虹の袂   作:M-SYA

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お待たせしました!

メンバー各位がそれぞれに対して抱いている印象とは……?

それではどうぞ!


個性を見つけろ

 俺達は大机とホワイトボードを用意し、動画制作に向けた各メンバーの特色を洗い出すところから始めていた。

 

 ホワイトボードには「みんなの個性とは!!」と大々的に書かれていた。

 

 ちなみにタイトルの考案者はかすみである。

 

 ボードに書き切ったかすみは鼻高々になりながらミーティングの音頭を取るのだった。

 

「さて、まずは誰からでもいいので、皆さんこの人はこんなイメージだなって思う事をどしどし上げていって下さい! まずはかすみんの事からでもいいですよ?」

 

「じゃあ、俺から。まず第一印象から感じた所もあるけど、愛さんは元気いっぱいっていうのが強いな」

 

「ちょっと、慎のすけ!! そこはかすみんからじゃないの!?」

 

「好きに言えって言ったのはお前じゃねえか!!」

 

 かすみの開始の言葉を皮切りに慎が意見を出すが自分の事を言ってもらえなかったからか、かすみがぷんぷん怒っていた。

 

 ついにかすみの慎に対しての扱いに──―当初から雑ではあったが──―理不尽さが増している気がする。

 

 と二人の痴話喧嘩は置いておき慎の言ってた愛さんの印象。

 

 これは先日披露したライブの内容だったり、普段の生活から伺える愛さんの姿を見ればその印象で満場一致なのは当然のことだろう。

 

「まあまあかすかすもシンシンも落ち着きなって! 愛さんの事をそう言ってくれるのは嬉しいね! 愛さん的には、カナちゃんは普段はお眠りさんだけどやる時にはやるしゃっきりさんっていうギャップが印象的だな~」

 

「愛せんぱいの意見も良いですけど、かすかすは余計です!」

 

「おぉ~愛ちゃんありがとうね~♪ じゃあ、彼方ちゃんとしてはしずくちゃんかな~。しずくちゃんって普段は凄く真面目だけど、演劇の事となったら天下一品だからそれを全面に押し出してほしいんだよね~」

 

 愛さんと彼方さんが指名を受け、それぞれもメンバーの良い所を洗い出していた。

 

 彼方さんはマイペースに取り組むことのもあって、スイッチの入るタイミングが如何せん掴めないがペースを持っていけば、彼方さんの独壇場になることは間違いない。

 

 そして、彼方さんが出したしずくさんへのイメージ。

 

 これもしずくさんと一緒にいる事が多い俺から見ても同じ印象だ。

 

 彼女と同じように真面目が過ぎる──────少なくとも自分ではそう自覚してる──────俺だが、しずくさんのやり方に共感する部分も多い。

 

 いずれはしずくさんの舞台姿を見てみたいものだ。

 

「あっ、ありがとうございます、彼方さん。では、私は璃奈さんを。璃奈さんは最初は引っ込み思案な子なのかなって思ってたんだけど、実はそうじゃなくて凄く()のある子っていう所が私は推していきたいポイントです!」

 

 指名を貰ったしずくさんが彼方さんにお礼を述べたのち、璃奈を指名する。

 

 今まで、彼女は表情を上手く出せないことを引け目に感じて自分から積極的に動く事が出来ないのかと思ってたけど、自分に出来ることを見つけて精力的に取り組んでいる。

 

 ここまで第一印象と現印象が異なるのも珍しいと思う。

 

 しずくさんの意見にうんうんと頷いていると、慎がとある単語に食い付いた。

 

「えっ? 俺?」

 

「絶対言うと思ったけど全然違う。大体慎のある子ってどういう意味だよ……」

 

「「ぶふっ」」

 

「愛さん、侑さん。笑う場面じゃないですよ?」

 

 折角しずくさんが良いことを言ってくれてたのに慎のせいで全て持っていかれた気がする。

 

「しずくちゃんにそう言ってもらえてうれしい。私は輝弥くんを推したい」

 

「えっ、俺?」

 

 しずくより賛辞を述べられ、表情には出ないが嬉しそうな声色で返事をする璃奈。

 

 そんな中で璃奈が指名したのはスクールアイドルではない俺だった。

 

「うん。私は愛さんのお陰でこの学校に馴染むことが出来た。だけど、輝弥くん達と出会えたお陰で私は学校生活が楽しく思えた。こんな私にも明るく話しかけてくれる優しさに満ち溢れた輝弥くんの事を私は尊敬しているし、是非沢山の人に知ってもらいたい」

 

 今まで聞いたことがなかった熱量で璃奈が俺を挙げてくれた理由について答えてくれた。

 

 同級生からそんな風に褒められることがなかったので璃奈の言葉を聞いて嬉しくなる半面、恥ずかしくて穴があったら入りたいと赤面していく自分がいた。

 

「べ、別に俺は……」

 

「私もそれは分かるよ。輝弥くんは人の悩みとかも自分のことのように親身になって聞いてくれるから、傍にいてくれると凄く安心するんです。最初に挙げたのは璃奈さんですけど、同じくらいに挙げたいと思ったのは輝弥くんだからね?」

 

「し、しずくさんまで……俺は当たり前のことをただこなしてるだけだよ?」

 

「それが凄いんだよ! ね? 璃奈さん」

 

「うん」

 

 俺は自分に言い聞かせるのも含めて自分の考えを周知させようとするが、かえって二人の気迫がこもってしまい俺は萎縮するばかりだった。

 

「確かにスクールアイドル同好会ではありますが、陰で支えて下さっている方もいてこそ、私達も安心して前に進めるというものです」

 

「まさに、()()()()()()()()()って言った所だね!」

 

 せつ菜さんの横でにひひと笑いながら侑さんは上手いこと言ったように見せているが俺には一つ腑に落ちない点があった。

 

「……せつ菜さんの言葉は嬉しいですが、侑さん。それは貴女にも言える事では?」

 

「へっ?」

 

 そう、俺は言葉の意味を理解できなかったのではなく、同じことを侑さんにも言えるという事だ。

 

「空に掛かる虹っていうのは二つの根元から伸びてきますよね? もしそれの片側を僕が担うというなら、もう反対側を支えるのは侑さんですよね? 僕と同じように皆さんの事を陰で支えていくんですから」

 

「それ、凄く素敵かも!」

 

「確かにその案に異存はねえな。実際、侑さんが傍で応援してくれると力がいつにも増して湧いてくるというか、近くに居てくれると安心するんだよな」

 

 侑さんが表現した言葉に乗っかる形で俺が補足を入れると歩夢さんはうんうんと頷きながら賛同してくれた。

 

 慎も異論はなく、彼も侑さんの存在を頼もしく思っているようだ。

 

「えぇ~、でも私はかーくんと違って曲作りも何もしてないよ?」

 

「確かに技術の面ではかーくんに助けられてるけど、いつも一緒に走ったり侑ちゃんなりに練習に参加してくれてる事も私たちは助けられてるんだよ?」

 

「うむっ、エマちゃんの言う通り、精神面は侑ちゃん、身体面は輝弥くんといった感じで彼方ちゃん達はいつも元気を貰って、いつも以上にしゃっきりさんになっているのだ~」

 

「そう言ってますが、彼方さんはいつも寝てるじゃないですか」

 

「えへへ、それも愛嬌なのです♪」

 

「全く都合良いんですから……」

 

 彼方さんの矛盾を指摘しても、当の本人は舌を出して開き直るような素振りを見せる。

 

 そんな態度に俺は呆れつつも微笑んでいた。

 

 これまでは人からここまで信頼してもらえることがなかったからこそ、今のこの時間が温かい。

 

 同好会の一員として恥のないよう自分を律せねばと密かに心に決めた。

 

「……って、私たちの話に持ってかないでみんなの持ち味を出し合おうよ!」

 

「おっ、ゆうゆが照れてる! 普段はそんなに見せないのに珍しいね!」

 

「愛ちゃん、こんな時まで茶化さなくていいよ~!」

 

「あっ、じゃあ侑ちゃんから見て私の良いところはどんな所かなー?」

 

 侑さんが愛さんにぷんぷんと怒っていると気を紛らわせるように歩夢さんが自分の事について質問した。

 

 侑さんは歩夢さんの質問に気を落ち着かせて、目をつぶり思考を巡らせていた。

 

 幼馴染からは彼女の良いところはどう映っているのか、非常に興味が湧くものだ。

 

「そうだなぁ、嬉しそうに笑ってると思ったら急に怒ったり悲しんだり……表情がころころと変わる所かな」

 

「そ、それって褒めてるのー?」

 

 侑さんの言葉を胸を弾ませながら待っていた歩夢さんだが、侑さんの意見は歩夢さんには褒められてると受けてもらえなかった。

 

 急に表情が悲しくなり頬をぷくっと膨らませながら怒るという、侑さんが言った事をタイムリーに体現してくれた。

 

「ほら、そういうところ!」

 

「も、もう侑ちゃーん!」

 

 侑さんが歩夢さんをからかうと歩夢さんは照れ隠しのように侑さんの手をぽんぽんと叩いていた。

 

 そんな二人のやり取りを見て心が和らいでいくのを実感していると、流石幼馴染と思わざるを得なかった。

 

 俺が二人を温かい眼差しで見守ってると慎が横から小声で入ってきた。

 

「なぁ、輝弥。あそこまで見てて飽きないし可愛いと思う人っているか……?」

 

「奇遇だな、俺も同じことを思ってた」

 

「流石にあれをやられると男は死ぬな」

 

「うん、間違いなく死ぬ。というかその自信しかないね」

 

「二人共、皆さんがいるところでそんな話はしないでね?」

 

 慎と想いの共有を図っていたが、しずくさんから冷たい眼差しと言動で制止させられる。

 

 しずくさん、そうは言うが歩夢さんのあれは男なら落ちるのも至極当然のことなんですよ。

 

「ふふっ、にしても侑ちゃんも本当に周りをよく見てるよね?」

 

「うんうん、スクールアイドルの事を初めてとは思えないほど着眼点も良くて、彼方ちゃん達びっくりしてるよ~」

 

 エマさんと彼方さんの称賛の言葉に侑さんは照れるように頭を掻いた。

 

「いやぁ……自分でもここまでのめり込むとは思いませんでしたよ。調べていく内にどんどん楽しくなっていって、頑張るみんなの事を応援したくなるんですよね」

 

「ふふっ、応援して下さる侑さんと輝弥さんの想いも胸にこのまま頑張っていきましょう! 」

 

 侑さんを見て笑顔になるせつ菜さん。

 

 そして彼女の一声に乗り、益々メンバー達の意欲も増していく。

 

 和気藹々としながらも相互に高め合える関係、素敵と思いつつ決して絶やしたくないと思い馳せるのだった。

 




読んで頂きありがとうございました!

今回はメンバーらが抱いている印象に加え本作品のタイトルに通ずる部分、それを押し出してみました。

ここで抱いていた印象がどう変わっていくのか、是非お楽しみに!

それでは次回もお楽しみに!
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