ロクでなし魔術講師と最後の精霊   作:空白部屋

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《注意事項》
・キャラの性格が少し変わったりするかもしれません。
・出来るだけストーリーに沿います
・更新未定。突発的衝動で書いたものですから。
・デート・ア・ライブを知らないと分かりにくいかもしれません。


テロリスト襲撃編
プロローグ


 

 ------一度目の人生が終わり、転生して二度目の人生が始まる前、俺は虹色に輝く小さな結晶を手に取った。

 ほんのりと淡く光り、微かに熱がこもっている。

 ふっと消えてしまいそうな儚い印象を受けるが、それとは裏腹に力強い何かを肌で感じる。

 不思議な結晶だ。微睡む意識の中で、俺は漠然とそう思った。

 

 

『願いはなんだい?』

 

 

 唐突に声が聞こえた。

 男か女か、果ては若いのか老いているのかすら判断出来ない声だ。なんとも印象が無さすぎて覚えられそうにない。

 しかし、その声には不思議と優しさのようなものを感じた。

 願い……俺には何かを願いたい内容でもあったのだろうか。

 富、名声、地位、色欲……今の俺にはそのどれもが当てはまらない。

 特別欲しいとは思わないし、かといっていらないとも思わなかった。

 自分の願いが分からず、何が正しい選択なのかはっきりしない。そもそも、俺は何かを願いたいものでもあったのかと疑問すら浮かんでくる。

 この声が何をしたいのか分からない。分からないから、とても不安になったりする。

 ……ああ、でも。一つだけ言えるとしたら、今の俺は、誰かを守れる力が欲しい。

 

 

『それは何故かな?』

 

 

 声の主が不思議そうに聞いてくる。

 前世の話だけど、俺は家族や大切な友人を守ることができなかった。

 後悔し、全てを恨み、憎み、怒り、そして悲しんだ。

 だから今度こそ、そうならないように救える力が欲しい。

 一度失ったという事実は決して消えることのない傷痕となり、忘れることはない。そんなものは承知の上だ。

 それでも俺は、大切な誰かを守りたい。

 

 

『そうか……実に君らしいね。全てを失ったにも関わらず、また誰かを守ろうとする君の行動はもはや呪いだ。本当に凄いよ』

 

 

 感心したような声が響く。その声には慈しむような感情がこもっているような気がした。

 手に握った結晶の温かかさが増す。

 

 

『君にならその《霊結晶(セフィラ)》を託せるよ。使い方は君次第。心から守りたいと思える人間に出会った時、きっと役に立ってくれるさ』

 

 

 何を託すというのだろう。少し不安であり、そして安心でもあった。

 

 

『力を必要とした時、名を呼ぶといい。そしたらきっと、天使は顕現してくれる』

 

 

 天使…? と、疑問に思う俺に、何がおかしかったのかくすくすと小さく笑う声が聞こえた。

 

 

『君がどんな事を思い、どんな事を体験するのか。今から紡がれる君の物語を想像すると楽しくて仕方がないよ』

 

 

 声の主は愉快そうに笑った……気がした。何せ実際に声の主らしき人物は見えないので断定できない。

 

 

『あぁ、そろそろ時間だ。君との別れが実に惜しいな。私がいる世界は既に精霊がいなくなってしまったから君に全てを託そう。私ももう長くはない……向こうでは死なないでくれよ、《最後の精霊(ラスト・スピリット)》』

 

 

 その言葉を最後に、声が二度と聞こえなくなった。

 残されたのは、俺と《霊結晶(セフィラ)》と呼ばれた綺麗な結晶だけ。

 それと同時に段々と視界が真っ白に染まっていく。

 全てが真っ白に染まった時、全身が温かい光に包まれて《霊結晶(セフィラ)》は俺の体に取り込まれた。

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 アルザーノ帝国南部、ヨクシャー地方のフェジテに存在するアルザーノ帝国魔術学院。

 創立およそ400年を誇る国営魔術師育成専門学校で、国内に4つある魔術学院の中でも最高峰の魔術を学べることで近隣諸国でも有名な学校だ。

 女王アリシア三世が創った訳あり学校の上に地下には【嘆きの塔】という古代魔法文明最大の遺跡である地下迷宮が存在したりと厄介事の種がばらまかれているような状態の学校ではあるが、取り敢えずそれはおいておこう。

 まぁそんな呪われていそうな学院に通っている俺は相当な物好きと言えるだろう。

 いや待ってくれ勘違いするな俺はマゾではない。歴としたノーマルだ。

 そもそも俺の性癖なんてどうでもいいだろ…。

 ………よし、まずは自己紹介から始めよう。

 俺の名前は鈴谷奈(すずやな) 不知火(しらぬい)。長めの白髪に灰色の瞳、そして中性的な顔立ちが特徴のアルザーノ帝国魔術学院の生徒だ。

 ちなみにこの世界ではシラヌイ・スズヤナとなっている。漢字表記は日本にいた頃に使っていた。

 さて、ここまで言えば分かるだろう。俺は正真正銘の転生者だ。

 これは事実ではあるのだが、それを他人に言ったら頭が可哀想な奴だと認識されるので誰にも言ってない。

 しかも転生したおかげなのか、かなり強力な《異能》を授かっている。

 正確には異能ではないのだが、この世界からしたら異能でしかないので一応、そう呼称してる。

 けど今まで人前では使ったことないけどね。だってバレたら色んな組織に狙われるし。

 ……んで、そんな俺が今何してるのかというと

 

 

「こらぁああッ!! 待ちなさぁああいッ!!」

 

 

 ……ただいまフェジテの街にて全力で逃走中でございます。助けて下さい。

 

 

「今日という今日は許さないわッ!! とっ捕まえて縛り上げるわよッ!?」

 

 

 ちょっと物騒な事を叫びながら俺を追いかけてくるのは、俺と同じアルザーノ帝国魔術学院の生徒のシスティーナ・フィーベルだ。【教師泣かせのシスティーナ】、【説教女神】なんてあだ名もある銀髪美少女だ。

 

 

「縛り上げるのは勘弁してくれ! ってかちょっと散歩するくらい別にいいだろ!?」

「あなたそれ何回目だと思ってるの!? 部屋で寝るとか言って夜中に屋敷を抜け出した挙げ句にいっつもボロボロで帰ってくるじゃない!」

「ボロボロになるのはわざとじゃないんだってば!」

「なお悪いわよ!?」

 

 

 ヤバい、余計に怒らせた。これじゃあ火に油を注いでいるだけじゃないか。

 その証拠にいつもなら「そもそも夜中に外出するな」と言ってくるのに、今ではそんな注意すらない。

 必死に逃走してなんとか学院の中にたどり着くが、もうすぐそこまでシスティーナが迫っている。

 というか、なんであいつあんなに足速いの? 俺、足の速さは平均より少し上なんだが。

 

 

「やっと追い付いたわよ! さあ、大人しくお縄につきなさいっ!」

 

 

 刑事のような台詞を言いながら、どこから取り出したのか、長いロープを手に持っていた。いや、マジでどっから出てきたんだよそれ。

 だが俺は諦めずに逃げ続ける。

 

 

「くっ! なんて足の速さだ! 空気か!? 空気抵抗が少ないからか!?」

「ちょっとどこ見て言ってんのよッ!?」

「胸部の断崖絶p……じゃなくてそのスラッとしたスリムな胸部」

 

 

 問われて反射的に答えそうになり、慌てて言い直したけど駄目だったか。

 システィーナが顔を真っ赤にしてプルプルと拳を震わせた。

 

 

「この-----っ!? 死になさいッ! 【大いなる風よ】ッ!!」

「ま、まて! 話せばわか------ぎゃぁああああああっ!?」

 

 

 システィーナの得意魔術、黒魔【ゲイル・ブロウ】によって俺は空高くまで吹き飛ばされた。ワタシハトリヨー

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 ---------アルザーノ帝国魔術学院内の教室にて。

 

 

「で、いつものように吹っ飛ばされたのか?」

 

 

 呆れたような視線を寄越すクラスメイトのカッシュに、ロープで全身をグルグル巻きにされた俺は抗議する。

 

 

「俺は悪くない」

「いや、夜中に外出するお前が悪いだろ…」

 

 

 キリッとした表情で言うが、身動きとれない状態で床に転がされているので格好つかない。

 

 

「てか、なんでいっつも夜中に外出なんてするんだよ?」

 

 

 人知れず異能の練習をするためです……なんて言えないのでそこは真顔ではっきりと言ってやる。

 

 

「可愛い女の子と夜の街できゃっきゃうふふにゃんにゃんするために決まってるだろう?」

「どうか師匠と呼ばせてくれ」

 

 

 よし、これでカッシュは堕ちたな。

 

 

「最ッ低!!」

 

 

 システィーナに思いっきり蹴りを入れられた。あふん。

 

 

「ま、まぁまぁシスティ。シラヌイ君だって、男の子なんだから仕方ないんじゃないかな。ね?」

 

 

 隣で友人であるシスティーナをなだめようとしているのは、彼女にしたいランキング1位のルミア・ティンジェル。一言で彼女の性格を表すとしたら天使以外にあり得ないだろう。

 それほど性格が良く、周囲から人気のある美少女だ。

 

 

「そうは言っても毎日よ? それに、ボロボロになって帰ってくるのはいくらなんでもおかしいわよ」

「それは、まぁ…」

 

 

 システィーナの言葉に言い返せないルミア。

 どうやらあの大天使ルミア様といえど、俺の素行が悪すぎて庇えないようだ。無念。

 期待はしていないが、一応カッシュに"助けてくれ"と目で伝える。スッと顔を逸らされた。あんにゃろう…!

 

 

「それよりこのロープ外してくんない?」

 

 

 まるで他人事のような態度の俺に、システィーナの眉がピクリと動いた。

 

 

「外すわけないでしょ。いっつも勝手にどっか行くんだから当然の処置よ」

「これだと板書とれないんだけど…」

「後で腕だけ使えるようにしてあげるわ」

 

 

 いくらなんでも徹底しすぎだろ。どんだけ信用ないんだ。

 相変わらずなシスティーナの態度にルミアが隣で苦笑い。笑ってないで助けて下さいなんでもしますから。

 そんな事を考えていると、教室の扉からガララと音を立てて誰かが入ってきた。

 

 

「よーし、お前ら席につけー」

 

 

 そう言って教室に入ってきたのは、第七階梯(セプテンデ)のセリカ・アルフォネア教授だ。

 出たな人外チート魔術師め。

 彼女は神殺しなんていうちょっと意味不明な事をやってのけた本物の怪物だ。彼女が軽く睨めば鬼だって裸足で逃走する。あ、ちょっとこっち睨まれた。ごめんなさい。

 

 

「で、お前はここで何してるんだ…?」

 

 

 床に転がされている俺の様子に呆れた表情で問い掛けてくるアルフォネア教授。

 

 

「虐められてます」

「違うでしょッ!?」

 

 

 横からシスティーナのツッコミが入る。

 その様子から彼女は大体のことを察したようだ。

 

 

「またか。毎度毎度よく飽きないな、お前らは。で? いつも通りお前は問題ばかり起こしてたのか?」

「教授、違いますよ。俺の場合、問題を起こすのではなく、問題が俺を引き付けているんですよ」

「要はお前が自ら首を突っ込みに行ってると…」

「地雷は踏み抜いて盛大に爆破させるタイプなので」

「もうお前、一生家に閉じ籠ってろよ」

 

 

 それが世の中のためになる、とでも言いたげな表情だ。

 

 

「そんな殺生な…!」

「取り敢えずお前も席に着け」

 

 

 悲愴感溢れる表情で言ってみたけど無視された。

 

 

「この状態じゃ無理でしょ」

「知らん。フィーベルにでも運んでもらえ」

「え、あいつ引きずってくからやだ」

 

 

 引きずられるのって結構痛いんだぞ。

 正直に答えた俺の側まで笑顔でシスティーナが寄ってくる。

 凄く嫌な予感しかしないけど誰も助けてくれそうにない。

 

 

「アルフォネア教授、これは私が引きずって行きますね」

「ああ、頼んだぞ」

「ねぇ待って助けて下さい教授っ! 可愛い生徒を見殺しにする気ですか!?」

「自分で言うのかそれ…」

 

 

 もはや憐れんだ視線を向けられながら、俺は自分の席まで引きずられていった。

 ため息つくと幸せが逃げますぜ、教授。

 

 

「はぁ、これでやっと本題に入れるな」

 

 

 そう言って教卓に立つアルフォネア教授。

 本題ねぇ……珍しく教授が朝のホームルームに来たかと思えばそういうことか。

 

 

「さて、今日はこのクラスにヒューイ先生のかわりの人物が来る。1ヶ月の非常勤講師としてだがな」

 

 

 非常勤講師……グレン・レーダス先生のことか。ということは、今って原作始まってるのか。

 だとするとシスティーナとルミアがグレンと会っているはずなんだが……今朝は俺を追いかけてきてたしどうなったんだろ? もしかしたら追いかけてくる前に会ってるかもしれない。

 

 

「話は以上だ。なかなか優秀な奴だから期待しておけ」

 

 

 なんて短いホームルームなんだ。数秒で終わったぞ。

 アルフォネア教授の褒め言葉に生徒達が騒ぐ。

 教授の凄さは生徒全員が理解しており、そして滅多に他人を褒めることはない事から生徒達の期待値がかなり上がっている。

 この後、その期待はすぐに裏切られるのだが……まぁ、余計な事を言うのはやめておこう。

 文句の一つでも言いたいところだが、颯爽と教室から去っていったアルフォネア教授の背を俺は黙って見送った。

 

 

「アルフォネア教授が褒める講師……これは期待出来るわね」

「うん、そうだね。ヒューイ先生も凄く教え方が上手な先生だったし、今日来る先生もきっといい先生なんだと思うよ」

 

 

 システィーナやルミアも、これからくる講師に期待し、周囲の生徒と同じようにどんな人物なのかを話し合っていた。

 その中で、俺だけは期待することもなく、その表情が暗くなっている。

 喧騒に包まれる教室の中、ついにこの日が来たんだな、と俺は(ひそ)かにこれから起こる事に対して覚悟を決めた。

 

 

 




5000文字くらいで書きたいと思ってます。
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