お待たせいたしました!
この度新しくラブライブ!スーパースター!!の二次小説を連載いたしました。
『吹き荒ぶ風、奏でる音』↓リンク
https://syosetu.org/novel/285039/
既に読まれている方もおりますが、改めてアナウンスさせていただきます。
それでは本編をどうぞ!
「かぐ男ー、りな子ー、遊びに来たよー!」
「輝弥くん! お疲れさまー♪」
璃奈との作曲。始めた頃は外で運動部の掛け声が響いていたが、今ではその喧騒も無く青空も橙色に染まっていた。
しずくさんとかすみが迎えに来るまで外の景色の変化に気付かず二人で黙々と作業に集中していただろう。
「しずくさん、かすみ、お疲れ様。もう今日の練習は終わり?」
「うん、気がついたら時間が遅くなってたから輝弥くん達の様子を見に来たの」
「侑先輩達は先に帰っちゃったけど、かぐ男達を置いて帰るのは流石に気が引けちゃうからわざわざ顔を出しに来てあげたんだからね!」
かすみの言う通り、確かに同好会のグループチャットで『お先に失礼しますね!』と快活に返事をする侑さんを皮切りに他のメンバーも次々に返事をしていた。
練習に集中するためにスマホのバイブが鳴らないように設定していたため、璃奈共々全く気付いていなかったがそれだけ璃奈の曲作りに力を注げられた証拠だろう。
そんな中で俺たちのことを見に来てあげた自分に感謝しろとでも言いたげな素直じゃないかすみに苦笑いを浮かべる。
「なぁーにが、顔を出しに来てあげた、だ? お前が真っ先に輝弥たちの所に声掛けようと張り切ってたじゃねえか」
「んにゃぁぁぁぁ!! 慎のすけ、余計なことを言わなくていいの!!」
ご満悦になっているかすみに水を差すように扉の前で慎が苦言を呈す。
気持ち良くなっていた所に邪魔が入り、かすみも慎へガンを飛ばしながら文句で返す。
「相変わらず二人は練習終わりでも元気だね。璃奈、俺達もひとまずここまでにしよっか?」
「うん、今日はありがと。輝弥くんのお陰で曲も形になってきた感じがする」
「いや、璃奈が積極的に意見を言ってくれるから出来てるんだよ」
俺と璃奈の褒めちぎり合う姿を見て、慎はむず痒く感じたのか頭を掻いていた。
「お前ら、その辺にしてさっさと着替えに行けよ? いつまで経っても帰れねえじゃねえか」
「あっ、ごめん。じゃあ三人とも、また後でね」
練習を終えて制服へ着替えるために荷物を纏め、女子三人へ別れを告げて音楽室を去った。
「……で、どうなんだ? 璃奈の曲作りは」
俺がロッカーで着替えている最中、慎は横で他人のロッカーにもたれかかりながらこちらへ状況を聞いてきた。
「順調だよ。璃奈のお陰で予想よりもだいぶ早く進んでてびっくりだよ」
シャツのボタンを留めながら嬉々として慎に報告する。
いつにも増して機嫌が良い俺の姿を見て、慎も安心した様子を見せる。
「そうか、始めたての頃は神妙な顔をしてたのに、今じゃ大違いだな」
慎はミーティング時の俺の態度を思い出して茶化してくる。
「そう言わないでよ、最初は大抵そんな抱くもんだよ?」
揶揄われたように聞こえたので、俺も自分なりの意見を慎にぶつける。
いきなり大きな課題を突き付けられて正常な思考を出来る人間は相当な胆力の持ち主だ。
実際、俺自身の未熟さ故に不安を感じていたが、当初は璃奈がどのように考えているのかが全く読めなかったのだ。
いや、今まで同じ時を過ごしたことで彼女の事を分かった気でいたのかもしれない。
楽しい時間を過ごすことに夢中で、それ以上深く知ろうとしていなかったからこそいざという時に彼女の不明点が浮き彫りになり自信喪失となってしまったのだろう。
「不安になるのは確かに分かるけど、別に独りでやってるわけじゃねえんだからもう少し肩の力を抜いて考えてみればいいじゃねえか」
「慎は作曲っていう歌う上での重要ポジションを担当してないから言えるんだよ」
「まあ、俺には到底出来る仕事じゃねえからな」
「……潔い発言で逆に尊敬するよ」
あっけらかんとしている慎を見て、ため息を吐く。
だが、そんな俺を一瞥し慎は天井を仰ぐ。
「そんな大役をお前に任せるからこそ、お前が意固地にならないように俺達がカバーしてやるって言ってんだ。そういうクッション役も必要だろ?」
慎はそう言ってこちらを見つめ微笑んでくる。
なんだかんだ言って友人の事を大切にしようとする慎のポリシーは本当に尊敬できるところで、俺が女性だったら今の発言で惚れてしまうことだろう。
まあ、俺は男性に対してそういった気質は無いで問題ないのだが。
「……ほんと、慎と話してると考えすぎる俺がバカに思えてくるよ」
「あん? それ、どういう意味だよ?」
「褒めてるんだよ」
「ならいい」
歩夢さんからも再三言われていることだが、自分が何とかしなくては、と自己責任に駆られてしまう癖は直していかないといけない。
堅物である自分を壊すためにどうにか出来ないか改めて模索しようとするが、慎が声を掛けてきた。
「でも、輝弥はどうしてもそういう思想で動いちまうんだろうな。いきなりお前がとにかくやってみよう! なんて言い出したら逆に不安になっちまうし」
「……悔しいけど、自分でもそう思えてきたよ」
人の性格というのは付け焼刃では直すことが出来ない。
どんなに悪事を働いた犯罪者でも刑務所に入って善人に更生できるのかと言われても、同じ過ちを繰り返し再び刑務所入りするという事例も少なくない。
俺の堅い性格は自分でも直すことは無理だと思ってるし、むしろ急にアグレッシブな性格に変わったら流石に自分を受け入れる事が出来ないだろう。
「だから、輝弥はとことん気になる所を洗い出していけよ。そして、俺にそれを話せ。輝弥が問題を洗い出して俺が内容を聞いてお前にフォローをする。それで十分やっていけんじゃねえか?」
「俺が出来ないことを慎がフォローするってこと?」
「そ、お互いの長所をカバーし合えれば俺達は誰よりも強くなれる。そうすれば向かうところ敵なしだろ?」
お互いの長所をカバーし合う。
それは何事も自分一人でこなせるようにならなければいけない、と意地を張って努力してきた俺には温かい言葉だった。
メンバーの楽曲作りを担当するとなったからには生半可な覚悟ではやり切ることは出来ないと自分を律してきていた。
しかし、その考え方のせいで今回のライブの事で璃奈を始めとしたメンバー達に余計な心配を与えてしまった。
いつもみんなが言っている、『困ったことがあれば声を掛けて』。
これも俺の中ではもう少しやれるところがあるんじゃないか、すぐに援助を求めるのは甘いんじゃないのか、そういった思考からこの言葉を真摯に受け止めることが出来ずに自分で解決させようと奔走してしまう。
「……なんだか安直な発想に聞こえるけど、それも凄く大事なことだね」
「だろ? お前も侑さん達には自分がしっかりとやれるところを見てほしいだろうさ。だからそれまでの苦労は俺が一緒に解決してやるから言ってこいよ。俺にならば気兼ねなく相談できるだろ?」
「……確かに慎になら何でも話せると思うな」
確かに侑さん達の前では、一人の人間、男性として頼まれたことをそつなくこなせるところを見てもらいたい。
だからこそ、その過程で発生した問題を話して不安にさせたくないのだ。
「へへっ、なら今度から決まりだな。こういった練習終わりとかでもっとお互いの状況を話していこうぜ」
「分かった。なら頼りにさせてもらおうかな?」
「おうさ! なんなら最悪の場合は輝弥たちが曲作ってる間に割り込んで状況を聞くっていう強硬手段も使えるから逃げれると思うなよ?」
「お……穏便に頼むよ?」
握り拳を作りながら半ば脅しの意を込めて忠告する慎に対して絶対に敵に回してはいけないと心に決めたのであった。
それから、璃奈のライブに向けて円滑に準備は進められた。
歩夢さん達とのステージ練習も、彼女が得意としない大勢の人の前でのトークとなるが『苦手だから、という理由でやらないっていうのは避けたい』として、積極的に練習に励んでいた。
しずくさんらとの発声練習、果林さんらとの柔軟運動、愛さん達との体力トレーニング。
璃奈はこれらに対して一切音を上げることなく誠実に取り組んでいた。
それと並行して、侑さんとの共同作業でライブ告知の動画作りにも勤しんでいた。
既に今週末に迫ったライブという事で動画サイトでの宣伝とジョイポリス内でも告知映像を流してもらえることになり、メンバー達の士気は一層高まっていた。
「ふぅ~。りな子、だいぶ仕上がってきたんじゃない?」
「そう?」
ライブまであと二日。
体力トレーニングの休憩中にかすみが息をつきながら璃奈の成長ぶりに感嘆の声を上げていた。
当の本人はその自覚がなく、少し戸惑っている様子が伺えた。
そんな璃奈へせつ菜さんも肯定の意を示す。
「はい! 少し見ない間にかなり基礎が出来上がっていましたのでびっくりしました! 輝弥さんもそう思いますよね?」
「そうですね。僕もうかうかしていられないです」
「……そっか」
せつ菜さんから意見を求められ俺も璃奈の成長を称賛するが、本人はライブが迫っている緊張からか素直に褒められて嬉しいものからきているものかは分からないが、無表情のままただ一言漏らすのみだった。
すると遠くから璃奈を呼ぶ声が聞こえてきた。
「天王寺さーん!」
浅希さん、色葉さん、今日子さんの三人だ。
「新しい動画見たよ!」
「ライブ、今週末だよね! 」
「絶対に見に行くから頑張ってね!」
どうやら璃奈のライブが近い事もあり、応援に来てくれたみたいだ。
「みんな……」
三人を見て驚いている様子を見せる璃奈に俺はとある提案をした。
「璃奈、三人の所に行って意気込みでも言ってきたら?」
「……うん」
璃奈の決意を再認識させる意も込めてそんな提案をしたが、璃奈もうんと頷いて三人の元へと駆け寄る。
「璃奈さん、すっかり強くなりましたね。これなら明後日のライブも期待できそうです!」
「はい、ここまで自分の力で頑張ってきたんです。絶対報われますよ」
璃奈の後ろ姿を見て、せつ菜さんとこれまでの練習を振り返っていた。
彼女がやりたいと言ったあの日から彼女を主軸にライブの準備が行われた。
突貫工事にはなったがなんとか形として完成し、後は本番まで身体をしっかりと休めるところだ。
「あ、あの……もしよかったら……」
緊張からか声が小さくなりつつもしっかりと相手に気持ちを伝えようとする璃奈。
しかし、突如璃奈が窓の方を目を向けるとはっと目を見開いたのが分かった。
「……璃奈……?」
「て、天王寺さん?」
突然だんまりしてしまう璃奈を見て色葉さんが声を掛ける。
そして、その問いかけに璃奈は静かに返事をする。
「……何でもない……」
璃奈は一言、そう呟くと重い足取りで三人の横を通り抜けていった。
「り、璃奈さん!?」
「……ごめん。今日は帰るね……」
「りな子……?」
今までにないトーンで告げられ、あまりの急な出来事に璃奈を追いかける事が出来ないせつ菜さんとかすみ。
そんな彼女たちを尻目に、俺は璃奈を追いかけずに先ほど彼女がいた場所へと走り出してその場で窓の方へ振り向いた。
璃奈があの場で何かを見て途端に意気消沈してしまったのだから、何か隠されているのではと考えたのだ。
だが、窓越しに誰かがいたような形跡はない。
また、彼女を揶揄するような悪戯が施されていたような形跡もない。
一目見た感じでは璃奈を阻害する要因らしきものは見当たらず、頭を悩ませる。
「一体なんで……?」
顎に手を当てて思い当たりそうな原因を考えていると、俺はとある発言を思い出した。
『そういえば璃奈って……ライブ中は感情をどうやって出すのかな……』
『今の俺たちって璃奈は無表情のままでもどういう気持ちを抱いているのかが分かる。それって璃奈が感情を出すことが苦手ということを知ってるからこそ出来ることだよね』
いつかのしずくさんと話した『璃奈はライブの際にも感情表現をどのようにするのか』という内容。
今それが思い出されたのが天啓なのか偶然なのかは分からないが、何故か重要なポイントであるように感じてしまった。
「……まさかっ……?」
俺は頭の中に一つの予想が浮かび、それを確かめるために窓ガラスを注視する。
ガラス越しに映る校舎内には誰もいなかったが、それでもたった一人、俺の視界に映る人物がいた。
そこには眉を顰める俺自身が映っていた。
「……もしかして……そういうことか……」
璃奈が突然帰ってしまった理由。
その一端を理解してしまい、俺はライブの雲行きが怪しくなるのを肌で感じ頭を悩ませてしまうのだった。
読んで頂きありがとうございました!
璃奈ちゃん回もついに佳境に入ります。
次回も是非お楽しみに!