今回から璃奈ちゃん回です!
よろしくお願いいたします、それではどうぞ!
一緒に遊ぼう
果林さんがスクールアイドル同好会に入部してから数日が経過した。
彼女が参入してくれたおかげでスクールアイドル同好会は更に活気が増していた。
果林さんの一切の妥協を許さない体育会系な姿勢はメンバーらの意識を変えるきっかけとなっており、練習に対しての意識を改める事が出来ている。
特に彼女の加入でより闘志を燃やしている人物がいる。
それはせつ菜さんとかすみだ。
誰よりもスクールアイドルに対して情熱を持っている二人だが、初心者ながらも他のメンバーより貪欲に上を目指していく果林さんの姿に負けず嫌いな二人は感化され、今よりも精力的に活動にいそしんでいる。
こうしてスクールアイドル同好会のレベルが上がっていることを感じるとある日の放課後、その日は部活が久々にお休みなのでピアノでも弾きに行こうかと思っていた。
そう慎と話していた俺の元へ意外な来訪者が尋ねてくる。
「輝弥くん、少しいい?」
教室の廊下から顔を出しながら声を掛けてきたのは璃奈だった。
「璃奈、どうしたの? 今日は部活はお休みだったと思うけど……」
「うん、だからこそ輝弥くん達の所へ来た」
淡々と答える璃奈に俺は首を傾げる。
「愛さんや侑さん達と一緒にジョイポリスへ遊びに行くの。これから行こうと思ってるんだけど、もし輝弥くんと慎くんさえ良ければ一緒にどうかな?」
なんと、璃奈が直々に遊びに行かないかと声を掛けてくれた。
あまり見ない璃奈からの誘いに俺は少し嬉しくなった。
「へぇー、面白そうだね。 一緒についていっていいの?」
「うん、二人にも声を掛けていいか聞いたら、快くオッケーしてくれた」
「そう言ってくれてるのは嬉しい事だな。でも、輝弥、ピアノを弾こうかなって言ってたけど大丈夫か?」
慎はそう言いながら俺の方を見て反応を伺う。
だが、ピアノを弾くのはやることが無かった時に行う時間つぶしのようなものなので、それを最優先にするべきことではない。
慎の質問に俺は微笑みながら返事をする。
「別にピアノなんていつでもやれるから大丈夫だよ。璃奈、是非一緒に参加させてほしいな」
「……! うん、ありがとう」
参加の意を示すと璃奈は明るい声色でお礼を述べる。
璃奈とはいつも一年生組で遊ぶことが度々あるが上級生組と遊ぶ機会は中々恵まれなかったので非常に楽しみである。
「こちらこそだよ。慎も一緒に行くよね?」
こういう楽しいことならば乗り気だろうと思っているが、念の為に慎の意向も確認する。
だが、彼からの返事はその予想とは反するものだった。
「うーん、行きたいけどちと野暮用があるから今日はやめとくわ」
「そう? 買い物かなにか?」
「いや、それとは違うんだけどとにかく俺はいいさ、お前らで行ってこいよ」
もし慎の用事が短時間で済むのであれば一緒に付いていこうかと思ったけど、慎は多くは語らずに俺達からの誘いを断る。
理由について聞いても有耶無耶にされてしまい、慎は荷物を持ってそそくさと教室を出てしまった。
「あっ、慎! ……行っちゃった……」
「慎くんが用事で来れないって珍しいね。しかも帰り方もちょっと強引だった気がする」
慎の力技に璃奈も疑問を抱いたようだ。
だが、本人がいない所で喋っていても仕方ないので愛さんらの為にも早々に出発するように璃奈へ促す。
「でも、過ぎたものは仕方ないし愛さん達も待たせちゃうだろうからこのまま行こっか?」
「うん、慎くんはまた今度誘おう」
璃奈も俺の提案に賛同し、一緒に愛さん達へ合流するために教室を出発するのだった。
愛さん達と合流し、俺達はデックス東京ビーチへと向かっていた。
参加メンバーは愛さん、侑さん、歩夢さん、璃奈、俺の五人で、慎は来ないことを報告したら三人共不思議がった様子を示していた。
「へぇー、シンシンってこういう楽しい事には結構乗っかるタイプだと思ってたんだけど、珍しいもんだね~」
「慎くんにも外せない事情があったのかなぁ?」
「うーん、でも野暮用って言ってたのでそこまで大それたことじゃないと思ってたんですけどね……」
歩夢さんの質問に補足を入れるとより珍妙な表情をする愛さんと歩夢さん。
だが、そこに侑さんが割って入ってくる。
「まあ慎くんにも色々あるだろうし、あんまり言及しちゃ悪いよ。また今度誘って一緒に遊ぼうよ!」
「そうだね! シンシンもきっと来てくれるだろうからその時にまた行こっか! 今日は男子がカグヤン一人だけど頑張るんだぞー?」
侑さんの意見に愛さんも賛同した。
そして、男一人という立場を慮ってか俺へ目を向け檄を飛ばしてくる。
「ははっ……ほどほどにお願いしますね」
俺は色々な場所へ連れ回されそうな予感がして、乾いた笑いが出てくるのと同時にそう祈りざるを得なかった。
「わぁぁぁ~助けて歩夢ぅぅ!! かーくーーん!!」
デックス東京ビーチに到着し、目的のジョイポリス内へ入ると早速VRを使ったシューティングゲームをプレイしていた。
これは参加者各位がそれぞれのバックパックを担ぎ、用意された銃を持って襲ってくるモンスター達を倒していくゲームだ。
複数人での協力プレイという事で五人全員で参加していたのだが、最初は余裕綽々と言った様子で敵を薙ぎ払っていった侑さんだったが気が付けば敵に囲まれていて四面楚歌と化していたのだ。
侑さんは敵から攻撃を喰らわないように後退しながら迎撃するが、焦るがあまり照準が定まっておらずモンスターには攻撃が一切届いていないので侑さんの周りにモンスターが増えていく一方だった。
「侑ちゃん、今行くよ!」
「こちらも手助けしたいんですが、処理し切れません!」
歩夢さんは手馴れた様子で目の前の敵を倒し侑さんの元へと駆け寄る。
俺も後に続こうと思ったが、如何せん照準合わせが上手くいかず敵を倒すのに時間がかかっている。
愛さんも遠くにいるため、カバーが追い付かない。
どうしようか思考を巡らせていると横からモンスターが不意をついて俺に襲ってきた。
「や、やばい! 間に合わない!」
目の前の敵に銃を構えようとするが目と鼻の先まで近づいておりやられると確信したその時、目の前にいたモンスターが突然爆ぜた。
「へっ……?」
突然モンスターがいなくなり状況を整理していると横から声を掛けてくる人物がいた。
「輝弥くん、大丈夫?」
「り、璃奈!?」
俺に襲ってきたモンスターを璃奈が仕留めてくれたのだ。
彼女がいなければ俺はあそこでやられていた事だろう。
「ごめんね、助かったよ!」
「ここは私が食い止めるから侑さんの所に行ってあげて?」
「えっ、でも……!」
璃奈は一言そう伝えると遠くから来るモンスターの群れに飛び込んでいった。
不安気な俺をよそに璃奈は正確無比なスナイプ力でモンスターの急所を打ち抜き一発で仕留めていく。
「す、すごい……」
璃奈のゲームセンスの高さに圧倒されていたが、突っ立っていられないと俺は気を取り戻し侑さんと歩夢さんの元へと向かう。
「侑さん、歩夢さん、無事ですか!?」
「輝弥くん、来てくれてありがとう! 私は奥の敵を倒すから輝弥くんは侑ちゃんを守ってて!」
「は、はいっ!」
歩夢さんは俺の姿を見つけると侑さんの事を任せても大丈夫と踏んだのか、自分から敵陣へと飛び込んでいった。
普段の穏やかな性格からは想像もつかない凛々しい姿に俺は見惚れてしまっていた。
「うわぁぁぁぁ~~~!!」
「……はっ! 侑さん!?」
だが、そんな余裕もなく侑さんの声で我に返るとすぐさま声が上がった方向へ駆けていく。
とある扉に入った先で侑さんはモンスターに追われており逃げ回っていた。
「侑さん! 今助けます!!」
侑さんとモンスターの間に割り込むとすぐさま銃を構えて、敵を倒していく。
「か、かーくん……ありがとうー!! かーくんが来てくれれば百人力だよ!」
侑さんは俺の姿を見るや一気に元気を取り戻し銃を構え直して一緒に襲ってくる敵を倒していく。
そして、敵を倒し切って歩夢さん達の元へ行こうとしたその時、会場アナウンスが鳴り響く。
『現在ご利用中のお客様にご連絡いたします。プレイ終了時刻となりましたのでゲームを終了いたしました。武器の回収を行いますので会場入口までお越し下さい。繰り返しお伝えいたします……』
目の前に広がっていた仮想空間が消え去り、一気に現実世界へと引き戻される。
「どうやら終わったみたいですね」
VRゴーグルを外して辺りを見渡す。
そこには俺と侑さんしかおらず、先ほどまでモンスターが蔓延っていた場所とは思えない殺風景が広がっていた。
「侑さん、大丈夫ですか?」
モンスターに追われた疲労感と張り詰めた空気から脱したからか侑さんは息を切らしながら膝を押さえていた。
「侑さん……?」
中々返事をしないので俺は心配になり侑さんへと顔を近づける。
だが、その瞬間侑さんが俺に力一杯に抱き着いてきた。
「ひゃうぁ!? 侑さん!?」
「うぅぅぅ、かーくんが助けに来てくれたおかげで命拾いしたよぉぉ! 本当にありがとうー!!」
驚いている俺を他所に侑さんは抱き着きながら最上級の賛辞を述べる。
お礼を言ってくれるのは良いけれども、流石にここまで力の入ったハグは求めていないのでどうにか抜け出したいが、力を入れる事に抵抗が出る。
「べ、別に俺は当然の事をしたまでで……!!」
「でも歩夢ってば、かーくんが来るかも、って言っていきなり私を置いてけぼりにしたんだからね!? 私、こういうアクション系あんまり得意じゃないのにひどいよー!」
「そ、そうですか……」
俺は早く解放してもらおうと侑さんへの返事も手短に済ませようとするが、侑さんは中々放してくれない。
だが、それも束の間、すぐに解放されるが今度は近い距離に侑さんの顔があった。
「だから……かーくんが手助けしてくれたから心強かった! ありがとう──!!」
本当に戦場から帰ってきたような口調で侑さんは再度お礼を述べると再び力を込めてハグするのだった。
「うぅぅ……それは良いんですけど早く解放してくださぁぁぁぁい!!!!」
「あっ、やっとゆうゆとカグヤンが帰ってきた! 二人とも遅くない?」
「もう侑ちゃん達、どこに行ってたの?」
侑さんのハグ地獄が終わりアトラクション入り口に向かうと武器を片付け終わり、鞄を持った愛さん達が待っていた。
「いや、その……遠くまで行ってしまってここまで帰ってくるのに途中迷ってしまいまして……」
俺は先ほどの出来事を公言されたくないため、それっぽい嘘をついてやり過ごそうとする。
だが、俺達の様子がおかしく感じたのか璃奈がとある指摘をする。
「……なんか二人共顔赤くない?」
「へぇっ!?」
「り、璃奈!! 別にそんな事ないぞ? 動き回って暑くなってるだけだから! ですよね、侑さん?」
「そ、そうそう! いや、歩夢が急にいなくなっちゃったから本当に焦ったんだからね!?」
実は侑さんもあの後、ふと我に返り自分の行った事を急に恥じらい出してしまったのだ。
その為、帰り道もお互い気まずさから会話もせずにドギマギしながら開始地点まで戻ってきたのだ。
俺の必死の言い訳に侑さんも相槌を打ち、話題を歩夢さんの行動へとすり替えようとする。
「だ、だって侑ちゃんが一人でどんどん私達から離れていくから中々追い付けなくて……だから輝弥くんに向かってもらったの!」
急に指名を受けた歩夢さんの必死の形相で弁解を述べる。
どうやら歩夢さんも侑さんに付いていっていたようだが、侑さんの逃げ足についていけず困っていたようだ。
「あっはは! その光景めっちゃ面白そうじゃん! 横から見てみたかったなぁ~!」
俺達三人の論争を愛さんは笑いながら見つめる。
そんな中、璃奈の姿を見て声を上げる女の子たちがいた。
「あれっ? 天王寺さん……?」
名前を呼ばれていると分かり、璃奈はその子らへと顔を向けるが相手の正体が誰なのかすぐに判別がついた様子だった。
「……あっ」
「友達?」
「……クラスメイト」
どうやら彼女らは璃奈のクラスメイトのようだ。
でも侑さんの『友達か』という質問に対して『クラスメイト』と返している辺り、あまり親密な関係ではないことが伺える。
「天王寺さんも来てたんだね。……って、あぁぁ!!」
眼鏡をかけた少女が璃奈を一瞥した後、愛さんを見て大きな声を上げる。
「貴女は……もしかしてスクールアイドル同好会の宮下愛さんですよね!?」
「へっ? そうだけど……」
突然顔を近づけられながらも平然を装いながら愛さんは返事をする。
そして、眼鏡をかけた子が愛さんに食いついている内に、右側にサイドテールを結んだ子は歩夢さんにがっついていた。
「あ、あの、上原歩夢先輩ですよね!?」
「う、うん……」
「この前のPV見ました! 歩夢さんらしい努力家な一面が垣間見えて好きになってしまいました!」
「わ、私も愛さんのパフォーマンスを動画で見て、凄く元気がもらえました!」
どうやら二人は歩夢さんと愛さんの動画を見てファンになったようだ。
密かに学校内にも同好会の存在が認知されているようで安心する。
「天王寺さんの動画も見たよ!」
「……!」
歩夢さん達がファンの子たちと話してる間に黄土色の髪の子が璃奈の動画を視聴していた事を連絡してくれる。
「バーチャルキャラで自己紹介なんて斬新で面白かったよ! それに凄く可愛いし!」
俺はそれを聞いて一つ疑問が浮かんだ。
「えっ、璃奈って動画上げてたっけ?」
そう、俺はその動画を見たことがないので彼女らがしている会話の内容が分かっていないのだ。
「あれっ、カグヤン知らなかったの!? 結構な時間をりなりーやみんなと一緒に動画制作に割いて作ってたけど……」
「あぁ……ここ最近ずっと曲作りをやっていたのでそこら辺の活動にあまり干渉できていなかったかもですね……」
愛さんの曲を皮切りにエマさん、歩夢さん、かすみと続けざまに作曲を続けていたので他のメンバーらの動画制作状況を把握できていなかった。
メンバーらを支えると言いながらこの体たらくは改善しないといけない。
「あっ、巴君もスクールアイドル同好会に入ってるんだね」
「そうですけど、僕の事知ってるんですか?」
俺は動画に出演しているわけではないしクラスも違うので認知されていることに驚きだ。
「当然だよ! この学校の男子って凄く貴重だから女子の間では話題の的だよ?」
「あぁー……そうですか」
女子が大半のこの学校では男子という稀有な存在に目を奪われてしまうみたいだ。
そんな中で少なからず自分も知られているのは嬉しいようで恥ずかしい。
「それに巴君は一年の中でもとびっきりの人気を誇ってるよ♪ 君と同じクラスの鈴川君と人気度に差が無くてどっこいどっこいなんだよ!」
「べ、別に俺はそうやって持て囃される人間じゃ……!」
俺は女子からそれなりの人気を有しているようだが、気恥ずかしさが勝っているので正直勘弁してほしい。
それに慎と同じ人気というのも俺個人としては俄かに信じがたい。
あっ、慎を使ったダジャレが出来上がってた。
そんな下らない事を考えていると女子たちはノンノンと指を振りながら補足する。
「ほらほら、そういう謙虚にしちゃうところとかがかわいくて上級生からの人気が凄いんだよ!」
「だ、だから求めてないんだってばーーーー!!」
突然始まったガールズトークに俺は何も言い返すことが出来ず、先ほどの侑さんの件とは別の意味で顔が熱くなってしまった。
その後、同好会メンバーからもそれをネタに弄られてしまうのはここだけの話。
読んで頂きありがとうございました!
ジョイポリスでVRゲームをやったことがないのでいずれは遊んでみたいですね。
あとは一緒に遊んでくれる人が見つかることを祈るのみですが……ははっ……。
…………それでは次回もお楽しみに!