今回もよろしくお願いいたします!
一通り曲を弾き終えた時、慎は目を輝かせながら拍手を盛大にしていた。
「すげえ、めっちゃ感動したよ! 特に最後に披露したやつ、あれがゲームのBGMにあるのかよ! 哀愁漂うというか切なくなってくるというか鳥肌が立ちまくりだったよ!!」
慎は目を輝かせ拍手をしながら称賛の声を上げた。
そこまで褒めてもらえることもなかったから少しむず痒い気持ちだ。
「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいね。是非ともこの曲と共にゲームも布教していきたいなと思っているんだけど、中々興味を持ってくれる人がいないからすごく寂しいんだよ……」
今まで自分の好きなゲームのことを少し喋ってもあんまり伝わらなかったり、気が向いたらやるというやらないの隠語も使って回避されるので、俺は今までの苦悩を思い出した。
「なんだか苦労してるんだな。ちょっと気になっているから今度見せてくれよ!」
慎はそんな俺の様子を同情してかはわからないが興味を示してくれている。
是非ともこのままの勢いで知ってもらいたい。
「あぁ、是非とも一度招待するから見に来て欲しいよ」
「……? 貴方たちは……?」
2人でゲームの話をし始めようとした時、女性の声が聞こえてきた。
虹学の制服を来ているその人は長髪黒髪であり左右それぞれで三つ編み、また眼鏡を掛けている事もあり博識な印象を受ける。
そして、右腕に何やら腕章を付けているという事は……
「あっ、生徒会長さん」
「あっ、朝に正門前で挨拶していた人か」
「……あと入学式の中で在校生代表で祝辞を述べていた人だよ……」
「えっ……!? んん……言われてみれば……?」
挨拶の他に見かけた場面を話したが慎としてはパッとしなかったのかかなり顔を顰めていた。
「何故疑問形なんだ……。慎……もしかして寝てたのか……?」
「いや、そういうわけじゃないけど……! ただ遠くてちゃんと顔が見えなかったっていうか……」
この会話を本人の前でしているから正直何か怒られそうで怖いな……。
「そのネクタイの色……貴方たちは新入生さんですね」
突然話しかけられ、少し驚くが一呼吸おいて答えていく。
「はい、そうです。音楽科1年生の巴輝弥と言います」
「自分も同じく音楽科1年の鈴川慎と言います」
「巴さんと鈴川さんですね。私は虹ヶ咲学園生徒会長 普通科2年中川菜々と言います」
中川さんは先ほどの慎の失言を気にする様子もなく落ち着いて自己紹介をする。
「中川さんですか。それとも生徒会長とお呼びした方が良いのでしょうか?」
「いえ、どちらでも構いません。お二人の好きにお呼びして頂ければ」
「では、中川さんとお呼びします。中川さんはどうしてここへ? いきなりここでピアノを弾いて何か不味いことでもあったのでしょうか……?」
生徒会長がここにやってきたということは悪いことをしてしまったのかと不安が頭によぎる。
俺の額に冷や汗が出てるような感覚を覚えた。
「いえ特別悪いということではないですが、ここを利用する上で使用許可を事前取って頂かないといけない規則になっています。ただ、今回は1年生であるお二人であったのでここでの内容は目を瞑っておきます。次から利用する際には使用許可を取ってくださいね。私以外の生徒会メンバーに言って頂いても許可書は発行しますので気をつけて下さいね」
中川さんは特に厳しい顔で説教を始めるわけでもなく俺たちに警戒心を与えない様に微笑みながら詳細を話してくれた。
「そういう事ですか。すみません、ちゃんと規則について把握していなくて……。今日はもう帰るだけなんですが折角だからここのピアノで少し弾きたいなと思いまして、勝手ながら鈴川君を連れてここに来たわけです」
「そうなんですね。にしてもかなりピアノがお上手なのですね。盗み聞く様な形になってしまいましたが、素敵な旋律だと思って聴き入ってしまいました」
そう答えた中川さんだったが、俺はちょっとした違和感を感じた。
(……ん? この人、心なしかさっきより目が輝いてないか……?)
初めて聴いたであろう曲を聴いてそこまでトキメキを覚えるというのは中々にいないと思う。
過去にその曲を聞いた覚えがあってそれを思わぬ場所で聴けてしまった感動で笑みが溢れてしまう感じだと思っていたが……。
そんな事を考えていると共感できる人を見つけた慎は中川さんに食い入る様に話しかけた。
「中川さんも分かりますか! 輝弥のピアノって凄く上手で俺も感動したんですよ! 今日はその鑑賞会という事で、輝弥にピアノを弾いてもらってたんですよ!」
「ふふっ、そうなんですか。良い事ですね。是非私も聴かせて頂けたらと思っていたんですが生憎生徒会の仕事があるのでそちらをやらなくてはいけないので申し訳ないですが、鑑賞会には参加できません」
中川さんは笑顔を見せながら慎に答えていく。彼女も何だか嬉しそうだが……。
「そうだったんですか。午後からも生徒会の仕事とはお疲れ様です。もし中川さんが宜しければお声を掛けて頂ければいつでも弾きますので是非今後考えて頂ければと思います」
「はいっ、ありがとうございます。是非前向きに検討させて下さい。それでは私はこれで失礼します」
そう言って中川さんは軽く頭を下げると笑顔のまま音楽室を後にした。
「生徒会長ってもっと石みたいに堅い人かと思ってたけど、あの人はそういう訳じゃなさそうだな」
「そうだね。こっちの話にも興味を持って聴いてくれたから俺も嬉しいよ」
「今度はあの人も入れた鑑賞会を開きたいな、輝弥!」
「うん、そうだね。是非聴いて欲しいよ」
生徒会長中川菜々さん……凄く綺麗で優しい人と知り合えて虹学生活を幸先良いスタートが切れたと思えた。
中川菜々さん…。こんな美人さんに声をかけられたら誰しもが緊張しますよね。