更新頻度が遅くなり申し訳ございません。
今回は新生同好会に新しい風が…?
それではどうぞ!
【輝弥視点】
「おはよう、姉さん」
せつ菜さんのライブから日が明け、俺は昨日の興奮が冷めやらぬまま朝を迎えていた。
ライブの余韻が身体の中に残っていて、寝ることもままならなかったので正直もう少し寝ていたい気分だったが、そうも言ってられない。
「おはよう、輝弥。ご飯出来てるわよ」
姉さんはいつも通り俺より早く起きて朝ご飯を用意してくれる。
同じ高校生とは思えないスペックの差だ。
これが出来る人間と出来ない人間の典型的な構図だろうか。
どんな時も料理には手を抜かず、健康を考えたバランスの良い食事を用意してくれる姉さんは俺の数少ない自慢であり感謝の気持ちと一緒に誇らしくなってくる。
「ありがと、頂きます」
日本の朝食として例に挙げられるご飯と味噌汁、そして魚の塩焼き。
シンプルだけれどもこれを食べる事で今日一日を頑張るための活力が漲る感じがするのだ。
言ってしまえば、これ以外では朝食としては物足りないとさえ感じる。
朝食を食べながら、俺は昨日のライブを思い出していた。
あの場に演出等を設置した上での完璧なステージは用意されていなかったのにも関わらず俺の視界にはそのステージが映っていた。
過去のライブと差し支えない炎を絡めた熱いパフォーマンス。
そして、熱い想いの下で静かに波打つ水のような反射。
せつ菜さんと菜々さん、この二面性を完璧に表現した素晴らしいステージだった。
そして、そんなせつ菜さんの強さを後押ししたのが、あの楽曲。
あの曲も話によるとせつ菜さんがスクールアイドルを辞めた後、我慢できずに密かに作っていた物らしい。
己の中の迷いと戦いながらも曲を作ったがそれでも最後の一押しを歌うための言葉が浮かんでこなかったのだとか。
そこに俺と侑さんの言葉が響き、自分の胸に生まれた思いが確かな未来へ導くのだという事を歌おうという事で溜飲が下がったそうだ。
やはり自分の大好きな事は辞めようと思っても、心のどこかに蟠りを抱えておりそれを完全に捨てる事は並大抵の人には出来ないのだと痛感した。
だが、実際に大好きを捨ててしまった人に遭遇してしまったら、俺はその人を軽蔑してしまうかもしれない。
時には学生の本分である勉強をすっぽかして、時には襲い掛かる眠気と戦いながら向き合ってきた大好きを簡単に捨てられるという事は、それに対して実は思い入れを持っていたわけでもない薄情な人なのではないかという印象を持ってしまう可能性があるからだ。
人には大好きを辞めざるを得ない事情があることも理解しなくてはいけない。
ただ、それでも大好きを続けられる可能性が残っているのだとしたらそれを続けてほしい。
それが夢への一歩を踏み出させてくれた恩人への恩返しなのだから。
「……輝弥、何か良いことでもあった?」
「えっ?」
突然、姉さんから声を掛けられ俺は一瞬困惑する。
「だって、黙々と食べ進める上にもう食べ終わっちゃってるんだもの」
無意識だった。
せつ菜さんの事で頭を働かせていた内に、消費したエネルギーを直ぐさま補給するように朝食を摂っていた。
いつもなら姉さんと談笑しながら食べていただが、やはり今日は少し様子がおかしいようだ。
「あっ……ごめん、つい……」
「ふふっ、別に良いわ。むしろそこまで無我夢中になっている貴方を見るのも少し久しぶりかもね」
姉さんを置いてけぼりにしてしまい慌てる俺を見て、姉さんはクスリと微笑む。
「……うん……そうだね……」
姉さんの言葉を聞いて俺は少し昔の事を思い出し感傷に浸る。
それは決して思い出したくはない過去なのだ。
理不尽な扱いから姉との比較まで俺のストレスを貯めるには十分すぎる生活だった。
だが、どんな蔑みにあっても姉さんだけは味方で居てくれた。
姉さんが居なければ俺はここにいなかっただろうし、こんなに輝かしい未来が待っている生活など考えられなかっただろう。
「それで? 貴方がそこまで嬉しそうなのは例の人の件かしら?」
姉さんは昔の事を思い出させまいと話題をすぐに元の話へ切り返す。
例の人というのは以前に姉さんに話したせつ菜さんの事だ。
「うん、姉さんがくれた言葉のお陰でもう一度スクールアイドル同好会が立ち上がったんだ」
「そうなのね。でも、私は助言をしただけよ。最後に実行したのは貴方なんだからもっと自信を持ちなさい」
姉さんは俺の事を称賛しながらも決して慢心しないようにと忠告をする。
正直今でも自分が憧れの人の心を動かしたことは俺の中で夢のような出来事なのだが、こうして言ってもらえるという事はやはり現実に起こったことなんだと身が引き締まる思いだった。
「それに、スクールアイドル同好会でそのアイドルを目指す子たちの為に曲を作るのでしょう? しっかりと自分で決めたことならば、それを貫きなさいね」
「……うん。自分の意思で決めたことだもん。捻じ曲げるつもりはないよ」
俺の決意を聞き、姉さんはほっと一安心するように息を吐いた。
「それが聞けただけでも十分よ。さっ、早く着替えて学校へ行く支度をしてきなさい」
出発する時間が迫ってることに気付かず、俺は食後の挨拶と共に部屋へ戻り身支度を整えるのだった。
学校に到着し、靴箱へすぐには向かわず校舎の前で立ち止まる。
そして、徐に屋上を見つめる。
屋上はいつも通り閑散としており静寂が広がっているが、昨日は真逆だったのだ。
優木せつ菜によるゲリラライブ。
せつ菜さんを近くで見ていた俺や慎もそうだったが、校内で彼女の事を知っていた人物はここでせつ菜さんを拝めるとは思いもよらずテンションが最高潮に達したことだろう。
あわよくばもう一度彼女のライブを見たいと思ってしまうがこれからは俺も観客のままではいられないのだ。
せつ菜さんと同じ同好会に所属するという事はせつ菜さんを支えるという事。
つまりは彼女を応援してくれるファンの為に彼女の良さをより引き出せなくてはいけないということだ。
姉さんが忠告したのにはこれも理由になっている。
いつまでも応援者のままでいるな、これからはせつ菜さんや同好会のメンバーを支えなくてはいけないのが同好会に入りみんなの為の曲を作る俺の役目だということを暗に言ってくれたのだ。
彼女たちを輝かせるためには自分から彼女たちに歩み寄り、その内面を知る事が何より重要だ。
それは俺にとっては過酷な道だが、このメンバー達とならそれを成せるような気がする。
屋上を見ると同時に視線の先にも映っていた太陽を見つめ、俺はふと笑みを作る。
「俺は……絶対負けないよ」
願いは口に出すことで言霊となり、自信に勇気を与えてくれる。
自分を奮い立たせながら、俺は教室へと向かうのだった。
その日の授業が終わり、教科書等の荷物をまとめる。
スクールアイドル同好会の部室へ向かおうとしたがその瞬間、慎に止められるのだった。
「輝弥、これから同好会か?」
「そうだよ。何かあった?」
急に呼び止められるもんだから、慎との間に何か重要な話でもあったかと思考を巡らす。
「いや、別に大したことじゃないんだけど……俺もそっちに顔を出しに行っても良いか?」
慎はどこか居心地が悪そうにしながら言う。
「別に大丈夫だと思うけど……入る部活動探さなくてもいいの?」
「うーん、あんまり興味をそそられる所が無くてさー、折角なら輝弥がいる所もありかなって思ったんだ」
慎は頭を搔きながら申し訳なさそうに言うが、俺としては大歓迎だ。
この学校で一番最初に仲良くなった慎と一緒に部活がやれるのならば、嬉しいに越したことはない。
それに慎は運動神経抜群、そしてスクールアイドルの事も俺よりは博識なので置いていかれることはないだろう。
むしろ慎がめきめきと頭角を現して俺が置いて行かれそうな気がするので、俺としてはそっちを気を付けなくてはいけない。
「じゃあ、スクールアイドル同好会に入ってくれるってこと!?」
「ま、まぁっ……そういう事になるかな……」
俺は慎が同好会に入ってくれると思い彼に詰め寄るが慎は少し思う所が違ったのか少し冷めた反応をする。
「なんか歯切れが悪い気がするけど……まあいっか。それなら早速入部の手続きをしよ!」
「えっ、まずはメンバーの了承をもらってからじゃないのか!?」
「同好会のみんなはもう慎の事を知ってるから拒む人なんていないと思うよ! あっ、でもせつ菜さんには話しておいた方がいいのか」
慎を早くスクールアイドル同好会へ入部させたくて逸る気持ちが抑えられず、慎に諭されてしまうがまずは部長には話を通しておくことが先決だとして生徒会室へ行く前に部室へ顔を出すことに決めた。
スクールアイドル同好会の部室へ向かう途中、慎は暗い面持ちだった。
「慎、さっきから顔が暗いけどどうしたの?」
同好会のみんなが受け入れてくれるかどうかを心配しているのだろうか。
いや、彼女たちは慎の事を良くしてくれてるし、かすみはあだ名で呼んだりしてる。
あの子や他の子たちが裏の顔を持ってるようには見えないし、慎への態度も悪いようには見えないから問題ないと思っているが他に懸念していることがあるのだろうか。
「えっ? そんなに変な顔してたか?」
「まあね、こーんな感じでどよ~んとした空気が流れてたよ」
俺はいつかの慎にやられたように俺なりの暗い表情を全力で表現して、慎に見せつける。
「そっかぁ……」
(ん? 意外と乗ってこなかった……)
俺は慎から誇張し過ぎだ、くらいに怒られるかと思ったがまさかの受け入れをされてしまい戸惑いが隠せなかった。
「同好会のみんななら大丈夫だよ。慎だってあの人達と触れてそれは分かったと思うし、心配することはないよ」
「うん、それは大丈夫だと思ってるけど……」
慎は徐に目線を反らす。
これは前にも見たような光景だ。
「慎、スクールアイドルの事で何かあったの? いつもこの話をするとき、決まって目線を外すけど」
「へっ? 別に悪いことがあったわけじゃないさ。これは俺の中の問題だからな」
「……それって……」
「輝弥くーん、慎くん! お疲れ様!」
慎の抱えてる悩みについて言及しようとした矢先、遠くからしずくさんの声が聞こえてきた。
隣にはかすみの姿も見える。
「しずくさん、それにかすみもお疲れ様」
「かぐ男もお疲れさま。あと慎のすけも早いじゃん」
「慎のすけ言うなよ、かすかす」
「そっちもかすかす言うなぁ!!」
かすみは俺に挨拶をした後、息をするように慎のあだ名を口にする。
そして、慎がそれを聞いてかすみを煽るというデジャヴが起こる。
「はいはい、そこまで」
「二人ともどうどう」
しずくさん達が来てしまった事で、慎に先ほどの事を聞くタイミングが無くなってしまった。
(……また別のタイミングで聞くか……)
この先、すぐに彼と別れるわけじゃない。
聞く時間はいくらでもあるのだ。
なら今は焦って問い質す必要もない。
いずれ慎の口から聞けることを信じて考えるのをやめた。
スクールアイドル同好会の部室に全員が集まったのち、まずは部室内のお掃除から始まった。
活動休止してからそこまで時間が経っているわけではないが、気持ちの切り替えという点から部屋を綺麗にしようというかすみの提案の元、お掃除を繰り広げるのだった。
歩夢さんとエマさんが和気藹々と箒で床のゴミを取り除き、侑さんとかすみがどちらが先に端まで辿り着くかで勝負しながら雑巾がけで仕上げを行う。
ちなみに俺はしずくさんと一緒に窓や机など備蓄品の拭き取りをやっていた。
「しずくさん、こうして同好会がもう一度立ち上がってよかったね」
黙々と作業するのもつまらないので、しずくさんの元へ歩み寄り話しかける。
「うん、そうだね。輝弥くんが居てくれたお陰だよ。本当にありがとう」
しずくさんは返事をしながらも窓拭きを続けている。
俺もしずくさんが拭いている隣で特に黒ばんでいるわけでもない窓を隅から隅まで掃除をする。
「いや、俺が動けたのはしずくさんが居てくれたお陰もあるんだよ。しずくさんと最初に出会えてなかったらスクールアイドルにそこまで興味を示さなかったかもしれないし、あの時のしずくさんの訴えが無かったらこうして動けてなかったと思う。だから、俺だけの偉業ではないよ」
しずくさんからの感謝の言葉を俺なりに嚙み砕いてそのままお返しする。
彼女とひょんな出会いをしていなければ、また違った未来があったかもしれないし、せつ菜さんを説得する勇気も持ててなかったと思う。
「ふふっ、私の為だったらどんなことでもやってくれるんだもんね?」
「なっ、そ、それは……その……言葉の綾というか……」
俺が思い出したくなかった台詞がしずくさん本人から放たれたので、顔が突然赤く染まる。
そして、弁解の言葉が見つからずあたふたしてしまうがそんな俺を見て、しずくさんは思わず吹き出すのだった
「ぷっ、冗談だよ。やっぱり輝弥くんってたまにからかいたくなっちゃうなって思って、ついね」
「えっ、しずくさんまでそっちの人間なのー? ひどいよー」
しずくさんはそこまで人を弄るという事をしない人に思ってたから、少し意外だった。
けれども、彼女まで弄る側に回られたらこっちの対応が多くなり余計に疲労感が増してしまうので勘弁してほしかった。
「ごめんね。でも、良い反応する輝弥くんにも少しは責任はあると思うな?」
「……なんだかさっきまで味方に見えてたしずくさんが敵に思えてきた」
さすが女優を目指している卵なのもあってかしずくさんが煽るように言ってくるので、俺は目を細めながらしずくさんへの文句をぶつける。
「ふふっ、もう言わないよ。さすがにこれ以上言ったら輝弥くんが怒っちゃうから」
「もう金輪際、敵に回ってほしくないよ」
しずくさんが笑っている横で俺はため息を吐きながらぼやくのだった。
「そこ! いちゃいちゃしてないでちゃんと掃除してよ!」
話に夢中になり掃除が疎かになってしまったので、大きな声と指差しのセットでかすみに指摘されてしまう。
「「べ、別にいちゃいちゃしてたわけじゃ……!?」」
かすみのある単語に俺は思わず反応してしまったが、それはしずくさんも同様だったようだ。
同じタイミングで反論してしまったので、はっと双方を見つめ合ったのちすぐに目線を反らす。
「ふぅ~ん、二人共なんだかいい雰囲気じゃん?」
「そ、そういうわけじゃないよ!」
しずくさんが赤くなりながらも抗議する。
だが、ここにいるのは思春期真っ只中の高校生。
多感な時期という事もあってそういった恋愛話もすぐに発展させようとする。
「確かしずくちゃんと輝弥くんって私と輝弥くんが知り合う前から仲良くしてたんだよね?」
「なら二人の息がぴったりなのも納得だね」
エマさんと侑さんが立て続けに囃し立てていく。
「むぅーん……」
「うぅーん……」
「あ、あんまりからかわないであげよっ……!? 輝弥くん達が流石に可哀そうだよ……!」
少しずつ頬が膨れ上がっていく俺達を見て歩夢さんが慌てながら咎める。
「はいは~い、他の部室から椅子を持ってきたよ~♪」
「だいぶ部室内も綺麗になりましたね」
外から彼方さんの声が聞こえてきて、二脚を両手で持って部屋に入ってきた。
続けて、せつ菜さんと慎も続けざまに入ってくる。
三人は部室で使用するための椅子が足りていなかったので、他所の余っている部室から拝借してきたのだ。
「これだけあればみんなの椅子は足りるんじゃないか? ……ていうかなんで輝弥としずくはそんなに赤くなってるんだ?」
「「気にしないで(下さい)」」
慎は大机の周りに椅子を並べ終えた後、椅子の数が合ってる事の確認も含めてメンバー全員を一通り見渡すが、視界の端で顔の赤みが残ったままの俺としずくさんが目に入った。
それをひた隠すために有無を言わさない速さで慎の口を塞ぐように試みるが、ここでもしずくさんと息が合ってしまい消えかかっていた赤みがさらに増すのだった。
「なんかタイミングがシンクロしてるけど……まあいっか。せつ菜さん、他に何かやる事ってあるんですか?」
慎はジト目で俺達を一瞥するが、すぐに切り替えてせつ菜さんに残ってる仕事が無いか確認する。
「そうですね、ひとまずはこれで完了でしょうか」
「ふっふっふ、まだですよ~! 最後にあれを付けなくてはいけないです!」
かすみはそう言いながら、部室の外へと出る。
他のメンバーもそんなかすみに疑問を抱きながらも付いていくように外へと退出する。
そして、かすみは全員が部室の外へと出たのを確認すると扉を閉めて、ポケットから一枚のプレートを取り出す。
それをプレート台にセットすると、そこにはスクールアイドル同好会と書かれた一つの部室が完成していた。
ネームプレートをはめたかすみは完成した部室を見て、誇らしげになっていた。
スクールアイドル同好会を復活させるために一人奔走していたので、彼女なりに色々と思う事があるのだろう。
「むっふっふ~、これで完成です!」
「これで同好会も復活だねー!」
エマさんも待ってましたと言わんばかりに喜びの声を上げる。
「それじゃあスクールアイドル同好会の最初の活動を始めまーす!!」
「あっ、いたいた!! やっほー!!」
かすみの号令の元、新生スクールアイドル同好会の活動が始まろうとした矢先、聞き覚えのある声が耳に入った。
階段から二人の女子生徒が上ってきたが、その顔には見覚えがあった。
「あれっ、璃奈じゃないか!」
「それと……運動部で活躍してた人……だよね?」
そこには以前にこの部室の場所を教えてくれた情報処理学科の天王寺璃奈さんと金髪をポニーテールにして学校指定のジャケットを腰に巻いたフレッシュな格好をした方が居た。
その人は以前に慎と部活見学をしていた時、様々な運動部で大活躍していた人だ。
「あっ!! 君たちって以前に見に来てくれてた子たちだよね!?」
「えっ!? 覚えてくれてたんですか!?」
どうやら金髪の女性は俺達の姿を見て、部活を見に来てくれたことを覚えてくれていたらしい。
そこまで近くで見ていたわけではないのだが、それでも認識してくれていることに驚きが隠せない。
「そりゃあね! 珍しく男子がいるなぁ~って思ってたんだけど、テニスの練習が終わった後にバスケ部に行ったらそこでも見たから、愛さんのファンかな~って勝手に思ってたよー!」
どうやら愛さんは今までと違う光景だったことで俺たちの姿をより認識するようになったみたいだ。
「それでも凄いことだと思うけどなぁ……」
「それが愛さんの凄い所なの、輝弥くん、慎くん」
愛さんと呼ばれた女性にただただ驚嘆の声しか上がらなかったけど、璃奈さんがそれに乗ってくる。
表情は相変わらず変化なしだが、今の璃奈さんは自慢の姉を紹介するように誇らしげに言ってるように感じた。
「璃奈さん、少し久しぶりだね」
「うん、また会えて嬉しい」
「輝弥さん、お二人のことをご存知なんですか?」
璃奈との再会に喜びを分かち合っているとせつ菜さんが訪ねてくる。
そういえばみんなには何も話してなかったから知らなくて当然だ。
「はい、璃奈さんは慎と同好会の部室を訪ねようとしてた時にその在処を教えてくれたんです。そちらの愛さん? は部活動見学で拝見してたので」
「そういえば、私達にも教えてくれたよね!」
「おん! そっちのお二人さんはスクールアイドル同好会に入ってたんだね! それで、そっちの少年たちは愛さんがいなくなった後でりなりーに声を掛けたって感じ?」
愛さんは侑さんと歩夢さんを見て安堵の表情を浮かべた後、俺と慎に目線を変え訪ねてくる。
「うん、愛さんが居なくなった後、そちらのお二人が困っていた場所で見かけたから私が声を掛けたの」
「あの時は本当にありがとうね。おかげでスクールアイドル同好会を見つけることが出来たしこうして活動することが出来るから」
「お礼なんていいよ。それより私たちも……スクールアイドル同好会に入部したい」
「えっ!? そうなの!?」
いきなりの入部宣言に侑さんは思わず愛さんと璃奈さんに一歩近づく。
「うん! 昨日のライブを見て、胸が熱くなってさー! こんな気持ちになったの初めてだからやってみたいて思って!」
「……本当に凄かった」
「あっ……ありがとうございます……!」
早速ライブを見てくれた人からの感想を貰えてせつ菜さんは顔をほんのり赤くしながら返事をする。
そして、侑さんはいつの間にか愛さんの手を握っていた。
「分かるよ……ときめいたんだね!」
「うん♪」
どうやら愛さんと侑さんは気が合うようで侑さんの積極的なアタックを愛さんは躊躇することなく受け止める。
「というわけでスクールアイドル同好会に情報処理学科二年、宮下愛と情報処理学科一年の天王寺璃奈、入部を希望します!」
「あっ、そういえば慎も入部希望を一緒に出せばいいんじゃない?」
「へっ?」
愛さん達の入部志願を聞いて慎の入部希望もせつ菜さんにまずは相談しようと言っていたことを忘れていた。
慎もいきなり話題を振られたため、素っ頓狂な声を上げた。
「あれっ? 慎くんってまだスクールアイドル同好会に入部してなかったっけ~?」
「私もてっきりもう入部してるものだと思ってました」
彼方さんとしずくさんは今まで一緒に動いてくれてた事もあって既に仲間だと思ってくれていたようだ。
「そうですね、厳密には手続きを行っていませんでしたので、これを機にやってしまいましょうか。慎さんもそれでいいですか?」
「あっ、はい。問題なしです」
「よし、じゃあ早速入部届を出させてもらうね!」
せつ菜さんは愛さんと璃奈さんと慎を連れて入部届を提出しに席を外す。
「早速メンバーが増えて益々賑やかになるね♪」
「そうですね。急展開にも程がありますが……でも、悪くないですね」
エマさんの発言に俺は相槌を打つ。
最初は五人だった同好会が少しずつ人数を増やし、現時点で十一人という大所帯になっていた。
もう一度同好会を立ち上げて、せつ菜さんを奮起させて良かったと心から思えた瞬間だった。
少しずつ同好会の輪が広がるのを感じて、俺はただただ期待に胸を膨らますのみだった。
読んで頂きありがとうございました!
ついにスクールアイドル同好会もメンバーが11人という規模になりました!
ここから新生スクールアイドルの活動が幕を開きます!
是非お楽しみに!
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