虹の袂   作:M-SYA

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かすみん、誕生日おめでとう!!
今回はかすみの特別編です!

設定は2人が既にお付き合いしているというものです。


外伝
[特別編]中須かすみ生誕祭


「かぐ男! 今日はかすみんに付き合って!!」

 

 かすみは授業が終わってすぐにうちの教室にやってきてそんなことを言ってきた。

 

「なんだ? 藪から棒に」

 

「今日はかすみんの誕生日なんだよ! かすみんの彼氏ならそれくらいは分かってるでしょ! そんな日に何もしないなんて男として恥ずかしいと思わないの!?」

 

「別に忘れてるわけじゃないし、朝もちゃんとおめでとうって言ったじゃんか」

 

「かすみんがその程度で喜ぶと思うの!?」

 

 かすみは自分の誕生日だというのに大して祝福されてないように感じてご立腹のようだ。

 もちろん、彼氏として何も準備をしていないほど俺はかすみほどバカではない。

 

 ……なぜかかすみが途轍もない目力で俺を睨んでくる。

 独白で煽ってるのがバレたか。

 

 するとかすみの目が潤んできた。

 しまった、弄りすぎたか。

 っていうかなんで心が読めるんだよ。

 

「……かすみんの直感を舐めない方がいいよ……」

 

 落ち込みながら答えてくる。

 わざわざ答えなくていいよ。

 

「はぁ、わかったよ。今日は同好会の練習も休みだし、お出かけしようか」

 

「ほんと!? さっすがかぐ男♪ わかってるぅ~♪」

 

 かすみの頭を撫でながらお出かけに賛成するとかすみは一気に笑顔になった。

 

 相変わらずかすみの感情豊かさは筋金入りである。

 まぁ、俺はそんな自分の気持ちを素直に表現できるかすみに惹かれて告白したんだけど。

 

「……なら早くデートに行ってこい。教室前での惚気はそれくらいにしろよ」

 

 二人の世界に入っていたところに慎が会話に入ってくる。

 

 確かにここはうちの教室の前、しかもホームルームが終了したばかりなのだからクラスメイトが全員残っているのだ。

 

 二人のイチャイチャを見せつけられて、呆れたり、愛想笑いをしたり、目を背いたりと人それぞれのリアクションを取っていた。

 

 だが、かすみは俺との時間を邪魔されたからなのか頬を膨らましながら慎に文句をつけていた。

 

「もぉ、なら慎のすけは先に帰ればいいじゃん! あっ、もしかしてかすみん達の幸せっぷりが羨ましいのかなぁ~?」

 

「慎のすけって言うんじゃねえよ、かすかす! 第一、帰ろうにも二人がそこにいるから邪魔で通れねえんだよ!」

 

「むぅ~! かすかす言うな!! ならもう一方の扉から出ればいいじゃん!」

 

「はいはい、かすみも慎もどうどう」

 

 二人がいつもの言い合いを始めたので双方を宥める。

 しかし、二人の勢いは留まることを知らず、なんなら俺を鋭く睨みつけてきた。

 

「かぐ男もかすみんの彼氏なんだから言ってやってよ! そんな風に気を利かせられないから彼女ができないんだって!!」

 

 俺はかすみを宥めていたが、とあるフレーズに眉をぴくっとした。

 そんな俺の様子に気付かず慎も言い返していく。

 

「はぁ!? 別に彼女がいようがいまいが関係無いだろ! そんな風に人に対してのデリカシーが無いから輝弥もお前の相手をするのはさぞ大変だなぁ!!」

 

 慎もいつも通りにかすみに対して返しているのだろうが、俺はその返す言葉が気になり、次第に怒りが募っていく。

 

「べ、別にそんなことないし! かぐ男は慎のすけと違ってかすみんに対してそんな事言わないしかすみんがもし言っちゃってもかぐ男は優しく指摘してくれるんだから!!」

 

「結局はデリカシーのない発言をしてるんじゃないかよ!! あと、慎のすけ言うな! 輝弥は人一倍優しい奴だからな、輝弥の優しさに甘えずに自分で直していけよ!」

 

 二人の口喧嘩が終わりそうにないので俺の怒りが頂点に達した。

 

「…………うるさいっ!!!」

 

 突然、大きな声で言ったものだからかすみと慎は黙ってしまった。

 

「いつまで二人で喧嘩してるんだよ。別に今日に限ったことじゃないけど、いつも二人を宥める側の身にもなれよ」

 

 かすみと慎は、眉間にしわを寄せながら怒る俺を見て小動物の如く縮こまってしまう。

 そう、この二人の喧嘩は今日に留まるものではない。

 まずどちらかがそれぞれの蔑称で煽り、そこから言い合いに発展する。

 

 いつもはしずくと璃奈もいて三人で宥めていたが、今日は宥める側は俺だけ、しかも喧嘩が収まりそうになかったので俺も思わずムキになってしまった。

 

「別に言い合いをするのは止めはしない。それぞれの言い分があるだろうからね。ただな、なんで言ってはいけないことまで言ってさらに煽るんだよ。それこそ人に対して気も利かないしデリカシーが無いわ」

 

 俺は人のコンプレックスについては特に気にする方で、それをネタに弄る人は毛嫌いする。

 だからかすみと慎の発言の中にあった言葉、それが俺の怒りの引き金になったのだ。

 

「はぁ、もう帰るか。かすみ、行くよ」

 

「えっ、あっ、うん……」

 

 俺は大声を出しだいぶ目立ってしまったため、人の目から逃げるように教室を去る。かすみも同意しながらも後ろから付いてくる。

 

 

 俺たちは学校を出てセントラル広場に来ていた。

 ここまで来る道中、二人の間に何も会話はなかった。

 いや、かすみは俺の方を何度か見てきたがまだ怒ってると思ったのか声を掛けようとしなかったため、会話ができなかったという方が正しい。

 

「かすみ、ここに座ってな」

 

「う、うん……」

 

 広場の中にあるベンチにかすみを座らせ、とある場所へと足を運んだ。

 

 

(かすみ視点)

 

 かぐ男が目的も言わずどこかへ行ってしまってから、かすみんは心臓がバクバク言っている。

 

 慎のすけと喧嘩をするのはいつもの事だったが、今日はかぐ男がものすごい剣幕で怒っていたから、何か言われるかもしれないと不安に駆られていた。

 

 かぐ男がそこまで怒る理由は知ってる。

 彼も小さいときに自分が抱えていたコンプレックスを弄られていじめられていたと教えてくれたからだ。

 

 かぐ男がかすみん達に対して優しく接してくれるのは自分のような人を見たくないからだと言ってた。

 そんな暖かい心を持った彼に触れて、かすみんはかぐ男のことを次第に好きになっていったけど、今日はそんな彼の心を踏みにじってしまった。

 

「いやだ……いやだよぉ……」

 

 私は輝弥が遠くに行ってしまうのではないかと思い、自然と涙が溢れてきた。

 

 正直輝弥が告白してくれてすごく嬉しかった。

 私が好きになった彼が私を選んでくれた、それだけで私の心は満たされていたのだ。

 

 ただ、今日の喧嘩の内容が頭をよぎり、輝弥が私の元から離れていく不安を覚える。

 そんな不安が自分に嫌という程突き刺さってくる。

 自己防衛するように自分の体を覆うが気持ちが晴れることはなかった。

 

「輝弥……離れたくないよ……!」

 

「何言ってんだ?」

 

 輝弥の声が聞こえ、ふと顔を上げるとコッペパンを両手でそれぞれ持ちながら輝弥が私の前に立っていた。

 

 

(輝弥視点)

 

 広場に来るまで少し張り詰めた空気が漂っていたので気を紛らわすためにかすみの好きなコッペパンを一緒に食べようと思い、買ってきたが戻ってきたときにかすみは顔を伏せていた。

 

 最初はさっきのことを気にしているのかと思っていただけだが、近くまで来たときにふと聞こえた言葉が俺の予想を覆した。

 

「輝弥……離れたくないよ……!」

 

 かすみは俺から別れ話でも切り出されると思っていたのか涙を流しながら自分の気持ちを吐露していた。

 

 それが分かって、俺はむしろ安心した。

 

「何言ってんだ?」

 

「えっ……?」

 

 かすみはふと聞こえた俺の言葉に顔を上げ、涙を拭うことなく俺をただ見つめていた。

 

「誰もかすみの元からは離れないよ。別にかすみだけが悪いわけじゃないし」

 

「で、でもっ……! 私は……輝弥のことを知ってるのに……知った上であんな事言って……輝弥の気持ちを踏みにじったって言ってもおかしくないもん……」

 

 かすみはまた俯いてしまったが俺はかすみの前に跪いて微笑みかけた。

 

「言ってしまったものは仕方ないけど、今のかすみは俺の事もそこまで考えてくれた上で反省してるんだもん。嫌うなんて滅相もないよ」

 

 俺は自分の鞄をかすみの横に置き、その上に買ったコッペパンを置く。

 そして、かすみの頬を伝う涙を自分の指で拭う。

 

「ごめんね、さっきは俺もムキになりすぎた……」

 

 さっきの喧嘩については俺ももう少し頭を冷やした上で仲裁に入ればよかったのだが、そこまで自分の感情を制御できていなかったので、反省しなくてはいけない。

 

「か……輝弥が謝ることないもん! 私が言い過ぎたんだから……」

 

 かすみの言葉に反論しても水掛け論になってしまうのは目に見えたため、俺はかすみの手を握り言い聞かせるように話す。

 

「ありがとう。俺は、いつも俺のことを気に掛けてくれるかすみが好きだよ。かすみは俺が落ち込んでるときも近くでその明るい笑顔で勇気を与えてくれる。俺はかすみがいたから今もこうして頑張れてる」

 

 かすみは俺に顔を向け、俺の言葉を一語一句噛み締めるように聞き入っていた。

 

「もちろんかすみが悪いことをしていたら俺は怒るよ。自分の好きな人が誤った道に進んでほしくないし……」

 

 俺は言葉が浮かんでこなくなり、話す内容が詰まってきた。

 

「と、とにかく、俺のかすみを想う気持ちはこんなものじゃ消えないよって事。言いたいのはそれだけ」

 

 かすみはまた目に涙を浮かべ俺に抱き着いてくる。

 

「輝弥ぁぁ……!! ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 

 俺はやれやれと思いながらかすみの頭を撫でた。

 

「はぁ……かすみ、もう泣くのはやめよ? アイドルはどうあるべきなの?」

 

 俺がかすみに活を入れると、かすみはすぐ俺の元を離れ自分で涙を拭った。

 

「えへへ……そうだね。スクールアイドルは……常に笑っているべきなのです!!」

 

 その時のかすみの笑顔はすごくまぶしいものだった。

 

 

 




かすみはいたずら好きだけど、人の心を理解するすごくいい子ですよね…!

今日は寝そべりかすみんとパーティでもしようか…。
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