私はただステージを見つめるだけだった。
「す……すごい……」
「うん……!」
ステージに目が行ってしまって幼馴染の方を見ていなかったがどうやら同じ気持ちを抱いてたようだ。
「だよね!! すごかったね!!」
「んっ……うん……!」
思わず歩夢の手を握ってしまったので歩夢は戸惑ってしまったが、そんなことはお構いなしに私の想いはとめどなく溢れてくる。
「すごかった!! 感動した!! こんなの初めて見た!!」
「あはは……」
歩夢はテンションが高い私を見て、少し笑っていた。
そんなに可笑しかったかな?
「どこの学校なんだろう? あっ、ポスターだ!」
今の子がどこの学校の生徒か気になったので近くにあったポスターを見つけ歩夢の手を引き、近寄っていく。
そこのポスターには先ほどライブをしていた子を含め5人の女の子が写っており、下には虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会と書いてあった。
「虹ヶ咲学園……スクールアイドル同好会……!」
ん? 虹ヶ咲学園??
思わず歩夢と顔を合わせる。
「に、虹ヶ咲って……!!」
「「うちの高校だぁ────ー!!!」」
うちの学校にこんなにときめく同好会があったなんて……!!
この出会いが私の人生を大きく変えるとは誰にも予想できないことだった。
アニメは侑ちゃんが主役なので、ここだけでも侑ちゃん視点を織り込んでみました!
次回から輝弥くん視点に戻ります!
ありがとうございました!