今回はせつ菜ちゃん説得に向けたせつ菜自身の独白がメインとなります!
それではよろしくお願いいたします!
輝弥達がせつ菜説得に向けて決意を固める少し前。
【せつ菜視点】
授業を終えて、生徒会の仕事を行っていたが業務が捗ることはなかった。
原因は分かっている。
昨日の巴さん達とのいざこざもあるし、昼休憩に会った高咲 侑さんとの出来事も一因になっている。
見回りも兼ねて音楽室を訪ねたら高咲 侑さんに出会った。
私の歌をピアノで弾いていたので驚きの声を上げたがそれを聞いた高咲さんは目にハートを映しながら私に迫ってきたのだ。
「あの……! ち、近いです……」
顔があと少しセンチで当たるというところまで近づいており、私は思わず目を瞑りながら高咲さんを制止した。
「あっ……あっはは……ごめんなさい……」
高咲さんも自分の行動を自覚したのか縮こまってしまった。
「そ……それよりも……高咲さんは以前にお会いした時にも優木さんに会いたがってましたね?」
私は空気が気まずくなるのを感じたので、空気を変えるために話題を変える。
私が高咲さんに聞いた内容は以前に高咲さんと上原さんがスクールアイドル同好会を探していた時に聞いたものだ。
あの時は優木せつ菜に会おうとして同好会の部室を訪ねていたが彼女は部室に来ない上に同好会は廃部になることを宣告するのみであったが。
「そうだね。あの時も私がライブを見た後で興奮冷めやらぬ状態だったし是非とも間近で応援出来たらなって思ってたから」
高咲さんは調子を取り戻し、私が振った話題に乗っかってくる。
「……どうして貴女は優木せつ菜さんにそこまで拘るのですか?」
私は、スクールアイドルに、優木せつ菜に熱い想いを見せる高咲さんのルーツが気になったので聞いてみることにした。
「うん! この前、お台場でやってたライブを見て凄く胸がドキドキしたんですよ! せつ菜さんの言葉が……せつ菜さんのパフォーマンスが直に響いたというか……とにかく感動したんです!」
高咲さんは少し頭を悩ませていたが、すぐに回答してくれた。
目を輝かせながら訴えてくるので、あの時の私のライブが彼女にとって人生の転機だったという事が否が応でも伝わってくる。
私はそんな高咲さんが眩しくなり目線を窓の外へと向ける。
「そうなんですか……自分の夢を……見つけることが出来たんですね」
「うーん、自分の夢は……まだ見つかってないんですけど……。でも、夢を追いかけてる人を応援できたら私も何かが始まるんじゃないかって思って!」
「夢を追いかけてる人を……応援出来たら……?」
私は高咲さんの言っていることへの理解が追いつかず、思わず高咲さんの方へ顔を向ける。
「うん! 私、将来やりたい事とかあんまり考えてなかったんです。だけど、ここまで夢中になれることも今まで無かったから、やりたい事が見つかるまではこの流れに乗ってみるのも良いんじゃないかなって思ったんです!」
高咲さんは向けられた目線に答えるようににこっと笑顔で応える。
そんな高咲さんを見つめながら私はただただその言葉を噛み締めていく。
「せつ菜さんのおかげでスクールアイドルに興味を持てたし、同好会にも入ったんですよ?」
「同好会……ですか?」
私は高咲さんの同好会という言葉に引っかかりを覚えた。
「はい、かすみちゃんが同好会を復活させようと動いてて……って、あっ……!」
高咲さんは私の様子に気が付かず話し続けていたが、自分の失言に気付いたのか思わず口元を手で押さえていた。
「あっ……あの……勝手に活動しようとしているわけじゃなくてですね……?」
慌てふためく高咲さんを見て、私は思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、そんなに動揺しなくても同好会発足の規定さえ守っていただければもう一度活動していただいても問題ないですよ?」
「えっ? そうなんですか?」
高咲さんは驚きの声を上げる。
「はい、メンバーを五人以上集めて申請を出していただければ受理しますので、生徒会室へお越しください」
私は同好会発足のルールについて説明すると目線を再び窓の外へと向ける。
「……優木さんが知ったらきっと喜ばれるでしょうね」
高咲さんははっと息を飲みながら私を見つめている。
「……どうしてやめちゃったんだろう……」
私の方を見たのは一瞬の事で高咲さんはすぐにピアノへと顔を戻し、ため息を吐きながら静かにぼやく。
私はそれを聞いてもなお無言を貫いていたが、沸々と胸の中の炎が灯されていった。
「せつ菜さんって凄く可愛いし自分の持ち味を分かっているから絶対人気も出ると思ってたのに……。それにあのライブも大成功だったから良いスタートを切ったと思ったのにな……」
「……なんでそんなことを言うんですか……?」
「えっ……?」
高咲さんは私が思わずこぼした言葉を聞いて、理解が追い付いていないようだった。
突然の冷たい口調が余計に彼女を混乱させていたようだ。
「いい幕引きだったじゃないですか。せつ菜さんはあそこで活動をやめて正解だったんですよ。あの人は自分の夢を叶えることしか見えてなくてもっと近くにいた人の事を見れていなかったんですから……。あのまま活動を続けていたら同好会は崩壊していたことでしょう」
「そ、そんな事……!」
「高咲さんはラブライブをご存知ですか?」
高咲さんの言葉を遮断するように高咲さんへ再び顔を向け、言葉を紡いでいく。
「ラブライブ……?」
「全国の高校が競うスクールアイドルの大会と言えば早いでしょう。彼女たちはそこに出場することを夢見てスクールアイドル活動に取り組んでいました。ラブライブに出るためにはグループの結束を高めることは必要不可欠です」
私は話しても意味のないことを知らず知らずの内に吐露していた。
「優木せつ菜さんはそれを分かっているからこそ、誰よりも熱が入り、誰よりも皆を先導しようと精一杯努力を重ね、誰よりも皆に寄り添おうとしました。ですが、彼女たちの性格をしっかり理解できていない中で自分の価値観を相手に押し付け、メンバーからの信頼を失っていったのです」
高咲さんは何も言わずにこちらの話に耳を傾けている。
今まで同好会の裏話を聞いたことがなかったこともあって少し手が震えているようにも見えたのは気のせいだろうか。
「あまりにも悲痛な話ですよね。誰よりもスクールアイドルを大好きでいた彼女が自分本位の我儘を出してしまったが為にスクールアイドルに殺されたんですから。あまりに惨めで……愚かしいことです……」
私は途中から想いが込み上げてきそうになり自然と力が入ったのを感じる。
「……幻滅しましたか?」
「……えっ……と……」
突然の私からの質問に高咲さんは困惑していた。
まあ無理もないだろう。
同好会での優木せつ菜の実態をいきなり聞かされた挙句、間髪を入れずに彼女の愚かさを露呈させるように質問を向けていたのですから。
高咲さんとの間に沈黙が数刻流れたのち、音楽室の外から顔を覗かせる者がいた。
「侑ちゃん?」
それは以前に高咲さんを見た時に隣にいた上原さんだった。
「……ふっ、おしゃべりが過ぎましたね。それでは私はこれで。スクールアイドル活動、頑張ってくださいね」
私は沈黙を壊すようにふと笑いを見せ、彼女たちの健闘を願ったのちに音楽室を立ち去る。
見回りを終えた後、いつものように独りで生徒会室に籠り業務をこなしていた時、ふと動画配信サイトでアップしていた自分のライブ映像を見ていた。
これは私が今後同じ過ちを犯さないためにやっていた戒めだ。
スクールアイドルへの想いが溢れそうになったら、無理やりにでも自分にあの時の惨状を思い出させ抑制を図るもの。
いつもなら最初の二十秒程を視聴したのちにそのサイトを閉じていたが、今日はそれに付けられているコメントに目が向いた。
「可愛い!!」
「せつ菜ちゃんの曲、本当に元気を貰える!!」
「この人のパフォーマンス、力強くてカッコいい!」
「ラブライブに出てくれたら俺は全力で応援したい!!」
コメント上位は優木せつ菜への称賛の言葉で溢れていたが下へスクロールする度に目に入るコメントは称賛の声の他に悲観的なものも混じっていた。
「この人、スクールアイドル辞めたらしいな」
「本当なんで辞めたの……?」
「もっと応援したいなって思ってこの人の事調べてたけど、辞めたってマジ?」
「↑コメの人、マジやで」
優木せつ菜に向けられた様々な意見が私の心を弄ってくる。
そして、見ていられなくなりパソコンを閉じて思わずデスクに顔を伏せる。
(私は……なんて未練がましい女なんでしょうね……)
そう思うと同時に優木せつ菜という偶像を作るきっかけとなった記憶が私の中に蘇っていった。
私は幼い頃から誰かの為に物事をやるのが大好きだった。
友達に頼ってもらいたくて勉強を頑張りテストが近づいてきた際にはみんなが私の元に寄ってくる。
そして、教えた後で貰う「ありがとう!」の言葉は何物にも代えがたい嬉しさとなり心を満たしていた。
だが、友達からの感謝も嬉しいが、私が一番に見たかったものは親の喜ぶ顔だ。
テストで高得点を取った、先生から沢山褒めてもらえたなどの良い報告をすれば、親は「流石、菜々は偉いね」と頭を撫でてくれる。
それが私にとって何よりの原動力だった。
それが私がこうしていられる主要因だ。
だが、いつまでもそんな優しい言葉を掛けてくれる人は世の中に多くない。
私の親もその一人だ。
私がこうして好成績を収めることを当たり前に感じるようになり、今まで「特別」に感じていた瞬間が「普通」の感覚へと落ちていく合図だったのだ。
貴方ならそうでなくちゃ。
私を勇気づけてくれたあの頃の温かい言葉はいつしか重荷となって私の心に重くのしかかる。
親を失望させたくない、その一心で勉強を頑張っていた。
そんな心のゆとりが無くなったいったタイミングで出逢ったのがアニメの世界だった。
夜遅くまで勉強していたある時、勉強に疲れ一息つこうと誰もいないリビングへと足を運んだ。
親は既に寝室で寝ており、リビングは真っ暗だった。
そこで息抜きにふとテレビをつけた先に映っていたのが、戦闘アニメだった。
主人公サイドは自分を想ってくれる人の為に自分の正義をぶつける。
悪役サイドは自分を慕ってくれる民の為に自分の正義をぶつける。
誰かの為に血反吐を吐きながら戦う二人の戦士の雄姿に私は心を奪われた。
ここまで自分の想いをまっすぐな力にしているヒーローの姿が眩しくて憧れの的だった。
自分も誰かのヒーローになりたい。
小さなヒーローではなく、もっとたくさんの人の力になれる大きなヒーローになりたい。
それが中川菜々の、優木せつ菜の原点だった。
それから勉強の合間を縫って、他のアニメについても視聴したが戦闘物の他に惹かれたのが音楽アニメだった。
自分たちのやりたい事を音楽で表現して、それを通じてファンの人たちと心を一つにする。
それは私がこの世界に入る上で一番大切にしたい事だと思った。
私のやりたい事、それは自分の大好きをステージで体現し、見てくれる人とそれを分かち合うこと。
一見すると、どうすればそれを作り出すことが出来るか不明瞭な内容だが、私としてはアイドルを目指す上でのコンセプトを作ることが大切なのではと思い、それをモットーとして持つことにした。
それからアイドルの道を探す上で目に留まったものがスクールアイドル。
プロのアイドルとは違う、高校生が織りなすアマチュアのアイドル。
それが、今の私が挑戦するには相応しい舞台だと思った。
それと心配する点がもう一つある。
それは中川菜々という存在だ。
いつもの私のままでステージに上がっても、真面目で堅物な印象を持たれている関係もあるのであまり応援してくれる人はいないのではないか、そう思い生まれたのがもう一人の私。
アニメの主人公の名前を貰い誕生したもう一人の私。
(もう……私は誰かのヒーローではなれないでしょうね……)
誰かの心に寄り添えるようなヒーローになりたかったが、今では正義に滅ぼされる悪役に落ちぶれていた。
人から期待されることは嫌いではない。むしろ大好きだ。
それが今の優木せつ菜を作り出したきっかけなのだから。
だが、私がやろうとしてた大好きが誰かの大好きを否定していた。
それはただの我儘でしかなく、同好会の仲間にもそれは届いていなかった。
それ故のかすみさんのあの訴えだ。
(あんなので尊重したなんて言わないで下さい! かすみんの今の気持ちも現に分かっていないじゃないですか! その発言が周りを見れていない証拠なんです!!)
それから、あの頃の我儘を押し付けていた自分を戒めるために元々計画していたお披露目ライブを私一人で敢行した。
これが同好会メンバーにバレれば何と言われるか考えもしたが、私なりのけじめを付けたかったので同好会に心の中で謝罪をしつつライブを執り行うことにした。
現にライブを行って正解だったと思う。
あのライブを見たことで自分の夢の為に走っていく決意を固めた人間が二人も出来たのだから。
優木せつ菜がいない新しい同好会がスクールアイドルとしてラブライブを目指す。
我ながら良い舞台構成なのではないでしょうかね。
そんなことを考えていると午後の授業開始の予鈴がなっていた。
私は今後をどう生活しようか考えながら生徒会室を去っていった。
私が破壊した同好会が再び立ち上がり、メンバーたちが優木せつ菜を取り戻さんと計画を練っていることに気付かずに。
読んで頂きありがとうございました!
せつ菜の過去について私なりの独自解釈も織り交ぜた上で作らせていただきました!
どうして中川菜々がスクールアイドルになろうとしたのか。
どうして彼女が優木せつ菜をなったのか。
やはり彼女を表現するうえで必要なのではないかと思い、この話を入れました。
是非気に入って頂けたら嬉しいです。
感想・評価等お待ちしております。