前回の投稿から二週間空いてしまい申し訳ございません…!!
今回のお話でアニガサキ三話の内容は終了します!
それではどうぞ!
【果林視点】
エマ達同好会メンバーとの会合があった後、そのまま寮に帰る気分ではなかったので私は図書室でモデル雑誌を読んでいた。
いつもは読者モデルの仕事が無ければ寮の部屋でまったり自分の時間を過ごすのだが、今日はそういう気にはなれなかった。
理由はただ一つ。
あの子たちが一度グループを去った子をどうやって連れ戻してくるのか気になったからだ。
優木せつ菜によってバラバラになった彼女たちがスクールアイドルとしてもう一度活動できるように発破をかけたつもりだったが、それでもあの子たちは優木せつ菜の事を仲間だと思っているようだ。
そして、どうにかして同好会に引き戻そうと策を巡らせようとしているが私にはそれをする理由が分からなかった。
どのような理由で優木せつ菜が同好会を崩壊させていようが彼女はスクールアイドルを辞めようとした事実は変わらないのだ。
自分の意思で決めたことであればそれを尊重するのも仲間の在り方ではないのかと思っていた。
読者モデルの仕事をしていた時も意欲的に取り組んでいた私に対して、一緒に仕事をしていた子が突然引退宣言をする事もあった。
見た目では平静を装っていながらも陰では自分には向いていなかったなどの悲観的な心や自分なんかが出来る訳がないという自虐心が働いていたのだと思う。
一度自分の弱さに折れてしまった人間は第三者が慰めだろうが同情だろうがどんな言葉を掛けてきても立ち直ることはない。
否、それを言う資格は第三者にはないのだ。
本人としては誰よりも頑張ってきた、絶え間ない努力を重ねてきた。
それなのに他の人間はそれを超える才能を持ってるが為に、亀のように自分のペースでひたむきに走っていた自分を兎のように余裕な表情をしながら追い抜いていく。
そんな絶望を見せつけられた後で自分の事を知りもしない人間からの同情は何も効果が得られるはずがない。
"いつでも話聞くからね。"
私の事を何も知らないあなたに言った所で何が変わるかしら。
"一人で抱え込まないでね。"
あなたの甘い考えで心労が増えるくらいなら一人で抱えた方が楽なのよ。
ここまでは私が過去に見た堕ちた人とそれに寄り添う人。
仲間と言いながらも自分の事しか考えてなかった人達による下らない寸劇。
別にエマ達をそれと同じだとは思いはしないけれども、状況は皮肉にも一致している。
自分の事を何も知らないエマ達が労いの言葉を掛けようともそれは当人に届くことはない。
優木せつ菜の事を心配して、本来は溜める必要のない疲労を蓄積させては今後の練習にも身が入らない。
そう思って助言していたが、それに待ったをかける者達が現れた。
巴 輝弥、高咲 侑。
スクールアイドルに関しては素人だけれどもやりたい事を見つけたとして同好会に入部を決意した二人。
優木せつ菜を除いた現同好会メンバーが勢揃いした後、新メンバーも加わり今後の活動に一筋の光が見えたと思った矢先、輝弥君と侑が優木せつ菜の事を言及した。
私の反対意見に対しても感情でぶつかってきたかすみちゃんに対して毅然と自分の考えをぶつけてきた二人。
二人の態度を見た時、私は内心嬉しかった。
私は過去の経験からみんなに残酷なアドバイスを送ったけど、それを覆そうとしている。
過去の私に出来なかった事をこの子たちはどう見せてくれるのか、それがすごく楽しみだった。
実際、今の私は図書室でモデル雑誌を読んでいたつもりだが内容が全く頭に入っていない。
一通り読んだと頭が錯覚し次のページ、またその次のページ、そして気が付けば背表紙までたどり着いていたのだ。
(今日は仕事の事を考えるのはやめておきましょ)
そう思いモデル雑誌を閉じてカフェで一息つこうと決めた矢先の事だった。
「普通科二年、中川菜々さん。優木せつ菜さん。教室棟の屋上へお越し下さい。繰り返します。普通科二年、…………」
聞き覚えのある声が図書室の無機質なスピーカーから流れてきた。
(これは……歩夢ちゃんね……)
私が優木せつ菜の正体を突き止めようとエマ達と奔走していた時に出会った可愛らしい女の子。
あの子からしたら私を見るのはトラウマだと思うけれども、今日会った時はそんな不安は微塵も感じられなかった。
単にあの子が私の存在を忘れてしまっているか、もしくはそのトラウマを乗り越えるほどに強く成長したのかは本人のみぞ知る。
歩夢ちゃんに対して成長を喜びながらも一抹の寂しさを覚える親心を噛み締めながらも放送内容について思考を巡らせていた。
(優木せつ菜と直接話すのね……)
輝弥君と侑が説得すると言っていたので他のメンバーはそれをサポートすると言った所だろう。
ここまでお膳立てを整えるという事は彼女たちの決意は本物なんだと実感する。
(……吉報を待ってるわ……)
厳しい戦いになることを心配しつつも成功で終わることを心の中で願い、私は図書室を去るのだった。
二人の武運を祈りつつ図書室を出たはいいものの靴箱に到着するまでに少し時間を要してしまった。
校舎内でも一人でいると方向感覚が分からなくなってしまうのはきっとどこに行っても教室が横並びに広がっているからだろう。
ここに何か目印となるものがあれば私にとってのバリアフリーとなるので少しは楽になるのだが、ただの自分勝手な願いなので叶う事はないだろう。
時間をかけながらも寮に帰ろうと校舎外に出た瞬間、周りの喧騒が大きくなった。
周囲にはこれから帰宅すると思われる生徒が多くいたので、モデルの仕事をしてる私にもついに出待ちが現れたのかと一瞬疑ったが周囲の目線は私ではなくとある一方に向けられていたのでその可能性はすぐに搔き消された。
周囲の目に釣られるように私も顔を上げようとしたが、とある音が耳に入ってきたのでその必要はないと確信した。
(……無事に上手くいったようね)
屋上から聞こえてくる力強い声を耳にして、私は二人の功労者を密かに称えるのだった。
【輝弥視点】
突然始まった優木せつ菜さんのライブを見て、俺はダイバーシティで見たライブよりも気持ちが昂っていた。
それはせつ菜さんとの距離の差や憧れの存在を目の前で拝めたからではない。
今、目の前にいるせつ菜さんは呪縛から解き放たれた新しいせつ菜さんへと生まれ変わっている。
そんなせつ菜さんを見て、俺も心の中の炎が燃え上がっているのだ。
屋上の下では帰宅中の生徒や部活動を行っていた生徒で溢れかえっていたがせつ菜さんの声を聞いて、下にいた全員が彼女の釘付けとなっていた。
俺はふと屋上の壁に潜んでいた歩夢さん達へ目を向ける。
大半は昔のせつ菜さんが戻ってきた事による安堵の表情を浮かべていたが、慎ただ一人だけがそれ以上にいいリアクションを取っていた。
以前のライブでもせつ菜さんのパフォーマンスを見て一番熱くなっていて誰よりも応援していたであろう彼がより成長したせつ菜さんの復活を見て、思わず感極まっているのだ。
(せつ菜さん……やっぱり貴女は……俺たちのヒーローです)
自分の夢に気付かせてくれた人がもう一度立ち上がってくれた。
せつ菜さんにどんなに否定されても諦めずに動いてよかったと心の底から思った瞬間だった。
そして、せつ菜さんへの想いが胸の中を逡巡していた時にはライブがいつの間にか終了を告げていた。
曲の終わりと同時に右手を突き上げたせつ菜さんは息を切らしているが、それでも笑顔を絶やさずにパフォーマンスしていたのが声で理解できた。
「はぁっ……はぁっ……虹ヶ咲学園、スクールアイドル同好会……優木せつ菜でした!!」
せつ菜さんの自己紹介が終わった時にはライブ中と同じくらいの声量でせつ菜さんのライブを称賛する声が学校中に響いていた。
俺も声に出しはしなかったが、自然と拍手でせつ菜さんの健闘を称えていた。
「……うぅ──ーせつ菜ちゃーん!!」
「ん? うわぁ!!」
そして、俺と一緒に近くでライブを見ていた侑さんはいつの間にか俺の横からいなくなっており気付けばせつ菜さんへと抱き着いていた。
せつ菜さんも不意に声を掛けられたため反応が遅れて侑さんに為されるがまま尻もちを付くのだった。
「侑さん……」
「えへへ……素敵なライブだったよ!!」
侑さんは屈託のない笑顔でストレートにライブの感想を伝える。
そんな侑さんの表情を見て少し硬い表情をしていたせつ菜さんも思わず吹き出した。
「ぷふっ……あっははは……!! ……ありがとうございます」
「せつ菜さん……! せつ菜さんらしくてとても熱いライブでした! ありがとうございました!」
俺もライブの余韻に浸りつつも早くせつ菜さんに感想を伝えたいと思い、侑さんに後れながらせつ菜さんの元へと駆け寄る。
そして、感想と一緒にお礼を述べながら深く頭を下げるのだった。
「巴さん……。いえっ……こちらこそありがとうございます。貴方がいなければ……私はもう一人の自分にずっと嘘を付きながら生活していたことでしょう。貴方と侑さん、お二人の熱意が私を変えてくれました。お礼を言わなければいけないのは私の方です。本当に……ありがとうございます」
「せつ菜さん……」
少し前まで疎遠になっていた二人の仲が復縁されることとなり、俺は眼に涙を浮かべる。
「せんぱ~い? いつまで抱いてるつもりですか~?」
三人の温かな空間に痺れを切らしたかすみがジト目で見つめながら侑さんとせつ菜さんの間に入った。
「やっぱりせつ菜さんのライブって凄いね!」
「せつ菜さん……せつ菜さんの事を何も知らずに無礼な発言をすみませんでした……!」
歩夢さんは間近で見たライブに対して素直な感想を述べ、慎は歩夢さんの後ろから出てきてせつ菜さんに過去の非礼を詫びる。
せつ菜さんは侑さんのハグから解放されると慎へと向き合い、静かに微笑む。
「鈴川さん……いえ、あれは貴方の言ってることが正しかったんです。どうか自分を責めないで下さい。……巴さんと一緒に私を救ってくれたこと、感謝しています。ありがとうございます」
せつ菜さんからのお礼の言葉に慎は顔を赤く染まっていた。
「えっ……いや……俺はそんな大層な事してないですから……だから……その……とにかく! 素敵なライブでした! こちらこそありがとうございました!」
俺は慎のあたふたする姿を見て、今まで慎が見ていた俺の姿はこんな情けないものだったのかと少し複雑な気持ちを抱いた。
「ふっ、慎も俺の事をもうからかえないな」
「う、うるさい!」
今までの反撃と言わんばかりに慎をからかうが、慎もムキになって反撃してくる。
そんな俺達を遅れて現れたエマさんが宥める。
「まあまあ二人とも♪ せつ菜ちゃん、お帰りなさい!」
「エマさん、それにしずくさんと彼方さんも見ていたんですね」
「やっぱり気になってしまって……。それよりも少し盛り上がりすぎたかもしれませんね」
しずくさんはそう言いながら屋上外へと顔を向ける。
確かに地上ではライブの称賛の声やアンコールを求める声で埋め尽くされていた。
「先生に見つかったら怒られちゃうんじゃないですか~?」
「むふふ~、どうする~? 生徒会長~」
かすみは騒ぎすぎという事で先生に怒られることを危惧する。
彼方さんは今の状況を楽しみつつ、悪戯っ子のような表情をしながらせつ菜さんに訊ねる。
だが、せつ菜さんは不安を消し去るような不敵な笑顔を向けた。
「今の私は優木せつ菜ですよ? 見つかる前に退散しましょう!」
中川さんの時には考えられない素行の悪い行動だが、せつ菜さんならば良いかと許容してしまう自分がいる。
「おぉ────ー!!」
せつ菜さんの声に呼応しながらその場を逃げるように立ち去る俺達だった。
この行動に後ろめたさは何も感じなかったのは、これから先の未来が明るく照られているからだろうと駆けながら思うのだった。
読んで頂きありがとうございました!
如何でしたでしょうか?
果林さんが会合の時にせつ菜の復帰に対して難色を示したことやせつ菜のライブを遠目で見ていた時に、彼女ならこう考えていたのではないかと思い、独自に書かせていただきました。
また前書きでも言いましたが前回から日が空いて誠に申し訳ございませんでした。
ここまで日が空かないように私も邁進致しますので是非ともよろしくお願いいたします!