少しずつ同好会メンバーは出始めますので。
入学初日、孤独な学生生活を送ることになるかと思った矢先、慎と出会えたため俺の生活に早速彩りが出てきたようだ。
入学式とオリエンテーションが午前中で一通り終了したためタブレットを鞄へしまい、とある場所へ向かおうとしたが、
「輝弥、もう帰るのか?」
慎が俺の席に来て声を掛けてきた。
「いや、ちょっと寄り道して行こうかなと思ってね」
「そうなのか? もし良ければ付いて行ってもいいか? 帰ってもやる事ないし邪魔じゃないなら折角だからちょっと話したいなと思って」
慎は俺の用事に水を差してしまわないか気にしているが、これは俺としても良い機会だと思った。
「あぁ、そういう事なら良いよ。寄るのは音楽室なんだ」
「音楽室? また何で?」
帰らないのか? と言わんばかりにキョトンとしながら言う慎。
「音楽室が空いてたら、楽器を弾きたいんだ」
「輝弥って楽器が弾けるのか!?」
キョトンとしたと思ったら今度は目を見開いて驚いている。
一つ一つの反応が少し面白くて思わず顔が綻んでしまう。
「うん、と言ってもピアノだけなんだけどね。学校のピアノがどんな感じか気になって……。そういう慎は何か楽器は弾けるのか?」
「いや、俺は楽器を全然触った事も無いよ」
「えっ、じゃあ何で音楽科へ入ったのさ?」
「将来、アーティストとして歌を歌いたいから。まあ、それ程度の理由しかないさ」
俺の勝手な想像として音楽科を専攻した人は皆楽器を一つ弾けるものだと思っていたが、そうでもないのかもしれない。
「そうか、それも立派な理由の一つだ。じゃあ、折角だし俺が何か一曲弾くからそれを歌えば良いんじゃないか?」
そういうと今度は目を光らせる慎。
「ほ、本当か!? ピアノの邪魔にならないか?」
「全然だよ。むしろ一緒に乗ってくれた方が弾き手としては嬉しいし」
「じゃあ、是非やらせてくれよ!」
「オッケー。なら善は急げだ。早速向かおう」
荷物をまとめ、こうして慎と音楽室へ向かうこととした。
「ふぅ、やっと着いたな……」
「意外と探すのに一苦労だな……」
俺と慎はまだ完全に覚えたとは言えない校内を回り、音楽室へと辿り着いた。
今度ここに来る時のためにちゃんと頭の中の地図を更新させておかないといけない。
「鍵はかかってるのか?」
音楽室の扉に手を掛けるとすんなり引く事が出来た。
「いや、空いているみたいだ」
音楽室内に入ると中学校までの様に歴史上の偉人の絵が壁に立て掛けられている訳でもなく、様々な楽器が埃一つなく輝きを放っている。
常日頃、念入りに手入れされていることがわかる証拠だ。
「流石、名門校の音楽室とあって設備は充実してるなぁ」
「ここまでとは思わなかったなぁ……! 流石に音楽室だけで広さを取りすぎていないか?」
慎はそう言い、周囲を見渡す。少なくとも一般教室の2倍はあるのではないだろうか。
「音楽関係に出る人も多いということは吹奏楽部等もそれなりに成果を出してここまで良くしてもらったってことなんだろうな」
音楽室への賛辞を述べ、目的のピアノを見つけ席に着く。
「最初にまず感触を確かめたいから、簡単に弾かせてもらっても良い?」
「いいぜ。好きに弾いて聴かせてくれよ」
慎もそう言いながら近くの椅子を持ってきてピアノの近くに腰掛ける。
「じゃあ……ねぇ、慎はゲームとかは結構やる方?」
「人並みにはやるけど、詳しくはないな〜」
「そっか。じゃあ聴く分で楽しんでよ」
そう言うとゲームのBGM等、自分の好きな曲を披露していった。
こうして、簡易的なピアノ鑑賞会は幕を開けた。
音楽室の扉前で密かに聞き耳を立てている人物がいる中で……。
慎くんの雰囲気は某ロボットアニメの同名の主人公をイメージして下さると掴みやすいと思います。
感想、質問なんでも受け付けますのでよろしくお願いいたします。