少し前まで二回目のワクチン接種で苦しんでいた作者です。
接種後の翌日に40度まで上がるもんなのですね……。(白目)
皆さんも熱がある時は解熱剤を早く飲みましょう。
というわけで(いや、どういうわけだ。)、本編をどうぞ!
「うーん、こんな感じでどうかなー?」
俺が生まれて初めて作った曲を愛さんに渡した後、愛さんが早速作詞したいという事で二人で図書室に来ていた。
「良い歌詞が書けてると思いますよ? 愛さんの想いが込められていて良いと思います」
辞書を片手にノートへ詩を書き綴っていき、ひとしきり歌詞として完成していた。
だが、愛さんは顎に手を当ててうーんと唸っていた。
「だけど、愛さん的にはまだピンと来てないんだよねぇ~。こう……愛さんの言葉じゃない感じがするっていうか……。もっと愛さんらしさを詰めた歌にしたいんだよね……」
どうやら愛さんは書き上げたばかりの歌詞を見て、自分の事を詠っているように聞こえないみたいだ。
「なるほど。僕目線としては愛さんの事を十分に表現できていると思ったんですが、何か引っかかってる事ですね」
歌い手本人の納得がいってないようではライブでも気持ちを歌に込めにくくスッキリとした締め方とはならない。
愛さんがこう言うのであれば、俺はただそれに従うのみだ。
「分かりました。では、この案も一つとしてもう一案を作ってみますか?」
「いや、これに愛さんの歌いたい事は書いてあるからこれをベースでいいよ。ただ、これをもう少しブラッシュアップしたいなって所だから」
愛さんは今の歌詞のままで練り上げたいという事なので、原案の改修として方向性は決まった。
そんな中で机に置いている俺と愛さんのスマホが震え出した。
突然の通知に軽く驚きつつもスマホを確認して、その通知の内容を確認する。
『明日は9時からレインボー公園でランニングですので忘れないように!!』
『おっけー』
『ラジャ('◇')ゞ』
かすみからの休日の部活動についての案内だった。
これまでは各チームに分かれて練習することが主だったので、練習を早めに終わるところや遅くまで残って練習しているところと種々分かれているので最終の連絡が遅れてしまう事がある。
そこで共通のチャットグループを作って、練習終わりで帰る人、残る人、個人別で話さなくてもいいようにと侑さんからの提案で始めたものだ。
かすみの返事に彼方さんと璃奈が返事をする。
璃奈は顔文字もつけて返信しているので、面合わせでは感情が乏しい彼女だがチャット上では感情表現を多めにしているところが少し可愛らしさを感じてしまう。
「かすみから連絡が来たって事は、もうみんな上がった感じですかね?」
外を確認すると既に夕日が差し込んでいた。
放課後は愛さんへCDを渡してからこうして歌詞作りに専念していたので、かれこれ二時間近く制作していた。
「あぁ~確かにもう18時だもんね。切りの良い時間だし今日はここまでにしようか?」
「そうですね。続きは来週にやりましょう」
こうして歌詞作りを一旦止めにして今日は切り上げる事とした。
「いやぁ~歌詞作りって中々に難しいね~」
図書室を抜けて校舎外に出た後、愛さんは隣で歩きながらそうぼやいていた。
「それでも、曲を渡してからすぐに作詞してあらかた完成しているのは凄いことですよ」
情報処理学科という事で理系のイメージで考えていたが、文系も得意なさしづめ向かうところ敵なしといったところだろうか。
もしそうならこの人のスペックの高さに脱帽するばかりだ。
「いやいや、カグヤンが作った曲の出来の良さもあるよ! それにカグヤンから貰った言葉が愛さんの中で光り
突然の愛さんのボケに苦笑いしか出てこなかった。
「何ですかそれは……。ダジャレのつもりですか?」
「そうだよー! 愛さんは暇なときにはいつもダジャレを考えてる人だからね! ダジャレある所に愛さんありってね!」
言い切ると同時に愛さんは目元でピースを作り、決めポーズを取った。
「ダジャレ好きだったなんて、ちょっと意外ですけど愛さんらしくて
「ぷっははは! カグヤン、良いダジャレだねー!」
咄嗟に浮かんだダジャレを口に出したが、愛さんがお腹を抱えながら笑っている。
どうやら俺のダジャレも愛さんのお眼鏡に適ったようだ。
愛さんが嬉しそうに笑う姿は見ていて気持ちが良い。
「そうやって自分の周りの人を笑顔にさせるのも愛さんの魅力なのかもしれませんね」
「へっ? あたしの?」
「はい、愛さんの近くにいると不思議と元気がもらえてくるんです。いざという時に助けてくれるかっこいい姿も、無邪気に笑う愛嬌がある姿も……。だから、そんな愛さんの魅力を今回の歌にありったけに込めたいです!」
太陽のような輝きを持つ愛さんの魅力を自分だけが知っているのは特別感があって嬉しい。
だが、それでもアイドルという面で考えたら折角の愛さんの推しポイントを応援してくれる人たちが知らないと考えたら凄く勿体ない。
愛さんへの称賛を連ねると愛さんは照れ隠しをするように後頭部に手を置き遠くを見つめる。
「えぇ~、そんなやめてよ~! 流石にそこまで言われると愛さんも恥ずいからさ~!」
俺に場の空気を持っていかれ、ほんのり赤面する愛さんだが、その表情を見せまいとすぐににかっと笑って見せた。
「……でも、そう言ってくれて嬉しいよ! あたしの持ち味についてカグヤンのお陰で客観的に見ることが出来た気がする」
「……なら、よかったです」
「この曲はもう少し愛さんの手で変えてみたいと思うから、また相談に乗ってよ」
「ふっ、いつでもお待ちしてます」
愛さんが今回の曲をどのように仕上げるのかを密かに胸を躍らせながら、愛さんと別々の帰路に着いたのだった。
次の日、指定された公園へ向かうために学校の最寄り駅へと来ていた。
そこに来ていた理由は公園に一年生組で一緒に行こうという提案があったからだ。
俺としては現地集合でいいと思っていたが提案者であるかすみは、「一年生組の仲をもっと深めていきたいの!」と一年生のチャットグループにて熱弁していたので、それを拒否する理由もなかったので賛同の意を示したのだ。
「おっ、輝弥、おはよう。早えじゃねえか」
駅近くのベンチにて一人の時間を堪能していると慎がやってきた。
ランニング向けの軽装と必要最低限の持ち物を入れたポーチバッグで、走ることが日課の爽やかな好青年という印象を受ける。
「おはよう、慎。そういう慎こそ、まだ集合の十分前だよ?」
「それは輝弥も同じだろ? どれくらい前から来てるんだ?」
「俺も今から五分前くらいだよ。いつもこのくらいで着くようにしてるから」
俺は時間集合となった際には想定外の事態に備えて15分前に着くようにしている。
人によっては真面目過ぎという印象を受けるだろうが、俺としてはこれを当たり前として考えていたのでそう言われても正直しっくりこない。
「ならそんなに大した差じゃねえな」
「ふっ、そうだね」
五分ならそう変わらんと慎は笑い、俺もそれにつられる。
「そういえば、身体の方はどうだ? 仕上がって来てるか?」
「絶賛筋肉痛だよ。正直今日まで残ってるとは思ってなかったけど……」
「それだけ中学卒業から運動を疎かにしてたって事だろ。身体の事を考える良いきっかけにはなるだろ?」
他のメンバーが到着するのを待ちながら、慎と同好会の練習の話で時間を潰す。
「もう考えるの域を超えてるくらいに絞られてる気がするけどな……」
「とは言っても筋肉痛は腕ぐらいだろ? 今日はランニングで足を使うのみだから、走る分には何も支障はないさ」
「その考え方はスパルタ顧問の域を超えてるぞ」
その内、彼は仮に足が筋肉痛などで動かなくなったとして、「折れたわけじゃないだろ? なら大丈夫だ!」と言って首根っこを掴んででも走らせようとする気がしてならない。
「ありゃ、かぐ男と慎のすけじゃん! 二人共早くない?」
「輝弥くん、慎くん、おはよう」
温かい気候のはずなのに悪寒を感じている中、かすみと璃奈が駅内から顔を覗かせてきた。
「おはよう、かすみ、璃奈。二人もまだ五分前だよ?」
「それはそうだけど、二人が先に来てると思わなかったから」
「そうだよ~。慎のすけとかは寝坊してくるとばかり思ってたから! ね、りな子?」
「それはかすみちゃんが一方的に言ってただけだよ」
慎への偏見について璃奈はかすみと共犯として首に縄を掛けられそうになったが、察しの良い璃奈はすぐに縄の隙間から抜け出してかすみに縄を掛けていた。
「なんならこっちはかすかすが寝坊して泣き喚きながら来ると思ってたわ。な、輝弥?」
「それは慎が一方的に言ってるだけ」
「にゃあああ、どういう意味だ、慎のすけぇぇ!! あと、かすかす言うなぁぁぁ!!」
慎のすけ発言に眉がぴくっと動いた慎だが、にへら顔をしながらかすみを煽っていく。
どさくさに紛れて俺も共犯に引きずり込もうとするんじゃない。
「……朝から元気」
「……朝はもう少し静かにしてほしいけどな……」
俺はどちらかというと朝は苦手な部類なので、大きい声で喋られると頭が痛くなってくるのだ。
だが、そんな事情を露にも知らない二人は日常茶飯事とも呼べるいがみ合いを朝から展開していた。
そんな二人を放置してベンチの慎が座っていた所に璃奈が腰掛けてくる。
「輝弥くん、昨日は愛さんと何してたの?」
「ちょっと、柔軟のコツをね」
流石にソロ曲の事を相談してたと言うとかすみあたりが地獄耳で異常な食いつきをしてきそうなので、璃奈には申し訳ないが嘘のアリバイを作っておく。
だが、璃奈が柔軟を苦手としていることを忘れていたので、それを聞いた璃奈は表情を変えないながらも俯くように下を向いてしまった。
「そうなの? ……私も教えてもらいたかった」
「えっ……あっ、そう……だね……。俺でよければ今度また教えるよ」
璃奈は抜け駆けされたと思ってしまったようで、意外な反応に思わず俺も動揺が隠せなかった。
しかし、璃奈のそんなリアクションも一瞬の事で俺が教えると言った瞬間、すぐに顔を上げてこっちを見てきた。
心なしか目が輝いているように見える。
「ほんと? なら今度の柔軟の時、教えてほしい」
「……あぁ……分かった。任せて」
次の柔軟運動までにネットで効果がありそうなトレーニング方法を調べなければ、と心に誓った俺であった。
「みんな、おはよう!」
先ほどの慎とのやり取りで感じた悪寒とは違う寒気を感じているとしずくさんも到着した。
少し息を切らしているところを見ると俺達が全員集まっているのを見て、少し走ってきたという所だろうか。
「おはよう、しずくさん」
「おはよう、輝弥くん。遅くなっちゃってごめんね?」
「とは言っても時間ぴったりだし、謝る必要ないだろ?」
「そうだけど、みんな到着するのが早いから少し気が急いちゃって」
しずくさんは予定通りの時間に来ているので特に弁解する必要はないのだが、それでも全員が到着している中で自分が一番遅く着いたというのは彼女にとっては許せない事なのだろう。
そんなしずくさんの真面目っぷりを見て、更に彼女への好感度は上がる。
「もうしず子ってば真面目過ぎにも程があるんじゃないの~?」
「でも、それがしずくちゃんの良いところでもある」
「えぇ……? 別に私としては普通なんだけどなぁ……」
かすみと璃奈の発言にしずくは頭を悩ませているが、その気持ちは痛いほどに分かる。
真面目と呼ばれる人たちは、学校の規則は学校側が決めているルールである以上きちんと守る。
また、家の門限も身内に心配をかけないように決められた時間には帰るようにしているのが大半だろう。
今回も同じ例だ。
与えられたひとときを十分に楽しむために時間を守っているに過ぎないのに、これらの事だけで真面目過ぎと呼ばれる理由が分からないのだ。
当人たちは一種のコミュニケーションのつもりで言ってるのかもしれないが、その発言こそが真面目と呼ばれる俺たちは真面目に受け止めてしまうので少しはこちらの気持ちを考えてほしい。
その性格故に弄ばれた過去を思い出しながら俺はそんなことを考えていた。
「それなら輝弥も負けてねえけどな。今日も集合の15分前には着いてたみたいだし」
「別に俺は真面目さで勝負をしてるわけじゃないけどな……」
慎も負けじと俺を引き合いに出してしずくさんに対抗させる。
突然始まるしょうもない争いにただため息しか出なかった。
「もう、三人とも茶化してないで、時間に遅れちゃうから。輝弥くん、行こっ?」
しずくさんはプリプリと怒りながら、俺に付いてくるように言って先に出発してしまう。
彼女の反応を見てつい笑いがこぼれてしまったが、そんな俺を見てしずくさんは足を止める。
「ふふっ」
「な、何かおかしい?」
「いや。ただ、俺と似てるなぁって思って」
「か、輝弥くんも茶化さなくても……!」
「俺も……ただこの性格を貫いていただけなのにな……」
「えっ……?」
俺が最後にぼやいた言葉はしずくさんの耳には完全には届かなかったようだ。
「なんでもない。ほら、みんなを待たせちゃうだろうから早く行くよ」
「あっ、じゃあ公園まで競争で一番遅く到着した人はジュース奢りね! じゃあお先ぃ~!」
「おい、かすかす!! 抜け駆けはずるいぞぉー!」
「ふ、二人共早い……」
かすみの理不尽なレース宣言を皮切りに慎と璃奈が追いかけるように走り抜けていった。
「ほらっ、しずくさんも行くよ?」
「う……うん……」
しずくさんに声を掛けて、俺は璃奈たちの後ろを自分のペースで付いていく。
そして、しずくさんは俺が放った一言について反芻しながら最後尾を走るのだった。
読んで頂きありがとうございました!
一年生組がひたすらに青春を謳歌してて、読んでて羨ましいですね。
それでは次回もお楽しみに!