果林さんは凄く好きなタイプですので初見の時から推しになること間違い無しな存在でした!
そんな果林さんの特別編です!
お付き合い設定は無しですので、それを念頭にお読みください!
それではどうぞ!
とある日のこと。
今までと同じ何の変哲もない一日が終盤に向かおうとしていた時、ある人からお呼び出しがかかったのだった。
呼び出しがかかったのも彼女がこちらに来ようとすると必ずと言っていいほど迷子連絡が届くのでこちらから出向くようにしたのだ。
「こんにちは、お疲れ様です」
ライフデザイン学科の教室に向かうと呼び出し人は自分の机でモデル雑誌であろう本を読んでいた。
「あらっ、お疲れさま輝弥くん。急に呼び出してごめんなさいね?」
「気にしないで下さい、果林さん。それで何かあったんですか?」
果林さんは俺の声を聞き、読んでいた雑誌を閉じてこちらに向き直る。
ただ椅子に座ってこちらを振り向いただけなのにモデルさながらの気品を感じて、少し緊張感が増してしまうのはここだけの話。
「侑から少し聞いたんだけど……貴方、私の曲で苦戦してるんだって?」
「……別に苦戦してるわけでは……」
「ならこっちをちゃんと見ながら言いなさいよ?」
侑さんと同好会メンバーの楽曲イメージについて話していた時に果林さんの曲についての話題になったのだ。
果林さんはどこまでもチャレンジング且つ挑戦的な姿勢が特徴なのでそれを表現したくて邁進しているのだが、これが中々上手くいかない。
どう頑張っても果林さんの勢いに曲がついていかないのだ。
折角果林さんが頑張っても曲が弱ければ相対的に果林さんの評価も落ちてしまう。
それだけは防がなくてはいけないので侑さんにアドバイスを貰っていたのだ。
この件は本人には余計な心配を掛けたくない関係もあり、本人には黙っておくつもりだったのだが侑さんはつい話してしまったようだ。
まあ彼女に口止めをしていたわけではないから侑さんを責めるのはやめておく。
聞かれたくなかった人に問われ、苦し紛れの回答がお茶を濁そうとするがあっさり嘘がバレる。
やはり俺は嘘を付くという事が点で弱いらしい。
「貴方って分かりやすいから嘘かどうかなんてすぐに分かるわよ?」
「……さいですか……」
果林さんはからかうように目を細めながら指摘してくる。
正直果林さんも大概だとは思うのだが果たして思い違いだろうか。
「……何か失礼な事考えてない?」
「いえ、そんなことは滅相ございません、はい」
果林さんが目を細めながら刺すような視線をぶつけてくる。
俺は心拍数が上がりながらも平静を装いながら返事をする。
そんな俺を不審に思いながらも果林さんは軽くため息を吐いて話題を変える。
「はぁっ……もういいわよ。それより私が呼んだのも楽曲作りについてよ」
果林さんは自席から立ち上がり俺の前に立つ。
そして、お互いの距離が近くなり果林さんから見下ろされる状態になった時、果林さんは徐に俺の顎に手を当て、クイっと傾けてくる。
「えっ、か、果林さん……?」
唐突にやられた仕草により思わず顔が熱くなり胸が高鳴っていく。
そして、果林さんは自分の口に人差し指を当てウィンクする。
その仕草は大人の女性を彷彿とさせる妖艶さが滲み出ており、耐性がついていない男子生徒なら即堕ちてしまうのではないだろうか。
その後、人差し指をこちらに近づけてきたので思わず目を閉じてしまったが、その瞬間口元に指が当たる感触があった。
「ふふっ、何赤くなってるの? やっぱり輝弥君って可愛いわね」
目を開けたらそこには明らかに俺の反応を楽しんで微笑む果林さんの姿があった。
「……こんな時までからかうのはやめて下さい」
「貴方が良い反応をするのがいけないのよ? しずくちゃんに似て真面目なんだからつい楽しんじゃうわ」
「……そこでしずくさんを出さなくてもいいんですよ」
「あらっ? 私と一緒にいるのに他の女の子の話題を出すなって?」
「そういうわけじゃないです。ただ……自分に自信が無いように見られますよって……それだけです」
「……えっ? べ、別にそういうつもりじゃないけど」
「ふふっ、顔に出てますよ」
先ほどまで俺をからかって楽しんでいた果林さんだが、状況が一転しこちらの反撃の番となった途端、果林さんも目を反らす。
それは全く俺と同じような仕草だったので、思わず笑みがこぼれてしまった。
やはりこの人も俺と同じように攻められると弱いタイプだ。
「……なんだか最近可愛げが無くなってきたわね」
「さぁ、誰のせいでしょうかね?」
先ほどまで俺の事を可愛いと言っていたのに俺に対しての評価がフォークボールの如く急速変化を起こしている。
「私に対して随分と生意気な口を利くようになったじゃない」
「果林さんだから言えるっていう所もあるかもしれないです。エマさんや彼方さんにはこんなやり取り出来ませんからね」
「私には敬意というものがないのかしら?」
「そういう事じゃないですよ。こんなやり取りが出来る果林さんだからこそ僕も安心できるっていう事です」
エマさんや彼方さん達は優しい人物なのでこういった冗談も真剣に受け止められてしまい、内心傷つかれるのではないかと心配になってしまう。
一方、果林さんはなんだかんだ笑って受け止めてくれそうで、こういった冗談をぶつけたくなってしまう。
またからかった時の反応が良いことも俺の中ではポイントが高い。
勿論、先輩である彼女に対しての尊敬もあるし決して彼女の事をバカにしているつもりではないのでそこだけはしっかりと受け取ってほしい。
「……そういう事にしておくわ。話が脱線してしまったけど、来週少し付き合ってくれない?」
果林さんは不完全燃焼になりつつも当初の目的についての話に切り替える。
「付き合うと言いますと?」
「来週、期末テストじゃない? それが終わった後にモデルの仕事が入ったのよ。折角なら一緒についてこない?」
「こんな期間でもお仕事が入るんですか……」
テストは学生の本分である勉強の集大成と言っても過言ではないので別の事に現を抜かすことは極力避けたいはず。
それでもそのスケジュールで入れられたお仕事に嫌な顔一つせず承諾した果林さんは凄い人だと改めて自覚した。
「まあ次回の雑誌に掲載される内容だからそれは仕方ないわね。これでもある程度の融通は利かせてくれるのよ?」
「そうなんですか。それで、どうして僕にそんな事を?」
「楽曲作りについて悩んでいるんだったら、学校外での私の一面を見るのも良いんじゃないかって思ってね。ほら私達って二人で何かをするってことがあまり無いじゃない?」
確かに果林さんと遊びにいくといったことをしたことがないため、普段の果林さんについて何も知らない。
であれば、新しい果林さんの姿を見つければ自ずと違ったコンセプトの曲が出来上がるのではないかと果林さんは提案してくれたのだ。
「なるほど……。良いと思います! 果林さんが良いのでしたら是非一緒に行かせてください!」
「良いも何も私から誘っているんだもの、貴方が良いと言ってくれないと話が始まらないわよ?」
俺自身、モデルのお仕事と言っても果林さんがどういった事をしているのか知らなかったのでいい機会だと思う。
果林さんも俺の返事に満足したようでこうしてお互いの予定が埋まったのだった。
「僕はオッケーです。ではお仕事に支障をきたさないように全力で臨めるように明日からのテストに向けて勉強しないといけませんね!」
「そうね! ……って、え? いや、別にそこまでしなくても……」
「何を言ってるんですか! これでテストが駄目で補習によりお仕事に行けませんってなる方が果林さんのイメージにも関わります」
テストが翌日に迫っていることもあり赤点を出すという事を何としても避けたいので果林さんに発破を掛けるように言うが、果林さんは俺との熱の差に少し引き気味だった。
「今日は部室でテスト前の勉強会を開くとせつ菜さんが言っていたのでそちらに参加しましょう! 善は急げです!」
「えぇー!? そ、そんなぁ……エマァァァ……!!」
苦悶な表情を浮かべる果林さんをよそに彼女の手を取り、部室へと向かうのだった。
前を突っ走る俺の後ろで果林さんが助けを求めながら連行されていく様が周囲の人の目に映っていたそうな。
時が流れモデル仕事見学の日。
俺は果林さんについていくために虹学寮の前に立っていた。
ここには果林さんの他にエマさんや慎も住んでいる。
お仕事に付いていくのだから折角なので一緒に向かわないかと果林さんからお誘いを受けたのだ。
初めての果林さんとのお出かけという事もあり少しばかり緊張している。
決して遊びに行くわけではないのだが、それでも二人きりで、というのは初めてなものだから、普段の果林さんの姿に想像を膨らませていた。
そして、今日はただのお仕事が入った日というわけではない。
今日を一緒に過ごす人にとって大切な……。
「輝弥君、お待たせ」
思考を遮るように果林さんが寮門の前に姿を見せた。
夏らしく袖が短くフリルの付いたシャツに膝上丈のスカートで果林さんのスタイルの良さを全面に出していた。
「そ、そんなに待っていないので大丈夫ですよ」
「あらっ? 普段の私を見る機会がないからもしかして緊張してる?」
初めて見る果林さんの私服姿をドギマギしてしまうが果林さんに見抜かれてしまい彼女お得意の弄りが始まる。
「べ、別にそういうわけじゃないです……」
「いつもの目逸らしが発動してるわよ。相変わらず可愛いわね」
「むぅー……」
「あららっ、拗ねちゃったわ。そんなに機嫌を損ねないで?」
「そう言いながら頬をムニムニするのやめて下さい」
果林さんからの弄りに機嫌を損ねていると果林さんはそれを面白がるように俺の両頬を指でツンツンと突っついてくる。
これをまだ知り合って間もない人からされれば少し苛々が募ってくるが果林さんなので怒るのは良しとしよう。
「ふふっ、これ以上輝弥君をからかったら折角のデートが台無しになっちゃうわね」
「で、デート!? そ、そんな大それたものじゃ……!」
これはデートとは違うものだと思い、あえてその言葉を考えないようにしていたが果林さんは気に留める様子もなく平然と言いのける。
「ぷっ、そこまでムキにならなくてもいいじゃない? 軽い冗談よ」
「もう、冗談が過ぎますよ……全く……」
「っとそろそろ出発しないと時間に遅れちゃうわ。行きましょ」
俺の弄りに満足したのか果林さんは腕時計で時間を確認し、出発するように促す。
「切り替えが早くないですか……? でも、実際撮影の時間まで迫っているので行きましょうか」
俺は果林さんの変わりように戸惑いを覚えつつ撮影場所へ向かう事とした。
撮影スタジオへ着いた後、すぐに果林さんの撮影が始まった。
中には撮影用のカメラマンとスタイリスト、そしてヘアメイクさんとモデルの人を全力で輝かせるための準備が万全に整っていた。
果林さんは用意された衣装に着替え、カメラマンやディレクターの指示の元でポージングを切り替えながら撮影が行われていた。
仕事に臨む果林さんの姿は今までスクールアイドル同好会で見せている姿と同じように仕事に対して全力で向き合っていて凄くかっこよかった。
シャッターが切られた後、自分で写真を見て満足がいかなかったところについては改善点を提示した上で再度撮影をしたいと直談判しているので大人顔負けの真剣さだった。
そして、そんな果林さんを他所に仕事場に果林さんと一緒に入った俺についての噂が絶えなかった。
「おっ、彼氏か?」
「あの子、朝香さんの彼氏さんかしら? かわいらしいわね」
「朝香もついに色気づいたか?」
周りの大人達も一匹狼な印象を果林さんに抱いていた関係もあり、俺との関係性について議論が白熱していたようだ。
それよりも俺に対してかわいいと言った人がいたことが俺の中でダメージがある。
男として生まれた以上はかっこいい側の評価を貰いたいものだが、かわいいと言われると男の魅力が無い様に思えてしまう。
「ふぅ、やっと終わったわ~」
撮影開始から一時間ほど経過しただろうか。
気分が落ち込み気味になっていると、ポージングで凝ったであろう肩をほぐしながら私服姿の果林さんが更衣室から出てきた。
「果林さん、お疲れ様です。これ、僭越ながら差し入れです」
「ふふっ、ありがと。いただくわ」
俺は果林さんが撮影中、特にやることがなかったので差し入れ用に飲み物を買ってきていた。
果林さんは俺から飲み物を貰うとすぐに蓋を開けて、汗として抜けた水分を取り入れるように口の中へと運ぶ。
冷たい飲み物のお陰で火照った身体が落ち着いていくようで、果林さんは二口分飲むとすぐに蓋を閉じる。
飲んでいる時も汗が首筋を走っていたため少し色っぽさが込められているのと同時に、その飲みっぷりの良さに見ているこちらも気持ちが良かった。
「どうだった? 私の仕事は?」
「凄く良いものを見させてもらいました! 被写体として役割をこなすだけでなくスタッフさん達にも自分の意見をぶつける姿は凄くかっこよかったです!」
俺からの真っすぐな称賛の言葉に果林さんは少し顔を赤くし照れていた。
「そ、そうかしら? モデルと言っても私自身、完璧な姿を読者には見てもらいたいからね。私が抱いた違和感とかは余すことなくぶつけるようにしているの。ほら、自分の中で燻ぶらせて後から悔やむなんてことしたくないでしょ?」
「なるほど、後悔を残さないように疑問に感じたことは確認するんですね」
「そうよ。それが結果的に流れを変えなかったとしても、その人たちの中に新しい可能性を見出させることが出来るんだから、相手が大人だからって遠慮せずに言うようにしているのが私のスタイルなの」
果林さんの仕事に対するポリシーを知る事が出来て、より果林さんが同好会の中でも頼もしい存在に見えてきた。
「では、同好会の中でもやってるどんな事でも躊躇わずに発言するというスタイルは果林さんの流儀という事ですね」
「そうね、一歩下がった視点で毒づいているようであまり良い印象はないでしょうけど……」
「そんな事ないです! むしろ誰よりも客観的に見て下さっているので、むしろ果林さんのお陰で視野が広くなっているんです!」
自虐的になっている果林さんを落ち込ませまいとそれを払拭するように果林さんのお陰で救われていることを挙げていく。
同好会のメンバーはみんな優しい。
だが、優しいがあまり相手の意見を尊重しようと自分の意見を抑え込もうとする。
それにより否定的な考えが出てきても相手を不安にさせてしまうと感じてしまうのだ。
そんな中で全く異なるタイプである果林さんは、同好会に新しい風を送り込んでくれた。
そこには果林さんなりの情熱があり、自分の信念に従って活動しているのみなのだ。
「ふふっ、そう言ってくれて嬉しいわ。なら私の新しいイメージについて掴むことは出来たのかしら?」
「……そうですね。正直、現時点では上手く言葉を纏めることが出来ませんが……でも良いインスピレーションが浮かんでくるような気がします!」
「素直なことね。でも、良いイメージを与えられたのならば連れてきた甲斐があったわ♪」
俺の自信が無い発言について正直な気持ちを吐露しながらも成果が得られたことを喜ばしく思う果林さんだった。
「ねぇ、今からもう空き時間だし、このまま遊びに行かない?」
「……えっ、このままですか!?」
「当然よ? だって朝は学校でテスト、昼は仕事で疲れたんだもの。一緒にリフレッシュしていきましょ♪」
仕事帰りに遊びに行く体力まである果林さんに驚きの声を上げていると果林さんは何を言っている? と言わんばかりに笑みを投げてくる。
「……そ れ に。仕事で見た私以外の姿も貴方に見てほしいわ♪ それも新しい私のイメージにつながるでしょ?」
果林さんの執念のお誘いに、俺はついに折れてしまう。
「はぁ……分かりました。今日は果林さんのお誕生日ですし、楽曲作りは置いておいて楽しみましょうか」
「あらっ、覚えててくれたのね?」
「勿論です。お誕生日に仕事を入れるなんて流石にどうかとは思いましたけど……でも僕らだけの時間を作ることが出来たって考えれば有りですね」
「ふふっ、そういう事♪ じゃあ今日は私の行きたいところにとことん付いて来てもらうわよ?」
「分かりました。改めてお誕生日おめでとうございます。僕に新しい果林さんの姿を見せて下さい」
「ありがと♪ 後悔させないからしっかり付いてきなさい!」
言いそびれていたお祝いの言葉を果林さんは何のお咎めもなく受け止めてくれる。
そして、果林さんに手を引かれながら二人きりのデートが始まるのだった。
果林さんに連れられて動物園、スイーツ巡り、ゲームセンターでの勝負と半日で遊ぶには十分過ぎる時間を過ごすことが出来た。
充実した時間のお陰で果林さんとの距離が縮まり更に親密になったことを実感することが出来たのだった。
読んで頂きありがとうございました!
果林さんは楽曲の時点から私のツボに刺さるものが多くて、彼女のアイドルに対しての考え方も凄く共感できる人です!
改めて果林さん、お誕生日おめでとうございます!