座礁する方舟   作:一般トランスポーター

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続いた。


アンケートやってます。回答のほどヨロシク。


騎兵と狩人。それと運び屋 ⑥

「虫、虫なぁ」

 

サムはオリジムシと会敵する度、北アメリカにいた頃に食べていたクリプトビオシスなる宙を這いずる芋虫のことを思い出す。

 

時雨に耐性がつくとか、造血作用があるとか、ともかくその虫は高機能性栄養食品のような立ち位置だった気がする。

 

同じくオリジムシも虫のカテゴリーに入るが、クリプトビオシスとは似ても似つかない。

奴らは食べてもあまり美味しくなさそうだとサムは思う。

クリプトビオシスもそこまで美味いものではないのでどっこいどっこいかもしれないが。

 

「そらっ!」

 

サムは群れの中に円柱状の手榴弾のようなシルエットをしたモノを投げ込んだ。

オリジムシたちはそんなものに対する危機感知能力もなく、放物線を描いて落下してくるそれに対して無関心だった。

 

 

着弾────瞬間、雷が地面を這いまわる。

 

 

着地をキーにして周囲に無差別放電を繰り出したのは白サムから受け取った物資の一つ、電磁スタンボムだ。

ミュールや分離破壊主義者(ディメンス)の鎮圧用に常々サムはこの装備を携行している。

 

使い勝手のいいこの装備で唯一注意すべき点は、スタンボムに敵味方の識別するような機能は搭載されていないことだ。故に十分な距離をとって投げることが大切である。

 

普通の手榴弾だった場合オリジムシが爆裂四散して肉片シャワーを浴びるところだったので、今回の白サムセレクトはかなり理にかなっている。

サムは心中で彼らに【いいね!】を送った。

 

「その電撃には触れるなよ!」

 

「わかってるよ!見るからにヤバそうだもんアレ!」

 

グラニはスタンボムの有効射程から外れたオリジムシやアシッドムシの迎撃に回った。

彼女は軽快なステップでアシッドムシの分泌液攻撃を躱し、お返しとばかりに辻斬りを喰らわせていく。

 

「どう?あたしも中々やるでしょ?」

 

「そうだな、思ったよりも──グラニッ!後ろだ!」

 

死屍累々の虫塚を築き上げたグラニは満足気にサムに手を振った。

予想以上に俊敏だった彼女の動きに自分も歳を食ったな等と思いつつ、サムは素直に賞賛を述べようとして──声を荒らげた。

 

「へ?──うっひゃあっ!!?」

 

グラニは後ろを振り向きながら身をかがめると、彼女の頭上を歪な形をした剣が通過していく。

彼女の後ろにはいつの間にやら賞金稼ぎがお世辞にも無邪気とはほど遠い口角の上げ方で嗤っている。

 

グラニは即座にその場から脱出してサムのいる地点にまで駆け込んだ。

 

「サンキューサム!」

 

「礼は後にしろ!お前アイツらから恨みでも買ったのか?」

 

「キャロルを奴らから解放するために仕方なくね!」

 

「OKわかった。それなら必要経費だ仕方ない」

 

依頼人が賞金稼ぎに捕まっていたとなればやむを得ないだろう。

しかしこのタイミングは最悪と言っていい。既に賞金稼ぎたちは暗号で仲間たちに伝令を広げている。

かなり遠くに見える大挙してこちらに向かってきている一団がその成果だというのは容易に想像できた。

 

疲労という疲労はしていないが、囲まれるのはさすがにマズイ。

 

次なる一手を切るタイミングをサムが見計らっていると、賞金稼ぎの一団の横側、茂みに隠れる不審なものが蠢いているのに目が止まる。

 

 

揺れる草むらからひょっこり現れたのは宇宙船のクルーと見紛う重装備を身につけた何かだった。

 

かなり昔のカイラリウムの除染をする作業員が着用していた作業着にそれは似ている気がした。

 

その何かは賞金稼ぎたちに見えないように、彼らの頭上高くにサムが使った電磁スタンボムのような形をしたものを投げ放つ。

 

一団の中央に着地する前に空中でそれは弾け、かなり距離の離れたサムたちにまで届く甲高い騒音を響かせ、閃光を撒き散らす。

不意打ちに襲われた賞金稼ぎたちは苦悶の叫び声を上げながらゴロゴロと転がっていく。

 

「サム、あの人ジェスチャー送ってないかな?」

 

「ん?ああ……」

 

グラニの言う通り、確かに宇宙服?はこちらに向かって手を振っている。

 

「あの辺りで合流しよう、ということか」

 

「助けてもらったんだしお礼くらいは言いたいところだけど……」

 

三人で話し合った結果とりあえず礼は伝えに行こうということで合致し、サムが宇宙服?に了解のジェスチャーを示した。

 

「大丈夫でしょうか」

 

心配そうなキャロルの肩にグラニがポンと手を置いた。

槍を掲げて自信満々に彼女は宣言する。

 

「大丈夫大丈夫!キャロル、君はあたしとサムが責任持って守るから!」

 

グラニの快活な笑顔に絆されたのか、強ばっていた顔が緩みキャロルはありがとうと微笑んだ。

 

 




クリプトビオシス
→DS以後に発見された新種の生物。食べるとドーピングもびっくりの造血作用がある。ストックも利くのでかなりお世話になりました。
クマムシの一種らしいが5センチもあるクマムシは正直怖い。
フラジャイルさんは何で忌避感もなくそれ食べれるんですか?

電磁スタンボム
→弊サムの主武装。めっちゃ使いやすいので重宝してる。
着弾すると周囲に無差別放電を繰り出し、感電した人間を気絶させる。

ボブおじ
→やっと出てきた(姿だけ)
なんかアモングアスとかに出てきそうな感じがある(多分気のせい)



危機契約を早くやりたくてウズウズしてる。
早くワイの特化3ウタゲを差し込みで使いたいんや(禁断症状)

騎兵と狩人終えたらオペレーターとサムの絡みを書こうと思いますけど何書きましょうかね。

  • 配送帰りにモスティマに出会う話
  • ハイビスキッチンで卒倒する話
  • ワルファリンに体の隅々まで調べられる話
  • エンペラーからペンギン急便に誘われる話
  • サムがウルサスに赴く話(過去編)

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