虹の袂   作:M-SYA

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お待たせいたしました!

今回は少し長めの内容となっています!
是非お楽しみください!

それではどうぞ!


大好きはもう隠さない

 かすみのスクールアイドル講座が終了し、次の練習へと向かった。

 

 話によると次の内容は発声練習ということでしかもせつ菜さんが主体で実施するという事だったのでさぞ厳しい練習を行うのだろうと思い兜の緒を締めていたが練習場所を聞かされた瞬間に緒で窮屈となっていた首元に開放感がやってきたのだった。

 

 

 

「うちの学校ってこんな施設も設けられてるのか……」

 

「自由な校風が売りとは言ってるけど……これは自由過ぎるんじゃないか?」

 

 練習場所に到着し用意されている椅子に座りながら、虹ヶ咲学園の生徒要望に対する反映力の高さについて慎と愕然としていた。

 

 そんな俺達を他所に目の前でせつ菜さんは自分の大好きを思うがままに熱唱していた。

 

 ……大きなカラオケモニターの前で。

 

 そう、俺達は虹学内に設置されている音響室という名のカラオケルームに来ていた。

 

 そこではモノホンのカラオケボックスと同じようなスピーカーと専用のモニター、機材が用意されており音源等も申し分ない性能だった。

 

 どうしてそんな設備が用意されているのかは有力な説が無く生徒内で諸説が広がっているが、音楽関係の部活動が総力を上げて学校側に申請した結果、学校側が観念して一部屋だけ用意したという説が一番有力のようだ。

 

 この話を聞いた時、どんな無茶な要望でも多くの人の支持を集め且つ諦めずに声を上げる事が相手の気持ちを動かす近道という事を痛感したのを覚えている。

 

「おぉ──ー!! やっぱりせつ菜ちゃんの歌声ってかっこいいねぇー! ときめいちゃう~!」

 

 せつ菜さんが歌い終わると侑さんが拍手喝采をしていた。

 

 やはりスクールアイドルにハマるきっかけを貰ったせつ菜さんだからこそ侑さんの感情も昂りを見せるというものだ。

 

「俺もせつ菜さんの歌って凄く好きです! 心の底から熱いものが込み上げてくる感じがします!!」

 

 慎も侑さんと同じように目を輝かせながらせつ菜さんに賛辞の言葉を並べていた。

 

「あっ、ありがとうございます……! こうして面と向かって言われると少し恥ずかしいですね……!」

 

 二人の真っすぐな感想にせつ菜さんも思わず照れていた。

 

「でも、実際のところせつ菜さんの歌は凄いですよ。そのストレートに響く歌詞と力強い歌声が力を与えてくれるんですから」

 

「うんうん、愛さん達もあの時のせっつーのライブを見てスクールアイドルをやってみたいって思えたんだから、もっと堂々としていいんだよ?」

 

「せ、せっつー?」

 

「あだ名だよ! せつ菜だからせっつー! 愛さん的にはいいあだ名だと思って!」

 

「あはは、ありがとうございます」

 

 愛さんからの突然のあだ名プレゼントに戸惑いを見せたせつ菜さんだったが、そう呼ばれることがなかったからか嬉しそうに笑っていた。

 

「あっ、ねえねえ愛ちゃん! 私の場合は?」

 

「んー……。……ゆうゆ!」

 

 侑さんが便乗するように愛さんへあだ名を要求したが、愛さんは困る様子もなく一瞬考えた後侑さんへ命名した。

 

「ゆうゆっていいね! すごく可愛いと思う! ……ちなみに私は?」

 

「そうだねぇ……歩夢だからぽむぽむとかどうかな!?」

 

 侑さんのあだ名を気に入った歩夢さんにも愛さんセンスのあだ名が炸裂する。

 

「ぽ、ぽむぽむっ……!?」

 

「ぽむぽむ……凄く可愛い」

 

「はい、テレビで出てくるキャラクターみたいで凄く良いと思います」

 

 歩夢さんは予想外の呼び方をされたので少し恥ずかしがるように顔を赤くする。

 

 だが、そんな呼び方を璃奈と俺はかなり良いと感じていた。

 

 女の子らしいあだ名に加えて歩夢さんの雰囲気とマッチしているので是非使ってみたいと思った。

 

「うわあぁぁ、ぽむぽむって凄く可愛いじゃん! 歩夢の新しいあだ名……うーんときめいちゃう──!!」

 

「んー、ぽむぽむが嫌だったらあゆぴょんとかでも良いけど……」

 

「なっ……!! だ、だったらぽむぽむが良いな!! うん、それがいい!!」

 

 愛さんのもう一つのあだ名案が提示されたがそれを聞いた瞬間、歩夢さんが更に顔を紅潮させ前案に乗っかるのだった。

 

 あゆぴょんも凄く可愛いと思ったのだが、何故あそこまで強く否定するのだろうか。

 

 昔ウサギさんに殺されかけたことでもあるのだろうか。

 

 いや、そんなアニメチックなことが起こるわけない。

 

 そもそも、ウサギに殺されかけるとはいったいどういうシチュエーションだ。

 

 ウサギから激しい飛び蹴りでも飛んでくるのだろうか。

 

「えぇ~、あゆぴょんも良いと思うんですけ……」

 

「慎くん? ぽむぽむで良いからそれ以上はやめようね?」

 

「…………はい……」

 

 俺が至極下らないことを考えている内に慎がいつもの如く素直な感想をぶつけるが、その言葉を搔き消すように歩夢さんが少し声色を強めながら慎に圧力をかけていく。

 

 笑顔を向けてはいるが、先ほどのしずくさんと同様に目が笑っていなかったのであれは歩夢さんの逆鱗だと察した慎はただただ従うのみだった。

 

「そういえば、せっつーって誰かに似てると思ったんだけど誰だったかなぁ……?」

 

「えっ、そ、そうですか……?」

 

 愛さんは思い出したようにせつ菜さんへと話題を変える。

 

 おそらく愛さんが言おうとしている似ている人物というのはあの人の事だろう。

 

「……あっ、生徒会長」

 

 愛さんがうんうんと唸っていると璃奈が横から口を挟んできた。

 

「ん? ……あぁぁ!! そうだ! 生徒会長と似てるなって思ったんだぁ!!」

 

 愛さんは璃奈の答えを聞いて一瞬考え込むがすぐに納得がいったように手を叩いた。

 

「あぁー……実は……似てるではなくて……同一人物なんです」

 

「えっ? ど、どいうこと??」

 

 せつ菜さんからの突然の告白に愛さんは状況が理解できずにいた。

 

「実は目の前にいる優木せつ菜ちゃんは生徒会長の中川菜々ちゃんなんだよ」

 

「……えぇぇぇぇぇ!?!?」

 

 侑さんが解説を入れると愛さんは目を見開きながら驚きの反応を見せた。

 

 確かに校内では一番と言っていいほどの真面目っぷりを見せている中川さんが目の前で自分の大好きをぶちまけているのだ。

 

 そのギャップを直ぐに受け入れろという方が至難の業だ。

 

「……言われても正直全く分からない」

 

「だよね!? 二人の性格が真逆すぎてそんなの絶対分からないって!! せっつーの正体、分かった人いるの!?」

 

「ここに居るんですよねー、これが。なっ?」

 

 そう言いながら、慎は俺の方を見てくる。

 

 二やつきながら見てくるその姿は正直かなりムカついたので後できっちりお仕置きをしておこう。

 

「えっ! カグヤン、分かったの!?」

 

「あと侑ちゃんも気付いたよね?」

 

「まぁ、あながち間違ってはいないかな? でも明確に分かったのは輝弥くんだけじゃないかな?」

 

「僕も侑さんと同じようなものだと思いますが……」

 

 正直、俺も中川さんと話した上でそう予想していたのみなので、侑さんが音楽室で話したときに感じた直感と似ているのだがどうやら他の人からしたら少し異なるようだ。

 

「でも、この二人は共通点が無いからそれを予想できることが凄い。ましてやそれを的中させたことも」

 

「璃奈、おだてても何も出ないよ?」

 

 璃奈からの評価が一方的に上がっていくのが逆に怖くなり、思わず口を噤ませる。

 

「……そういえばせつ菜さんにお礼を言えてなかった。あの時、はんぺんを守るように動いてくれてありがとう」

 

 璃奈は俺の発言を聞いて俺への賛辞を改めたのか、せつ菜さんにいつかのお礼を述べる。

 

 だが、俺ははんぺんというおでんの具材名が突然出てきたことで状況が理解できずにいた。

 

「はんぺん?」

 

「うん、私と愛さんがこの学校でお世話をしている猫さん。野良猫だったはんぺんを私と愛さんで見つけて密かに学校でお世話をしていたんだけど生徒会に見つかっちゃって……」

 

「どうにか出来ないかって生徒会長に直談判したら、動物を飼う事は禁止だけれども学校の一員にすれば良しとするってことで生徒会お散歩役員に就任したんだよね♪」

 

「お散歩……役員……?」

 

「確かに少し前に猫が校内にいるって噂を聞いたことがあったような……?」

 

 またまた聞きなれない単語が出てきて俺は益々状況が分からなくなり、せつ菜さんへ説明を促すように視線を向けた。

 

「あの時の璃奈さんとはんぺんさんを見て、二人の絆を引き剥がすことは誰も幸せにならないと判断しまして私の権限を用いてはんぺんさんをこの学校のメンバーにすることにしたんです」

 

「なるほど、そうすれば追い出す必要もないし公然とはんぺんちゃんのお世話ができると……」

 

「それって特権というより職権乱用じゃ……?」

 

 せつ菜さんの弁明に俺は呆れつつもそういった発想があるかと感心していた。

 

 一方、慎は生徒会長権限の強さに呆然としていた。

 

「今は私がこの学校の生徒代表です。自由な校風というのは生徒一人一人の声を聞いた上で成し得る事ですから、こういった声を聞くのも生徒会長の務めなのです!」

 

 どうやらこの生徒会長は職権乱用について何も反省する気はないようだ。

 

「ですが、この学校でお世話すると決めた以上、しっかりとそれは守って下さいね。はんぺんさんを放っておく状態が散見するようでしたらそれなりの処置を考えますので」

 

「うん、それは絶対守る」

 

 せつ菜さんからの警告を真面目に聞く璃奈。

 

 無表情ながらも力強く答えているので彼女ならば大丈夫だろう。

 

「じゃあ、今度私達もはんぺんちゃんの所にいってお世話してみてもいいかな?」

 

「それは大丈夫。はんぺんもきっと喜ぶ」

 

 侑さんは璃奈たちがそこまで可愛がる猫と戯れてみたいのか前のめりになりながら聞いていた。

 

 璃奈は特に嫌がる様子もなくむしろ一緒に面倒を見てくれる人がいるならば、とその誘いを気兼ねなく承諾するのだった。

 

 

「では、雑談もそこまでにして練習を再開しましょう! 次はどなたが歌われますか?」

 

「歩夢、次行ったら?」

 

「えぇ~私は恥ずかしいよぉー……」

 

 次に歌う人を決める事になり侑さんが歩夢さんへ歌うように仕向けようとするが歩夢さんは乗り気ではないようだ。

 

 まあ、先ほどせつ菜さんが完璧な歌唱力を披露したのでその次となるとその人へも大きな期待が乗っかることとなるので自然とハードルが高くなってしまうだから、歌いたくなくなるのも無理はないだろう。

 

「じゃあ輝弥行ったらどうだ?」

 

「んー、そうだなぁ……何かあるかなぁ……?」

 

 慎に促され近くに置いてあったデンモクを手に取り歌う曲を探す。

 

 だが手に取ったはいいものの俺自身歌える曲が少ないのが現状だ。

 

 いや、音楽関係の趣味があるという事もありカラオケも好きだ。

 姉さんとも何回かカラオケで点数勝負をしたこともあり歌唱力にはそれなりに自信がある。

 

 ちなみにカラオケ勝負は毎度接戦にはなりつつも俺の負けで終わっている。

 いつの日か姉さんに勝てるように歌のテクニックを身に着けていきたい。

 その為にせつ菜さんやしずくさん達の歌い方もしっかりと勉強していきたい。

 

 

 話が逸れてしまったが、俺が心配しているのは所謂世間一般で流行っている曲をあまり知らないという事だ。

 

 俺はインドア派の人間であり休日もアニメを見るかゲームをして過ごすことが多いので俗に言うオタク気質なのだ。

 

 アニメ関係の歌については得意分野だが、それ以外は点で弱い。

 姉さんは俺が歌う曲についても合いの手を入れてくれたり、興味を持ってくれるので心置きなく歌うことが出来るのだ。

 

 それが全く赤の他人とのカラオケとなると俺が歌う曲を知らない可能性が高いので気まずい空気が流れてしまう。

 

 乗ってくれる人も中にはいるがそれでも気を使わせているように感じてしまい、人とのカラオケをあまりやらなくなってしまうのがオタクあるあるではないだろうか。

 

「わぁー、輝弥くんがどんな歌を歌うのか楽しみだなぁ~!」

 

「確かに私も気になっていたので凄く楽しみです!」

 

「あんまりハードルを上げないで下さい。あんまり有名な歌とかは歌えないので……」

 

 侑さんとせつ菜さんからの期待の声に身が固まってしまう感覚を覚えつつ、デンモクで歌う曲を探していたら俺が好きなアニメのアイドルグループで推しがソロで歌っている曲が目に入ったのでそれを歌う事にした。

 

(まあ、アニメ関係の曲だけど、王道な曲調のやつだから大丈夫かな……)

 

 俺は一抹の不安を覚えつつ勢いに任せて、入れる事にした。

 

「……えぇっ……!?」

 

「……この曲……」

 

 画面に流れる曲名を見てとある人物達が驚きの声を上げていた。

 

 こうして皆の目線を気にしつつ俺のカラオケが始まった。

 

 

 

「ふぅ……あ、ありがとうございました……」

 

 俺の歌が終わり、顔が火照る感触を覚えつつ一礼をする。

 

 正直、顔を上げた時のみんなのリアクションが怖いところだが果たしてどうなるのか。

 

「……輝弥って、あんなに歌上手いのか……?」

 

「輝弥くん、歌上手だねー!! 輝弥くんにもときめいちゃったよ──!!」

 

 口火を切ったのは慎でいつもの冗談をぶつけてくるかと思ったが、スポーツ選手の神プレイを見た時のように口数が減っており感嘆としていた。

 

 侑さんも目にハートを浮かべながら左右に振り子のように揺れていた。

 

「そうですね……正直ここまでビブラートやしゃくりなどのテクニックを使いこなす歌い方だとは思わなかったので私も鳥肌が立ってしまいました……!」

 

「流石輝弥くん! 歌が凄く上手だね! かっこよかったよ!」

 

 せつ菜さんと歩夢さんからも称賛の声が上がり俺は何とも言えない気持ちになってしまう。

 

 まさかここまで褒めてもらえると思わなかったので自分でも反応に困っている。

 

「凄く上手だった。それにこの歌、輝弥くんも知ってるんだね」

 

「えっ、璃奈、この歌知ってるの?」

 

「うん、アイドルを目指す男の人たちが織りなす青春アニメ。私も見てた」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

 ただ自分が歌いたい曲を選んで歌っただけなのに意外な収穫があった。

 

 まさか璃奈が同じアニメを見ていると思わなかったので驚きが隠せなかった。

 

「よぉーし、輝弥くんの歌に負けないくらい私も頑張るぞぉ──!」

 

 俺の歌に感化された侑さんはデンモクを手に取り選曲して歌い始める。

 

 慎、歩夢さん、愛さんはそんな侑さんと一緒に盛り上がっている。

 

 そんな侑さん達を他所にせつ菜さんが居心地が悪そうに顔を覗かせながらデンモクを見せてきたのだった。

 

「か、輝弥さん……その……良ければ次この曲を一緒に歌ってくれませんか……?」

 

 彼女が見せた曲は奇しくも俺が先ほど歌ったアニメシリーズの曲のものだった。

 

「あれ、この曲……」

 

 俺はその曲名を見て、すぐにせつ菜さんを見返す。

 

 彼女は頬を赤くしながら両腕を太ももに挟みもじもじと目線を反らしていた。

 

「……せつ菜さん……もしかして……」

 

「………………」

 

 せつ菜さんは自分の口で真実を喋りたくないのか口を開こうとしない。

 

 おそらく彼女の中で色々な想いがぶつかっているのだろう。

 

 彼女を刺激しないように優しい声色を意識しつつ声を掛ける。

 

「……せつ菜さんもアニメってよく見るんですか?」

 

「……親に隠れて……ですが。私も輝弥さんが見られていたアニメを見ていたので是非一緒に歌えないかと思いまして……」

 

「ならそこまでひた隠そうとしなくてもいいんじゃないですか?」

 

「皆さん、私の趣味を知って軽蔑するんじゃないですか? 学校では真面目な生徒会長が実は家ではアニメオタクというのは」

 

 せつ菜さんは尤もな不安を吐露する。

 

 確かにアニメオタクのイメージは真面目な中川さんには考えにくいものだ。

 

 中川さんがアニメを見て気持ちを熱くするというのは中々思い至らず、それ以外の可能性として文明の利器に触れる趣味を持っている印象だった。

 

 それが蓋を開けてみれば俺と同じようにアニメを見て、時に熱くなり、時に涙するごく普通の女の子だったのだ。

 

 そんな人間味あふれている人を軽蔑する理由はあるのだろうか。

 

「僕は良いと思いますよ?」

 

「えっ……?」

 

「だってあの生徒会長が実はアニメオタクだったなんて、同じオタクの僕からしたら嬉しいものですよ。遠い存在だと思っていた中川さんに親近感が湧くなんてあまり考えられなかったですからね」

 

「それは……輝弥さんが優しいからじゃないですか?」

 

「そんな事ないと思いますよ? 現に璃奈も僕と同じアニメを見てると知って嬉しそうでしたし、きっと璃奈も同じことを考えてると思います。ね、璃奈?」

 

「うん、せつ菜さんもアニメ好きっていうのを知って嬉しい。もっとアニメの事で話して仲良くなりたい」

 

 不安がっているせつ菜さんに俺の声だけでは届かないと思い、隣に座っていた璃奈にも声を掛ける。

 

 俺とせつ菜さんの会話を聞いていた璃奈はすぐにせつ菜さんに対して共感の意を示す。

 

「そ、そうですか……」

 

「せつ菜さん、前に言いましたよね? 貴女の大好きを受け止めるって。これも同じことだと僕は思います。自分の大好きを隠すことなく曝け出してくださいよ」

 

 俺の言葉にせつ菜さんはただただ俯いていた。

 

 彼女の表情を髪が隠すように靡くため、その顔色を捉えることは出来なかった。

 

「……本当に……貴方という人は……」

 

 そう呟くせつ菜さんの表情は未だ捉えられていなかったが、少なくとも口元は緩んでいるように見えた。

 

「……分かりました。これからは私の大好きをもっと皆さんにお見せするようにします。そうでなければ私がやろうとしている野望を叶える事は出来ないですからね」

 

 せつ菜さんがやろうとしている野望。

 

 それは自分や他の人の大好きを全部曝け出せる空間を作り出すこと。

 

 その野望は首謀者であるせつ菜さんが曝け出せなければ決して成し得ることのできない大望なのだ。

 

「いぇーい! 楽しかったぁぁー!」

 

「流石、侑さんも歌が上手ですね!」

 

 せつ菜さん達と話していると気付けば侑さんの歌が終わっていた。

 

 アイドルをやらない侑さんの歌は中々お目にかかれないはずなのにそのチャンスを不意にしてしまった。

 

 慎も侑さんへ称賛しているところを見ると侑さんも中々の腕前のようだ。

 

「さて、次はどうしようか?」

 

「私はもう少しみんなの歌を聞いていたいな。みんなの歌を聞いてもっと勉強したい!」

 

「愛さんもみんなの歌を聞いてひたすらに盛り上がりたい!」

 

「では、次は私と輝弥さんで入れてもいいですか? 先ほどの輝弥さんの歌に感化されてしまったので、ここはデュエットでの勝負です!」

 

「えっ、勝負!?」

 

 せつ菜さんからの突然の宣戦布告に思わず声が上ずってしまう。

 

 そんな俺を尻目に侑さんの質問が飛んでくる。

 

「おぉー! いいねー! 曲はどんなの?」

 

「さっき輝弥くんが歌ったアニメシリーズの曲。デュエットで出してる曲もあるからそれを二人が歌うの」

 

「へぇーせっつーもアニメとか見るんだね! いいじゃん! じゃあここからはアニソンラッシュって所かな!」

 

 璃奈の解説を聞いて愛さんもせつ菜さんがアニメを見ていることを知るが、特に違和感を持った様子もなくありのままに受け入れていた。

 

「わぁー、同じアニメを知ってるってことは益々盛り上がるってことだね!」

 

「いきなり輝弥とせつ菜さんのデュエットが見れるなんてな……」

 

 歩夢さんと慎もそんな俺達の協演が楽しみな様子だ。

 

 そんな中、璃奈が小声で話しかけてくるのだった。

 

「輝弥くん、そのあと私とも歌ってほしい」

 

 どうやら璃奈も同じ仲間と歌いたくて仕方なかったようだ。

 

 璃奈とも仲良くなりたいと思っていたのだ、そのお誘いを拒否する理由がどこにあるのだろうか。

 

「……うん、いいよ。一緒に歌お」

 

「……うん!」

 

 真顔ではありつつも、気分が上がっていることは声色を聞いて明白だった。

 

「さあ、輝弥さん!! いきますよぉ────!!!」

 

 こうしてカラオケルーム内のボルテージが最高潮に達した中で俺とせつ菜さんのデュエットを皮切りにアニソン大会が幕を開けるのだった。

 

 




今回も読んで頂きありがとうございました!

今回はカラオケ回という事でお話を展開しましたが、虹ヶ咲メンバーとのカラオケ……私も一緒に歌いたい……。

私も最近の情勢で中々カラオケには行けずじまいでしたが、落ち着いてきたら是非とも行きたいものです。

それでは次回もお楽しみに!
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