リアルが忙しく中々本編を書き進めることが出来ませんでした…!
今回からいつもの輝弥君視点に戻ります!
よろしくお願いいたします!
【輝弥視点】
しずくさんから同好会の廃部になるまでの経緯を話してもらい、話を聞く前は外では青空が広がっていたのに今では夕日がカフェ内を静かに照らしていた。
「なるほど……。スクールアイドル同好会はそうやって廃部になったんだね……」
しずくさんから事情を聞いて、点々と宙に浮いていた情報が一つの線で結ばれ納得がいった。
「うん……」
しずくさんは改めて廃部になった事実が脳裏を過ったのかまた一段と落ち込んでいるように見えた。
「……でもさ、今の話を聞いても俺はしずく達が活動をやめていい理由にはならないと思うんだが?」
慎は若干不貞腐れるように俺たちに問いかけた。
「そうだね、それは俺も同じ意見だよ。せつ菜さんはあんなすごいライブをしてこれからの活動をすごく楽しみにしてたのに……それがこうなるなんて……。こんな強引なやり方、しずくさん達に対して失礼だよ」
俺はそう言いながら机の上に置いている拳の握る力が強まる。
確かに同好会のやり方が各々のやりたいこととかみ合わずに衝突してしまうのは仕方ないと思う。
でも、それは優木せつ菜さんによって作られたものでみんなの意思を尊重し切れてなかったせつ菜さんに原因があるのではないか。
せつ菜さんだけならともかく他の人も活動休止、あまつさえ同好会が廃部になるというのはおかしいと思う。
「輝弥くん……慎くん……」
「輝弥ならそう言ってくれると思ったぜ。でもどうして優木せつ菜さんは同好会にはライブを中止するって言いながら、あの時ライブをやったんだろうな?」
慎は至極当然な質問をする。
同好会には中止を連絡しながら自分一人でライブをそのまま実施する。
その行為に俺は優木せつ菜さんに対しての不信感を覚えてしまうくらいしずくさん達の事を冒涜しているように思えた。
「……分からない。どんな回答が返ってくるのかも皆目見当がつかないね」
「まあ、それを実際に聞かないと分からないし、一度、その優木せつ菜さんを問いただす必要があるんじゃないか?」
「問いただす……って言うと横暴に聞こえるけど、直接会って話を聞くっていうのは必要だと思うな」
「横から失礼。なんだか気になる話をしてるわね?」
慎と同好会廃部の真偽を確認するための計画を練ろうとしていた時、とある二人組の女生徒が声を掛けてきた。
一人は青色の髪をボブに整えて目鼻がくっきりとしており、背が高くモデルみたいにスタイルが良い人。
もう一人は赤茶色の髪をお下げの三つ編みで纏めている。
また青髪の方と同じくらいにスタイルは良く、顔にはそばかすがあるけれどもおっとりとした雰囲気がそれを強みに変えているように感じる。
二人とも胸元のリボンが緑ということもあり三年生であることが伺える。
「貴女方は一体?」
「……エマさん……」
「えっ? エマさんってあの同好会に入ってたエマ・ヴェルデさん?」
俺は二人の正体が分からず聞こうとしたがその回答を待つまでもなくしずくさんが答えを言ってくれた。
慎はその回答に一瞬眉が動いたがすぐに納得がいったのかそれ以上の反応をすることはなかった。
確かに今は同好会の廃部について話を聞いてたのもあって、声をかけてこなかった側をちゃんと見れていなかったが改めて見ると以前にチラシで見た姿がそこには立っていた。
慎の問いにエマさんは無言でただ頷くだけだった。
「そう、この子はスクールアイドル同好会にいるエマ・ヴェルデ。そして私は朝香果林。この子の友達よ。貴方達の話に少し興味があってね」
朝香さんは俺たちの顔を一通り見渡して静かに微笑む。
絵になるようなその微笑みに俺は少し心拍数が上がるのを感じる。
「話……というと?」
俺は平静を装っているが、内心緊張が走っている。
「ふふっ、そんなに堅くならなくてもいいのに。別に貴方達に食って掛かろうとしてるわけじゃないんだから」
俺の心を見透かすように目を細めながら語りかけてくる。
身体を弄られるような感覚を覚えてしまうのは気のせいだろう。
「果林ちゃん、からかうのはそこまでにしよ?」
「……そうね。その子の反応が可愛くて、ついからかいたくなっちゃったわ」
「……お前、異性からよくからかわれるな……?」
「……茶化さなくていいよ」
慎が俺に囁くがそれを一蹴する。
しずくさんといい朝香さんといい、俺も好き好んでそんなことを言われたいわけじゃない。
「それで……エマさん達は一体どうしたんですか?」
「……結論から話せばやりたい事は貴方達と同じことよ」
埒が明かないと思い、しずくさんが話を切り出すと朝香さんはそれに真剣な眼差しで答える。
一瞬でこの人の周囲に纏われた空気が変わり戸惑いが隠せない。
「……どういうことだ……?」
慎は理解が追い付かず混乱しているようだ。
「やりたい事……せつ菜さんの真意を探るという事ですか?」
「話が早くて助かるわ。君みたいに物分かりのいい子、お姉さんは好みよ?」
「果林ちゃん」
俺が必死にこの人の考えを汲み取った答えを出したのに朝香さんはそれでもからかうのをやめない。
またエマさんに制止されるが多分この人はこういった性分なんだろう。
「私もね、突然同好会が廃部になるって連絡が来てからこの状況を受け入れられずにいたの。それを果林ちゃんに相談してたんだ」
「エマさん……そうだったんですね。そう思っているのは私だけではないんですね……」
「私だってスクールアイドルが大好きでこの同好会に入ったんだもん。そう簡単には諦められないよ」
しずくさんは俺達と話していた時は不安な表情を隠しきれていなかったが、同じ同好会メンバーであるエマさんがその心情を吐露することでほっと安心したように見える。
こう見るとエマさんはその印象に違わず、その優しいオーラで周囲の人を包みこむ能力があるように感じた。
「エマさんと一緒にいるという事は朝香さんもスクールアイドルに関してお詳しいんですか?」
「私はそれには興味ないわ。エマが困っているようだから友達として何か力になってあげたいと思っただけよ」
朝香さんは俺の問いに特段興味がなさそうに返事をした。
その素っ気ない様子を見るに本当に友人としての親切心からエマさんの事を助けてあげたいようだ。
「友達想い……なんですね」
「べ、別にそんなんじゃないわよ」
「ふふっ、意外とからかわれるのは苦手なんですね?」
「うっ、貴方も大概ね」
俺の発言にそっぽを向くのを見て俺と同じタイプの人間だと分かり、からかってみると本当に同じリアクションをする。
この人とは意外と馬が合うのかもしれない。
「輝弥もそこまでにしとけよ、話が進まないから」
ついには慎にも諭されてしまったので本当に冗談はそこまでにしておこう。
「ごめんごめん。それで、お二人は僕たちの味方……という認識で考えてよろしいんですか?」
「それはこの子に聞いて。味方かどうかはこの子の意見を聞いて判断してもらえればいいわ」
朝香さんはそう言うとエマさんに顔を向け、回答するように促す。
「私は……やっぱりこのまま諦める事なんて出来ない。だからせつ菜ちゃんの所に行ってスクールアイドルをもう一度やりたい!」
「……なら僕たちと考えることは一緒ですね。ね、しずくさん?」
「うん、エマさんも一緒に来てくれるのでしたら心強いです」
これからせつ菜さんを訪ねようとしているのだ。
万が一の事態を備えて味方は一人でも多くいてくれた方が心強い。
朝香さんはエマさんの事を気に掛けているからか一緒に来てくれるようだ。
スクールアイドルに関しては知らずとも、頭の切れる印象を持ったこの人なら一緒にいて頼もしい事に変わりはないだろう。
「にしてもどうして貴方達もそんなに張り切っているの? 元々のスクールアイドル同好会にはいなかったんでしょう?」
朝香さんはエマさんからは5人のみの同好会の話しか聞いていないから俺たちの存在に疑問を抱いていた。
「確かに僕は元々スクールアイドルの事を何も知りませんでした。ですが、優木せつ菜さんのライブを見て音楽でここまで沢山の人を魅了出来るんだってことに感銘を受けたんです。僕も自分の音楽を使って何かやってみたいなという願望はありました。ここならそれを叶えることが出来るんじゃないかって思ったんです」
「輝弥くん……」
朝香さんからの質問に俺は曇りっ気のない答えを放つ。
堂々と言い放つその姿は自分のこれからの道に何があろうとも決して折れる事のない鋼の意思がそこにはあるのではないかと思わせるほどのものだった。
しずくさんも俺のその姿を見て、羨望の眼差しを向けていた。
「ふふっ、素敵な動機ね。僕はってことはそっちの黒髪の子はまた違うのかしら?」
果林さんはそう言いながら慎を一瞥する。
「俺は……輝弥の夢を手助けしたくて一緒に行動してるだけです……。スクールアイドル同好会には……入るつもりは……ありません……」
慎は先ほどまでの勢いがなくなり途端に元気がなくなる。
目も果林さんに合わせようとせず、それは果林さん以外の何かからも逃げているようだった。
(慎……。どうしてスクールアイドルの話をするといつもそんな悲しい顔をするんだ……)
「ふ~ん。つまりは私と同じ、と考えていいってことね。まあ仲間は多いに越したことはないわ」
慎に対しての疑問が頭の中を巡っているが果林さんの声がそれを遮断した。
「そうだね、改めてよろしくね。えぇっと……」
エマさんは挨拶をするが突然考え込むような動作をする。
そういえば自己紹介をしていなかったことを完全に忘れていた。
「あっ、すみません。自己紹介が遅れてました。僕は巴 輝弥。彼は鈴川 慎と言います」
「鈴川 慎です……。自己紹介が遅れてすみませんでした」
「あらっ、別に気にしなくていいわよ。私たちも他の事に頭がいっぱいでそれに頭が回ってなかったんだから」
「うんうん。気にしなくていいよ♪ これからよろしくね、輝弥くん、慎くん♪」
先輩に対して名乗っていないことを自責の念に駆られていると果林さん達はそれを払ってくれる。
むしろエマさんはそこから温かな笑顔を向けてその淀んだ心を浄化してくれるようだった。
あまりにも曇りのない笑顔に俺は思わず頬を赤く染め目を背ける。
「うっ……よ、よろしくお願いします……」
「あら~? 輝弥君ってエマの笑顔には弱いのね~?」
「ふふっ、輝弥くんは相変わらずかわいいね」
これ見よがしに果林さんは俺をからかってくる。
それに今まで暗い顔をしていたしずくさんも笑顔になって乗っかってくる。
「しずくさんまでそう言わないでよ……! 余計に恥ずかしくなってくるし……」
俺はこの人たちといると調子を狂わされてばかりだが、それでも今までよりも雰囲気が段違いに良くなっていることだけははっきりと感じることができた。
この人たちとなら一緒に夢に向かって歩くことが出来るかもしれない、そう思っていた。
俺はこの良い雰囲気のまま同好会復活の狼煙を上げられると思ったが、俺がこういった弄り方をされたときに調子に乗る奴がここにいる事を完全に失念していた。
「さすが、輝弥はそこいらの女の子以上に赤くなりやすいな」
「……ふん……!」
俺はいきなり元気と威勢を取り戻した慎に無性に腹が立ち、思わず肘打ちをかます。
それが打ちどころが悪く腹にクリーンヒットするのだった。
「うっ……!? ちょっ……腹は……まずいだろ……!」
「……自業自得だ……」
慎はあまりの激痛にその場で蹲る。
「ぷっ、ふふふ。貴方達って面白いわね」
「あはは、本当だね。より賑やかになって嬉しいな♪」
「ふふっ、私も同感です」
そんな俺たちのやり取りに他のお三方は漫才を見ているかのようにずっと笑っているのだった。
ここから同好会復活に向けて物語が進み始めます!
今後も楽しみにしていてください!