座礁する方舟   作:一般トランスポーター

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続いた。


スカジ「私の『海』とあなたの『海』(ビーチ)、そこになんの違いもありはしないでしょう!」

サム「違うだろうが!!」




騎兵と狩人。それと運び屋 ⑨

人はこれまであらゆる困難を踏破してきた。

 

しかし自然には、自然()だけには人類は逆らうことができなかった。

 

 

(自然)に反旗を翻すなど、土台無理な話なのだ。

 

 

──厄星。

 

 

凶兆(オーメン)と換言してもいいだろう。たった一人の狩人を表すにはオーバーな二文字。

しかしその名には賞金稼ぎたちの途方もない畏怖の念が込められていた。

 

 

 

 

 

両刃の大剣がサムを兜割りで二枚おろしにせんと中空から襲いかかる。

警告もなく放たれた意識外からの一閃。まともに当たれば一刀両断どころか五体が落とした水風船のように爆裂四散してしまうのは誰の目にも疑う余地はなかった。

 

 

サムは当たるか当たらないか、すんでのところで横に飛び退いて回避。

およそ人の繰り出せる出力を凌駕する剣がサムの1cm横を掠め、ジェット機のような風切音が彼の鼓膜に轟いた。

 

サムの回避によって剣の一撃をまともに受けてしまった斜面には大規模な(ひび)割れ、そして小規模なクレバスが形成された。

 

一撃し損じた程度で深海の狩人(アビサルハンター)は止まらない。

続く二撃で仕留めるために深々と突き刺さった大剣を柄を土塵を振りまきながら掘り起こした。

それも柄を掴んだ片手だけで。

 

彼女が被る漆黒のテンガロンハットの下、深紅(ルベライト)の瞳が再度サムを捉え────

 

「……手間をかけさせないでくれるかしら」

 

「それは無理な相談だよ、スカジ」

 

スカジの視界に白が侵入し、次いで黒が彼女の目を塞いだ。

スカジがグラニの槍を大剣の腹で受け止めたのだ。

彼女は己の眼前に構えた愛剣を振り払い、グラニを押し出すようにして後退させる。

ここで彼女を一瞬でも止めなければサムはきっとスカジの剣の錆になっていただろう。

 

 

「軽い槍ね」

 

「そりゃね!」

 

グラニは槍を本気で振るったわけではない。彼女の場合、『振るえなかった』の方が適切かもしれないが。

 

例え殺す気で攻撃しても涼しい顔をしてスカジはあらゆる攻撃を防ぐだろう。

しかし同じロドスのオペレーターとして彼女にそんな気を向けるわけにはいかず、向ける気もなかった。

 

「どうしてサムを攻撃するんだスカジ!それが君がここに来た目的なの!?」

 

「……()()とは別件よ」

 

もはやサムは人ではないとでも言いたげにスカジは吐き捨てる。

それ以上の言葉など無用。そう彼女の行動が雄弁に語っていた。

 

 

──スカジが再び剣を握りしめた瞬間、彼女の首元に六条の光が青の軌跡を描いて殺到する。

光は彼女を軸に二、三度周回しギチリと五体を締め上げた。

サムの放ったボーラガンのストランド三本がスカジを拘束したのである。

 

「質問は後にしろ!逃げるぞお前ら!」

 

短い付き合いではあったが初めて聞いたサムの荒らげた声に全員一も二もなく遁走を開始する。

殿を務めたサムは念には念をと電磁スタンボムを彼女に放り投げてからその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボーラガンのストランドで剣ごと簀巻きにされ、ついでとばかりに電磁スタンボムの放電をまともに喰らったスカジはピクリとも動かず山の斜面に突っ伏していた。

 

そんな無防備な狩人の周りを囲うようにして薄汚い黒い影が現れる。スカジにこっぴどくやられた賞金稼ぎたちだ。

 

「へへ、あの兄ちゃんやるじゃねぇか。ただのトランスポーターかと思ってたが、厄星を再起不能にしちまうなんてよぉ」

 

「油断するなよ。動いてないとはいえ、まだ生きていてもおかしくはない」

 

「でもよ大尉。あんだけぶっとい縄でぐるぐるに縛られて電撃のアーツも浴びてるんだ。さすがに気は失ってるでしょうよ」

 

サムが最後に放った電磁スタンボムの効果は既に切れている。

賞金稼ぎの一人は効果の切れたそれを拾い上げて大尉に投げ渡した。

 

「大尉、俺たちの仲間のほとんどは厄星に殺られましたよね」

 

「……そうだな」

 

「じゃあその()()、しなきゃいけないと思いません?」

 

そのお礼が皮肉であることは誰から見ても明らかだった。

大尉は部下の心躍る提案に不潔な笑みを浮かべた。

 

「お前の言う通りだ。俺たちはコイツにたっぷり礼をしなきゃなんねぇ。生きるのが嫌になるくらいの、な」

 

大尉の汚い高笑いは伝播し、周りの賞金稼ぎたちはゲラゲラと笑いながら彼女に近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

────しかし、それは考えうる限り最低の悪手だ。

 

 

 

 

 

 

 

「私を縛るにはまだまだ足りないわね。せめて後7本くらいないと」

 

簀巻きになって地に伏していたはずの狩人がおもむろに鎌首をもたげた。

賞金稼ぎたちの笑い声は徐々に現実を受け入れられないことによる引きつったものへと変換されていく。

 

三重に彼女を戒めた黒縄はブチブチと奇っ怪な音を立てて無惨に崩壊。彼女の立つ山肌をはらはらと落ちる黒い糸と紐の束が汚していく。

 

いつの間にか狩人(スカジ)の背後に突き立てられた大剣は何故かバチバチと電気を纏っていた。

柄に手を添えたスカジの手にももれなくその電気が走るが彼女は気にする様子もなく剣を抜き放つ。

 

「いい置土産じゃない。遠慮なく使わせてもらうわ」

 

恐らく先の放電が剣に帯電したのだろうとスカジは結論付ける。

受けた直後はともかく、今のスカジは電気に対してある程度の耐性を獲得していた。

 

彼女の『【生理的耐性】卓越』は伊達ではない。

 

 

 

 

「────瞬きもせずに自分の死に様を見届けることね」

 

 

 

稲妻を帯びた剣が魚と潮の幻影と共に走り、賞金稼ぎたちを屠っていく。

 

彼女の宣言通り、彼らは後悔する暇もなく甲高い悲鳴を上げながら藻屑のように二度と覚めることない眠りの底へと沈んでいった。

 

 

狩人(スカジ)は気絶していたのではない。

これからの行動に支障をきたす賞金稼ぎたちを一網打尽にするために、虎視眈々と頃合を見計らっていただけなのである。

 

 




厄災の歩みは止まらない。加速する────!


一般トランスポーター先生の次回作にご期待ください!!




スカジ
→厄災絶対殺すウーマン。前書きのような感じでサムを勘違いした。

ボーラガン
→敵を拘束する紐を放つ非殺傷武器。序盤も今も大変お世話になっている。首元を狙って撃つと一撃で気絶させられるぞ!
今回は三発スカジの首元にクリーンヒットしたけどまるで足りなかったみたいだぞ!

電磁スタンボム
→サムの置土産。放電で人間を気絶させることができる。
スカジには一瞬だけ効いたぞ!
ついでにスカジの大剣に電撃属性をエンチャントしちゃったぞ!
これからのスカジの攻撃には低確率でCON対抗ロールが発生します。


大尉
→厄星に欲情した結果四枚おろしにされた。

部下
→厄星に欲情した結果五枚おろしにされた。

騎兵と狩人終えたらオペレーターとサムの絡みを書こうと思いますけど何書きましょうかね。

  • 配送帰りにモスティマに出会う話
  • ハイビスキッチンで卒倒する話
  • ワルファリンに体の隅々まで調べられる話
  • エンペラーからペンギン急便に誘われる話
  • サムがウルサスに赴く話(過去編)
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