昨日は私の最推しであるしずくちゃんの誕生日として外伝を投稿しまして立て続けでありますが本編も進みます!
優木せつ菜さんの正体は…輝弥くん達はどのように答えを見つけるのか?
それではご覧ください!
「優木せつ菜さんの正体を探るって……どういうことですか?」
「俺達ってこれからそのせつ菜さんを探すためにこうして集まってるんですよね?」
果林さんの発言に俺と慎は理解が遅れていた。
「だから、その為に必要な情報を先に集めていたのよ」
果林さんはそう言うと鞄の中に手を入れ、一冊の本を取り出した。
本にしては表紙は何も書かれておらず、本と呼ぶには寂しいものだった。
「果林ちゃん、これは?」
「全校生徒の情報が載っている名簿よ。とは言っても学年,学科,名前しか書いてないけどね」
「えっ!? でもこういうのって生徒会室とか職員室にあるものですよね?」
「だから生徒会室に行って、これを借りてきたの」
全校生徒の名簿なんて軽い気持ちで探す事なんて出来ないと思っていたが、一体これを探すのにどれだけ苦労したのだろうか。
「もしかして、果林さんが遅れたのって生徒会室や職員室を回っていたからなんですか?」
「えっ!? ま、まあそうね。意外と簡単に貸してくれなかったから先生の力を借りて事なきを得たって所よ?」
果林さんは俺の質問に驚きの声を上げるも何事もなかったかのようにその時の苦労を語っている。
途中で目を合わせなくなってしまったが、本人としてはそれだけ険しかったという事だろう。
「そうだったの……? 果林ちゃん、誤解しててごめんね? 携帯に連絡しても出なかったから私てっきりまた迷子になっちゃったのかと思って……」
「えっ? あらっそうなの?」
エマさんは果林さんに対して誤解していたことを詫びる。
この人から迷子という言葉をこの短時間で何回聞いたか分からないが、なぜそんなに迷子という言葉を使うのか。
俺がそんなことを考えている間、果林さんは鞄の中を漁りスマホを取り出した。
「あらっ、本当だわ。ごめんなさい、鞄の底に置いてたから気付いていなかったわ」
果林さんの言葉を聞いた時、俺は自分の耳を疑った。
(……えっ、エマさんの言ってたことって……本当なの……?)
スマホは鞄の中に入れるとしてもすぐに取り出せるようにポケットや荷物の上に置いているものかと思っていたが、果林さんはどうやら違うらしい。
「エマさんの言ってる事って……割と的を得てるのか……?」
慎も果林さんの言葉を引き金にエマさんが言ってた内容を思い出していた。
エマさんがそう言うってことは、この人は本当に……。
「二人とも急に固まっちゃってどうしたの?」
このままでは果林さんのイメージに多大な傷を負わせるのではと悪寒が走った矢先、しずくさんに声を掛けられ我に返る。
「い、いや、なんでもないよ。少しぼーっとしてて……」
我ながら咄嗟のごまかしが下手である。
「と、とにかくこうして生徒名簿を手に入れられたんですから、それを早く読みましょう!」
俺は今の反応から気を反らすように無理矢理話題を今やるべきことへと向けさせる。
「そうだね~。普段は私たちでも見ることが出来ない代物が手元にあるんだもん。せつ菜ちゃんの事について探してみようか~」
彼方さんも先ほどの俺のリアクションを気にすることなくせつ菜さんの居場所を突き止めることに目が向いていた。
そこから俺達六人による優木せつ菜さんの名前探しが始まった。
虹ヶ咲学園の一学年あたりの生徒数は約千人いる。
俺達六人で千人いる中から特定の一人を探し出すことは、目の前に広がっている草原から四葉のクローバーを探すのと同じくらい至難の業だ。
そこで、六人で一つの名簿を見るよりは名簿を小分けして各々で探す形を取った方が効率がいいので、生徒名簿を学科ごとに分け一人一人がその名簿から優木せつ菜さんの名前を探し出すこととした。
ちなみに俺は普通科の名簿を渡されていた。
そこの中に探している人物の名前が書かれていればと淡い期待を寄せながら名簿の内容を確認した。
「朝日 陽菜貴……安達 亜久里……井口 麻友……上原 歩夢……。あっ、っていうか"優木"せつ菜だからそこを探せばいいじゃん……」
俺は名簿を頭から血眼になって見ていたがそもそも名簿順になっているのだから"ゆ"から始まる所を見ればいいじゃないかと一人突っ込みをかましていた。
我ながら真面目な素振りを見せておきながらこういうところはポンコツだなと自分の頭の固さを痛感するのだった。
「山口 香織……八幡 未祐……夕島 夏海……優羽 朱里……。うーんこのクラスにはいないか……」
優木の苗字から始まる名前が見つからなかったため、次の名簿へと頁をめくる。
「槍元 知里……有李 真理亜……。ここも違う……」
二クラス目も探すが該当する名前は見つからない。
三クラス目へと頁をめくった時にとある箇所に目が向いた。
「中川 菜々……。中川さんは普通科なんだ……」
中川さんの名前を見つけ、普段は聞くことが出来なかった中川さんの知らない一面をここでまた知る事が出来た。
その後も優木の文字を探し名簿と睨めっこするがおいそれと顔を出してくれない。
そして、必死に探しているうちに気付けば最後のクラス名簿となっていたので、ここの学級に一縷の希望を託す。
「矢和田 知恵美……友利 裳絵華……。うーん……。という事は普通科にはせつ菜さんはいないという事か……」
希望を託したもののその光は瞬く間に闇へと葬り去られるのであった。
「こちらの確認は終わりましたが他の皆さんはどうでしたか?」
自分の作業が終了したことの連絡と同時に各メンバーの手応えを確認する。
「音楽科の一覧も全部確認したけどせつ菜さんの名前は見つからなかったぜ」
「私も情報処理学科の名簿を探していましたが、それっぽい名前は見つかりませんでした……」
慎としずくさんが首を横に振りながらめぼしい成果を上げられなかったことを報告する。
「そっか……。俺も普通科の名簿を見たけど全くありそうな気配もなかったね」
「貴方達も芳しい結果は得られなかったって感じね?」
三人で意気消沈していると果林さんが声を掛けてきた。
既に名簿を見終えたであろう彼方さんとエマさんもその声に反応しこちらを見つめている。
「貴方達もっていう事は彼方さん達もですか?」
「えぇ。ライフデザイン学科と国際交流学科も探したけど、優木せつ菜という名前は一切見つからなかったわ」
「えっ……? それっておかしいじゃないですか? それでは優木せつ菜さんはこの学校に入学すらしていないということになりますよ!?」
果林さんからの報告を聞いて俺は更に頭を悩ませるのだった。
この学校でスクールアイドルとして活動をしているのだから虹ヶ咲学園の生徒として勉学に励んでいると思っていたのだが、それを根本から覆された。
折角次のステップへ進めると思った矢先にこの事態なのだから俺は解決策を出すために頭を悩ませた。
だが間髪を入れずに果林さんが声を挟む。
「……もしかしたら、そのまさかが的中してしまうかもね……」
「……それは……どういうことですか?」
「……まさか……優木せつ菜さんという存在は最初からなかったという事ですか?」
果林さんの含みのある言い方に苦慮していると、しずくさんが一つの予想を組み立てた。
「あぁ~、それなら可能性としては一理あるね~。この生徒名簿は学校側が作ってる正式な書類なわけだし、ここに書かれていないという事はそもそも生徒として数えられてないってことになるね~」
「つまり、優木せつ菜さんは誰かが作り出した偶像っていう事ですか……?」
彼方さんはしずくさんの予想に解説を付けながら、一つの説として唱えるに十分な理由を付けてくれる。
それを聞き、慎も優木せつ菜という存在に疑問を持ち始めた。
「じゃあ、せつ菜ちゃんは一体誰が生み出したの……?」
同好会で一緒に活動していた優木せつ菜が突然遠い存在となり、エマさんは実感が湧いていなく、ただただ是非を問うことしかできなかった。
周りの空気が重くなっていくのと同時に解決策が無いか思考を巡らす。
その時、俺の中で突然昨日の出来事が脳裏を過った。
(関係が無いとしても生徒の個人情報を話すつもりは毛頭ありませんが)
(……私は優木さんから自分の事は秘密にするように言われているんです。だから彼女がどの学科の生徒なのかを貴方達に教える義理はありません)
(ですから、私が話したくなかった内容を話しただけです。私は優木さんの事を話すとは一言も言っていませんよ?)
「まさか……?」
俺は昨日の中川さんとの会話で感じた違和感を、地面にばら撒かれたパズルのピースを組み合わせるように一つ一つを丁寧に頭の中で状況整理しながら組み合わせていく。
「輝弥くん? どうかしたの?」
しずくさんは突然声を出した俺を見て心配する声を上げる。
「何か思い当たることでもあるのかしら?」
「いえっ……まだ確信があるわけではないです。ですけど……可能性は否定できないなと思って」
「状況を整理しながらでも良いから聞かせてもらえるかしら?」
「はい。途中で話が逸れてしまうかもしれないですが……」
「構わないわ。今は先に進むための情報が不足してるし、可能性であろうと次につながるための情報があることは助かるから」
果林さんは笑みを浮かべながら答える。
その表情は人を威圧させるような笑みではなく、見ている人を穏やかにさせる効果があるようだ。
「まず、僕が現時点で怪しいと睨んでいるのは生徒会長です」
「どうして中川さんなんだ?」
慎からの質問に俺は昨日あった出来事を思い返しながら返事をする。
「昨日、皆さんと別れたあと、しずくさんと一緒に部室棟へ行ったんです。帰る前にもう一度だけ同好会の部室で何かないかなと思って」
「もしかして……せつ菜さんのこと?」
しずくさんからの問いに俺は頷いて説明を続ける。
「その時、同好会の扉の前で優木せつ菜さんを見たんです。僕は先日あったライブ衣装をまとった姿しか見ていないので確証はなかったんですけど、しずくさんが後ろ姿見て、間違いないと言っていたので恐らくそうだと思ってます」
「しずくちゃんはこのメンバーの中では周りを一番よく見てるから、それなら本当なんだろうね~」
「せつ菜さんを見て追いかけたんですが部室棟を出た瞬間に姿を見失ってしまったんです。その後、すぐに中川さんと会ったんです」
「つまり、輝弥くんはせつ菜ちゃんが姿を隠したタイミングで中川菜々ちゃんに変わって、二人の前に姿を見せたからせつ菜ちゃんは菜々ちゃんじゃないかって思ってるってこと?」
エマさんの問いに俺は軽く首を横に振る。
「確かにそれもありますが、僕が思ったのはそのあとのやり取りで、ですね。僕は中川さんにせつ菜さんがどこの学科にいるのか直接聞いたんです。でも、あの人はそれを答えてくれませんでした」
「それはどうしてかしら?」
「あの人はせつ菜さんから口止めされていると言っていました。だからせつ菜さんの事を話すつもりはないと」
「……なるほどねぇ。分かってきたわ」
俺がそこまで話した時、果林さんは獲物を見つけた肉食動物のように目を細め軽く舌なめずりをする。
隣で彼方さんが顎に手を当ててしかめっ面をしながら腑に落ちたような表情をする。
「むむむ〜? 彼方ちゃんもだんだん分かってきたぞ~?」
「……もしかして生徒会長がせつ菜さんだから入れ替わったタイミングも重なって……せつ菜さんの事を話すつもりがないっていうのも自分がせつ菜さん本人だから秘密にしている、という事ですか?」
しずくさんも少しずつ状況が掴めてきたようだ。
「そういう事ね。こうして名簿にも載っていないってことは自分が生徒会長として名簿の管理を行っているから誰も優木せつ菜の存在を指摘することはない、生徒会長である自分がそう言えば納得すると思っているんでしょうね」
「な、なるほど……。確かにその説は非常に可能性が高いですね……」
果林さんの憶測も聞いた上で慎は呆気にとられながらも中川さんが取っていたであろう行動に理解が追い付いてきたようだ。
「輝弥くん、その情報は非常に役に立つわ。ありがとう」
果林さんは俺の功労にウィンクしながらお礼を言う。
その動作に俺は少し心拍数が上がるのを感じる。
「い、いえ……! むしろ、あの後に勝手に動いたから見つかっただけで……偶然の産物です」
「それでもだよ! こうして輝弥くんとしずくちゃんが動いてなかったら次のステップに進むことが出来なかったから本当に感謝しかないよ! ありがとうね!」
エマさんからも満面の笑みを向けられながらお礼を言われる。
この人からの褒め言葉は少しむず痒く感じる所もあるが、凄く力も貰える。
「なら、この名簿を返しに行くついでに生徒会長の所へ行きましょうか」
バラバラに分けていた名簿を元に戻して果林さんに渡すと、果林さんはその名簿をパタパタと揺らしながら声を上げる。
その声は進む道を閉ざされた俺達を活気づけるには十分で、その場に居合わせた全員が頷いて同意するのだった。
読んでいただきありがとうございました!
生徒名簿を取りに行くために一人で生徒会室へ乗り込む果林さんがイケメン過ぎて惚れてしまいますね。
次回もお楽しみに!
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