開幕から感極まっちゃうキャストを見て、応援したくなりました!
ですが、Liellaに負けじと虹ちゃんもしっかり物語を紡いでいきます!
今回もよろしくお願いいたします!
俺と慎は偶然の出会いを果たした同級生の天王寺璃奈さんと別れた後、璃奈さんに教えてもらった同好会の部室へと向かった。
その道中で二人の女生徒とすれ違ったけどなにやら落ち込んでる様子だったが、俺はそこまでにしか気に留めずスクールアイドル同好会の事へと気持ちを切り替えた。
璃奈さんに教えてもらった場所へたどり着いたが、俺たちを待ち構えていたのはネームプレートが付けられていない無機質な扉だった。
「……なんだこれ? 璃奈から教えてもらった場所ってここだよな?」
俺たちは悠然とそびえ立つ扉を前に疑問を抱いた。
確かに璃奈さんから教えてもらった場所は間違っていないはず。
俺は扉を開けようとノブを捻るが鍵が掛かっているのか、その扉の奥にある部屋の中を見ることはできなかった。
「……鍵が掛かってる。もう部室として使ってないってことかな」
廃部となった部に与える物は無い。
そう言わんばかりに生徒会の手際が良い。
「どうする。これじゃあ何も情報が得られないじゃないか」
「うーん……そうだな……」
俺は別の方法を考える。
その時、一人の少女の顔が頭の中に浮かんだ。
「……演劇部の部室へ行こう」
「演劇部? しずくのところか!」
「うん、今のスクールアイドル同好会の実情を知っていて、俺たちが情報を聞ける方法とすればしずくさんしかいない」
中須さんの事も頭には過ったが、スクールアイドル同好会以外の彼女の姿を知らないので中須さんを探して情報を聞くというのは骨が折れることだろう。
しかし、しずくさんであれば同好会に入っていて演劇部にも所属しているため、どこに行けば会えるのか見当がつきやすい。
「今なら演劇部の練習に参加していると思うし、探してみようよ」
こうして演劇部の練習場所を探しに演劇部部室へと向かった。
【演劇部部長視点】
やっぱりどこかおかしい。
今日は今までと変わらない普段通りの練習をしているが、この子はどこか上の空になっているように感じる。
桜坂しずく、スクールアイドル同好会という今年立ち上がったばかりの同好会にも入って活動していたけど、メンバー間のトラブルによって同好会は無くなったってクラスの子が話してたけどこの子の現状を見る限り、どうやらそれは真実なようだ。
入学当日、階段の踊り場で演劇の練習をしていた彼女を見つけ、この子からはどんな事をしてでも夢を掴み取ろうとする執念を感じたから演劇部に誘ったけど、今のしずくはあの時のような覇気を全く感じられない。
いつもは台本を持たずに手足の表現を入れながら練習をしているのに今日は台詞が覚えられてないからと台本を持ちながら練習をしていたり、台本に書かれている台詞に注力してしまうが為に感情表現が甘くなっていたりと普段の彼女とは打って変わっていた。
「明日もまた……同じ日が来るのだろう……!!」
しずくが台本無しで練習を始める。
動作を入れながら演じているが今のしずくからは自分の蟠りを隠しているように演じているようにしか見えない。
つまり彼女は演者ではなく一人の桜坂しずくのまま舞台での練習をしている。
「幸福は一生来ないのだ……けれども……!!」
「はい、そこまで!」
私は見ていられなくなり急遽ストップを入れた。
「今日の舞台練習はここまで! じゃあ最後にグラウンド10周!」
周囲に目を向け、練習メニューの変更を告げる。
部員たちは悲鳴を上げていたがそんな事はお構いなしだ。
「文句言わずにさっさと行く!」
そして、しずくの元に近づく。
しずくは急に練習を止められたからか地面に目線を落とす。
「……しずく、聞いたよ。同好会の件」
「……部長……」
「掛け持ちじゃなくなったんだから、これからは演劇部の方にちゃんと顔を出していってよ?」
「……はい」
そう返事するしずくだったが、やはり心ここにあらずといった様子だ。
どうしようか考えていると、扉の近くに何やら見覚えのある男の子二人の姿が見えた。
「ん? あれは……」
【輝弥視点】
演劇部の部室で練習場所を聞いた俺たちは屋上へと向かった。
そこには虹ヶ咲指定のジャージに身を包んだ人達が集まっていた。
そこで発声練習をしている人に目を向け、俺たちの目的の人物がいた。
「あっ、あそこにいるよ」
「さすが、演劇部にいるだけあってちゃんと声が通るなぁ。ここからでもはっきり聞こえるよ」
そこで練習しているしずくさんを見て普段の出で立ちからは想像できない凛とした声を放っている彼女を見て慎は釘付けになっていたが俺は少し違和感を感じていた。
(前に見たときと何かが違う……?)
入学式の日に彼女と会った時、あの時のしずくさんはもっと演じる役の気持ちを込めてその人になりきっていたが今のしずくさんからはそのビジョンが見えなかった。
「慎、今のしずくさんって何の役を演じてるのかな?」
「えっ? そんなのいきなり言われてもわからないだろ?」
慎は呆れるように答えた。
確かに今の俺の質問はおかしい。
いきなり得体の知れない飲み物を差し出されて、まだ口につけていないのにも関わらず、これは何味だ? と聞いているようなものだ。
「あっ、ごめん。確かにそうだよね。そうなんだけど……」
俺はどう言えば伝わるか考えていると突然声を掛けられた。
「やぁ、いつかの部活動見学以来かな?」
演劇部の部長さんだ。
この人はいつも飄々としていて考えていることが分からないので少し苦手なタイプだ。
「どうもこんにちは」
「こんにちは。今日は何か用かな? もしかして演劇部に興味を持ってくれたとか?」
部長さんは期待するような目で俺を見つめるが、その視線を受け止めきれず思わず目を反らしてしまう。
「い、いえ。僕はそういうつもりじゃないです」
「え~そっか。君のお姉さんも演劇界隈では名の知れた人物だから、もしかしてその身内である君も同じようにやれるんじゃないかなって密かに期待していたんだけど……?」
すると、俺の脳裏に昔言われた言葉がよみがえる。
(お前のお姉さんはあんなに凄いのに、お前って全然大したことないんだな)
(お姉さんが実力者だからもしかしたらって思ったけど期待外れだな)
俺は悪寒が走り思わず声を荒げる。
「……俺は姉さんと違うんだ!! そんな風に言わないでください!!」
「か、輝弥……?」
突然怒鳴ってしまったので慎は驚いていたが、部長さんは少し瞼をぴくっと動かしたのみで大きく動揺する様子はない。
「……姉さんは姉さん。僕は僕です」
「……そうだね、私の発言が軽率だった。ごめんね」
部長さんは以前に俺に対して言った言葉を思い出したのか謝罪してくる。
「いえ、お気になさらず」
「して、部活動見学じゃないなら要件は何かな?」
「あっ、あの桜坂しずくさんはいらっしゃいますか? 俺達、彼女に用があって……」
俺の代わりに慎が答える。
「しずくに? 分かった。ちょっと待ってて」
そう言うと部長さんはしずくさんの方へ向き、しずくさんを手招きする。
「……っ! 輝弥……くん……」
しずくさんはお化けを見るような目で俺を見る。
本人からすればライブを見に来ると言ってくれた人なのに自分が出なかったのだから何を言われるかわからないのだろう。
「しずくさん、少し時間いいかな? 話したいことがあって」
「……私は話したい事なんてありません……」
しずくさんは突き放すような口調で俺達との、俺との会話を拒もうとする。
しかし、部長さんはそれを許さなかった。
「しずく、貴女も今日はもう帰りな」
「えっ……!?」
しずくさんは思わず部長さんに目を向ける。
「正直、今のしずくに演劇練習をさせても舞台は良いものにならない。何を隠しているのか分からないけど、少なくともこのまま無駄な時間を割くよりかはその胸の蟠りを取り除いた方が身のためだよ?」
「……っ……!」
部長さんはしずくさんに容赦のない言葉をぶつける。
しずくさんは歯を食いしばり必死に怒りをこらえていた。
でもこれが部長さんなりの優しさなのだろう。
俺が抱いていた違和感をこの人はしずくさんに対してはっきりと言葉にして進むべき道を示している。
この人が演劇部の部長をやっているのは伊達ではないと改めて認識した。
「……分かりました。お先に失礼します……」
しずくさんは部長さんに一礼して足早に屋上を後にした。
「……さて、しずくは着替えに行っただろうから、部室の前で待っときな。早くしないと逃げられちゃうよ?」
「はい、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ。あと、輝弥君って言ったっけ。知らぬ間に私は君の逆鱗に触れていたみたいだね。改めてごめんね」
部長さんは俺の先ほどの態度を気にしていたのか改めて頭を下げて謝ってきた。
「いいえ! そんな、頭を上げてください! 僕は……もう大丈夫ですから」
俺は部長さんに頭を下げさせてしまったので思わず焦ってしまったが、一呼吸おいて気にしていない旨を伝える。
部長さんはそんな俺の様子を見て、笑みをこぼした。
「そう。でも、君はそう思っても私自身が私を許さなかったから。それだけ。しずくの事、お願いね」
部長さんはウィンクしながらそう告げ、屋上を去ろうとする。
(この子なら……しずくを……)
部長さんは俺たちの横を通り過ぎた後、俺の方を見ながら期待するように静かに笑った。
演劇部長さん、掴みところがないけどここぞって時に頼りになる感があって好きです。
次回もお楽しみに!