今回からアニガサキ5話の内容に入っていきます!
それではどうぞ!
自分を魅せる
「では、皆さん準備も良さそうなので練習を始めたいと思います」
「せつ菜ちゃん、今日もグループごとに分かれる?」
みんなで部活前のおしゃべりを堪能していたが、せつ菜さんが手を叩いて空気を変える。
そして、歩夢さんは練習内容について尋ねる。
「それでも良いですが、今日は少し趣向を変えてみようかと思いまして」
「趣向を変える、ですか?」
せつ菜さんの意外な提案に俺は首を傾げる。
「はい、先日の愛さんのライブを見て思ったことがあるんです。皆さんの動画に撮ってプロモーションビデオを作ってみるのはどうでしょうか?」
「プロモーションビデオ?」
新しい活動内容に慎は軽く眉間に皺が寄り頭を悩ませている。
「簡単に言えば自己PRです。皆さん、この前のライブで愛さんの在るべき姿が垣間見えたはずです。今の私たちはどういったライブをしたいか、どういった時間を応援して下さる人と共有したいか、既に固まっている人、そうではない人、各個人バラバラだと思います」
せつ菜さんは全体を眺めながら活動内容について説明を行う。
「そこで、皆さんのやりたい事を考えて頂きそれを動画に撮ってサイトに投稿するんです。そうすれば皆さんの人となりを沢山の人に見て頂くことが出来ますし、この同好会の認知度を上げることが出来ます」
「なるほど、スクールアイドルとしてまずは顔を覚えてもらう事からってことですね」
「いきなり難しそう」
俺はせつ菜さんの案に肯定的な反応を示したが、隣で璃奈は心なしか不安げであった。
璃奈はかすみの講義のお陰により目指すべき姿を見つける事は出来ているが、それでも実行に移すまではまだ勇気が出ないようだ。
「ふっふー、そんなりな子の為にこれを見せてあげよう!」
かすみは鼻息を荒くしながら自分のスマホでとある動画をこちらに見せてきた。
『やっほぉ~?』
「ぶふっ」
「おいこら、慎のすけ!」
かすみが動画再生ボタンをタッチした瞬間、かすみが可愛い子ぶりながら頭に手を当て敬礼のポーズを取る姿が流れ、あまりの不意打ちに思わず動画を一時停止させてしまった。
慎もかすみの求愛行動に吹き出してしまい、本人から睨みつけられていた。
「慎、流石に笑うのは……くっ……失礼だよ……」
「そういうかぐ男も何か堪えてるように聞こえるけど?」
慎がケラケラ笑っていたので咎めようとしたが、俺も密かに笑ってしまっていたのでかすみの怒りの火に油を注いでしまった。
「いきなり見せられた動画でかすみが全力のアピールをしているのはちょっとずるいよ……」
「ちょっと、人のやることにケチつけるつもり!?」
「二人共、流石にかすみさんに失礼だよ」
かすみはぷんぷんと怒りの表情を見せている。
それと一緒にしずくさんも俺達の態度に怒りを募らせる。
「うっ、すまん……」
「俺も言い過ぎた……ごめん」
「ふん!」
しずくさんからも説教されてしまったのでやり過ぎてしまったと俺と慎の間に後悔が生まれていた。
かすみは俺達からの謝罪に対してぷいっとそっぽを向いてしまった。
「輝弥さん、慎さん。かすみさんのやり方も間違いではありません。小馬鹿にするような真似は駄目ですよ?」
「……猛省します」
「せつ菜ちゃん、それくらいにしてあげよ? 輝弥くん達も悪意を持ってやったわけじゃないからさ。かすみちゃんも、ね?」
せつ菜さんからもお叱りを受けしょげていると侑さんが助け舟を出してくれる。
そして、かすみの方にも寄っていき頭を撫でながら宥めていく。
「……まあ侑先輩に免じて今回は許します」
侑さんのお陰でかすみの機嫌は少し良くなったようだ。
仲良くなっていったとしても、冗談の程度を見極めないといけないなと心に決めた瞬間だった。
心を改め、かすみの自己紹介動画をみんなで視聴する。
『やっほぉ~? みんなのスクールアイドルぅ、かすみんこと中須かすみでぇ~す♪ かすみん、スクールアイドル同好会の部長になったんだけどぉ~そんな大役が務まるか、とっても不安~! でもぉ、応援してくれるみんなの為に~日本一可愛いスクールアイドルを目指してぇ~頑張るよ☆』
かすみのプロモーションビデオは見てくれる人たちへ自分の可愛いを沢山見せようと手の込んだものに仕上がっていた。
彼女の得意とするポイントを十二分に活用しており、見ている側としては応援したくなる気持ちになる。
ただ、一つだけツッコミ所があった点は聞き逃さなかった。
「凄く良いんだけど……スクールアイドル同好会の部長って……どういうこと?」
「かすみちゃん……いつの間にスクールアイドル同好会の部長になったの~……?」
彼方さんもジト目でかすみに釈明を求める。
「あ~……えぇ~っと……これは出来心と言いますかぁ……」
「かすみちゃん、同好会が活動休止になった時にこの動画を撮影しててね、自分が何としても守るんだって言って孤軍奮闘してたんだよ」
かすみがどう弁明しようか目線を右往左往させていると侑さんが補足を入れてくる。
そういえば俺達は同好会の復活を目論んで活動していた時に彼女は彼女で動いていたと言っていたことを思い出した。
「あっ、そういえばその時に歩夢も自己紹介動画を撮ってたんだよね!」
「み、みんなに見られるのは恥ずかしいよぉ~」
侑さんが思い出したように歩夢さんの動画を探している。
歩夢さんはみんなに見られることに恥ずかしくなってしまい、手を身体の前でもじもじしている。
そして、少し時間が経過した後、とある音声が侑さんのスマホから大音量で流れてきた。
『あっ……歩夢だぴょん……』
「えっ?」
「あっ」
「えっ!?」
大音量で流れてくる歩夢さんの声に俺、侑さん、歩夢さんがそれぞれ違った反応を見せる。
「歩夢だぴょん……あゆぴょん……」
「慎くん、それ以上は駄目だよ?」
「何でもないです、ぽむ先輩」
慎が先ほどの音声を反芻し、以前に話に出していた歩夢さんのあだ名を記憶の底から呼び起こす。
だが、歩夢さんの手で慎の肩に置かれたことでその圧力から彼の記憶より抹消されてしまう。
「侑さん、その動画って投稿されてましたか? 私が見たものとは違うものですが……」
「せつ菜ちゃん、お願い、これ以上は深堀りしないで……!」
「かすみちゃんと一緒に、歩夢の自己紹介動画を上げるために練習してたんだよね」
「侑ちゃんもそれ以上言わないでぇ……!」
せつ菜さんは過去に漁った動画と違うものという事から内容に対して非常に興味を示しており、侑さんもそれに乗っかる。
だが、歩夢さんとしては黒歴史を皆にばら撒かれてしまっているので益々顔が赤くなっているのが否が応でも伝わってきた。
「それでも歩夢先輩はこの件があったおかげで歩夢先輩らしい良い動画が出来上がったと思いますよ?」
「うぅ……それは結果的にだよぉ……」
かすみのフォローも虚しく歩夢さんの心には届いていないようだ。
「そういえば、歩夢さんの動画って上がってるんですか?」
「私も見たことがなかったんだけど、調べてみたらあったよ」
横で調べていたしずくさんが俺に答えてくれる形でスマホの画面を見せてくれた。
『虹ヶ咲学園の普通科二年、上原歩夢です。自分の好きな事、やりたい事を夢見てスクールアイドル同好会に入ることにしました! 私はスクールアイドルに関しての知識は全くないですが、それでも諦めずに一歩一歩を歩いていく姿を応援してくれたら嬉しいです! よろしくね』
その動画に映っている歩夢さんは恥ずかしさを引きずっているような様子はなく、堂々としていた。
かすみというスクールアイドルの権化が横に居ながらも、それに負けじと自分の持ち味を歩夢さんなりに考えて表現しているのだ。
動画の最後に手で作っているうさ耳ポーズは歩夢さんなりに考えた可愛いなのだろう。
かすみとは違った可愛いを追求していて、凄く愛おしさがあった。
歩夢さんの動画を見て俺としずくさんは硬直していた。
「……凄く良いと思います」
「私もそう思います。歩夢さんらしい可愛さがあって、凄く良いです!」
「ほ、本当?」
「私も歩夢さんの動画、好き」
「このぽむ先輩、凄くかっこいいです。俺も是非参考にしたいです」
歩夢さんは不安気に聞き返すが、璃奈と慎が肯定して歩夢さんを励ます。
そんなみんなの反応を見てかすみは少しご立腹だった。
「なんか一年生組、かすみんの時と反応が違い過ぎない?」
「まあまあ、かすみちゃん。みんな歩夢ちゃんの新しい一面を見れて嬉しいんだよ」
「そうそう、かすみんが可愛いことは百も承知なんだからさ!」
かすみがぷくっと頬を膨らませているとエマさんはかすみの頭を撫でながら、愛さんは頬を突きながらかすみの可愛い所を褒めていく。
「えっ? それなら仕方ないですねぇ~♪ 歩夢先輩はかすみんほどではないですが可愛いことに間違いないですので、それを掘り起こしたかすみんは讃えられるべきです!」
「ダイヤの原石を掘り当てたからって調子に乗るな」
「いてっ。何すんのさ慎のすけ!!」
エマさん達の褒め言葉にたじたじになったかすみは身体をくねくねとうねりながら、歩夢さんの才能を広めたことを誇らしく思っている。
だが、すぐに図に乗っていると見られてしまったためか慎から手刀で制止される。
「はいはい、かすみさんも慎くんもそこまで。そうなると自己紹介動画を作っているのはかすみさんと歩夢さんだけでしょうか?」
「そうですね。私も自己紹介の動画は上げていなかったので、是非ともこれに倣って皆さんの分も作りたいと思います」
しずくさんは二人を宥め、今日の活動内容について話を戻した。
せつ菜さんもそういった類の動画を作っていなかったようで、自身の原点回帰も込めて今回の活動を提案してくれたようだ。
「なるほど、良いんじゃないかな? 愛ちゃんのパフォーマンスを見て、みんなのやりたい事も全力で応援したいから是非みんなの想いも聞かせてほしいな!」
侑さんは先日の愛さんのライブから熱冷めやらぬと言った様子で想いが昂っていた。
「確かに今後の曲作りでも活用できること間違いなしだと思うのでやってみましょう!」
「はい! それでは皆さんの動画を作るために皆さんで沢山のアイデアを出し合っていきましょう!」
侑さんの言葉に感化された俺は賛同の意を示し、俺達の言葉を聞いたせつ菜さんは安堵の表情を浮かべる。
俺達三人の意見に反対する人はおらず、こうしてスクールアイドル同好会の新しい活動が幕を開けるのだった。
読んで頂きありがとうございました!
ここから同好会の新しい動きが展開されます。
是非とも楽しみにしていて下さい。
それでは次回もお楽しみに!